簡単な給料の手取り計算方法※給与から実際に受け取れる手取りの差額を事例で解説

簡単な給料の手取り計算方法

転職するにあたっての最重要事項はお給料のはずです。
特に毎月いくらもらえるのか、というのは、生きていくための死活問題です。

実際の求人にある「給料額」を信じていたら、いざ転職してもらう額を見て、少なすぎて卒倒した、そういうことにならないように、今回は給料と手取りの関係について考えたいと思います。以前書いたボーナスの計算方法も参考にして下さい。

100%正しい公式はないのですが、大体の目安になると思います。

給与から実際に受け取れる手取りの差額を知るメリット
  • 実際に自分で使える収入(手取り)金額がわかります
  • 見かけの月収に惑わされるとボーナスが少ないケースが出てきます
  • 会社によっては給料に対する手取り額が多いことがあります
  • そういう会社はホワイト企業です
  • 求人票の「マジック」に騙されなくなります!

手取り計算において理解すべき給料と給与の違い

給料と給与の違い
まず「給料」と「給与」について考えます。
両者は同じものなのか、違うものなのか、どちらなのでしょうか?

実は、給料と給与は違います。

  • 給料:みなさんの「基本給」
  • 給与:みなさんの「基本給」+「諸手当」(役職手当、残業代、住宅手当、精勤手当・・)+「賞与」(ボーナス)

となります。

つまり、「給料」は残業代やボーナスの支給の基準になります。
「ボーナス3か月」でも、基本給、つまり給料が20万円の人と25万円の人では15万円違ってきます。

「給与」は、「会社から受けとる報酬のすべて」と思ってください。

月給と月収は同じものなの?違うものなの?

似た概念に「月給」と「月収」があります。
こちらも違います。
  • 月給:みなさんの「基本給」+固定手当(毎月一定額もらえる手当:役職手当、住宅手当など)
  • 月収:月給+変動手当(毎月変動する手当:残業代など)+ボーナスの1/12

つまり、月収は1年間に会社から支給された額(=「年収」)を12で割った金額になります。
ボーナスがたくさんもらえる会社は月収も高くなるんです。

以上をまとめて図にするとこのような感じになります。
イメージしやすくなったでしょうか?

月給と月収の違い

「毎月の給与」と「月収」はほぼ同じものだと思ってください。

つまり、金額的には、
基本給=給料≦月給<「毎月の給与」=月収<「年間給与」=年収
となります。

基本給=給料が低くても残業をたくさんして完全に支給されれば月給や毎月の給与は上がりますね。
ただし、ボーナスの算出根拠となする数字は基本給=給料で計算されるので、給料が安い会社はボーナスがあまりもらえないことになります。

手取りはどのように計算されるの?

手取りの計算方法を図解

給料や給与、月給や月収についてご理解いただけたと思います。
それを踏まえて、一番大切な「手取り」について考えたいと思います。

「手取り」は実際に毎月の給料日に振り込まれる金額です。

手取りは
『基本給+固定手当+変動手当(ボーナス以外)』-「税金(所得税、住民税)」-「保険料」-「年金」で計算されます。

個人事業主や自営業の人は自分で税金や保険料、年金を納付しますが、会社員はそれらを会社が代行してくれます。

なお、以前はボーナスには税金がかかりませんでしたが、今はがっつり税金や保険料、年金が引かれます。つまり、毎月の給与とは別に、ボーナスの時も手取りはいろいろ引かれた金額ということになります。

税金以下の項目を簡単に説明します。

1.所得税

給与から、非課税となる諸手当(交通費等が該当。残業代は課税!)を除いた部分にかかる税金。
年収が高いほど税率も高くなる「累進課税方式」を取っていて、給与支給日には大まかな数字で徴収されますが、年末に「年末調整」(か確定申告)で正しく清算されます。

戻ってくるときと追加で払うときがあります
2.住民税

住んでいる都道府県や自治体などに納める税金です。
前年の年収によって金額が決まって、翌年の6月前年分を12ヶ月の均等割で支払います。

つまり、前年働いていない人や、新卒1年目は住民税の支払いがありません。
3.健康保険

怪我や病気の際の保険です。会社員の場合国民健康保険ではなく、会社が入っている団体(組合)の保険に加入します。
保険組合によって保険料率が違います。

怪我をしやすい職種は保険料が高く、逆にデスクワークで残業も少ない業界は、怪我も病気もリスクが低いので保険料が安いです。

保険料は会社と半額ずつ負担します。
4.介護保険

40歳以上になると支払い義務が発生します。
将来、介護が必要になった際、1~2割の負担で介護サービスを受けるために支払います。

39歳までの人はこの保険は支払いません。
5.厚生年金

会社員は厚生年金になります。
国民年金よりも支払額が多いのですが、その分年金額も増えます。

年金掛け金は会社と半額ずつ負担します。
6.雇用保険

失業したときにハローワークで失業手当をもらうための掛け金です。
事業や業種によっても保険料率が異なります。

こちらも、掛け金は会社と半額ずつ負担します。

会社によっては「社会保険料補助」がある!

社会保険料補助

上の社会保険、厚生年金、雇用保険については「掛け金は会社と半額ずつ負担します」とあります。
つまり、併せて6万円ある場合、会社が3万円、みなさんが3万円の負担で済み、みなさんの給与から引かれるのが3万円ということになります。

しかし、それは「最低ライン」であり、ホワイト企業になると会社が半額以上負担してくれるところもあります。

つまり「会社が3分の2負担」ならばみなさんの負担は3分の1、つまり給与から引かれるのは2万円ということになります。

医薬系出版社など超ホワイト高給企業の場合、この社会保険料(社会保険、厚生年金、雇用保険)100%会社負担というところもあります。
そういうところであれば、給与額の対する手取り(下記参照)の割合が大きくなります。

ホワイト企業は残業時間が少ないことや、給料(基本給)以上に、こういうところで差がつくのですね。

なお、個人事業主の場合、社会保険料はすべて自分で払うことになります。
だから、会社員は有利なんです。

「額面」と「手取り」の違い

額面と手取りの違い

上でも書きましたが、毎月の給与から税金や社会保険料を引いた、実際の振込額を「手取り」といいます。

『基本給+固定手当+変動手当(ボーナス以外)』-「税金(所得税、住民税)」-「保険料」-「年金」
で表されますが、よく言われる年収は手取りではありません。

会社から支給されるすべてのお金、つまり「年間給与」が年収です。
これを「額面」といいます。

年収600万円という人は、手取りが600万円なのではなく、額面600万円なので、実質自分の好きにできるお金(手取り)はさらに低く、500万円を切ります。

月収から手取りを算出する方法

いちばん大切なのが、自分で使えるお金「手取り」になりますが、おおよその金額を割り出すことはできるのでしょうか?
実際には複雑な公式に当てはめないといけないのですが、おおよその金額は算出できます。
『給与((基本給=「給料)+(各種手当(残業代、役職手当他。通勤手当以外))』×0.8

つまり、給与の80%が手取りになると考えてください。
ただし、上で書いたように「社会保障費全額会社負担」の会社に勤務している人ならば、手取りは給与×0.9以上になります。

なお、ボーナスの場合は、額面(総支給額)×0.82くらいになります。
ボーナスからも税金(所得税)、保険料、年金が引かれますが、住民税が引かれないことと、保険料の負担率が給与の半分になるので、手取り率が大きくなります。

実際に給与明細を見てみよう!

言葉で説明してもわかりにくいので、筆者が勤めていた時の実際の給与明細を見てみましょう。

<給与明細(月収)>
実際に給与明細を見てみよう!

月収(額面)が右下の「支給合計額」になります。「269,975円」
そして手取りがその下の「内振込額」が手取りです。「217,222円」

手取り額概算の公式に入れると
269,995円×0.8=215,980円となります。

概算で215,980円、実際は217,222円。
千円ちょっとの誤差ということで、この公式は間違っていないことがわかります。

ついでにそのほかの項目も見ていきましょう。まず支給項目です。

俸給:240,220円

→これが「基本給」でした。

「小時間外」:3,173円
「一般時間」:15,863円

→残業代です。
2つに分かれているのは、上が補助金事業の残業代でお金の出所が補助金(税金)でした。
下は通常の会社から支払われる残業代です。

平社員だったので「役職手当」はなし。
また、私がいた会社は「住宅手当」がなかったんです(涙)。

「社保補助」

→これについては後述します。

続いて控除項目、つまり給与から引かれるものです。

健康保険:8,040円

→会社が加入している健康保険です。

厚生年金保険:21,963円

→会社員だったので厚生年金です。

雇用保険:2,159円

→会社員なので雇用保険を支払います。

所得税:5,990円
住民税:13,200円

→給与から天引きされる税金です。

職員組合:1,401円

→わが社の労働組合は「御用組合」なので、ご丁寧に人事の方で引いてくれました(笑)。

さて、注目したいのが支給項目の「社保補助」です。
実は私がいた会社は、社会保険料を会社と労働者で折半ではなく、会社が3分の2、本人が3分の1負担というありがたい制度になっていました。

実際の社会保険料は

健康保険(8,040円)+ 厚生年金保険(21,963円)+雇用保険(2,159円)=32,162円(法律上の本人負担額)×2(会社支払い分)=64,324円(実際の社会保険額)です。

会社が3分の2負担なので、64,324円×2/3=42,882円が、わが社で会社が負担すべき社会保険料です。

つまり、42,882円(会社が負担すべき3分の2の社会保険料)-32,162円(法的に私が負担すべき社会保険料)=10,720円となり、「社保補助10,719円」とほぼ同額になります(1円の違いは小数点の計算でしょう)。

会社が [2/3]-[1/2]=[1/6] 社会保険料の6分の1を給与に上乗せしてくれていたんですね。

ボーナス明細

ボーナス(賞与)についても簡単に触れます。

ボーナス明細

月収(額面)が右下の「支給合計額」になります。「821,239円」
そして手取りがその下の「内振込額」が手取りです。「673,958円」

で、公式(×0.82)に入れると
821,239円×0.82=「673,416円」

となり、実際の手取り「673,958円」に非常に近い額になります。

月給(基本給)と各種手当、残業時間がわかれば、手取り額のおおよその見当がつくというわけです。

「年収」と「手取り」と「所得」には違いがあります!

したがって、年収(額面)は毎月の額面+ボーナスの額面であり、手取り額は、年収×0.8~0.82くらいになるということがわかりました。

なお、交通費(定期代)は年収に含まれますが、非課税(※)なので税金の算出からは除外されますが、社会保険料の算出には影響しますので注意してください。
※ 毎月交通費10万円を超えなければ非課税です。10万円を超える人は新幹線通勤の人くらいでしょう。

なお、「所得」は額面(年収)でも、手取りでもありませんので注意してください。

○所得=総収入(年収、額面)-給与控除+(各種控除:ある人のみ)

で計算され、所得(課税所得)をもとに所得税や住民税の金額が決定します。
また、保険料については所得ではなく、その年の4月~6月の月収で決まります。

ここでは所得について深入りしませんが、違いがある、ということは知っておいてください。

所得の違い

  • 年収:給与(年間)
  • 年収(額面):会社から1年間にもらったすべてのお金
  • 所得:年収(額面)から各種控除を引いたもの
  • 手取り(年間):額面-(所得税、住民税、健康保険、年金、雇用保険)
  • 月収:基本給+各種手当(役職手当+残業代+住宅手当・・・)+ボーナス(賞与)の1/12
  • 給与(毎月):月収
  • 月給:基本給+固定手当(役職手当、住宅手当等)
  • 給料:基本給

かなり紛らわしいのですが、違いを覚えておきましょう。

会社によっては、求人票の「月給」を基本給ではなく「基本給+各種手当」で載せているところがあります。
そういう会社はボーナスがかなり少なくなります。

また、ひどい会社になると「月給」に「残業代○○時間込み」というところもあります。
そういう会社は、実質残業代が出ないブラック企業の可能性が高いです。
基本給が低い場合、ボーナスの額も下がります。
注目すべきは給与、月給ではなく基本給ですね!
簡単な給料の手取り計算方法 まとめ
  • 手取り額は「額面×0.8」くらいになる。
  • 給料、給与、月収等の違いを理解する
  • 額面給与から税金や社会保険が引かれる
  • 社会保険料は原則会社と折半。しかし、会社がもっと負担してくれるホワイト企業もある
  • 見かけの月収ではなく「基本給」が高い会社を選ぶ