オヤカクとは?企業側の本音と就活側の体験談を紹介

就活生の皆様なら「オヤカク」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

オヤカクっていったい何?
簡単に説明すると、企業側が内定相手の「親」に内定を了承するかどうかを「確認」するということです。

オヤカクは就職内定までの道のりにおいて、今や必須のプロセスとなりつつあります。

ではなぜオヤカクが必須となりつつあるのでしょうか。

就職活動において決して後手にできなくなってきたオヤカクについて、今回は意味の説明だけに留まらず、企業側の本音や実際に起きたオヤカクにまつわるトラブル体験談を交えて詳しく解説致します。
これを読んで、「オヤカク」についてきちんと知りトラブルを未然に防ぎましょう!

オヤカクとは?

オヤカクについて改めてその意味から確認しておきましょう。

オヤカクとは企業が内定を出した学生に対し、「親」が入社を了承してくれるかを「確認」する、あるいは企業が直接「親」に「確認」する行為の略称として生まれた俗語的な言葉です。

オヤカクとは、我が子の就活に干渉する親たちがいるために、内定を出す企業側が、学生の親に連絡を入れて入社の確認をとることをいう。親の意思を確認するので、「オヤカク」。片一方の親が承諾しても、もう一方が反対して内定辞退を申し入れてくるケースがあるので、両親に確認することが重要だという。

ではなぜ企業は「オヤカク」をするようになったかということですが、親に相談しなければ学生が内定承諾を決断できないケースや学生自身は内定を承諾したにも関わらず、親が反対したために内定辞退となってしまったケースが無視できないほど増えてきたからです。

学生にとっても内定獲得までの道のりは大変ですが、採用する企業にとっても一人の学生の内定を出すまでには多大な労力とコスト、時間を使っています。

そこで内定辞退という状況をできる限り回避すべく、対策として近年取り組まれるようになったのが「オヤカク」なのです。

ひええ~。内定を出すのに親の承諾がいるなんて、ビックリだね!

オヤカクに対する企業側の本音とは?


ではオヤカクを行なうことに対して、企業側はどのように考えているのでしょうか。

当サイト編集部においてオヤカクを行なっている企業の人事担当者へ本音を伺ってたところ、匿名を条件につぎのような本音を語ってくれました。

大手不動産系企業人事担当者


「オヤカクなどしたくてやっている訳ではないし、他社もおそらくそうだろう。
学生と言えども年齢的に成人した大人を対象としており、内定を下すまでのプロセスで本人の意志や入社意欲を何度も確認している。
それがなぜ親の反対だけでこうも簡単にひっくり返ってしまうのか、やりきれない思いがある。
しかし、親の意向で内定辞退が現実に起きている以上、企業として現実と向き合わなければならないから、仕方なくオヤカクをやっている。
少子化が進む中で、今後もオヤカクは続けざるを得ないだろう。」

大手金融系企業人事担当者


「オヤカクが良いことか悪いことかと問われたら、明らかに悪い。
本来社会人になるということは、自立した者として自分の言動に責任を負うことであるはずだ。
その社会人としてスタートを切るための就職先の決定になぜ親の介入を許すのか、人事だからではなく自分も子を持つ親として理解に苦しんでいる。
ならばそうした学生を採用しなければ良いと言われるかも知れないが、そうした学生も受け入れなければ新卒を確保できない時代になっている。
ただ、このままオヤカクを続けていれば、その内入社後の処遇にも親が介入してくるようになる可能性もあり、末恐ろしい。」

また、ある中堅企業のオーナーが大変苦しい胸の内を明かしてくれました。

中堅の製造メーカー代表者


「わが社は内定者の親に対し手紙を添えて贈り物をするし、内定者の食事会にも学生だけでなく親も招くことにしている。
気を遣い過ぎといった批判があることも承知している。ではどうすれば良いのか。
オヤカクせずに内定を辞退されない方法があるならどうか教えて欲しい。
私達のような中小企業は親に嫌われてしまえば、学生は獲得できない。
新卒を大量に採用できる大手なら数人程度辞退者が出ても影響は少ないかもしれないが、わが社にとっては一人でも辞退者が出れば大きなダメージになってしまう。
過剰と批判されても、オヤカクで辞退者が減るならやらざるを得ないことを理解してほしい。」

「良いことだと思っていないがやらざるを得ない」・・・こうした思いがオヤカクを行なっている企業の共通した本音として伺えます。

それにしても、親はなぜ自分の子供の就職先に介入するようになってしまったんだろう…。

内定決定に介入する理由・内定先は就活生の親が入れたいと思う企業!?


企業側がオヤカクを強いられるほど親が子供の就職先決定に介入するようになったのは、近年です。

その理由として主に指摘されるのが「少子化」です。

少子化によって親子の密着度が増し、親離れできない子供と子供離れできない親が増加したことで就職先に介入する親が増えてきたという見方ですが、実はそれだけではありません。

次のような社会的要因が重なったことも、親が我が子の就職先に介入するようになった大きな理由です。

大企業神話の崩壊

護送船団方式といわれた日本経済の仕組みが変わり、特にリーマンショック以降大企業であっても勝ち組みと負け組みに分かれてしまう時代となりました。

そのため、上場企業や大企業に入社すれば勝ち組で一生安泰といった安心感が特に親世代で崩れています

ブラック企業問題

ワタミ問題等により、大企業であってもブラック企業が存在したことが明るみになったことが、親側の企業に対する警戒感や疑心暗鬼を招いてしまったこと。

現在の親世代は通信革命が本格化する時代に社会人となっており、例えば伝統を誇る大手百貨店が苦境に陥る中、AMAZONや楽天といった新興ECサイトが急激に台頭してきた状況をよく知る世代です。

そのため、社会経験がない我が子が自分の見識や判断だけでワタミのような会社を選ぶことに人一倍不安をおぼえてしまうことが、企業へオヤカクを強いるぐらいの介入パワーとなって表れるようになったのです。

オヤカクが必要な親が我が子の入社先にOKを出す企業とは?

じゃあオヤカクが必要な親は、どのような企業への就職であればOKを出すんだろう。
この点で、例えば人気就職企業ランキングの上位に入る企業ならOKを出すといった指摘が比較的多く見られますが、正確な見方とは言えません。

確かに親が内定に反対する事例の中には、見栄やメンツから人気企業以外の就職を認めなかったケースもあります。

が、そうした人気企業はそもそも大変狭き門であり、反対したところで入社できる訳でもありませんので事例としては意外に限られます。

また、近年生じているオヤカクは大手企業から中小企業にまで幅広く及んでおり、逆に言えば中小企業であってもオヤカクすることで学生を確保できている事例があり単純なブランド企業志向論だけではこの点の説明がつきません。

つまりオヤカクが必要な親が我が子の入社を認めるのは、ブランド企業も含めてですが、自分が得た情報や自分なりの視点で「安心できる企業」と言えます。

近年の企業説明会では親子で参加したり、場合によっては親だけが参加して熱心にメモを取ったりする光景がよく見られるようになってきたのも、例えばブラック企業ではないか、将来性に問題はないか等、自分なりに安心できる企業か見極めたいという親側の強い意向があればこその現象なのです。

オヤカクで起きたトラブル・実際に内定を辞退した就活生の体験談

オヤカクは企業だけに強いられている対応や問題かと言うと、そうではありません。

就職活動を行っている学生諸氏にとっても、大きな問題となる場合があります。

首都圏の某有名私大理工学部出身のA君(一人暮らし)の事例を紹介しますと、A君は「オヤカク」について理解していましたが、自分の親は自分のことを信頼しており、就職先決定についても自分の意志を尊重してくれるものだと思い込んでいました。

実際、就活中は何ら口出しをしてこなかったそうです。

A君は大手通信会社の内定を得て、10月1日に行なわれる内定式参加後に通信会社へ就職するつもりであることを親へ報告しました。

すると今まで一度も就職について意見を言ってこなかった両親が豹変し、猛烈に入社へ反対したのです。

両親はA君が通信会社を受けていることは知っていましたの、自分達で徹底的に調べていたそうです。

その結果両親は通信会社が膨大な借入金を抱えており財務状況に不安があることや、大手の職場環境ではエンジニアとして技術を習得できない等数々の理由をあげ、内定を辞退するようA君を説得したそうです。

内々定の段階ではなく内定式を終えた段階だったため、A君は相当悩んだそうですが、両親の賛成を得られないまま無理して勤めたら親子関係がぎくしゃくしてしまうと考え、泣く泣く内定辞退を決断します。

内定辞退後、A君は急遽就職支援を行なっているエージェントの力を借り、成長著しい中堅IT企業へと就職を果たしましたが、この結果に両親は納得したそうです。

しかしA君は入社日当日起床出来なくなり、医師の診察を受けたところ「うつ病」との診断を受け、その会社への入社も諦めなければならなくなってしまいました。

その後A君は既卒状態でしばらくうつ病の治療に専念し、現在は契約社員として働いていますが、オヤカクを慎重に行なわなかったことを現在も悔やんでいます。

次に関西の有名女子大出身のBさんについては、体験談の手記をそのまま公開させて頂きます。
就活生の皆様はA君の事例と共にぜひ参考にしてください。

(B女子大出身・Bさんの体験談)

「私の母は子育てに大変熱心なタイプで節目の行事では欠かさず参加する方でした。
大学選びもB女子大が良いと決めたのは私の母です。私も母がすすめてくれる大学ならと迷わず進学を決めました。
しかし、就職先となるとさすがに母も会社のことまではわからないと思いましたし、
母が心配しないよう就活状況や受けた会社については全て詳しく報告をしていましたので大丈夫だと思っていました。
就活は決して順調だったとは言えませんが、どうにか第二志望だった企業から内定を得ることができましたのでその結果を母に報告しました。
心配性の母ですから案の上「その会社大丈夫なの?良く調べたの?」と言われましたが、その場では納得してくれました。
ところが・・・・
まさかオヤカクがこんな形で災いになるとは思っていませんでした。内定を得てからしばらくして母からこのようなことを言われました。
雇用契約では親が連帯保証人になることを求められる。ならば内定段階で親にもちゃんと確認するのが筋だと。
しかもどこで調べたか、母は「最近の企業はオヤカクを行うものだ」と言い張り、しまいには「そんな非常識な会社には行くな」と言い出したのです。
その後母と何度も話し合いを行いましたが、母の意見は頑なであり、父にも相談しましたが父も母の意見を支持するといい、一時期両親とは険悪な雰囲気にもなってしまいましたね。
しかし、会社としても保証人は親が一番だと言っていましたので、このままでは保証人になってもらうことが難しく、やむを得ず内定先を辞退することにしました。
その後、再び就活を行ないましたが上手くゆかず、現在は派遣会社に所属し、紹介予定派遣制度で正社員になることを目指しています。
しかし、またオヤカク問題が浮上してきて就職に反対されるのではという不安がつきまとっています。
私の経験からですが、就活に励んでいる後輩の皆さんは就職先選びにおいてオヤカクがあるかどうかもチェックしておいた方が良いかも知れません。
オヤカクがなかったために内定を辞退するはめになった私のようなケースもあるからです。」

オヤカクによるトラブルを避けるために

近年増加している「オヤカク」。親が子供の就職に介入することは、子供の将来やキャリアのことを真剣に考えればこそのこと。人生経験の豊富な親のアドバイスによって避けられることも多々あるでしょう。話し合いの結果納得して辞退するならいいのですが、その場合でもなるべく内定前に決めておきたいですね。
就職するのは本人なのですから、本人の納得なしに内定が覆ることはなるべく避けたいものです。
親の反対によって内定が覆ってしまうトラブルを防ぐには、就活中から親とのコミュニケーションを増やし慎重に進めることがポイントです。