「日本はブラック企業ばかり」というのは残念ながら事実ですが、ブラック企業批判によって、厚生労働省がようやく重い腰を上げて、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」という「ブラック企業リスト」(リストは毎月更新される「労働基準関係法令違反に係る公表事案 [PDF形式]」)の公開を始めました。
しかし、厚生労働省のHPからそれを探すのはなかなか大変ですし、チェックするにも限界があります。 ブラック企業は求人票などではわからず、巧妙にその本性を隠しているからです。 そこで、ブラック企業をスマホの位置情報などで示し、実際にどんな会社がブラックなのか、可視化できるツール、スマホアプリが登場しました。
近所を散歩中、通勤時間、プライベートな外出時間等に「ポケモンGO」ならぬ「ブラック企業GO」でブラック企業スポットを探すことができます。 ポケモンのようにボールを投げてブラック企業を捕獲、とはいきませんが、視覚的に体感的に、行動範囲にこれだけ法令違反のブラック企業があるのか、と背筋が寒くなるかもしれません。
暑い夏には最適の(!?)(今の時期はより寒く)、ブラック企業探しの旅に出てみませんか? ブラック企業を避ける習慣を、実際にマップツールを使いながらとして身につけてみましょう。
ブラック企業マップツールを知るメリットはこれ
- ブラック企業は日本全国に満遍なくあることがわかります
- 何をしてブラック認定を受けたのか一目瞭然です
- マップに載るブラック企業は一部であり、他にもあることを知ります
- マップにある企業の違反内容を調べることで効率的にブラック企業を見分けられるようになるかもしれません
目次【クリックして移動できます】
ブラック企業マップツールのおすすめ2選の紹介
現在、スマホでできるブラック企業マップツールは「ブラック企業マップ」と「ブラックアラート」の2種類です。 ここでは2つのツールの内容や使い方について説明します。
ブラック企業マップ
ブラック企業マップ スマホアプリではなく、ホームページなので、パソコン、スマホ両方で使うことができます(ホームページサイトです)。 ホームページに入ると、ドクロマークで埋め尽くされた日本地図が登場します。
日本全国、ブラック企業がないところはない、というのがすぐにわかるはずです。 ドクロマークは「労働基準関係法令違反に係る公表事案」(厚生労働省のブラック企業リスト)として公表されたところのみです。 実際はそんなの、氷山の一角なのでしょうが、リストに載っている企業のみ表示されます。 これをどんどん拡大していくと、みなさんのお住まいの地域や勤務先周辺が出てきます。さすがに、このくらい拡大すると、ドクロマークで埋め尽くされているということはありませんが、ブラック企業が各地に散らばっていることは視覚的に理解できるはずです。
ドクロマークをクリックすると、その会社名も表示されます。 厚生労働省のブラックリストから削除されれば、その企業のドクロマークもなくなります。
ブラックアラート
ブラックアラート こちらはスマホアプリになります。 現状iOS(iPhone)版のみですが、android版もそのうちリリースされるかもしれません。 内容は、「ブラック企業マップ」をブラッシュアップして、スマホの位置情報機能を使ったものになっています。
- 厚生労働省の「労働基準関係法令違反に係る公表事案」のデータを地図で閲覧 「ブラック企業マップ」と同じ機能ですね。
- 周辺のブラック企業をプッシュ通知で知らせる スマホの位置情報を利用して、現在地から一定の範囲内にブラック企業があればプッシュ通知で「ブラックアラート」をお知らせしてくれます。
歩いていて、いきなり「ブラック企業警報」が出るのはなかなか怖いものがあります。
- ブラック企業の詳細を閲覧 アプリからなぜブラック企業なのか、その詳細が閲覧できます。 また、twitterでの投稿にも対応しています。「ブラック企業発見!」などとツイートして友人と危機意識を共有してください。
ブラック企業マップツールの使い方【ブラック会社事前に調べる篇】
「ブラック企業マップ」、「ブラックアラート」どちらのツールでもいいので、実際に使ってみましょう。 家にいてももちろん使えます。 事前にブラック企業がどこにあるのか、そして、どんなことをしてブラック企業認定されたのか調べてみましょう。 もしかすると、応募したい企業がブラック企業認定されているかもしれません。
実際にブラック企業マップツールを使ってみた
今回は、シンプルに「ブラック企業マップ」を家のパソコンで使ってみることにします。 まず、ブラック企業マップのサイトにアクセスしてみましょう。 おお!日本中にドクロマークがあります。総ブラック! ドクロマークがないのは伊豆諸島と小笠原諸島くらいでしょうか(対馬にすらドクロマークがあります)。 筆者は東京都板橋区に住んでいるので、地図を拡大してみましょう。 ドクロマークで埋め尽くされていた地図ですが、板橋区付近がわかるように拡大すると、そこまででもありません。 ドクロマークは板橋区には2つあります。ブラック企業が2社あるということです。 そのうち、筆者の住まいに近いところを拡大してみます。 「赤塚公園通り」というところにドクロマークを発見しました。ここにブラック企業があるようです。 カーソルを合わせると社名が出てきました。 この会社がブラック企業のようですね。 社名をクリックすると画面が変わり、なぜブラック企業認定されたのかその理由が表示されます。
公表日 | H30.1.15 |
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違反法条 | 労働安全衛生法第21条,労働安全衛生規則第519条 |
事案概要 | 高さ約3mの物置屋根の端に手すり等を設けることなく労働者に作業を行わせたもの |
その他参考事項 | H30.1.15送検 |
なるほど、従業員が落下して危険な高さなのに、安全配慮をしなかったんですね。 ひょっとすると、事故が起きてけがをして、それで発覚したのかもしれません。 地図を見て、調べたい地域のブラック企業となぜブラックなのか、すぐにわかるのがとてもいいですね。 自治体によっては、ブラック企業リストに載っている会社が1社もないところもあります。 もちろん、このリストに載るのは氷山の一角ですが、あらかじめ多少なりともリスクを減らすことができますね。
事案概要から何でブラック認定されたか傾向がつかめるかも
ブラック認定された理由を見ることで、ブラック企業に共通する原因や働かせ方がわかるかもしれません。 同じようなことをしている会社は山のようにあります。 求人内容やHPを見る中で、ブラック企業を察知する「条件」や「項目」がわかるようになるかもしれません。 様々なブラック企業をツールで知り、ブラックに共通するものをご自身で理解すれば、就職や転職もうまくいくはずです。
「リーク」「告発」も参考に!
「ブラック企業マップ」では、ブラック認定された理由があるページの下にコメント欄があり、リークや匿名告発が掲載されています。 ブラック企業認定されたのに改善の意思がないような、あきれ返るブラック企業についてはここで晒されているかもしれません。 もちろん、そんな会社に応募してはだめです。
ブラック企業マップツールのおすすめの使い方【実際に訪れてみる篇】
地図とブラック企業の表示が連動しているため、特に迷わずに実際にブラック認定された会社まで行くこともできます。 「ブラックアラーム」ならば、その会社に近づくと警告音が出ます。 バイオハザード、漆黒の闇を前に何ができるのでしょうか!? 冷やかしをするのは得策ではありませんが、どういう社員が勤めているのか、外から伺うことができます。 やる気がない奴隷のような人達が多いのか、意外と(?)普通の人が多いのか、後者ならば、ブラック企業はみなさんのすぐそばにある「当たり前の存在」であることになります。怖いですね~。 ブラック認定されている会社に興味があり、もし、応募を考えているのであれば(止めた方がいいですよ)、実際に次のようなことを事前に外から伺い、確認してみましょう。
ブラック企業ならば残業地獄で、23時、24時は当たり前のはずです。 周りの会社と比較して、電気がついている割合はどうでしょうか?
求人票にある休日に電気がついていたり、窓が開いていたりすれば、休日出勤している人がいます。 求人上の休日が実際には出勤日だった、という会社は結構あるので確認してもいいでしょう。 最近では新卒の就活向けに、その会社が何時まで電気がついているかなどがSNSで共有され、深夜まで働いていると、即「ブラック企業」認定されるそうです。
ブラックリストの理由は労働環境だけではないことに注意!
ブラック企業マップツールでお近くのブラック企業の認定理由を見ていただくとわかりますが、ブラックな労働環境(残業が多い、サービス残業等)による認定(労働基準法違反)よりも、労働事故(高いところから従業員が落ちてけがをした)や、必要な届け出を出さなかったなど、労働安全衛生法などの違反で、認定されたところの方が多い傾向にあります。 必要な対策や届け出をしなかったわけで、ブラックには変わりありませんが、みなさんがイメージするブラック労働による認定は少なく、つまりそうした(ブラック労働を強いる)企業を摘発しにくいという現状があります。 けがや事故なら警察や救急車が来て違法行為が発覚しやすいのですが、サービス残業や過重労働はそうしたメスが入りにくいんです。 ですので、このマップのマークが絶対的なものではなく、本当に氷山の一角で、みなさんの近所の会社が超ブラックの可能性もあることを意識してください。
ブラック企業マップツールの使い方は動機づけとして最適!
- ブラック企業リスト掲載はブラック労働(過重労働、サービス残業等)だけではない
- 摘発される企業は氷山の一角である
この2点から、ブラック企業マップツールだけを信じればいいということではありません。 あくまで、国から認定された「公認ブラック企業」であり、こういう会社が全国にあるのだと危機感をもって就職活動、転職活動をしてください。
アラームが鳴ればドキッとしますよね、そういう会社に引っかからないために、マップのブラック企業の研究をして、似たような求人内容のブラック企業への応募も避けましょう。
ブラック企業マップツールを使って、「身近にあるブラック企業を知り(場合によっては見に行って)、アラームに驚き、危機感を持ち、優良企業を探す動機づけにする」というのが正しい使い方になるのでしょう。
ブラック企業マップツール2選と使い方まとめ
- ブラック企業マップツールは近所にある国からブラック企業認定された会社を可視化できる
- 「ブラック企業マップ」(ブラウザ)と「ブラックアラーム」(iPhoneアプリ)がある
- スマホの位置情報を使って近くにあるブラック企業を知らせるものがある
- 日本地図で見ると日本中がブラック企業に覆われているように見える
- 実際には各自治体に数社であるが、これは氷山の一角
- ツールからどんな違法行為をしてブラック認定を受けたのかがわかる
- 長時間労働やサービス残業等でブラック認定を受けた企業はそれほど多くない(つまり隠れている)
- ブラック企業はあちこちにあり注意しないといけないという動機づけになり、気が引き締まる
- 実際にマップ上にあるブラック企業近くに行き遠くから様子を眺めてみるのもいいかも(常識の範囲内で)