マタハラ、いわゆるマタニティハラスメントにあった結果、流産してしまった猫野きなこです。
妊娠すると体にいろんな変化が起き、思うように働けなくなってしまいます。しかし、会社では出産直前まで今までと同じように働くことを強制されます。
会社に産休・育休制度があっても、産前6週間という大きなお腹を抱えた状態で周りに迷惑をかけずに仕事を続けなければならず、それができない人は辞める選択肢しかないのが現実なのです。
今回は妊娠してつわりが始まった時の報告のしづらさ、つわりでも有給を使わせてもらえなかったマタハラ体験談を紹介します。
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安定期前のつわりは周りに報告できない
つわりが起こる時期は妊娠初期の4~6週頃(2ヶ月)といわれています。
しかし、流産のリスクが低くなる安定期は16週目(5ヶ月)からになるのでつわりで体調が悪くても3ヶ月耐え抜かないと周りに報告できない状態になってしまうのです。
私が経験したつわりは4週目から始まり、吐き気と眠気がひどくて妊娠前と同じように働くのは難しい状態でした。トイレに駆け込んだり会議中に居眠りをしてしまったりして、上司には『体調管理や自己管理ができていない』と叱られました。
眠りづわりはどんなにたくさん眠っても、毎日眠くてたまらず対策などできません。
仕事中に車で信号待ちをしていたら一瞬寝てしまったことがあり、後ろからのクラクションで目が覚めた時は何が起こったかわからずゾッとしました。アクセルを踏んだまま寝ていたので助かりましたが、アクセルを緩めた瞬間に大事故を起こすところでした。
このままでは自分だけではなく、周りにも迷惑をかける事故を起こしかねないと思い、眠りづわりがなくなるまで有給休暇を取ろうと決心しました。
つわりは甘え?有給を取らせないマタハラ
私は一番上の上司である所長に「相談がある」と言って呼び出しました。
現在妊娠していて『眠りづわり』という症状が起こっているため居眠り運転をしてしまったことを話し、つわりが終わるまでの期間だけ有給休暇を使って休ませてほしいとお願いしました。
すると所長は「その間契約はどうするんだ?つわりはいつ終わるんだ?」と平然と私にたずねてきたのです。
そして「他の女性は妊娠してもちゃんと売上を上げて働いていた。眠りづわりもちゃんと前日に寝て体調管理すればいいだろう。お前はただ甘えているだけだ」と産休を取得した女性を引き合いに出して『つわりなんて甘え』と言われました。
所長は「有給とは会社に迷惑をかけない範囲で取るものだ。つわりの間ずっと休んで売上は同じように上げられるのか?」と私を責め立てました。
仕事を休んで同じ売上なんて上げられるはずがありません。私が「同じ売上を上げるのは無理です…」と答えると所長は「じゃあどうするんだ?」と有無を言わせない態度で私にたずねてきました。
私はこんなパワハラ上司に相談する事自体が間違いだったと後悔し、「今まで通り働きます」と所長が待ち望む回答を答えるしかありませんでした。
初めての妊娠でしたし、一人でつわりと戦った末に働き続けるのは無理だと判断して勇気を振り絞って相談したのに…と精神的にもボロボロになってしまいました。
つわりが重い人は産休が取得できない現実
その後もつわりはひどくなる一方で、産休を取った経験がある先輩に妊娠していることを気づかれてしまいました。『安定期になったら会社の人に報告』なんて理想論はつわりがほとんど起こらない人にしかできない事ですね。
妊娠を報告した後は女性や子供のいる上司は私の体を気づかってくれて、重いものを運んでくれたり仕事を変わってくれてすごくありがたかったです。
眠りづわりは相変わらずで、眠くなったら広い路肩を見つけて車を停めて仮眠することでなんとか仕事を続けていました。
「仕事を辞めたほうがいいのかもしれない」と考えたこともありますが、他の女性は産休まで働いたという実績があったので「自分にもできるはずだ」と頭の中で言い聞かせました。
私が働いていた会社は『女性が輝ける職場』というキャッチコピーで女性を積極的に採用していて、産休にたどり着きさえすれば産休・育休制度を取ることができましたし短時間勤務も選べました。
産休まで働かないと、これまでこの会社で仕事を続けていたキャリアや努力は泡のように消えて報われません。夫は「しんどかったら仕事はいつ辞めてもいい」とは言ってくれましたが自分が好きな仕事でもあったので、産休までは何とかくらいついて頑張ろうと思いました。
しかし、妊娠中の体調が万全じゃない状態で、今までと同じような売り上げを上げるのは困難です。妊娠は体調だけではなく、ホルモンバランスの崩れからメンタルにも影響が出ます。
パワハラ上司は私が妊娠中だからといって、悪い成績でも許すということはありませんでした。「売上が少ない」とストレスをかけられ続け、パワハラ上司にも子供が二人いるはずなのに「こいつは鬼か」と思いました。
妊娠初期の女性にとって産前6週目は遠すぎます。育休を獲得できたのはつわりが軽く成績も残せるスーパーマンのような女性ばかりで、そうじゃない女性は退職していただけだったのでしょう。
少子化が社会問題といわれていますが、つわりが重い人は産休すら取得できないのが現実なのです。
つわりで働き続けたら流産してしまった
つわりでも働くのが当たり前と言う風潮がありますが、実際つわりが重い私から言わせると『つわり中でも普通に働かないといけない社会』自体がおかしいです。
ある日病院の定期検診に行ったら赤ちゃんの心臓が止まっていました。稽留流産でした。
夢だったらどんなにいいかと思いましたが現実でした。稽留流産はそのままにしておくと大量出血や感染症を起こす危険があるため手術が必要です。
今後の妊娠のために最低でも3日、できれば1週間は会社を休んで安静にしたほうがいいと先生に言われ、「手術ならさすがに休ませてもらえるのかな」と冷静に考える自分がいました。
つわりでは休ませてくれなかったのに、パワハラ上司に手術のことを話したらあっさり有給を取らせてくれました。赤ちゃんが死んだ後の手術なら休めるなんて皮肉ですね。
つわりで働けない状態になるのは赤ちゃんが「体を休めてほしい」と訴えているサインだったかもしれないのに無視して働き続けた結果なのかもしれません。
「流産は自然に起こるもので防ぐことができない」と言われていますが、仕事を続けたことによって起こってしまった流産は全くないと言えるのでしょうか。
流産が起こればどうしても女性は自分を責めてしまいます。妊娠したらすぐに仕事を休める制度を女性に作ってほしいです。
妊娠後すぐ産休が取れる制度にしてほしい
今思えばあの時所長に「じゃあこのまま働き続けて妊娠中の子供に何かあったら責任とってくれるんですか?」と言ってやればよかったです。
責任が取れるわけがないのはわかっていますが、「あの時休ませてもらっていれば流産することはなかったんじゃないか」と私はずっと後悔しています。パワハラ上司が私に言った言葉は、人の命を左右する一言だったのです。
有給とは法律によって取得できる権利であって、会社側が拒否することはできません。私は当時営業職だったのでチームでは仕事しておらず、休んでも会社の業務に支障はありませんでした。
つわりが軽い人や死ぬほど頑張った人しか産休が取れない社会だから「出産を人生のリスク」と考える人が増え、少子化につながっているのではないでしょうか。
つわりは個人差がとても大きいので、妊娠したらつわりが始まる時期から産休が前倒しできる制度になってほしいです。
つわりでも周りに迷惑をかけず、産休直前まで今までと同じように働くのが当たり前の社会では女性が安心して子供を生むのは難しいでしょう。
「妊娠してすぐに産休で休まれたら他の働いている人はどうなるんだ」と考える人もいるかもしれません。
産休中に負担を強いられる人や会社にとっては、「本人が望んだことなのだから自分の責任の範囲で迷惑をかけないよう産んでほしい」と思うでしょうが、将来自分が年を取った時に社会を支えてくれるのは誰でしょうか?
目先の利益だけを求めて、出産の可能性をつぶしているのは社会にも責任があるのではないでしょうか。会社への迷惑は一時的なものですが、子育てはこれから産んだ人がずっと背負っていくものです。この先、少子化が進んで税金が増え、年金が貰えなくなっても誰も文句は言えませんね。
本当に少子化を解消したいのなら妊娠した女性が全員取得できる産休・育休制度を作るべきです。そして、妊娠した女性が働けなくなった穴を埋める仕事の負担を同じ職場で働く人まかせにしない制度も必要です。
つわりの重い女性が仕事を休みにくく、辞めるしか解決方法のない社会の問題が解消されない限り、マタハラはどこにでも起こりえる問題だと思います。
\ この記事を書いた人 /
猫野きなこ
猫と暮らしながら趣味でお絵かきしてるライターです。
ブログでは過去の体験談を漫画に描いたり、ダイエットレシピを公開しています。
前回のパワハラ上司の記事は400ブクマ超えを達成しました。
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