転職時の年末調整はどうなる?申告漏れや前職の給与計算も解説

転職時の年末調整はどうする?自分で確定申告するパターンは?

転職時の年末調整は、12月に給与をもらった会社がどこだったかで大きく変わるなど複雑です。

そこで当記事では転職した時の年末調整や確定申告について解説しつつ、1年に2回以上転職した場合や申告漏れ、退職金があった場合の年末調整についても紹介していきます。

転職時の年末調整はどうなる?

12月に給与をもらった会社で行うことになる

転職したんですけど、年末調整ってどうすればいいんでしたっけ…?

もしかして、自分で確定申告しなきゃダメですか?

年末調整は、12月に給与をもらった会社で行いますよ。

退職して翌年1月以降に転職したなら、自分で確定申告を行う必要がありますね。

例えば2019年の6月にA社を退職して、2019年の8月にB社へ転職し年末まで勤めた場合、12月の給与をもらったB社で年末調整ができます。

この場合、A社を退職した時にもらった源泉徴収票を転職先のB社に提出して、年末調整をしてもらうことになります。

「その年の年末調整は、12月に給料を受け取る会社で行う」と覚えておきましょう。

翌年1月以降に転職した場合は自分で確定申告する

一方、年末調整ができないのは、前職を辞めて翌年以降に転職したケースです。

例えば2019年の10月にA社を退職して、2020年の1月にB社へ転職したら、12月の給与をもらっていないA社の分の年末調整はできません。

この場合、A社を退職した際にもらった源泉徴収票を使い、退職した翌年に自分で確定申告する必要があります。

「仕事を辞めた年の12月に雇用されていないなら、自分で確定申告が必要」と覚えておきましょう。

確定申告の際は、失業保険の受取の有無や国民年金・国民健康保険の支払いの有無をしっかりと申告しましょう。

また、所得税の還付を受けられることもあるので、よく確認しておくと良いですよ。

転職時に年末調整ができるケースとできないケース

転職した時に年末調整ができるケース・できないケース

  • 年末調整できるケース…前職を辞めてから年内に転職
  • 年末調整できないケース…前職を辞めてから翌年以降に転職

年末調整できるかできないかは、仕事を辞めたその年のうちに転職したかどうかがポイントになります。

1年に2回以上転職した場合の確定申告はどうなる?

何回転職をしても12月に給料をもらった会社で年末調整をする

じゃあ、1年の内に2回以上転職した場合って、年末調整はどうなるんですか?
2回と言わず10回転職したとしても、年末調整は12月に給料を受け取る会社で行いますよ。

転職回数に限らず、12月時点で務めている会社に、前職の退職時にもらった源泉徴収票を提出して年末調整をしてもらいます。

12月に雇用されていなかった場合は自分で確定申告をする

1年に2回以上転職したけど、12月は雇用されていなかった場合は、冒頭で説明したのと同様に自分で確定申告を行う必要があります。

1年間の転職回数に関わらず、年末調整は12月時点で雇用されている会社で行うというわけです。

転職時に年末調整をしなかったらどうなる?

年末調整

結論から言うと、転職した会社で年末調整をしなかったとしても、あなたにペナルティが科されることはありません。

ただ、次のようなデメリットがあります。

  • 払い過ぎた所得税が戻ってこない
  • 翌年の住民税が高くなる
  • 自分で確定申告しなければいけない

それぞれを詳しくご説明します。

払い過ぎた所得税が戻ってこない

年末調整すると多くの人は収め過ぎた所得税が戻ってきます。これを還付金と言いますが、年末調整をしないと還付金があっても受け取れません。

そもそも所得税は毎月の給料から天引きされています。しかし、その金額は「概算」で、正確なものではありません。そこで、毎年12月に年末調整をして所得税の過不足があった場合に調整することになっています。

所得税が不足していたらその分を給料から徴収しますが、多くの場合は所得税を払い過ぎているので還付されます。還付金は12月または翌年1月の給料に上乗せされるので、ちょっとしたお小遣いになります。

他にも生命保険や個人年金保険、地震保険などの保険料を払っている場合は「生命保険料控除」「地震保険料控除」の対象になり、還付が受けられる可能性があります。

また、前職を退職した後、無職の期間に国民健康保険に加入していた人は「社会保険料控除」の対象となり、還付金が発生することがあります。

翌年の住民税が高くなる

翌年の住民税は所得税を元に計算されます。

年末調整をせずに高い所得税を収めたままにしていると、翌年の住民税が高くなる可能性があります。

自分で確定申告しなければいけない

なんらかの事情で転職先の会社で年末調整ができなかった場合は、自分で確定申告しなければなりません。

年末調整をすれば会社が計算をして所得税の過不足を計算してくれますが、確定申告は自分で計算して必要な書類を添えて税務署に提出する必要があります。

確定申告をしないと還付金が受け取れないだけでなく、もし今まで収めた所得税が不足している場合は納税をしなければなりません。納税をしないと追徴課税として「無申告加算税」などが課されることがあります。また、納税が遅くなると「延滞税」も加算されるので注意が必要です。

それを避けるためにも、期限内に会社に前職の源泉徴収票を提出して年末調整を受けるようにしましょう。

なお、医療費控除や初めて住宅ローン控除を受ける場合、副業で年間20万円以上の収入がある人は年末調整をしていても、確定申告が必要です。詳しくは国税庁のサイトでご確認ください。

参考:国税庁 税について調べる

転職時の年末調整に前職分の申告漏れがあったらどうなる?

年末調整_申告漏れ

転職した会社で年末調整をする際に、前職の申告漏れがあったときは自分で確定申告をしなければなりません。申告漏れとは、「前職の源泉徴収票を提出しない」ということです。

通常は転職先の会社で「前に勤めていた会社の源泉徴収票を出してください」と言われます。前の会社でもらった源泉徴収票を紛失した場合は、すぐに連絡して再発行してもらいましょう。

転職先の会社の年末調整の期日に間に合わない場合は、自分で確定申告をしなければなりません。確定申告は面倒なので、前職の会社に連絡して源泉徴収票を発行してもらう方がおすすめです。

転職時の年末調整に前職分の給与は合算する?

退職金_計算

転職先の年末調整では、前に勤めていた会社の給与も合算して計算されます。

計算は転職先の総務課などが行うので、自分は何もする必要はありません。

ただし、会社が指示した日までに前職の源泉徴収票を提出する必要があります。

また、その年の1月から12月に生命保険料や国民健康保険・国民年金保険料を払った場合は控除証明書も一緒に提出しましょう。

転職時の年末調整で退職金はどう扱われる?

年末調整と退職金

年末調整は給与が対象なので、退職金は含まれません。

また、退職金は分離課税で、一般的には退職金支払い時に税金が徴収されています。そのため、確定申告は必要ありません。

ただし、次の場合は確定申告することで税金が戻ってくることがあります。

  1. 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合
  2. 副業などの赤字がある場合

それぞれをご説明します。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合

「退職所得の受給に関する申告書」とは、退職する際に勤務先に提出する書類です。会社ではその書類を元に退職金の源泉徴収額を計算します。その時点で「退職金控除」として所得税を差し引いて退職者に支払うので、年末調整や確定申告は不要になるのです。

しかし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないと退職金控除がされていません。つまり、多く所得税を納めているので、確定申告して還付金として払い過ぎた所得税を戻してもらいます。

副業などで赤字がある場合

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していても副業などで得た事業所得や不動産所得などが赤字になっている人は「損益通算」ができます。損益通算とはプラス(黒字)とマイナス(赤字)を相殺することです。

その際には、まず給与所得や雑所得と損益通算をして、その時点で赤字になったときに退職金との損益通算が可能になります。

損益通算すると退職所得が少なくなり、すでに源泉徴収されている所得税が還付される場合があります。

この場合も確定申告が必要です。

税金は難しい用語が多く面倒に感じるかも知れませんが、損をしないようにしっかり確認しておきましょう。

転職時の年末調整まとめ

・年末調整できるケース:前職を辞めてから年内に転職
・年末調整できないケース:前職を辞めてから翌年以降に転職

転職時の年末調整や確定申告は、12月の雇用状態や控除などをよく確認してから申告してください。

払い過ぎた税金などは還付される場合があるので、しっかりと清算しましょう。

この記事を参考に、年末調整できるかどうかを確認して適切な手続きを踏んでくださいね.