うつ病でもフリーランスで独立開業できた話|障害者でもフリーランスになれる

このような経緯でライターとしてお金をもらうようになった私ですが、まだ病気の症状はあり「リハビリ」でした。
体調が日によって変わる中で、安定して勤務するというのは難しいのかな、などと思いつつも、目の前の仕事を片付けていく日々です。今回は寄稿記事最終回ということで、結局就職ではなくフリーランスとして開業した理由について書きたいと思います。

うつ病でもフリーランスで独立開業できた話【独立開業編】

当初は日々のライティングで精いっぱい

大学時代の先輩から請け負ったライティングですが、具体的には先輩が運営するサイトへの誘導記事を書くものでした。
SEOで検索してヒットさせる、あるいはサイトそのものを強くするというもので、今でこそどういう意味があるのかわかりましたが、当時はよくわからないまま書いていました。

書くといっても1記事約800字で、料金は約250円。
かなり安いのですが、数年間何も働いていなかった私にとっては、1記事書くのも大きな負荷になりました。

1日3記事が当初は精一杯。それも3時間くらいかかります。
それ以上は脳が疲れて、また抑うつ症状が出てしまい、体調がおかしくなるのでできませんでした。

当然ですが、1日750円では生活できません。
でも、作業所へ行くよりもマシなんだな、と思いながらとにかく「お金をもらってリハビリ」できることを好意的に受け入れていました。

書く記事数も徐々に増えていきます。
最初は1週間10記事だったのが12記事へ、その後15記事と徐々に負荷を上げていきます。もちろん、先輩は私の病気を理解していますから「きつくなったらストップする。あるいは納期を遅らせてもいいからその旨伝えて」と言ってくれました。

業務請負の世界でそんなことを言う人はまずいませんし、納品できない人は切られてしまいます。
でも、先輩はあくまで「私の回復」を念頭に取り計らってくれました。

また、そこまで大事な内容ではなかったのかもしれません。
普通ならもっと安価で外注するものを私に書かせていたのかも、そう考えると本当に感謝しかありません。

徐々に仕事を増やしていき、名前を出して記事を書く

先輩のサイトの記事は美容分野だったのですが、1週間15記事くらいだと徐々に余裕が出てきました。

生活していかなければいけないわけで、もう少し仕事を増やしてもいいのかな、と思い始めました。

先輩に相談すると「悪いことではないけど、あくまでリハビリだから、2倍とかにすると元の木阿弥になってしまうよ」と言われました。
確かにその通りで、精神科の医師も

主治医
就労許可ラインではない。転職活動なんてできないよ。リハビリで書いているだけだから

と指導していました。

となると、精神的に負荷にならない分野、つまり好きなことや、あまり苦労しなくても書けることをプラスするのがいいのかな?と思い(精神的なストレスにならないこと)、ライター募集サイトなどで探してみました。

色々応募して断られ、最終的に2社のクライアントと出会うことができました。

メンタルヘルスの記事

私がうつ病で障害者であることを「加点材料」として評価してくれました。

医学的なことではなく、実際の体験談や症状、回復のために必要なことなどを記事にします。

この仕事で自分のうつ病についても客観的に理解することができました。
そういう意味では、直接的なリハビリ、回復に役立ったクライアントです。単価は1記事800字400円。
本当は300円だったのですが経験者ということで加点評価してもらいました。

しっかりと「業務委託契約」を結びます。

少し緊張しましたが、今ではこれがないクライアントのほうが不安です。

このクライアントの仕事は半年くらい続きましたが、なんとクライアント自体がうつ病で会社を辞めた(その後独立開業した)人で、途中でその人のうつ病が悪化して業務の継続ができなくなってしまい終了になりました。様々な人生があります。

アニメの記事

あにぶ リンドウ名義

元々、オタク気質でアニメが好きだったので、アニメを紹介するポータルサイトのライターに応募して採用していただきました。

ここはテスト記事を1つ書いてそれで評価していただきました。

単価は安いのですが、「ワードプレス」(HP作成ツール)による入稿、画像、動画、SNSの貼り付け、著作権等の知識(アニメだから無断転用はNG)など、ライターをしていくうえでの基礎的なスキルを身に付けることができました。また、私の名前(ペンネーム)を出した署名記事であり、責任感が生まれました。
また、文章の権利は私に帰属するため、「ライターとしての実績にしていいです」と編集長が言ってくれました。

報酬は安いけど、名前が出せて実績にできたというのは実はかなり大きかったです。

署名がないサイトのリンクを貼って「ここ私が書きました」と言っても何の証明にもならないですから、この仕事を取れたのがライターとしてやっていくにはかなり大きかったです。
ちなみに、このサイトは今でも書いています。

徐々に収入が増えていく

最初の報酬の振り込み金額は3000円ありませんでしたが、それが徐々に増えてきます。

当初は書き始めてすぐに横になる日もありましたが、そういう日は減っていきます。

ある程度のストレスはうつ病にいいみたいです。

このストレスは逃げられないものではなく、すぐに横になれば解消できますから、このやり方はよかったのだと思います。

そこからどういう仕事を取っていったのか、逐一書いていくと本ができてしまいますので要点だけ書いていきます。

ランサーズに登録

大手のクラウドソーシングサイト「ランサーズ」に登録して、そこ経由での仕事もやってみることにしました。

その場で入力するだけの「タスク」や高単価な案件もあり、空いている時間はランサーズをやっていくことにしました。

色々な仕事を通して知り合うクライアントさんも増えてきました。

自叙伝を書く

ランサーズの案件で「出版したい人」というものがあり、私はこれまでの流れ(このサイトに書いたようなこと)をまとめて企画で出すと、なんと採用されてしまいました。
100ページ超の本を書き上げて出版することができました。

ただ、電子出版&amazonでのオンデマンド印刷でしたので、本屋に並ぶことはなく、印税も10000円に満たなかったです。
ただ、本を出したのですからこれで「作家」という肩書もつけられるようになりました。

「婚活」はニッチで書ける人がいない分野

一番書いていて評価されたのが「婚活」分野の記事です。

実はうつ病になる前に、婚活をがんばっていたのですがうまくいかず、「経験は豊富だが成功したことがない」という情けないステータスを持っていました。

それを逆手にとって「モテない(病気の)男の下から目線婚活」と題してクライアントにPRしたところ評価されました。

  • モテない
  • うつ病である
  • サラリーマンを辞めた

という男性は、婚活では「最底辺」です。

そんな最底辺をさらけ出して「こんなダメな人間よりも皆さんのほうが上ですよね」と劣等感を取り除くようなテイストで記事を書きます。

婚活分野は健康食品や化粧品のように「誰でもそれなりに書ける」ものではなく「人を選ぶ」ので単価が比較的高く、同じ時間を書けるならばこちらの方が得だと思いました。
ライターとして、あるいは独立開業する場合は、競合する人が少ない分野でかつニーズがあるものができるといいのだな、と実感しました。

収入も上がっていき、10万円に迫る月も出てきました。

このまま上がっていけば最低限の生活ができそうです。

転職よりも独立開業でやってみよう

そういう感じでライターとしての収入がそれなりになってきたので、ハローワークで転職相談をします。

以前書いたように、障害者向けの相談窓口は左遷部署ですから、担当者から実のある回答はなかなか返ってきません。

ただ、障害者向け(特に精神障害者向け)の求人が少ないのは事実で、そうではない一般求人に応募する際にはやはり「空白期間」の説明が必要です、ということでした。

ひょっとするとライターで生活できるかも。でも身分保障がないから切られたら終わり…というせめぎあいが心の中で続きます。

主治医
週20時間くらいなら働けると思うけど(20時間=ハローワークで求職、転職活動できるライン)、それだとバイトだよね。今のやり方のほうが収入があるならそれでも・・・、最悪障害年金の申請という方法も・・

症状は回復して来ていましたが、以前の状態を100とすると60か70です。
それは一生戻らない(100には戻らない)かもしれないということでした。

①障害者雇用される

メリット

  • 勤務時間や休みなど配慮される

デメリット

  • 安すぎる、生活できないかも

②病気を伏せて転職

メリット

  • 人並みの給料をもらえる

デメリット

  • 労働負荷が人並み(残業たくさん)
  • うつ病再発の可能性
  • 病気について配慮されない
  • 配慮されないのだから病気が再発すれば解雇の可能性

どう考えても②のリスクが高すぎます。
かといって①では何とか生活できたとしてもそれで人生終わってしまうかも・・・。

ちょうどそのころ確定申告の時期になりました。
初年度の年収はわずか50万円ほど。

税務署に聞くと、「あなたは障害者なんだから障害者控除(27万円)があるから、基礎控除(38万円)と合わせれば(計65万)そもそも申告の義務がないよ」と言われました。

住民税についてもこの所得で障害者ならば非課税になるらしいです(障害者は所得125万円未満ならば住民税非課税)。

申告手続き自体が、まだまだ症状が出ている私にとっては大変なハードルでしたが、その年はしなくてもいいということなので助かりました。

色々なリスクを背負って転職するよりも、貯金があるうちにライターとして生活できるラインに持って行った方がいいのでは?と思うようになりました。

ライターならば家で通勤時間がいらずに好きな時間に書けます。うつの症状で朝起きられないときは夜やればいいわけですから(カウンセラーには早く寝ろと言われていますが)。

こうなったら特に意識的に転職活動せずに、自分のペースでやれるところまでやってみよう、と心に決めました。

もう1回職場でうつが重くなったら人生終了だと思いますし。

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婚活セミナー講師の仕事でさらに症状改善

婚活記事を書いていく中で、実際の結婚相談所の人と知り合いになり「経歴が面白そうだし、マイナスの部分(モテない、病気、障害者)を表に出すなら人前で話してみませんか?」という誘いがありました。

ライターではなく「セミナー講師」として図らずもデビューすることになりました。

前職でも、あるいは転職をしていても、こういう展開にはならなかったと思います。

テーマは「モテない男性の婚活」について。

自分の経歴や病気で婚活の価値がなくなったことなども合わせてお話ししました。

受講者は10名に満たなかったのですが、適宜質疑応答を挟んで、好評のうちに終了しました。

講師ですから少額ですが謝礼をいただきました。

自分が話してお金をもらう、しかも職場ではなく完全フリーでもらう、これはうつ病でどん底に落ちた自分にとっては非常に大きな糧になりました。

こんな自分の話をお金を払って聞いてくれる人がいて、お金を払うクライアントがいるんです!

職場で「せいぜい自殺しないように」と嘲笑された私にとっては、こんなにありがたい薬はないです。

このセミナーを機に、うつ病の症状は結構改善していきます。

朝起きられないことも少なくなり、日中もそれほど横にならずに済むようになりました。

主治医からは

主治医
まだ障害者のラインではあるけど、今と比較すると、ここに来た時(転院した時)は精神障害2級認定されるかも、のレベルだったよ。よくここまで回復しました

と言われました。

もっと良くなるのかはわからず、もちろん元の100に完全に戻ることはないでしょう、とうつ病の現実も指摘されました。

うつ病でもフリーランスで独立開業できた人間の今後の人生

私にはうつ病の回復過程で3つの選択肢がありました。

  1. 非障害者枠で転職
  2. 障害者枠で転職
  3. 自営業として独立開業

①~③のリスクを比較して、一番リスクが低そうだったから③を選びましたが、これが正解だったかはまだわかりません。

自営業は雇用ではないので、稼げなければそれがすべて自分に跳ね返ってしまいます。

ひょっとすると、ハローワークの窓口に切れ者の担当者がいたら、あるいは稼げる婚活分野を掘り当てていなかったら、転職の道を選んでいたかもしれません。

「職場でひどい目に遭ったのだから転職ではなく自分で独立開業すべき」とは毛頭申しません。
うつ病、あるいは精神疾患の症状は効く薬が人によって違うことから分かるように様々で、もっともいい、あるいはマシな選択肢は人によって違うからです。

今回の全五回にわたる寄稿記事は、あくまで一うつ病患者がどう立て直したかの例であり、皆さんには皆さんのストーリーがあるからです。

その中で転職が一番いい選択肢という人もいると思います。
私の地域のハローワークはダメダメでしたが、そうでない地域もあるはずです。
また、このサイトに掲載されている転職エージェントの中には、そういう訳ありの方の転職を得意としているところもあると思います。

相談の段階では病気のことを伏せずに正直に話した方が、戦略や選択肢が広がると思います。
そのまま求人先に全て伝えるわけではないですから。

というわけで一連の連載を読んでいただきありがとうございました。

転職になるのかそれ以外になるのか、皆さまのご多幸を祈念いたします。

うつ病でもフリーランスで独立開業! まとめ

  • 最初は大変だったライターの仕事も徐々にできるようになる
  • 適度は負荷(いつでも逃げられる)が回復にとってはいいのかもしれない
  • 自分のマイナス面を逆にアピール材料にした
  • 誰でも書けないニッチな分野に強いと楽になる
  • 転職にはメリット、デメリットがあり特にうつ病の場合は大局的な判断が必要
  • 主治医には全部相談して本音を聞く
  • 転職した方がいい場合もありケースバイケース
  • とにかくうつ病を悪化、再発させないように慎重に慎重を期す
  • 独立開業が正しい答えとは限らない