「モンスターペアレンツ」「モンスタークレーマー」など、過度の悪意あるクレームをつけてくる人や、難癖に近い言いがかりを言ってくる人が後を絶ちません。自分を主張しない日本人が主張するように(本来の意味でのclaim)なるのは悪いことではありませんが、権利を超えて言ってくるのはもはや悪質な言いがかりです。
そういう人が実は社内にもいませんか?
今回は「モンスター社員」と呼ばれる社員への対処法について考えたいと思います。本気で関わりたくない人は退職代行や仕事を辞める事を考えて下さい!
- 「モンスター」と言っても様々なタイプのモンスターがいます
- どういう行動をするのかを知っておきましょう
- そういう人は入社時にある程度排除できるはずです
- モンスターなのかそうではないのか見極めましょう
- モンスターも配置次第で活躍できるかもしれません
- 筆者が出会ったモンスター社員を紹介します
目次【クリックして移動できます】
モンスター社員(クレーマー社員)とは?
まず、モンスター社員(またはクレーマー社員)についてその定義をしたいと思います。
普通に仕事をしているなかでは、ありえない要求や主張を繰り返すことで、部署全体、会社全体の業務を難しくしていきます。
学級崩壊の会社版というべきもので、モンスター社員の激しい自己主張や、自己中心的な考え方、仕事の仕方で、すべてが自分中心に物事を考えることで、いわば「独断専行」で物事を進めていってしまいます。
大前提!本当にモンスター社員?企業側に落ち度はありませんか?
日本人的な感覚として、クレームを言う人は問題だ、というものがあります。
しかし、その主張が正当なものであれば、むしろ悪いのは会社の方です。
労働組合がない会社で(あっても役に立たない論は置いておく)、「残業代を払ってください」「有給休暇を取得したいのですが・・」そういう主張をする社員に対して、「お前はモンスター社員だ!」とレッテルを貼る悪徳経営者も後を絶ちません。
筆者が経済団体にいたときも、そういう正当な主張をする社員を黙らせる方法や、レッテルを貼って追い出すための方策をセミナーでやりませんか?と売り込んできた社会保険労務士もいました。
私から見れば、悪徳経営者、悪徳社労士にほかならず、彼らの方がよほどモンスターといいますか、悪の怪獣に見えました。
したがって、法に基づいた正当な「claim」を行う社員はモンスターでもなんでもなく、むしろモンスターを狩るべき勇者なのだと最初に申し上げたいと思います。
どういう行動がモンスター社員(クレーマー社員)なのか?
就業規則だけではなく、一般常識からもかけ離れた主張をする社員です。
通勤時間に急に雨が降ってきて、濡れそうになったので傘を買い、その傘代を人事に請求する人いませんか?
あとは「息子にそんな重い荷物を持たせて」と親が怒鳴り込んでくるなど、さすがにそれはちょっと違うんじゃないのという主張をしてきます。
集団で仕事をしている以上、たまに衝突したり、口論になってしまったりすることもあるかもしれません。
そうすると急に切れて暴言を吐いてしまいます。
先輩から叱責されたときに「パワハラだ!」といって、社長、役員、幹部全員に一斉メールを送って「あの先輩はパワハラです」と訴えるなど、順番をすっ飛ばして過剰な反撃に出てしまいます。
もちろん、本当に納得できないパワハラだと感じるなら、まず部課長に言う、それでもだめなら人事のパワハラ窓口に言う、が正解のはずですよね。
こういう人がいると完全に「腫れ物」扱いされてしまいます。
パワハラ上司のやり方です。
「俺のやり方は正しい。気に入らないやつは出ていけ!」少しでも意向に沿わない社員がいると、人格攻撃に走ります。
業務とは関係ないことを周囲に話したり、家庭の事情に言及したりする人もいます。
「俺が人事考課者だ、わかっているな!」生殺与奪を握って、評価を盾に脅すような人は最低ですよね。
パワハラには言葉による嫌がらせや強要も含まれ、受けないと今後の仕事に支障が出る、などの脅し文句が含まれることもあります。
職を失う可能性を引き合いに出され、部下としては断ることが難しく、やむなく従ってしまうことがあります。
モンスター社員の分類
こうした行動を取ってくるモンスター社員はいくつかのタイプに分かれています。
1.パワハラ型
最近あらゆるところで問題になっているパワハラ上司です。権力を傘にしているため逆らうことができません。
パワハラ型モンスター社員は、相手(部下だけではなく取り引き先なども)の立場や気持ちをまったく考えず、自分が思ったことをそのままオブラートに包まず言うため、攻撃的な印象を周囲に与えます。
口だけではなく手が出るタイプもいます。この場合は体罰になるのでより問題です。権威的で自己中心的な人が多く、「自分に優しく他人に厳しい」性格で、「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」「○○のくせに生意気だ」という「ジャイアニズム」を地で行く人たちです。
2.親・家族介入型
社員の中には親や家族が人事や部署に怒鳴り込むケースが少なくありません。
すべてがモンスターで問題だ、ということではなく、過労やストレスで病気になりそうな息子や娘を助けるために家族が介入するのは悪いことではありません。
しかし、ここで問題となるのは「こんなことは親や家族は関係ないだろう」ということまで介入して怒鳴り込むケースです。
「息子にこういう仕事をさせないでほしい」
「娘はもっと給料が高くてもいいんじゃないですか!」
「この人事考課には納得できない」
「休みが少ない、もっと増やしてほしい」
息子なり、娘を特別扱いしてほしい的なことは聞けませんよね。
親や家族が勝手に乱入してくるケースと、社員本人も敢えて介入させているケースがあります。
3.メンタル不安定型
筆者もうつ病になった人間なので、メンタルを病むのは会社に原因があると思っています。
したがって、急にうつ症状などで来なくなると「モンスターだ」といわれると「違う」と言いたくなります。
ここで挙げているのは、わがままに育ち、すぐに切れてしまったり、嫌なことを言われて(取引先を含む)、いきなり反論してしまったりするケースです。
TOPに合わせた発言や行動ができないと、さすがに重要な仕事を任せることはできないですよね。
4.自信過剰型
根拠のある自信ならいいのですが、根拠のない自信で周囲を振り回すのは問題です。勝手に自分だけで契約してきてその契約に瑕疵があったら大問題になります。
また他人の意見を聞き入れずに、妙なこだわりがあり、それが間違っている、そうなると周囲はお手上げになってしまいます。
自分の能力を過信していて、過去の実績にこだわり続けたり(実績がない人もいます)、「自分は他とは違う、選ばれている」といった思い上がりを抱いていたりすることが多いです。頑固なのはときに武器になりますが、傲慢でわがままだという印象を与えてしまいます。
例えば以下の動画を見てみましょう。
動画にいるラーメンを学んでいるはずの「みなみちゃん」。まったくラーメンのスープが取れないから修行に来ているのに、偉そうに講釈を垂れています。灰汁とうまみの違いもわからないレベルの人が自信満々にラーメンを語る、しかも教える、自信とは怖いのもだと言えますね。
(ちなみに動画の番組『愛の貧乏脱出大作戦』は、会社にいたらモンスター社員になりそうな人がたくさん登場しています)
5.反抗型
逆切れをするタイプです。それだけではなく、「だって」「しかし」「そうは言っても」とすぐに言い訳をしてしまいます。自分を正当化したいのでしょうが、正しい指摘も受け入れないのはやはり問題です。
こちらも『愛の貧乏脱出大作戦』の動画から見てみましょう。
調子に乗っていた「ママさん」。人に偉そうに教えても、最後は失敗して「心に迷いがあったんです」。え、余裕綽々だったじゃないですか!
19分10秒~
「要はここのところを取れっていうんだろ」(怒)
「何やったってあんたは文句言うんじゃねぇのか」
「はいよ~ありがとさん」
ご主人の逆切れです。
ただ、達人も明らかに見下していて、気分はよくないですね。
6.被害妄想型
そんな態度は敬遠されますが、卑屈過ぎても問題です。「すべて自分が悪い」「自分のせい」「こんなにバカだから」そう考えると、その人は成長できません。
「自分は能力がないからこれ以上の仕事はできません。振らないでください」そう言われると困ってしまいますよね。
ダメだから仕事はいい加減でよい、となってしまうともうその人には何も大きな仕事を任せられなくなってしまいます。
「自分だけが被害者なんだ」という感情を抱き、ヤケになって行動したり、反対に自ら仕事の効率を下げておきながら正当化したりというタイプです。
会社へのリスク、顧客へのリスクへの向き合い方~モンスター社員への対処法
また、「ごね得」やわがままを許していたら、他の社員の士気にもかかわってしまいます。
採用時の性格検査
みなさんの会社では採用時に性格検査をやっていますか。
そしてそれを本当に利用していますか?
性格検査ですべてがわかることはないのですが、まったくわからないこともなく、ある程度、ヤバイ性格の人をふるい分けることができます。
具体的には
- YG性格検査(矢田ギルフォード性格検査)
- MMPI日本版
- 新版TEG
などで、問題がありそうな性格の人を事前によけることができます。
「今までに一度も赤信号の横断歩道を渡ったことがない」
「生まれてから一度も嘘をついたことがない」
といった複数の質問にYESと答える人は大ウソつきで、モンスターである可能性が高そうですよね。
こういう検査を通してトラブルのリスクを事前に取り除いていきます。
履歴書の転職歴をチェック
新卒採用の人はわかりませんが、中途採用ならば職歴をチェックするはずです。
転職回数が多い=問題がある、とは言いませんが、先々の転職先でトラブルを起こして、また転職活動をしている可能性は否定できません。
この辺りは、面接時によく聞くべきでしょうね。
評価基準、考課基準や就業規則の見直し等
数字だけ上げれいいという考えが行きついた先が、最近話題になった「スルガ銀行」です(※)。
能力がない人を評価するのは難しいかもしれませんが、パワハラや違法行為すれすれで数字を上げてくる人は、モンスターになりそうです。
さまざまな角度から社員を評価する仕組みを作りつつ、モンスター社員的な行為をした人については、相応の厳しい処遇をするなど、なぁなぁではなく、客観的に社員が納得できる評価基準を作っていきましょう。
(※)スルガ銀行、狂った経営が白日の下に…恫喝営業、創業家ファミリー企業に巨額融資
活躍できるフィールド、部署に配置する
モンスター社員に罰を与えるだけではいけません。
その人は、自分に向かない仕事を強いられて反発しているのかもしれません。
性格は問題でも、仕事上の能力は優秀な人もいます。
本当にその人の希望や適性に合った仕事をしていますか?
部署が変わり、周囲の人間関係も変わり、仕事内容も変われば、別人のように活躍してくれるかもしれません。
適切な配置は会社の責務であり、それでモンスター社員が変わるならば、むしろ会社、人事の責任が大きいのではないでしょうか?
モンスター社員が発達障害などの場合もあり
モンスター社員はわがままに育った方、親に問題があるからそうなったのではないケースもあります。
発達障害で会話のキャッチボールができない人、感情を抑えることができない人もいます。
ADHDならば、1つの仕事に集中できずに不用意な言葉を発してしまうかもしれません。
本当に性格に難があるモンスターなのか、障害によってそのように見えてしまうのかによっても対処法は変わってきます。
障害者手帳を持っている人ならば、障害者雇用になり、仕事や部署を配慮して活躍してほうがいいでしょう。
個人的なこと、非常にプライベートなことなので、聞くわけにもいきませんし、そういう人が転職活動をする場合伏せる人も多いでしょう。
だからこそ、入社前の性格検査が大切になってきます。
ただし、障害だと知っているのとそうでないのでは、管理職や周囲も含めて受け止め方がかなり異なってくるはずです。
最終的にはモンスター社員の辞めさせ方・・・!?
どうしようもないモンスター社員がいる場合、最終的には辞めてもらうしかないわけですが、解雇しにくいのが日本の法律です。
モンスター社員はおそらく会社にしがみついてくるはずなので、退職を促すと逆効果になるでしょう(向こうが訴訟を起こすかもしれません)。
となると、厳格に就業規則を作成し、言い逃れできないようにして、解雇に持っていくしかないのだと思います。
辞めさせ方で、下手な方法を取ると逆襲されてしまいます。
「退職代行」の記事を過去に書きましたが、似た感じで「辞めさせ屋」というものもあるようです。
モンスター社員を改悛させることができないのであれば、辞めてもらうしかありませんので、出口戦略も合わせて考えてください。
実際に会社にいたモンスター社員(クレーマー社員)の体験談
最後に、筆者が会社員時代に出会ったモンスター社員を紹介します。
最初の部署の上司3人に100万円超の飲食費を弁済させ、懲戒処分までもっていく仕返しをしたので、筆者自身もモンスター社員だったのかもしれませんが(笑)
筆者が会社員時代に出会ったモンスターを紹介したいと思います。
最初の部署で私の隣に座ったスタッフ管理職(課長ではない)Eは、巨体でパワハラをする問題児でした。
私のことを呼び捨てにして、自分は動かず、偉そうに怒鳴り散らかしています。
いちおう管理職なので出退勤の定めがないことを理由に、毎日12時前に出社して、夜12時くらいまで居座り、管理職ではない部下をそれに付き合わせる(当然その人は9時~0時が勤務時間になる)、というモンスターでした。
ライン管理職になってからは行く先々で部下を潰し、ある先輩の自殺の引き金になったともいわれています。結局持病が悪化して辞めていきました。
当時の専務のコネで入ったと言われていて、そのモンスターぶりは私も聞いていました。
ある日の会議
私「来たばかりで右も左もわかりませんが早く仕事を覚えてがんばります」
N「なんでわからないんだよ」(会議中に叫ぶ)
発達障害なのかもしれません。かなりびっくりしました。客と接する部署では客を怒らせ、管理部門では書類をなくし、総務では偉い人を怒らせ、とどこに行ってもダメで、支店をたらいまわしになれています。
なぜかスタッフ管理職になれましたが、決裁権は一切持っていません(ライン管理職にはなれない)。
あと、アルバイトの女性にセクハラもしていました。今思えば私が人事に言って、コネ入社の社員を厳正に処断してもらった方がよかったかもです。
ある会議で、会場の人が手が滑って彼女の服に水をこぼしてしまったそうです。
「すいません」と平謝りする会場の人ですが、彼女の上司もいるのに「許せない、親を呼んでやる~」と叫んで携帯から親に電話をしたそうです。さすがにそれ以降「腫れ物」になっていると聞いています。親もモンスターだと本当に厄介ですね。
ある部署の課長だったOには3人の部下がしましたが、ある日3人一斉に退職してしまいました。
50歳前で独身、朝から深夜2時、3時まで仕事をして自腹でタクシーで帰宅。それを部下にも求めていたようで、罵声はもちろん、ときに物も飛んでいました。
自分の基準を部下に要求するのは酷で、若いころからあちこちで衝突を繰り返していたようです。
彼は部署そのものを壊してしまいます。管理職で行った先々の部署で、やらなくてもいい事業を次々と企画し、自分は作業をせずに部下に丸投げします。
ある部署では人員が倍になってもさばききれない仕事を、勝手に作り出しました。それを部下に放り投げて、1か月夏休みを取る所業は「サイコパス上司」そのものです。
その後は外部出向→突き返される→内部部署→1年で飛ばされる、を繰り返しています。女性関係でも様々なトラブルを起こしたようで、爆裂魔法であらゆるものを吹っ飛ばしています。
モンスター社員の事例やリスクまとめ
- モンスター社員はどこにでもいる
- 主張をする人がモンスターではない。正当な主張をされる会社はむしろブラック企業である
- モンスター社員のタイプをよく理解する
- 難癖や家族の介入など予想を超える行動に出ることがある
- 性格がモンスターなのか発達障害やADHDなどかで対応は変わってくる
- 障害の場合は改善は難しいケースが多い
- モンスター社員にも合う部署があるかもしれない
- 部署が変わってモンスター行動がなくなることもある
- 入社前に行う性格検査などは徹底的に活用する
- どうにもならない場合辞めてもらえる方法を考えておく