国家資格キャリアコンサルタントの三上です。
転職理由について少しアドバイスさせていただいております。
【転職は、「他責」ではなく「自責」です】
転職希望者が企業に中途採用枠で応募する際に、必ず聞かれるのが転職理由です。
皆さんよくありがちなのが、人や環境のせいにして、自分勝手な都合で理由を述べているケースです。
転職を決意するわけですから、もちろん100%前向きな転職理由にはならないことは人事も十分承知しています。
しかし、自分の思い通りにならかった(想像と違った、やりがいを感じられない、人間関係等)場合に、人や環境のせいにする、いわゆる「他責」で転職理由を述べる方が少なくありません。
そのような、誰もが経験する理不尽で不満足な状況の中でも、改善のために自分が出来る120%のことをし尽くしたのかが問われます。不満や文句を言うだけでは、次の企業に入社したとしても、また同じ理由で辞めてしまうのではないかと思われてしまいます。
転職先の面接で必ず聞かれる質問でもある「転職理由」。なんて答えたらいいのか迷う人も多いと思います。
転職する理由は人それぞれありますが、必ずしも本音や事実を伝えればいい訳ではありません。どのように伝えればあなたという人材に魅力を感じてもらえるでしょうか。
そこで今回は円満退職の方法と共に、企業が納得する回答についてご紹介します。退職理由を会社に伝える方法が知りたい方はこちら⇒退職理由(転職理由)ランキングと会社に伝える【例文テンプレート】
目次【クリックして移動できます】
履歴書で書類選考に通る転職理由の書き方
面接を受ける前にまず、多くの企業で書類選考に通過する必要があります。履歴書には、必ずと言っていいほど「志望動機」と「自己PR」欄がありますが、このふたつの欄を使って、前職の退職理由を説明しましょう。
前職ではどんな仕事をしていて、どんなスキルを養えたのかをアピールしつつ、退職理由をさりげなく絡めれば、不自然ではありません。
多くの採用担当者が知りたがっている退職理由とともに、次の仕事への意欲が伝わります。まずは、自分の退職理由と、前職で養ったスキル、そして次の職場ではどのように働きたいのかを考えてみてください。
転職理由を上手に伝えるコツ
自分の考えがまとまっても、話の構成がめちゃくちゃだったり、長すぎたり短すぎたりすると、面接官に気持ちは伝わりません。どうすれば、うまく話を構成できるのでしょうか。
理想的な文字数は150~200文字
「転職理由」を応募書類に書く場合、理想的な長さは150~200文字程度と言われています。一旦紙に書いて考えた後、文章を推敲すればうまい具合にまとまるでしょう。
起承転結を考えて書く
転職理由は、ただ前職を退職する理由を伝えればいいわけではありません。「〇〇が理由です。」と伝えても、「だから、うちでどうしたいの?」と思われてしまうでしょう。
理想的な転職理由文の構成は、「前職の仕事内容・培ったスキル→退職理由→応募先企業で何ができるか」という流れです。前職で培ったスキルを、転職先でどんな風に活かすのかを考えると自然な流れになります。
転職理由の考え方と面接で人事担当から見られるポイント
では具体的に、人事担当者に好印象を持たれる転職理由をまとめていきましょう。
転職理由を考える目安として、「転職を考えたきっかけ(退職理由)」と、「転職によって実現したいこと」で構成すると伝わりやすくなります。
転職理由は人それぞれ違います。中にはネガティブな理由で退職する方もいるでしょう。
面接で「上司と合わなかった」「残業が多く休日出勤も続いて…」「正当な評価がもらえなかった」などの退職理由だけでは、「転職によって実現したいこと」の答えとして不十分です。
ある程度、転職の理由を考えまとめておかないと面接で今後の仕事に対する積極的な姿勢を示すことは出来ません。
STEP:1 転職のきっかけを洗い直し語源化する
まずは、あなたが転職を考えた理由を挙げてみましょう。
「残業が多い」「ノルマがつらい」「上司と合わない」など、転職のきっかけは冒頭でご紹介したようなネガティブな理由でも問題ありません。
STEP:2 転職理由をポジティブに言い換える
面接でネガティブな理由のまま伝えてしまうと、「うちにきてもまた不満を持って辞めてしまうのでは?」と企業に魅力的には映らない恐れがあります。ですので、転職理由をできるだけ前向きな内容に変換していきましょう。
→自分の成果に対して正当な評価が得られる企業で、より一層の貢献がしたい〈 残業が多すぎる 〉
→限られた時間の中で効率的に仕事を進め、パフォーマンスを高めていきたい〈 命令口調で何もしない上司と合わない 〉
→尊敬できる上司のもとで責任のある仕事を任され、より一層の成長をしたい
たとえ理由がネガティブであっても、解決するためにどのような改善ができるかを考えてみましょう。するとポジティブな転職理由となります。
STEP:3 転職後に実現したい目的「どうなりたいか」を考える
志望動機を考える際、応募しようとしている企業が決まっている場合がほとんどだと思います。逆に企業が決まらないと明確な志望動機を考えることはできません。
では退職理由を前向きな内容に言い換えたら、応募先の企業で何を実現させたいのか、その企業に行くことで、自分にとってどのようなメリットがあるのかを考えます。
「きっかけ」と「応募企業で実現させたい目的」が、あなたの「転職理由」になるのです。
STEP:4 退職理由と志望動機をつなげる
退職理由と転職理由の一貫性は最も大切なポイントです。
本当に入社したいという求職者は、退職理由と志望動機に一貫性があり『なるほどな』と納得できる。どれだけ意欲を持っているか、どんな人柄なのかを思い浮かべることができる。逆に、退職理由と志望動機のつながりが薄かったり矛盾があると、『本当の退職理由は他にあるのではないか』『当社に入りたいというより、単に条件面だけで選んだだけではないか』と思われてしまいます。
例えば、前職で収入面や待遇・人間関係などに不満があって退職した人の場合、本当の退職理由は言いにくいという心理から抽象的な伝え方になりがちです。また、条件面で転職先を選んだ人は志望動機が特にないため、「入社したい」という意欲を伝えられず、面接官に「この動機なら、他の会社でもいいんじゃないの?」という印象を与えてしまいます。
更に、転職ノウハウとして学んだ「模範解答」を提出した場合、企業側のほとんどは一発でそれが「模範解答」であることを見抜きます。誰にでもあてはまるような当たり障りのない文章だと、その人の人柄が伝わってこないという点も問題です。
面接で「転職理由・退職理由」を聞かれる理由は?
面接の時に企業が転職理由を聞く意図は何なのでしょう?
それは、転職理由によって、あなたが入社後にどれだけ活躍する人材なのか「人柄」を見極めるためです。業務経験やスキルは職務経歴を見れば確認することができますが、仕事をする上で何を重視しているのかや働くモチベーションは職務経歴だけでは分かりません。
「なぜ転職したいのか」を聞くことで、企業が求めている人物像に合っているか、そして入社後どれだけ意欲的に働けるか、社風に馴染むか等を確認しているのです。
また、多くの企業は「できるだけ長く活躍してほしい」と期待をしています。せっかく採用しても入社後すぐに辞めてしまわないよう、「入社後に同じ理由で退職してしまう可能性」も確認しているのです。
ですので、あなたは転職の理由を通じて、応募企業で実現したい目的が何であるかを伝える必要があるのです。
面接で転職理由は必ずしも本音を言わなくて良い
日本的と言ってしまえばそれまでですが、いくら前の会社に尊敬できない上司がいたり、酷いパワハラを受けたり、給料が激安だったり、人間関係が最悪だったとしても、それをそのまま転職理由に伝えてしてしまうのはNGです。
言いたい気持ちもわかりますが、転職の際の暗黙のマナーと言いますか、採用する企業もそうした理由で転職する人が多いのはわかっています。
企業側も「ムカついたから転職したい」という人よりも、建前でも「キャリアアップのために自分のスキルを活かして・・・」という人のほうがいいでしょう。
文句ばかり言う人を最終決定権者である社長がどう判断するのか、やはり犯罪行為をされたとかそのレベルでない限りは、前向きな理由+能力アピールで行った方がリスクが少ないということになります。
面接での転職理由はポジティブに!回答の例文まとめ
転職理由:給与を上げたい
私は年齢や性別に関係なく、実力に応じた人事評価制度が重要だと考えており、責任あるポジションを任せていただける環境に身を置き、成長したいと考えております。
高い士気を維持できるという意味で御社の人事評価制度にとても魅力に感じており、パフォーマンスを最大限発揮できるようがんばりたく存じます。
「御社は能力給の割合が大きくて」などお金には触れない方がいいかもしれません。
一番労働で大切な部分ですが、正当に評価されれば価値がある人材です=だから高い給料でもその価値はあります、と婉曲的に伝えるのがポイントです。
転職理由:前職の残業が多い/休日が少ない
業務フロー改善を具申したのですが受け入れられず、非効率的な仕事の進め方に疑問を抱いていました。
「働き方改革」が叫ばれていますが、非効率的な働き方をしていては自分自身のスキルも上がらず成長が叶わないと思い転職を決意しました。
御社は風通しがよく、業務改善に積極的だと聞いております。是非とも御社で働かせてください。
転職理由:リストラされた
このまま前職に残り会社の再建に尽くす選択肢もありましたが、かなり厳しい考退職を決意しました。
前向きに新しい業界、新しい会社で前職で培った〇〇の技術を御社で活かしたいと考えています。
わざわざ首になったという必要はありません。
解雇されたのか自発的に辞めたのか、ハローワークは知っていますが会社は知るすべがありません。
稀にハローワークと通じていて、解雇されたことを知る企業もありますがその時点で超ブラックなのでこちらから願い下げです。
転職理由:家庭の事情
母も高齢ですし、私と妻で交互に介護が必要になります。
前職は休日出勤や残業も多く、介護のための時間が全く取れないと思い今回転職を決意しました。
ワークライフバランス重視で介護休暇もある御社で仕事と家族の介護を並行させてください。
私のスキルは御社の役に立つはずです。
こればかりは本人の努力でどうにもなりませんし、しっかり使えておくことで業務や何かあったときに配慮してもらえるかもしれません。
貴方が余人をもって代えがたい能力があれば転職先は十分配慮して喜んで採用してくれるはずです。
転職理由:人間関係
上層部に意見を言う制度もなく、言いにくい雰囲気もありました。
御社の社風は自由闊達に議論でき、個人のスキルを活かせると聞いております。
この社風に魅力を感じて転職を決めました。
在職中の○○という資格も活かせ、お役に立てると思っております。
転職理由:キャリアアップしたい
そういう人材も必要なのだと思いますが、前部署での知識やスキルが異動によってリセットされてしまうため、自分自身の専門性が身につきにくいと考えていました。
私自身○○をやりたくてこの業界に就職したので、是非御社の○○部(○○職)で働いて、専門性を身に付けたいと思って転職を決意しました。
転職理由:女性が働きやすい職場を希望
会社のサポート体制も不十分でやむを得ず退職しましたが、これまで培ったスキルでもっと社会貢献したいと思っております。
育児と両立できる環境が御社にはあり、○○のスキルは持っているので、今後も社会で活かしていきたいと考えています。
子どもについては近くの保育園に預けて働こうと思います。
私の両親の近くに住んでいるため、急な発熱などがあっても面倒見てもらえるので仕事に集中できます。
女性が活躍する社会は今の時代のキャッチフレーズですし、子育てしながら働いている女性の割合が高いのは企業にとっても対外的なPR材料になりますので、本当に育児サポートが整っている会社ならば正直に話しましょう。
転職理由:前の職場でセクハラ、パワハラがあった
このままでは非常にストレスで嫌な環境の中で働かなくてはならず、やむを得ず退職しました。
御社では心機一転がんばりたいと思っています。
しっかりと理由を伝えたうえで、能力的には何ら問題がないことをアピールしましょう。
転職理由別!転職後の成功例
転職理由はさまざまですが、みんな転職先で満足しているのでしょうか。成功例を紹介します。
給与を上げたい
年収アップに成功!
「不動産会社で数年働きましたが、個人的な成長が感じられないことに加えて給料が上がらず、モチベーションが下がってきたので転職を決意しました、転職先の製薬会社では年収も200万円アップして、生き生きと働けています。」
残業が多い/休日が少ない
ライフスタイルに合った転職に成功
「妊娠がわかったとき、出産後、営業職として働くのは難しいと考え、退職を決意しました。新しい会社では、事務職として働いていて、定時に帰宅できています。土日も休みなので、転職してよかったです。」
キャリアチェンジしたい
業界未経験でも転職に成功
「前職は航空会社で働いていましたが、自分の頑張りを正当に評価してもらえなかったため、評価制度が整っているIT企業に転職しました。まったくの未経験で戸惑うこともありましたが、やればやるだけ評価される職場なので、やりがいがあります。」
面接で嘘の転職理由を言わないためのワンポイントアドバイス!
「転職理由」の質問に適切に返答しようと嘘の理由を話す必要はありません。ネガティブな退職理由だったり印象が悪そうだからといって、嘘をついたり、そこにはまったく触れず、当たり障りのない答えで取り繕うのは逆効果です。
退職理由には人それぞれの考え方や感じ方もあるので、世間に出回っている退職理由の事例をそのまま言っても、何も説得力がありません。
何でも正直に話せば良いというわけではありませんが、自分の言葉で正直に話そうとする姿勢は、面接官に良い印象に映ることがあります。変に格好つけたり隠そうとしなくても、心から湧き出る正直な言葉は、相手の心に響きやすいものです。
たとえ、そのまま入社できたとしても、本当の転職の動機を偽っていれば、あなたの希望する働き方が叶えられない可能性があり、そうなった場合、転職後に「こんなはずじゃなかった」と更に転職を重ねることにもなりかねません。
とはいえ面接の場では、ただ正直に答えればいいというわけではありません。それなりに話の組み立ては必要となります。
最も大切なのは、「回答事例そのまま」ではなく、自分の言葉で思いを伝えることです。上手くまとめられない場合には、紙に書き出してみたり、誰かに聞いてもらったりしながら整理をすると良いと思います。また、声に出して練習すると本番でも緊張せずに話すことができますよ。
まとめ「本音と建前」無理に事実をねじ曲げる必要はない!
みんながどんな理由で転職を考えているのかよくわかりましたね。人の転職理由を知ることで、あなたも自分の転職理由が見えてきたのではないのでしょうか。
転職理由には、ポジティブなもの・ネガティブなもの色々ありますが、どちらにせよ、あなたの仕事に対する考え方そのものが表れています。
もちろんポジティブな転職理由の方が望ましいですが、たとえネガティブな理由だとしても無理に事実をねじ曲げるのではなく、「ポジティブな部分を見つけること」が大切だということです。
これから転職を考えている人は、あなたも企業も幸せになれるよう「何を大切にしたいのか」をきちんと考え、正直に自分を表現するあなたの姿勢を評価してくれる会社を選ぶきっかけとして、役立ててもらえればと思います!
転職理由をどう語るべきか少しでも参考にしていただけましたでしょうか?
最後にこの言葉で締めくくりたいと思います。
全ての言動と行動の責任は、自分の責任であることを前提とし、状況改善のために努力したことを明確に伝えた上で、それでも変わることがなかったという中で、苦渋の選択の上で転職を決意したというロジックが必要です。
人や環境のせいにするのでなく、自分が変わろうと努力したか、環境改善のためにアクションを起こしたのか。転職を決める前にもう一度じっくり考えてみてください。皆さんの転職活動がうまくいくことを祈念しております。