昇給時期が多いのはいつから?昇給制度の種類やタイミングを知る方法も解説

みなさんは、企業選びやモチベーションの原点をどこに置いていますか?遣り甲斐や企業のブランド、自分の夢見ていた職業など、さまざまなものがあると思います。もちろんこれらは大切ですが、昇給については気になりますよね。

そこでこの記事では、昇給時期が多いのはいつからなのか、昇給制度の種類、昇給されるタイミング、有名企業の昇給額や昇給率ランキングなどを解説します。ぜひ参考にしてみてください。

一般的な昇給の時期は4月が最多

昇給の時期を企業と公務員に分けて図解

昇給の時期として最も多いのが、「4月」
新年度から給与の号(ランク)が変わったり、昇進や昇格があったりと、人事関連で動きがあるためです。
もちろん、これら以外にも昇給のタイミングはあります。
例えば資格取得の場合は、取得した次の月から手当がつく場合がありますからね。
その他、転勤による仕事内容やポジションの変化によっても昇給することがあります。
これらは必ずしも4月ではなく、随時昇給すると考えて良いでしょう。

昇給制度には主に7つの種類がある

  1. 定期昇給
  2. ベースアップ
  3. 自動昇給
  4. 考課昇給
  5. 臨時昇給
  6. 普通昇給
  7. 特別昇給

定期昇給

定期昇給は、毎年決まった時期に行われる昇給制度です。一般的には年1回(多くの場合4月)または年2回(4月と10月)実施され、勤続年数や年齢に応じて給与が増加します。

ベースアップ

ベースアップ(ベア)は、個々の勤続年数や成績に関係なく、全従業員の基本給を一律に引き上げる制度です。物価上昇や企業業績の向上に伴い、給与水準全体を底上げする目的で行われます。

自動昇給

自動昇給は、年齢や勤続年数などの客観的な基準に基づき、能力や業績に関係なく、全従業員が一律に昇給する制度です。

考課昇給

考課昇給(査定昇給)は、従業員の業績や勤務態度の評価結果に基づいて行われる昇給です。定期昇給と同時に実施される場合もあり、評価によって昇給額が変動します。

臨時昇給

臨時昇給は、特定の時期を定めず、企業の業績好調時などに臨時で行われる昇給です。全従業員を対象に一律で行われる場合や、特定の従業員に対して行われる場合があります。

普通昇給

普通昇給は、従業員の技能や職務遂行能力の向上に伴い行われる昇給です。一般的な理由に基づく昇給であり、特別な功績がない場合でも実施されます。

特別昇給

特別昇給は、特別な功労や実績を上げた従業員に対して行われる昇給です。昇進や昇格と同時に実施されることが多く、通常の昇給よりも大きな給与増加が期待できます。

昇給のパターンその1:勤続年数

昇給率や昇給額のランキングを紹介するまえに、昇給のルールやパターンについて紹介していきますね。
従来の日本企業で最も多かったのが、「勤続年数」による昇給です。
これは戦後の日本企業が、「ゆりかごから墓場まで」と呼ばれる終身雇用制度を採用していたことと深い関係があります。
簡単にいえば、能力や成果で昇給に大きな差をつけず、長く務めた人が昇給していくシステムです。
「ただ長くいるだけで給料が高いなんてずるい」と感じるかもしれませんが、実は良くできた制度。
なぜなら、能力や成果は時に主観が混じりますが、勤続年数は絶対的な数字で誰にでも平等だからです。
また、入社間もない時期は給料が安くとも、いずれは昇給してそのレベルに達することができ、非常に安定しています。
昇給率についてもほぼ一定で、自分が何歳でどのくらいの年収になるのかが容易に想像できるでしょう。
そのため、人生設計がしやすいのです。

昇給のパターンその2:資格取得

次にメジャーな昇給ルールとして、「資格取得」があります。
業務上推奨されている資格や、かならず有資格者が必要な資格については、「〇〇手当」といった形で給与を増やしています。
つまり、資格取得によって手当のぶんだけ昇給し、毎月の手取り額が増えるのです。
実際に筆者もIT業界に在籍していたとき、情報系の公的資格や(基本情報情報処理技術者)や民間ベンダーの資格をとることで、昇給するルールがありました。
手当額は資格によってまちまちですが、毎月3万円や5万円昇給する資格もあり、取得を目指して頑張った記憶があります。

昇給のパターンその3:昇進・昇格

これも良くあるパターンですよね。昇進や昇格があれば、給与テーブルが変わることで昇給する可能性が高くなります。
むしろ、責任ばかり重くなって昇給額がゼロであれば、誰も仕事を頑張ろうとしなくなるでしょう。
ただし、近年はこの昇進や昇格にも注意が必要です。
「名ばかり管理職」の異名の通り、給与に見合わない責任を背負わされる仕事も増えているからです。
また、昇進や昇格によって基本給+手当の総額は増えるものの、残業代がつかなくなるケースも考えられます。
実際に筆者が在籍していた企業では、特定の職位(係長級から課長級)に昇進すると、前年よりも手取りが減る場合がありました。
昇進や昇格をする社員は、普段から仕事を頑張るわけです。
その分、残業代も多く支給されています。
年収の2割から3割が残業代という話も珍しくありません。
この残業代がつかなくなることにより、給与テーブル上では昇給していても、手取りが減ってしまうのです。

昇給のパターンその4:就職2年目

なぜ2年目?と疑問に感じる方がいると思いますが、これは多くの企業で実施している昇給タイミングです。
これは、住民税と深い関係があります。
新卒で入社した場合、1年目の給料からは住民税の天引きがありません。
しかし2年目からは住民税が差し引かれます。
前年に所得が発生しているからですね。
この住民税分を補いつつ、さらにプラスαとするため、2年目に昇給する企業が多いのです。
所得が増えればその分だけ天引きされる金額も増えますから、実質的なマイナスを防ぐための対策といえます。

どの企業でも必ず昇給するの?

こればかりは実際に入社してみないことにはわからない面もありますが、昇給しない企業もあることは確かです。
毎年決まったタイミングでの昇給を「定期昇給」と呼びますが、定期昇給の仕組み自体がないのです。
企業は「就業規則」を作成していますが、その中に規定されていなければ、昇給はないと考えるべきでしょう。
また、昇給に関する記載があっても、「昇給する場合は4月から」「給与改定を行う場合がある」などという記載にも、あまり期待できません。
さらに、職種によっても違いがあります。
営業職や幹部職は成果によって昇給する一方、事務職や経理職は滅多に昇給しないという企業もあるのです。
このあたりは企業の考え方ですので一概に言えませんが、昇給は必ずするものではないということを肝に銘じておきましょう。

会社の昇給時期を知る方法

会社の昇給時期を把握することは、キャリアプランや生活設計を立てる上で非常に重要です。以下に、昇給時期を知るための具体的な方法を詳しくご紹介します。​

  • 就業規則や給与規程の確認
  • 人事部門への直接問い合わせ
  • 労働組合や従業員代表との相談
  • 同僚や先輩社員からの情報収集
  • 内部ポータルサイトや社内掲示板の確認
  • 労働契約書の再確認
  • 社内研修や説明会への参加

就業規則や給与規程の確認

多くの企業では、昇給に関する事項を就業規則や給与規程に明記しています。​これらの文書には、昇給のタイミングや評価基準、昇給額の決定方法などが詳細に記載されていることが一般的です。​これらの規程は、従業員が自由に閲覧できるように整備されている場合が多いため、まずは社内のイントラネットや人事部門を通じて確認しましょう。​

人事部門への直接問い合わせ

昇給に関する最新の情報や詳細を知りたい場合、人事部門に直接問い合わせるのが効果的です。​特に、会社が新しい評価制度を導入した場合や、業績に応じて昇給時期が変動する場合など、規程に記載されていない最新の情報を得ることができます。​質問する際は、具体的な内容を明確にし、礼儀正しく尋ねることが大切です。​

労働組合や従業員代表との相談

労働組合が存在する企業では、昇給に関する交渉や情報提供を行っている場合があります。​組合の定期的な会合やニュースレターなどを通じて、昇給時期や関連する情報を収集することが可能です。​また、従業員代表がいる場合も、同様に情報を共有していることがありますので、積極的にコミュニケーションを取ると良いでしょう。​

同僚や先輩社員からの情報収集

同じ部署やチームの同僚、特に長年勤務している先輩社員から、過去の昇給時期やプロセスについての情報を得ることができます。​ただし、個々の経験や主観が含まれるため、参考程度に留め、公式な情報源と併せて確認することが重要です。​

内部ポータルサイトや社内掲示板の確認

多くの企業では、社内のポータルサイトや掲示板を通じて、昇給に関する通知やお知らせを行っています。​定期的にこれらの情報源をチェックすることで、最新の昇給時期や関連する手続きについて把握することができます。​

労働契約書の再確認

入社時に交わした労働契約書や雇用条件通知書にも、昇給に関する条項が含まれている場合があります。​これらの書類を再度確認することで、基本的な昇給の取り決めや条件を理解することができます。​

社内研修や説明会への参加

企業によっては、昇給や評価制度に関する研修や説明会を実施している場合があります。​これらの機会を利用して、直接的な情報を得るとともに、不明点を質問することができます。​

注意点

昇給時期や制度は、企業の業績や経営方針、外部環境の変化などにより変更される可能性があります。​そのため、定期的に最新の情報を確認し、必要に応じて人事部門や労働組合に問い合わせることが推奨されます。​また、昇給は個々の業績や評価に基づいて決定される場合が多いため、日頃から自身の業務成果やスキル向上に努めることも重要です。​

以上の方法を参考に、所属する会社の昇給時期や関連する情報を正確に把握し、キャリアプランや生活設計に役立ててください。

昇給額や昇給率が高い企業ランキング!

企業と公務員の平均昇給額

では実際に、昇給額や昇給率のランキングを見ていきましょう。

就職四季報から初任給と30歳時点の給与を比較し、昇給率が高い企業順にランキングしています。

1位メタルワン昇給率233%

鉄鋼系の総合商社であるメタルワンは、初任給から233%の昇給率を叩き出し、堂々の1位です。
やはり商社系は強いですね。

2位商船三井昇給率220%

海運業大手の商船三井も昇給率220%と、2倍以上の数字を誇っています。さすが東証一部上場で100年の歴史がある企業ですね。

3位ヤマト運輸昇給率210%

宅配事業大手のヤマト運輸は、黒猫のマークでおなじみの大手企業。こちらも2倍を超える昇給率です。

3位以下の順位は以下の通りです。

4位旭硝子(世界最大のガラスメーカー)昇給率195%
5位日本郵船(日本3大海運会社のひとつ)昇給率194%
6位LEOC(給食事業大手)昇給率192%
7位三越伊勢丹(大手百貨店)昇給率191%
8位岡谷鋼機(鉄鋼・機械系商社)昇給率191%
9位セブンイレブンジャパン(コンビニ大手)昇給率187%
10位長瀬産業(化学系専門商社)昇給率187%

業界の大手や商社は昇給率が高い傾向にあるようですね。
30歳といえば企業の中核となる年齢ですから、それに見合った給料を出す企業が多くなります。

昇給額や昇給率が低い企業ランキングは?

企業や公務員の平均昇給額

では反対に昇給が少ない企業をランキングしてみましょう。
実は昇給率のワーストを計算するのは非常に難しいのですが、今回は30歳時の推定平均年収から推測した
ランキングを掲載します。
初任給データが公開されていない企業もあるため、あくまでも目安と考えてください。

1位カワサキ推定昇給率0%(30歳時年収197万円)
1位太平洋興発推定昇給率0から3%(30歳時年収197万円)
3位キャリアバンク推定昇給率0から4%(30歳時年収207万円)
4位トスネット推定昇給率0から4%(30歳時年収212万円)
4位やまねメディカル推定昇給率0から4%(30歳時年収212万円)
6位光ハイツ・ヴェラス推定昇給率1から5%(30歳時年収221万円)
7位ショクブン推定昇給率1から5%(30歳時年収222万円)
7位日本管財推定昇給率1から5%(30歳時年収222万円)
9位日本製麻推定昇給率1から5%(30歳時年収225万円)
9位日本パレットプール推定昇給率1から5%(30歳時年収225万円)

どの企業もほとんど昇給していないと推定される数字となりました。
新卒時の給与から2倍以上に跳ね上がる企業もあれば、ほとんど昇給しない企業もあるため、30歳時の収入は大差がついてしまいますね。

まとめ

「お金だけが働く理由ではない」と感じる方もいるでしょう。
しかし、労働は10年15年と続いていくものです。
経験を積めば積むほど、より多くの収入を得たいと思うのは、当然のことともいえます。
就職、転職時には、ぜひ昇給額や昇給率にも注目したいところです。
もちろん、お金以上の働き甲斐があれば、この限りではありません。