看護師として長く働くにはワークライフバランスが大切!あなたの職場は大丈夫?
政府が「働き方改革」を掲げ、「一億総活躍社会の実現」を目指しています。ただ、これは「とにかく働け!」とお尻をたたかれることとは違います。仕事もプライベートも充実させる「ワークライフバランス」を推進させることが大切です。
このページでは看護師の働き方やワークライフバランスについて詳しく解説していきます。
看護師にとってのワークライフバランスとは
ワークライフバランスとは、文字通り「ワーク(仕事)」と「ライフ(人生)」のバランスを取るという意味です。
働き方改革とワークライフバランス
政府が働き方改革を進めようとする背景には、深刻な労働力不足があります。
日本の人口は減少傾向にあり、その結果、労働力が不足しています。看護師だけでなく、あちこちで人材不足が叫ばれていますね。
働き方改革の目的とは
労働力が不足するので長時間労働を強いられる傾向があります。一方で、同じ仕事をしていても正社員と非正規雇用では給与に差があります。給与が少ないと子どもを出産するのをためらう人が増え、その結果、少子化になり、さらに労働力が不足してしまいます。
そこで、今まで非正規社員だった人や主婦として家庭に入っている人、元気な高齢者などに働く機会を提供すると同時に、働きやすい環境を作る取り組みを進めることになったのです。
「長時間労働の改善」や「同一労働・同一賃金」「高齢者の雇用促進」などが働き方改革の柱になっています。
働き方改革を進める中でワークライフバランスが整っていく
このような働き方改革を進める中で、企業は仕事と育児を両立できるように支援したり、有給休暇の取得を推進したりといった動きが出ています。
その結果、働きバチのようにひたすら仕事中心だった人がプライベートの時間を取れるようになってきました。
看護師こそワークライフバランスが必要
男性看護師も増えてはいますが、女性の看護師が全体の約96%を占めると言われるほど女性が活躍している世界です。
看護師資格は生涯有効なので、結婚・出産や子育て、親の介護などをこなしながら働くことが可能です。ただ、その場合に仕事と家庭の両立で悩むケースが多く見られます。
また、独身であれば残業や夜勤を頼まれて自分の時間が取れないという悩みが発生します。
看護師こそワークライフバランスの取り組みが必要だと言えます
看護師の現場でのワークライフバランスの取り組み
以前は「常勤(正職員)は残業や夜勤は当たり前」という風潮があり、それができない場合はパートや派遣社員として働くしかありませんでした。
しかし、今は職場が柔軟に対応して、働きやすい環境を提供するように努めています。看護師の現場でのワークライフバランスの例を見てみましょう。
ワークライフバランスの推進で働きやすさがUP
日本看護協会の資料によると、次のような取り組みや支援を推奨しています。
勤務形態の多様化 | ・短時間勤務も正職員として扱う ・変形労働時間(夜勤専従や1日10時間勤務を週に4日など法定労働時間を超えない範囲で変形労働時間を導入する) |
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ワークシェアリング | 複数の人が1人分の勤務時間を分担して働くこと |
時差出勤 | フレックスタイムや交替勤務の時間を選べる |
休暇制度 | ・研修や留学のための休暇制度 ・ボランティア休暇 ・規定期間より長い育児・介護休暇 ・子どもの学校休業期間に合わせた休暇など |
子育て支援 | ・院内保育所や病児保育所、夜間保育所の設置 ・学童保育の設置 ・夜勤明け保育 など |
「こんな制度があったらいいな」と思うものがたくさんありますね。
ワークライフバランスの推進は雇用する側にもメリットが多い
上記の取り組みは働く看護師にとってのメリットばかりのように思えますが、雇用する側にもメリットがあります。
- 長時間労働の疲れによる医療ミスが防げる
- 看護師の体調や健康が向上することで病欠が減る
- 認定看護師などのステップアップを目指す看護師が増える
- 働きやすい環境を提供することで離職率が改善する
- 長く勤める職員が増えることでチームワークが向上する
- 人材育成の時間が取れるためスキルアップが可能になる
看護師のワークライフバランスはまだまだ発展途上
このように国や日本看護協会では働き方改革やワークライフバランスを推進しようとしていますが、まだまだ取り組みが進んでいない職場もたくさんあります。
現場でワークライフバランスが進まない理由
病院やクリニックでは、ワークライフバランスを進めようと思ってもできない理由があります。
例えば、フレックスタイムを導入して朝10時出勤を認めると、その代わりに早出の職員が必要になります。また、さまざまな休暇を導入するためには、その期間に働く職員が必要です。
人件費がかかる上に、シフトを管理するのも大変になるので事務の手間が増えてしまいます。
また、子育て支援をするには保育所が必要です。保育所が設置できない場合でも、保育料の補助などで費用がかかります。
ワークライフバランスの導入が先か、資金の準備が先か
働く看護師のためにワークライフバランスの重要性はわかっていても、先立つもの(人材や資金)がないと取り組めないという現実があります。
その結果、福利厚生が充実しない → 看護師を募集しても応募がない → 人材がそろわない → フレックスタイムや各種休暇が導入できない……という悪循環になってしまいます。
一方、ワークライフバランスを取り入れて働きやすい環境を作っている職場はいい人材が集まり、長く働いてくれます。さらに看護師同士の中で「あそこは働きやすい」と評判になって、優秀な人材が集まるという好循環を招きます。
このような格差が生まれる可能性があります。
看護師の立場でできるワークライフバランス
現場では、「うちの病院は院長の頭が固いから、なかなか改革ができない」とか「もっと職員を増やしてほしいと頼んでいるのに、全然増えない」という不満があると思います。
「ワークライフバランスの実現は夢のまた夢」という人でも、あきらめずにできるところから始めてみましょう。
例えば、次のようなことを申し出て実現を目指してはどうでしょうか。
- 認定看護師の資格を取りたいので、残業は減らして勉強時間を確保したい
- 子どもが熱を出したときは見てくれる家族がいないので、どうしても休みたい
- 職員同士で働く時間を融通したい(〇〇さんは水曜日は早く帰りたいが、その日は自分が残業を引き受けるなど)
職場でできる取り組みを考える
休暇を増やすとか変形労働時間制の導入などは経営者の判断が必要ですが、看護部というチーム内でできる取り組みがあります。
資格取得を目指す人は残業を減らすとか、育児休暇明けで子どもが小さい人が急に休む場合のフォロー体制を考えるといったことをチームで取り組んでみてはどうでしょう。
ただし、どのような場合でも誰かに負担がかかることは避けなければなりません。
すべての人が満足できるシステムにするにはまだまだ多くの課題がありますが、時代は看護師が働きやすい方向に向かっています。我慢せずに職場に提案してみるといいですね。
また、これから復職を考える看護師の人は、ワークライフバランスが整っているかどうかを確認してから応募するといいでしょう。
看護師のワークライフバランスについて~まとめ
日本の人口減少や労働力不足、少子化などの問題から、国は働き方改革を推進しています。少しでも働きやすい環境を整えることが雇用促進につながると言えるでしょう。
看護師の現場は女性が約96%と多いのに、出産や子育て、介護などで継続して働くことが難しい現実があります。そこで、ワークライフバランスの取り組みとして変則労働時間やフレックスタイム、さまざまな休暇の導入などが進められています。
しかし、まだまだ取り組みが追い付かない面も多く、課題は山積みです。現場で働く看護師は現状に我慢せずに提案していきましょう。
また、転職や復職を考える際には、ワークライフバランスの取り組みや充実度を確認することが大切です。