介護士の職場の一つであるデイサービスは、入所施設と異なり自宅で生活する高齢者が通う施設です。そこで働く介護士には様々なスキルや資格が求められます。
この記事ではそんなデイサービス介護士の仕事内容や1日の流れ、必要スキル、給料などを紹介しています。
【この記事で分かること】
- デイサービス介護士の仕事内容
- 1日の仕事の流れ
- 必要な資格やスキル
- デイサービスの平均給料
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目次【クリックして移動できます】
デイサービスとは?
デイサービスとは、介護が必要な在宅高齢者が日中通って、日常生活上の世話や機能訓練を受ける施設です。
介護保険を使うことで、本来の1割から3割の費用で利用できます。
介護保険法では障害者デイサービスや子どもの放課後等デイサービスと区別するため、高齢者のデイサービスを「通所介護」と名付けています。
デイサービスにおける介護士の仕事内容
国はデイサービスで提供される5つのサービスを定めています。
- 入浴・排泄・食事などの介護
- 生活などについての相談と助言
- 健康状態の確認
- そのほかの日常生活上の世話
- 機能訓練
それぞれについて介護士の関わりを見ていきましょう。
入浴・排泄・食事などの介護
入浴・排泄・食事の介護は、「三大介護」と呼ばれます。生活の基本中の基本として欠くことのできない行為であり、しかもその介護にはたくさんのエネルギーが必要だからです。
介護士は、この「三大介護」の中核を担います。また「三大介護」のほかにも、大事な介護はいろいろあります。
ベッドと車いすの間の移乗、歩行その他の移動、食後の口腔ケア、服薬などです。これらは「三大介護」に引けを取らないほど、介護士の重要な仕事となっています。
生活などについての相談と助言
デイサービスに来る高齢者から生活などについて相談を受けたり助言を与えたりすることにも、介護士は関わります。
たとえばある高齢者から「家で家族から暴力を受けている」「家でご飯を食べさせてもらえない」などの訴えがあったとき、介護士は訴えの内容をしっかり聴き取り、生活相談員に伝えます。
生活相談員は本人の認知症の有無・度合い、家族との関係などをもとに、本人がウソを言う人かどうかの目途を付けます。
ウソを言う人ではないとの目途が付けば、過去にもそうした訴えがあったか、入浴の際に身体に内出血など暴行を疑わせる跡がなかったか、昼食の食べぶりは空腹を想像させるものだったかなどを介護士から聴き取ります。
その結果、暴行や食事ネグレクトの可能性が高まれば、生活相談員から担当ケアマネジャーや行政に報告するのが通常の流れです。
このように生活などについての相談と助言は生活相談員の仕事ですが、その判断材料を提供するという点で、介護士も相談助言に関わっているといえます。
健康状態の確認
デイサービス利用者の健康状態の確認も、介護士の大切な仕事といえます。高齢者は健康状態が変化しやすく、その変化に早めに気付くことが病気やケガの重症化を防ぐことになるからです。
デイサービスには看護職員(看護師または准看護師)が常駐しており、利用者の健康状態の確認を行います。
ただ看護職員は1名、多くても2名のデイサービスがほとんどで、利用者の状態確認すべてを行うのは難しいのが実状です。
そこで検温や脈拍・血圧測定といった専門的な健康チェックは看護職員が行う一方、介護士は利用者の顔色や表情・口数や話しぶり・身体の動きなどの様子観察を行います。
そして普段と様子がちがう利用者がいれば看護職員に報告し、看護職員による専門的なチェックがされるというのが通常のパターンです。
こうした役割分担のもと、介護士も看護職員と共同でデイサービス利用者の健康状態の確認を行っているということができます。
そのほかの日常生活上の世話
介護士は、これまで挙げた以外の、利用者の在宅生活に必要な世話も行います。
たとえば、普通の状態の爪を切る(医療行為には当たりません)、髪をとかす、お話し相手になるなどです。また、理髪店や美容院のスタッフを手配し、デイサービスで利用者の髪をカットしてもらうことも、日常生活上の世話といえるでしょう。
機能訓練
機能訓練とは、利用者の身体や精神の働きを保ち向上させるための訓練です。一般的には機能訓練指導員が行います。
機能訓練指導員になれるのは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のいずれかです。これは機能訓練は身体のしくみなど、医学知識ある人が行うのが効果的といえるからでしょう。
機能訓練指導員になるのは看護職員がもっとも多く、次いで理学療法士・作業療法士・柔道整復師です。言語聴覚士やあん摩マッサージ指圧師が機能訓練指導員となっているデイサービスはあまり見られません。
ただ日常生活動作・レクリェーション・行事なども、身体や精神の働きを保ち向上させる効果があるので、りっぱな機能訓練です。こうした機能訓練は医学知識を必要としないことから、介護士も行うことができます。介護士も機能訓練の担い手のひとりなのです。
デイサービスにおける介護士の1日の仕事の流れ
ここまで見てきたデイサービスの仕事内容が実際にどのように行われるのか、デイサービスの1日の流れを追いながら確認してみましょう。
8:30~:朝のミーティング
介護士らスタッフがそろい、朝のミーティングを行います。その日の利用者を確認し、対応に気を付ける点などを共有します。
8:45~:送迎に出発
スタッフが各送迎車両に分かれ、利用者宅へお迎えに出発します。
9:30~:利用者出迎え、デイサービス開始
到着した順に、利用者をデイルームに誘導します。手洗い・うがいをすませ、荷物をロッカーに納め、それぞれの席に着いてもらいます。
席に着いた利用者にお茶とお菓子を配り、一息ついてもらいます。利用者全員がそろったところで、その日のデイサービスの始まりです。
9:40~:バイタルチェックなど健康状態の確認
看護職員が、利用者ひとりひとりのバイタル(体温・脈拍・血圧)をチェックし、顔色・表情・話しぶりなども見ながら、その日の健康状態を確認します。
体調不良や気分不快などがうかがえる利用者については、介護士にも伝え、情報共有を図ります。
9:45~:入浴開始、手作業や会話
入浴を希望する利用者を順番に浴室に誘導し、入浴介助を行います。更衣や整容の介助も含まれます。
入浴の順番を待つ利用者は、テレビを観る、塗り絵など手作業をする、同じテーブルの利用者と会話するなどして過ごします。これらも心身の機能訓練です。
ひとりでトイレに行くのが難しい人には、介護士がお手伝いします。
11:30~:嚥下体操
昼食前の嚥下体操を行います。首・口・舌などを動かすことで、だ液の分泌を促し、咀嚼(そしゃく。食べ物をかむこと。)や飲み込みといった動作をスムーズにして、ムセやつかえを防ぐ体操です。
11:40~:テーブル吹き、配膳、昼食開始、下膳
テーブルを拭き、厨房から来た昼食を各人のお椀や皿に盛り付けます。これらはなるべく利用者にしてもらいます。生活動作を通じた機能訓練だからです。
皆で「いただきます」のあいさつをして、昼食を摂ります。ひとりでうまく食べられない利用者には介護士が付き、おかずを小さくする、食器の位置を調整するなどして、できるだけ自分で食べられるようサポートします。食事を摂る動作も機能訓練なのです。
昼食後の服薬がある人には、看護職員が薬を配ります。ひとりで飲むのが難しい人には、介護士が手伝います。
食べ終わったお膳は、できるだけ自分でワゴンに返してもらいます。この動作もまた機能訓練にほかなりません。
13:00~:午睡
昼食後の午睡をして、午前中の疲れを癒してもらいます。午睡をしない利用者にとっては、テレビを観る、本を読む、塗り絵をするなどの自由時間です。
介護職員は看護記録を、介護士は介護記録を、それぞれ記入します。家族あての連絡帳に、今日の利用者の様子、家族への要望などを書いていきます。
14:00~:レクリェーション
午睡から覚めた後は、皆でレクリェーションを行います。歌・クイズ・ゲーム・軽運動・カラオケなど、内容はさまざまです。
季節によって花見・いちご狩り・ぶどう狩り・紅葉狩り・外食など外出行事を行うこともあります。ボランティアさんが来てコーラス・合奏・踊りなどを見せてくれるのも楽しみのひとつです。
レクリェーションは利用者本人が楽しむことはもちろん、他の利用者やスタッフと交流するひとときでもあります。どれも心身の機能訓練そのものなのです。
15:00~:ティータイム、自由時間
午後のティータイムの時間です。日本茶・紅茶・コーヒーなど希望の飲み物と、手作りのおやつを皆でいただきます。会話もはずみ、まさに交流のひとときです。心の機能訓練といってよいでしょう。
ティータイムをすませた人は、しばらく自由時間を過ごします。この間、介護士によるトイレ介助も行われます。
16:00~:帰りの準備、送迎
帰りの準備の始まりです。利用者はそれぞれの持ち物・上着・帽子などを身に付けます。まちがってほかの人の物を持っていないかなどを介護士がチェックします。
同じ方面ごとに送迎車に分乗し、それぞれの自宅に帰ります。
16:30~:掃除、翌日の準備
送迎から戻った順に、デイルームの掃除を行います。テーブル・床・トイレを拭き、ゴミ箱を片付けます。
掃除が終わったら、翌日の準備をします。利用者のテーブル配置を決める、名札を用意する、介護記録を出しておくなどです。
17:10~:終了ミーティング、当日の振り返り
終了ミーティングを行い、スタッフ全員で当日の仕事を振り返ります。うまくいったことは、次回の参考にします。
うまくいかなかったことについて、次回からどうするかを話し合います。
17:30:終業
「お疲れさまでした」のあいさつをして、本日の業務は終了です。
デイサービスの仕事に必要な介護士の資格とスキル
〇〇デイサービスと書かれた送迎車を目にすることも多いかと思います。そのデイサービスで働く場合、どのような職種があり、どのような資格が必要なのかをご紹介します。
職種①管理職
管理職は、施設の管理を行います。働くスタッフや、施設利用者に快適な環境を用意できるように、施設の管理やマネジメントを行います。
管理職に就くために、資格は特に必要ありません。
職種②生活相談員
デイサービスの窓口業務を行うのが、生活相談員です。利用者と、利用開始前に面談を行ったり、契約を行ったりします。
また、利用開始後も、担当ケアマネジャーや他の事業所、ご家族などと連絡を取り合い、調整を行います。
生活相談員になることができる資格はいくつかあります。
資格:社会福祉士
大学卒業など受験資格を得て、資格試験に合格することで得られる国家資格です。
専門的な知識を生かして、日常的な生活を営むことにトラブルのある方の相談にのり、助言や指導、援助を行う専門職です。
資格:精神保健福祉士
大学卒業など受験資格を得て、資格試験に合格することで得られる国家資格です。
専門的な知識を生かして、精神障害者の相談にのり、助言や指導、援助などを行う専門職です。
資格:社会福祉主事任用資格
大学や短大などで、決められた過程を終了することで得られる資格です。
学校で学んだ専門が福祉系である必要はありません。卒業に必要な単位を取ることで、この資格を取ることができているということも少なくないので、通っていた学校に確認してみましょう。
また、大学などを中退していても、必要な単位を取得できていれば、資格は得られます。
資格:ケアマネージャー(介護支援専門員)
介護現場での実務経験を5年以上経るなど、受験資格を得たのちに、資格試験を受験し合格すると得られる民間資格です。
介護計画書を作成したり、他事業所との連絡・相談、調整を行います。
職種③介護職員
デイサービスで働く人の多くが、介護職員です。
利用者の送迎や入浴介助、排せつ介助、食事介助、レクリエーションの提供などを行います。
資格:介護職員初任者研修
130時間の研修を受けて、試験に合格することで取得できる資格です。
研修では介護の基礎部分を学習することができ、3ヶ月ほどで取得可能となる資格です。
資格:介護職員実務者研修
介護福祉士国家資格を受験するために、基礎知識や技術を学ぶための研修です。
450時間の研修を受けることが必要ですが、初任者研修を受けた方は、その130時間分は免除されますし、数年に分けて研修を受けることが可能です。
資格:介護福祉士
介護福祉士の養成校を卒業したり、実務経験を経るなどして受験資格を得て、試験に合格すると取得できる国家資格です。
専門知識を持ったうえで介護を行う他、介護する家族などに、介護のアドバイスを行います。
デイサービスで働く介護士の平均年収(給与)は?
デイサービスで働いた際の給料は、職種や保有資格によって変わります。管理職であれば、月給25万~30万円程度の職場が多くみられます。
年収は賞与や各種手当込みで常勤で約300万円~、非常勤が約240万円~となっています。賞与が高額なデイサービスであれば年収400万に届く方も多いです。
なお地域によってもデイサービス介護士の給与は大きく異なり、首都圏以外では上記よりも2~3万円ほど下がると思っておいた方が良いでしょう。
デイサービスで働く介護士の仕事内容、年収まとめ
デイサービスに通う利用者は、まだまだ元気な方も多くいます。介護が必要なのも確かですが、他者との交流を目的として通ってきていることも多いです。
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