介護士には初任者研修を筆頭に数多くの種類の民間、国家資格があります。それらの資格の有無によって給与や転職に大きな影響が出ます。
当記事ではそんな介護職に必要な資格の種類を一覧で紹介しつつ、仕事内容や取得条件、費用を紹介します。
介護職に必要な資格の種類一覧
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- ケアマネジャー
- 介護事務
- 介護福祉士(国家資格)
- レクリエーション介護士
- 介護予防運動指導員
- 福祉用具専門相談員
- 喀痰吸引等研修
- サービス提供責任者
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修とは、介護職員として少なくともこれだけは身に付けたい知識と技術、その知識と技術を現場で用いる際の心がまえを学ぶ研修です。
研修を修了すると、「介護職員初任者研修修了」という資格を取得します。介護職に就いている、これから就こうとする人が最初に目指す資格です。
介護職員初任者研修の取得条件
介護職員初任者研修は、中学校卒業以上の人なら誰でも受講できます。資格取得には、10科目130時間のカリキュラム修了が必要です。
介護職員初任者研修の取得費用
費用はスクールによって異なりますが、6万~10万円程度で取得できます。
スクールによって受けられる受講内容に大きな差はないので、なるべく安いスクールを探しましょう。
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修とは、介護福祉士の受験資格を得るための研修です。研修を修了すると、介護福祉士の受験資格が得られます。
介護福祉士実務者研修の取得条件
介護福祉士実務者研修を受講できるのは、3年以上の介護実務経験ある人だけです。
6か月以上にわたる20科目450時間のカリキュラムを修了すれば、「介護福祉士実務者研修修了」の資格を手にします。
介護福祉士実務者研修の取得費用
こちらは初任者研修よりも高く、スクールに応じて10万円~20万円ほどの費用がかかります。
高い所は振替授業があったり施設のテナント料が高いのですが、受ける側には関係ないのでなるべく安い所探しましょう。
高いスクールでも得られる資格に差はありません。
ケアマネジャー
ケアマネジャーとは、正式には介護支援専門員といい、介護保険サービスのコーディネーター(調整役)です。
ケアマネジャーの仕事内容
ケアマネジャーは、居宅または施設の介護サービス計画作成が仕事の中心となります。
生活上の課題を見つけること(アセスメント)、計画の実施状況をつかむこと(モニタリング)も大切な仕事です。
ケアマネジャーの取得条件
ケアマネジャーになるには、①介護支援専門員実務研修受講試験に合格する、②介護支援専門員実務研修を修了する、③都道府県に介護支援専門員の登録をする、という3段階の条件が必要です。
①の受講試験を受けるには、介護福祉士や看護師などの資格を取ってから5年以上、福祉や医療の現場で実務経験を積まなければなりません。
ケアマネジャーの取得費用
こちらの受験費用はかなり安く、8,000円~9,000円程度で受けることができます。
個人でやる場合、数千円程度の参考書はあったほうが良いでしょう。スクールに通う場合は5~10万円ほどの費用がかかります。
介護事務
介護事務とは、施設の人材・設備備品・資金を調える仕事です。
介護事務の仕事内容
介護事務の内容は、職員の勤怠管理、介護用品の発注、来所者や電話への応対など幅広いです。介護報酬の請求は、施設の収益に関わるので特に重要な仕事といえます。
介護事務の取得条件
介護事務は、特に資格は必要ありません。ただ、資格を持っていれば仕事への信頼度が上がるので、取得がおすすめです。
民間団体主催の資格がいくつかあり、「介護事務 資格」でウェブ検索すれば、それぞれの資格内容を見ることができます。
介護事務の取得費用
介護事務は民間資格が複数あるため費用もまちまちなのですが、受験には2,000~8,000円程度かかります。
こちらもスクールを受講する場合、追加で4万円~8万円ほどの費用がかかります。通信講座等を利用すればもう少しやすいです。
介護福祉士(国家資格)
介護福祉士は、厚生労働大臣が、介護の専門的な知識と技術があると認定する国家資格です。
介護福祉士の仕事内容
介護福祉士は、障害者や高齢者への介護を行うとともに、介護福祉士でない介護士への介護指導を行います。
介護福祉士の取得条件
介護福祉士になるには、①専門学校など介護福祉士養成施設を卒業する、②3年以上の介護実務経験を積んでから実務者研修を修了し、介護福祉士試験を受けるなどの方法があります。
介護福祉士の取得費用
こちらは3パターンあるため、それぞれの費用を紹介していきます。
- 実務経験を積んで受験:10,650円
- 福祉系の高校を卒業:学費+10,650円
- 養護施設を卒業:400万(大学)、200万(短大)+10,650円
上記を見ての通り、実務経験を積んでそのまま受験をする方法がもっとも安いです。
実務経験がない場合は養護施設などで学ぶ必要があり、費用はかなり高くなります。
レクリエーション介護士
レクリェーション介護士とは、日本アクティブコミュニティ協会が実施し、高齢者が喜ぶレクリェーションの知識とスキルを認定する民間資格です。1級と2級があります。
レクリエーション介護士の仕事内容
レクリェーション介護士は、自分の趣味や特技も取り入れながら、レクリェーションを企画し、一緒にレクリェーションを行う介護士をリードします。
レクリエーション介護士の取得条件
2級は、誰でも受講できる3か月間ほどの通信または通学の講座を受講し、最終課題に合格することで取得できます。
1級の取得には、2級取得者が、①4日間の通学講座または動画視聴講座(介護レクアカデミー会員のみ)の受講、②実技試験、③筆記試験、④現場実習をすべてパスすることが必要です。
レクリエーション介護士の取得費用
費用は講座を行っている団体によりますが、3万~4万円ほどかかるケースが多いです。
介護予防運動指導員
介護予防運動指導員とは、介護予防の現場で運動の指導員として働ける資格です。
介護予防運動指導員の仕事内容
介護予防運動指導員は、介護施設や医療機関などで、高齢者の介護予防に役立つ運動プログラムを作ります。
介護予防運動指導員の取得条件
介護予防運動指導員になるには、東京都健康長寿医療センターが指定した事業者が実施する、23科目31.5時間の養成講習を修了しなければなりません。
講習を受講できるのは、介護福祉士や看護師など、センターが指定する資格を持つ人です。
介護予防運動指導員の取得費用
介護予防運動指導員の取得費用はやや高く、6~8万円前後かかります。
福祉用具専門相談員
福祉用具専門相談員とは、法令により、福祉用具について専門知識を持っていると認められた人をいいます。
福祉用具専門相談員の仕事内容
福祉用具専門相談員は、介護保険で福祉用具を貸与または販売する際、その専門知識にもとづいて、どの福祉用具が本人にふさわしいかの助言を行います。
福祉用具専門相談員の取得条件
介護福祉士や看護師など法令が認めた専門職は、自動的に福祉用具専門相談員となります。
それ以外の人は、都道府県が指定する事業者が行う福祉用具専門相談員指定講習を修了することにより資格を取得できます。
福祉用具専門相談員の取得費用
受講資格はないものの、講座を受けるのに4~6万円ほどの費用がかかります。
喀痰吸引等研修
喀痰吸引等研修とは、痰の吸引と経管栄養についての知識とスキルを身に付ける研修です。研修は、都道府県または都道府県に登録された研修機関において行われます。
喀痰吸引等研修の仕事内容
実際に喀痰吸引等を行うには、研修修了後、都道府県から「認定特定行為業務従事者」として認定されることが必要です。
認定特定行為業務従事者は、介護施設や自宅において、本人への喀痰吸引や経管栄養を行います。
喀痰吸引等研修の取得条件
研修を受講できるのは、合格年度が平成26年度までの介護福祉士、および介護福祉士以外の介護職員です。(合格年度が平成27年度以降の介護福祉士は、養成施設または実務者研修の中で、喀痰吸引等の研修を受けます。)
研修修了には、①50時間の講義、②各行為のシミュレーション演習、③実地研修のすべてをパスすることが必要です。
喀痰吸引等研修の取得費用
費用は号数によって異なり、1号、2号だと12~15万円、3号だと6万円前後となっています。
サービス提供責任者
サービス提供責任者とは、訪問介護事業所(ヘルパーステーション)の責任者です。
サービス提供責任者の仕事内容
サービス提供責任者は、訪問介護事業所の中核として、訪問介護計画書を作成する、訪問介護員(ヘルパー)をまとめるなどの仕事をします。
サービス提供責任者の取得条件
サービス提供責任者は、資格というよりも事業所内の役職ですので、事業者からの辞令によって就任します。
サービス提供責任者は、事業所の中核としての重責を担うことから、介護福祉士または実務者研修修了の資格が必要です。

その他の介護職で役立つ資格一覧
これまで紹介した資格ほど受講者は多くありませんが、介護職員のスキルアップに役立つ資格はほかにもあります。
- 認定介護福祉士
- 行動援護従業者養成研修
- 同行援護従業者養成研修
- 移動介護従業者(ガイドヘルパー)
- 難病患者等ホームヘルパー
- 重度訪問介護従業者
- サービス介助士(ケアフィッター)
認定介護福祉士
認定介護福祉士とは、認定介護福祉士養成研修を受け、一般の介護福祉士より質の高い能力を身に付けたものと認定された介護福祉士のことです。
研修は、13科目345時間のⅠ類、9科目255時間のⅡ類、合計22科目600時間の課程を、1年半前後の期間をかけて受講します。
認定介護福祉士の取得費用
認定介護福祉士の費用はかなり高額で、会員が35万7,000円、非会員が60万9,000円となっています。またこれとは別途に認定審査費用として2万円がかかります。
行動援護従業者養成研修
行動援護従業者養成研修とは、精神に障害を持つ人の日常生活や外出をサポートする行動援護従業者を養成する研修です。
研修内容は、10時間の講義と14時間の演習からなっています。
同行援護従業者養成研修
同行援護従業者養成研修とは、視覚障害者の外出をサポートする同行援護従業者を養成する研修です。
研修は、12時間の講義と8時間の演習からなる基本的な一般課程と、2時間の講義と10時間の演習からなる実践的な応用課程とがあります。応用課程は、一般課程修了者が対象です。
移動介護従業者(ガイドヘルパー)
移動介護従業者(ガイドヘルパー)とは、障害者が外出する際、移動・コミュニケーション・更衣などをサポートする人です。
都道府県や政令指定都市が指定する事業者が実施するガイドヘルパー養成研修を修了することで資格を取得できます。
難病患者等ホームヘルパー
難病患者等ホームヘルパーとは、難病や特定疾患を持つ患者の自宅を訪問して生活のサポートをする人です。
難病患者等ホームヘルパーになるには、都道府県や政令指定都市が指定する事業者が実施する難病患者等ホームヘルパー養成研修を修了する必要があります。
重度訪問介護従業者
重度訪問介護従業者とは、重度の肢体不自由者(障害程度区分4~6)の自宅を訪問して介護を行う人です。
都道府県が指定する事業者が開く重度訪問介護従業者養成研修を修了することで資格を取得できます。
サービス介助士(ケアフィッター)
サービス介助士(ケアフィッター)とは、日本ケアフィット共育機構が主催する、相手に不安を与えない介護を行う心がまえと技術(「おもてなしの心」と「安全な介護技術」)を身に付けたことを認める資格を指します。
資格取得には、所定の講習を修了することが必要です。講習は、6~7時間のオンライン講座視聴と1日の対面形式実技教習、または2日間の対面形式実技教習のいずれかの方法で行われます。

介護職に関する資格を取得するメリット7選!
介護職に関する資格を取得することは、以下のような多くのメリットをもたらします。
1. 専門知識とスキルの習得
2. キャリアアップの促進
3. 給与・待遇の向上
4. 就職・転職活動での優位性
5. 業務範囲の拡大
6. 利用者や家族からの信頼獲得
7. 自己成長とモチベーションの向上
1. 専門知識とスキルの習得
資格取得を通じて、介護に関する専門的な知識や技術を体系的に学ぶことができます。これにより、より質の高い介護サービスを提供できるようになります。
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2. キャリアアップの促進
資格を持つことで、リーダーや管理職など、より責任のあるポジションへの昇進が期待できます。例えば、認定介護福祉士の資格を取得することで、介護チームのリーダーや管理職としての役割を担う機会が増えます。
3. 給与・待遇の向上
資格取得者は、無資格者に比べて平均年収が高い傾向があります。特に、介護福祉士などの上位資格を持つことで、給与面での優遇が期待できます。
4. 就職・転職活動での優位性
資格を持つことで、介護業界での就職や転職活動が有利になります。多くの介護施設では、即戦力となる資格保持者を積極的に採用する傾向があります。
5. 業務範囲の拡大
特定の資格を取得することで、これまで行えなかった医療的ケアや専門的な業務に従事することが可能となり、業務の幅が広がります。
6. 利用者や家族からの信頼獲得
資格を持つことで、利用者やその家族からの信頼を得やすくなります。専門的な知識と技術を持つ証明となり、安心してサービスを受けてもらうことができます。
7. 自己成長とモチベーションの向上
資格取得は自己成長の証であり、仕事に対する自信やモチベーションの向上につながります。新しい知識や技術を習得することで、日々の業務にも積極的に取り組む姿勢が生まれます。
これらのメリットから、介護職における資格取得は、個人のキャリア形成や業務の質の向上において非常に重要であることがわかります。自身の目指すキャリアや興味関心に合わせて、適切な資格を選択し、計画的に取得を進めることをおすすめします。
介護職に関する資格を取得する際の注意点
介護職に関する資格を取得する際には、以下の点に注意が必要です。
受験資格の確認
資格ごとに受験資格が異なります。例えば、介護福祉士の国家試験を受験するためには、3年以上の実務経験と実務者研修の修了が必要です。事前に各資格の受験要件を確認し、計画的に準備を進めましょう。
実務経験証明書の正確な作成
実務経験を証明する書類は、受験申請時に必要となります。複数の事業所で経験を積んだ場合、それぞれの事業所から証明書を取得する必要があります。書類の不備がないよう、各事業所と連携して正確に作成しましょう。
申請書類の提出期限と方法
受験申請には期限が設けられています。また、申請方法も郵送やオンラインなど資格によって異なる場合があります。期限を守り、指定された方法で申請を行うことが重要です。
これらの注意点を踏まえて準備を進めることで、介護職の資格取得を円滑に進めることができます。
まとめ
介護職には多様な資格が存在し、それぞれが特定の役割や専門性を持っています。代表的な資格として、介護の入門資格である「介護職員初任者研修」、より高度な知識と技術を習得する「介護福祉士実務者研修」、そして国家資格である「介護福祉士」などがあります。これらの資格を取得することで、提供できるサービスの幅が広がり、キャリアアップや給与面での向上が期待できます。
特に介護福祉士を取得できると月収で6~8万円、年収にすれば賞与込みで80~100万円ものアップに繋がります。費用はかかりますが、将来を見越せば資格取得に向けて動くのは悪い選択肢ではないでしょう。
また、認知症ケアや障がい者支援など、特定の分野に特化した資格も多数存在し、専門性を高めることが可能です。介護業界での活躍を目指す方は、自身のキャリアプランや興味関心に合わせて、適切な資格を選択し、計画的に取得を進めることが重要です。