産業保健師とは?年収や仕事内容、メリットやなる方法も紹介
健康経営優良法人の認定を受けている企業は優秀な人材が集まりやすいことから、最近は従業員の健康管理のために産業医を配置するだけでなく、産業保健師を導入する企業が増えています。
健康管理をするのが仕事という点は産業医も産業保健師も同じですが、具体的な業務内容は異なります。そこで産業保健師の仕事内容や産業医との違いをご紹介します。
産業保健師とは?
保健師は働く場所によって病院保健師や行政保健師など名称が異なりますが、一般企業や事業所で働く保健師を産業保健師といいます。
平成30年度の厚生労働省の衛生行政報告例(※1)によると就業保健師の数は52,955人。
その内で市区町村で働く行政保健師は29,666人ともっとも多く、その次に多いのが保健所で働く行政保健師で8,100人、次いで一般事業所で働く産業保健師の3,349人となっています。
ただし、行政保健師の次に多いといっても1/10の割合しかいないので、産業保健師の認知度は一般的には高くありません。
しかし、働き方改革で従業員の健康が重要視され始めていることから、大手企業を筆頭に社内の産業保健活動が活発になっており、需要は年々高まっています。
※1 参考元:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/dl/gaikyo.pdf
産業保健師の勤務形態について
産業保健師の勤務形態には常勤と非常勤がありますが、約8割は正社員として常勤で勤務しています。
正社員としての産業保健師の雇用形態は一般社員と同じなので、月曜から金曜までかつ9時から5時までという勤務形態になるのが一般的です。
産業保健師の平均年収
詳しくは後ほど解説していますが、産業保健師の年収は約600万と、一般的な看護師と比較してかなりの高給です。
しかも夜勤などは一切なく、勤務先の企業の正社員として雇われるので休みも土日祝日はほぼ確実に休むことができます。
保健師と看護師の2つの資格があればなることができますので、好条件で働きたい方や看護師を辞めたい方は積極的に目指すべきでしょう。
産業保健師の仕事内容
産業保健師は働きやすい勤務形態かつ福利厚生が充実していることから人気が高まっていますが、具体的な仕事内容はよく分からないという方は少なくありません。
そこで先程も少し触れた、産業保健師の仕事内容について詳しくご説明していきます。
従業員への健康診断の案内
産業保健師の代表的な仕事が健康診断の実施です。
企業での健康診断の実施における仕事はすべて産業保健師が行います。
健康診断の日時や受診方法の案内の作成、社員への周知、健診を外部に依頼する場合は医療機関の手配、日程調整、自社で健診をする場合は産業医のサポートや採血、身体測定などの実務を担当します。
健診後はデータの集計や分析など結果をまとめて産業医への報告も行います。
社員の健康指導
産業医が常駐していなかったり、従業員数が多く産業医だけでは手が足りなかったりする場合は、社員の健康指導も産業保健師の仕事になります。
健康指導は社員から相談を受けた時だけでなく、健康診断の数値に問題がある社員に対して生活習慣の改善のアドバイスをする、必要があれば医療機関の受診を促し、病気になる前の段階で疾病の発生を防ぎます。
社員のメンタルケア
2015年に安全衛生法の改正が行われたことにより、企業でのストレスチェックが義務化されたため、社員のメンタルケアも産業保健師の重要な仕事となっています。
ストレス負荷が大きい社員の相談に対し、産業医や人事担当者と連携してケアをしたり、復職した社員の支援、休職者への定期的な状況確認などをしていきます。
メンタルケアにはストレスチェックの周知や検査の実施、データの集計や分析などの事務作業も多く、産業保健師の業務の大きなウエイトを占めていると言えるでしょう。
過重労働の防止対策
企業は健康経営のために産業保健師を配置しているので、過重労働の防止対策も重要な仕事となります。
具体的には産業医や人事担当、衛生管理者などの産業保健スタッフとチームを組み、循環器疾患予防の視点と労災防止の視点、面接指導の視点からアプローチしていきます。
例えば長時間労働重量物運搬など疾病を引き起こすリスクが高い職場環境であったり、ストレス性の高い作業内容を行っていないか。労災認定基準と同じ水準で働いている社員がいないか等をチェックする事が多いです。
また、チェックの結果、危険因子がある場合は従業員と企業の双方に改善の助言や指導を行います。
急病や怪我の処置
産業保健師は看護師としての役割もこなすので、勤務中の急病や怪我への処置も行うことも多いです。
産業医が不在の場合は産業保健師一人で対応するため、急病や怪我における救急要請の判断を任されることになります。
そのため、産業保健師は最低でも3年、一般的には5年以上の看護師経験が求められます。
社内と産業医を繋ぐコーディネーター作業
産業保健師の仕事の中でも特にコミュニケーション能力を求められるのがコーディネーターとしての役割です。
産業医は非常勤が多いため、産業保健師は産業医の出勤日程に合わせて、人事部を通して社員の面談日程の調整を行うことになります。
また、企業によっては衛生委員会を設置するところもあるので、産業医のサポートとして委員会の立ち上げや運営に関わるのも産業保健師の仕事になります。
産業保健師と産業医の役割の違い
産業保健師も産業医も、一般企業や事業所で働く医療従事者という点では同じです。
また、仕事においても従業員の健康管理をするという共通点があります。
しかし、産業保健師と産業医という名前の違いから分かるように保有資格に違いがありますし、企業で担う役割にも違いがあります。
ここでは、混同されてしまいやすい産業保健師と産業医の違いをご説明していきます。
産業医の仕事をサポートするのが主な役割
産業保健師の主な仕事は健康診断の結果分析やデータの整理、結果に基づき健康指導を行うこと、従業員の怪我や急な病気への対応、保健指導などがメインになります。
また、従業員のメンタルケアや長時間労働者や過重労働者、休職者との面談も産業医と手分けして行います。
一方で産業医は産業保健師が作成した健康診断結果を基に、医学の専門的立場から成人病予防対策や生活習慣の改善指導をする、ストレスチェックの実施者となることが主な仕事です。
さらに重要なのが労働者との面談で、ストレスチェックで数値が悪かった人への健康指導やメンタルヘルス不調の防止策を重点的に行います。
産業保健師と産業医は病院での看護師と医師のような関係性になるので、産業医が主な治療方針や指導方法を決め、産業保健師はそのサポートをするというのが仕事内容の違いになります。
必要な資格
産業保健師になるための特別な資格はなく、保健師の資格があれば産業保健師として勤務できます。
対する産業医は医師の資格を保有していることが大前提ですが、他にも以下の要件のいずれかを満たしている必要があります。
- 労働衛生コンサルタントに合格している
- 労働者の健康管理などに必要な知識について厚生労働省が指定する研修を修了している
- 産業医の養成を目的とした医学の正規課程を設置している産業医科大学を履修している
- 学校教育法に基づく大学で労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、講師の職についている、もしくは経験したことがある
- 産業医科大学以外の大学で学校が定めた産業医養成の実習を履修している
勤務形態
産業医の勤務形態は法律によって定められています。
従業員数1,000名未満の企業であれば嘱託契約が可能なので、ほとんどの産業医は嘱託勤務となり、月に数回ほどの出勤になります。
従業員数1,000名以上の企業では常勤の産業医を配置しなくてはいけません。
ただし産業医の場合は常勤であっても、毎日出勤する産業保健師と違い週に3日から5日と出勤日数はランダムです。
産業保健師になるには?
大前提として保健師と看護師の資格を取得する
産業保健師になるには、まず保健師と看護師の両方の資格を得なくてはいけません。
この記事をご覧になっている大半の方は看護師資格は持っていると思うので、後は保健師の資格を取得すれば、いつでも産業保健師になることができます。
数十倍の倍率を突破して内定をもらう
産業保健師は非常に人気の高い職業なので、1名の募集に対して50名近い応募があることも珍しくありません。
有名な企業だと100名以上の応募があるケースすらあり、産業保健師になるには多数のライバルを蹴落とし採用試験を突破した末に内定をもらう必要があります。
保健師と看護師の資格さえあれば誰でも産業保健師になることができますが、実際に採用されるかは全くの別問題です。
産業保健師は病院の看護師と比べると残業がほぼなく休みがしっかり取れるのに、給料は看護師より100万以上高い。しかも仕事自体が楽なので募集があると応募が殺到します。
そのため、産業保健師になるのは簡単ではありません。
コネがある人が一番産業保健師になりやすい
ただ、そんな倍率の厳しすぎる産業保健師に簡単になれる方法が一つだけあり、それがコネによる入社です。
産業保健師を置くような企業は優良大企業が多く、その手の企業は社内で「紹介制度」を採用しているケースが多いです。
そのため、産業保健師が必要になった際は求人を出す前にまず、社内で「紹介できる産業保健師がいないか」確認をします。
大企業に務めている友人のコネがあれば多数のライバルと争うことなく、スムーズに産業保健師になれるでしょう。
産業保健師の求人はそもそも表に出にくい
察しの良い方ならわかったかもしれませんが、産業保健師はコネで決まることも多いので、ぶっちゃけ求人が表に公開されることが稀です。
そして仮に求人が公開されようものなら、一瞬で1枠に対して50~100人の看護師が応募します。
一応、有期雇用の「派遣看護師」だと産業保健師の求人がそこそこありますが、産休中の穴埋めが主なので最長でも3年で雇用契約が終了します。
安定感はありませんが、給料は良いので3年間だけ産業保健師になりたい方であればおすすめです。
産業保健師の求人は看護師専用の転職サイトにしかない
産業保健師の求人は表に出ること自体が稀で、地域によってはハローワークなどには年に数件出れば良い方でしょう。
しかし看護師専用の転職サイトであれば、多くはないものの産業保健師の求人がそこそこ存在しています。
また、産業保健師の求人は会員登録をした方に限定で紹介される「非公開求人」で紹介されることが多いです。
非公開求人は企業が求める経験やスキルを満たした看護師だけに紹介されるので、公開求人と違って応募が殺到せず採用担当の負担が少ないので、産業保健師のような人気の仕事ではよく利用されます。
数の少ない産業保健として働きたいのであれば、コネや転職サイトなど活用できる物は全て活用しなくてはいけません。
産業保健師の仕事内容や年収まとめ
従業員の健康を確保するという観点から、産業保健師のニーズは増えている傾向にあります。
大企業に正社員として雇用されるので安定な上、給料平均も夜勤なしで32万円と病院の看護師と比べてかなり高いので、高待遇で安定して働きたい方には非常にオススメです。
ただ求人は本当にレアなので、複数の看護師転職サイトに登録するなど出来ることは全てやっておきましょう。