看護師のスキルアップに繋がる資格、科目別26選|おすすめの検定や研修も紹介
看護師がスキルアップをするためには、資格を取得するのが一番の近道です。しかし、看護師の資格は全部で80種類以上あるため、どれを選べばいいのか分からない方も多いでしょう。
そこで具体的にスキルアップに繋がる資格や、科目ごとに役立つ資格などを紹介していきます。
看護師のスキルアップに関する悩み
レバウェル看護(旧看護のお仕事)を運営する株式会社レバレジーズが約1,000人の看護師にキャリアに関する調査を行ったところ、キャリアにおける明確なプランがある看護師は8.8%(※1)しかいないという現状がありました。
※1:参考URL https://leverages.jp/wp-content/uploads/2019/08/1561617620ejl5s.pdf
ずっと看護師を続けたいという看護師は約75%なのに対し、将来の具体的なプランが立てられていない人が約70%もいるのは、スキルアップに関する悩みが理由となっているようです。
では、スキルアップに対して看護師がどういった悩みを持っているのか見てみましょう。
- スキルアップできる教育体制が整っていない
- 今の職場ではやりがいが感じられない
- どんな資格がスキルアップに繋がるのか分からない
調査によると上記が主な悩みでした。
つまり、スキルアップしたいけど行動できない、何をすればいいか分からないというのが悩みの根源にあるようです。
看護師のスキルアップに繋がる資格5選
スキルアップのために資格を取得したいと思っていても、忙しい毎日の中では何から手をつければいいのか考える暇もないかもしれません。
せっかくスキルアップしたいと思っていても動かないのは時間がもったいないので、まずはスキルアップにつながる資格をチェックしてみましょう。
認定看護師
認定看護師は、特定の看護分野においてハイレベルな看護やクオリティの高い看護ケアを提供できることが認められた看護師です。
一般の看護師よりも高度な看護技術や深い知識を身につけることで、特定の医療分野でプロフェッショナルとして活躍できます。
認定看護師の仕事内容
認定看護師の仕事は、一般の看護に加え実践と指導、相談の3つの役割をこなします。
- (実践)熟練した看護技術や経験を元にした判断力に基づいて、患者に質の高い看護を実践する
- (指導)後輩看護師に対して看護実践を通じて指導を行う
- (相談)看護職に対してコンサルテーションを行う
これらの役割の具体的な仕事内容は、後輩の教育指導や外部の診療所、訪問看護ステーションとの連携、講演、教育機関での看護分野に関するプランニングなどが挙げられます。
認定看護師は組織をまたいで活動することも多いので、看護部署だけでなく院内での影響力も大きくなります。
認定看護師の資格を取得するには
認定看護師は、実務経験が5年以上という条件をクリアしている看護師が認定看護師教育機関で1年以内に800時間の教育を受け、認定試験に合格すれば資格を取得できます。
2019年の認定看護師の試験では受験者数が約1,500人だったのに対し1,300人が合格しているので、試験自体は難しくありません。
認定看護師の資格取得で大変なのは、試験よりも認定看護師教育機関に通い続けることです。
通学している間はシフト調整をし続けなくてはいけないので、職場の協力がないと資格取得のハードルは高くなります。
認定看護師のメリット
認定看護師になるために、働きながら学校に通うのはかなり大変です。
しかし、苦労があってもそれが報われるだけのメリットはあります。
- 後輩を指導する立場になれるので昇進が期待できる
- 高度な看護ケアが身につくことで仕事の範囲が広がる
- あらゆる部署で知識が必要とされるので影響力が大きくなる
- 医療機関で有利な転職が可能になる
認定看護師は看護業務以外で活躍できるので、スキルアップだけではなくキャリアアップにも繋がるという点でも資格を取得するメリットがあります。
専門看護師
専門看護師は患者だけでなく看護に関する悩みや問題を持つ患者の家族に対しても高水準の看護を提供できる、特定分野の知識や看護技術を持っている看護師です。
特定分野の知識や技術を持っているという点では認定看護師と同じですが、専門看護師は対象が患者の家族にまで広がるところが認定看護師との違いになります。
専門看護師の仕事内容
専門看護師は認定看護師と同じく実践と相談という役割に加え、合わせて6つの役割があります。
- (実践)患者やその家族、集団に対して高水準の看護を実践する
- (教育)看護師に対して質の高いケアができるよう看護実践を通じて教育を行う
- (相談)看護職やケアを提供する関係者に対してコンサルテーションを行う
- (調整)患者に必要なケアを円滑にするため、保健医療に関わる人々のコーディネーションを行う
- (研究)実践の現場において専門知識及び看護技術の向上、開発を図るための研究活動を行う
- (論理調整)患者とその家族、集団の権利を守るため、論理的な問題の解決を図る
専門看護師の役割は多岐に渡りますが、集約すると患者や家族、医療機関の間であらゆる調整を行ったり、院内や外部機関で専門的な看護ケアの指導するのが主な仕事です。
専門看護師の資格を取得するには
専門看護師は、看護師の実務経験が5年以上かつ看護系大学院の修士課程を修了していること受験資格となるため、大学院に通学していない方は大学院に通わなくてはいけません。
受験資格をクリアすれば認定審査を受験することができ、合格すると専門看護師認定証の交付と登録が行われ専門看護師になれます。
業務が忙しいのに大学院の修士課程を修了するなんて無理と思うかもしれませんが、最近は資格取得後に復帰することを前提に通学支援をしてくれる医療機関もあるので、本気で専門看護師を目指す看護師であれば転職によって資格取得のハードルを下げることも可能です。
専門看護師のメリット
専門看護師は認定看護師よりも資格取得が難しいだけに、資格を持っていると看護のスペシャリストとしての技術や知識が認められます。
また、難易度が高い資格なのでメリットもたくさん得られます。
- 資格保有者が少ないので管理職への昇進が期待できる
- 外部機関への出向も多く日中の仕事が増えるので夜勤が減る
- 転職では給与交渉などが大きく有利になる
- 他職種への指導をすることで人脈が広がる
- 患者や家族の信頼を得やすく仕事がやりやすくなる
専門看護師は2020年時点ではまだ全国で約2,500名しかいないため医療機関からの需要も高く、転職で非常に有利になるので、現職よりも高待遇高収入が期待できるメリットのある資格です。
助産師
助産師は助産行為を専門看護師で、かつては産婆と呼ばれていました。
1948に助産婦となりましたが、2002年には女性を表わす「婦」ではなく助産師という名称に変わりました。
外国には男性の助産師もいますが、現時点の日本の法律では女性しか就けない職業となっています。
助産師の仕事内容
助産師の一番の仕事といえばお産時の分娩介助ですが、妊婦や出産して間もないじょく婦、新生児や乳幼児への保健指導も大切な仕事です。
出産前は妊婦への健康指導や生活指導、産前教育、出産の基礎知識、妊婦相談などを行います。
出産後はじょく婦の体調管理や乳児の保健指導、退院後の生活指導や育児のアドバイス、母乳指導も助産師の仕事となります。
助産師の資格を取得するには
助産師は、看護師免許と助産師免許の両方を取得しなくてはいけません。
看護師からスキルアップする場合は助産師専門学校か短大、大学院で助産師課程を修了して助産師国家試験を受験するのが最短ルートです。
1年から2年は通学と勉強に集中しなくてはいけませんが、2020年の助産師国家試験の合格率は99.4%となっているので、試験自体のハードルは低いといえるでしょう。
助産師のメリット
少子化が加速している現代では、助産師になっても需要がないと思う方もいるかもしれません。
しかし、実は助産師は医療業界から注目されていて、少子化であっても需要が高まっていますので取得するメリットはあります。
- 助産師外来を設置する医療機関が増加しているため高待遇で転職できる
- 産科医不足により助産師が優遇されることが多い
- 不妊治療や産後ケアなど活躍する場が広がる
- 看護師からのスキルアップがしやすい
いくら少子化でお産の数は減っても出産や産前産後のケアはなくなることはありませんし、産科医が不足しているからこそ活躍出来る場所は増えています。
認定看護師と比較して取得難易度も低いため、スキルアップやそれに基づく収入アップを目指す方にはメリットが多い資格と言えます。
呼吸療法認定士
呼吸療法認定士は、呼吸に関する専門知識や技術を持っている専門職です。
国家資格ではありませんが、高齢化が進み呼吸療法の重要性が高まっていることから認定資格であっても幅広い分野での活躍が期待できます。
呼吸療法士の仕事内容
呼吸療法士の仕事は、呼吸療法が必要となった重症患者への酸素吸入や人工呼吸、呼吸機器の管理、呼吸理学療法など呼吸器ケアを実施するのが主な仕事です。
看護師としてはICUや手術室、救急医療など呼吸器ケアが必須の科目への配置換えや転職をすることで資格を活かすことができます。
また、近年では在宅医療や呼吸器専門クリニックなど働けるフィールドが広がっているので、呼吸療法チームの仕事も増えています。
呼吸療法士の資格を取得するには
呼吸療法士の資格は、看護師経験が2年以上あれば日本呼吸器学会か日本胸部外科学会、日本麻酔科学会のいずれかの講習会や学会に出席し、125点以上の点数を取れば試験を受ける資格が得られます。
試験は年1回開かれるので、この試験に合格すれば呼吸療法士として認定されます。
試験対策は参考書や公式テキストなどを使って独学でできるレベルですので、講習会や学会への出席をクリアすれば比較的簡単に取得できる資格と言えます。
呼吸療法士のメリット
呼吸療法士は認定資格ですが、呼吸器ケアは医療機関にとって重要な専門技術となるので取得するメリットはたくさんあります。
- 呼吸器系病棟など専門病棟で活躍できる
- 呼吸器専門病院であれば昇給が期待できる
- 重症者の呼吸療法の重要性が高まっているので転職に有利
- 高齢化社会に備え介護業界でも需要が高くなっている
近年はCOPDや間質性肺炎など呼吸ケアが必要となる病気が増えています。
また、高齢者の場合は疾病がなくても呼吸療法が必要になることも多いため、呼吸療法士はあらゆる業界から注目されていて今後は活躍できる領域が広がる可能性があるのもメリットと言えるでしょう。
ケアマネージャー
ケアマネージャーは、介護が必要な利用者と介護サービスを行う業者や自治体をつなぎ、調整を行う専門職です。
要介護者や要介護認定を受けた人に利用できるサービスを提供したり、必要な介護を受けられるようにケアプランを作成したりするなど、医療機関よりも介護業界で活躍できる資格です。
ケアマネージャーの仕事内容
ケアマネージャーのメインの仕事は、介護保険サービスを受ける高齢者に必要なケアプランを作成することです。
介護が必要な人が自立した日常生活を送るための目標設定と、目標を達成するために必要な支援のプランニング、目標の達成状況を把握するモニタリングまで行うのが主な仕事です。
また、介護サービスを利用するときに発生する給付管理、高齢者とサービス事業所の橋渡し、事業所の情報提供、生活困窮者には生活保護の申請サポートや配食紹介、高齢者への地域活動の参加促進など高齢者の生活改善もケアマネージャーの重要な仕事です。
ケアマネージャーの資格を取得するには
看護師であれば、5年以上の実務経験でケアマネージャーの受験資格が得られます。
ケアマネージャーの試験対策は独学で勉強することも可能ですが、介護に関する法律も勉強しなくてはいけないのでケアマネージャー試験に特化した講習や講座を受けるのが効率の良い勉強法と言えるでしょう。
2019年度のケアマネージャー試験の看護師合格率は19%と高くはなく、難関試験となるため合格のためにはしっかりとした対策が必須です。
ケアマネージャーのメリット
高齢化によって今後はさらに在宅医療のニーズが増えることは確実なので、ケアマネージャーは今以上に必要とされるようになっていきます。
それだけでも十分にスキルアップのメリットが得られますが、他にもメリットはあります。
- 地域包括センターや訪問看護ステーションなど活躍できる職場が多い
- 夜勤がないので体への負担が少ない
- 土日や祝日休みが多く家庭と両立しやすい
- 高齢化社会による需要の高まりから高待遇の転職が期待できる
介護業界はさらなる市場拡大が予想されていますから、必要性の高いケアマネージャーが活躍できる場所はどんどん広がっていきます。
実際、夜勤なしで月収35万などの求人も出ています。ケアマネジャーと看護師資格の両方を持っているとさらなる好条件で働くことも可能でしょう。
看護師のスキルアップにおすすめの検定・研修
一口に看護師といっても、勤務する診療科目によってスキルアップに繋がる資格は異なります。
ここでは、看護師のスキルアップにおすすめの検定や研修を診療科目ごとにご紹介します。
内科の看護に役立つ資格検定
内科は消化器内科や循環器内科など細かく分かれているので、看護に役立つ資格は幅広い診療科目に対応できるものが良いでしょう。
もちろん、診療科目に特化した専門的な資格もスキルアップになりますが、まずはどんな科目でもカバーできる資格から取得していくのがおすすめです。
- メディカルサプリメントアドバイザー
- 健康医療コーディネーター
- 栄養サポートチーム専門療法士
これらの資格は治療の効果をより高めるための適切なアドバイスを提供できるので、内科の看護のスキルアップや患者との信頼関係の構築に役立ちます。
整形外科の看護に役立つ資格検定
整形外科の患者は、日常生活動作(ADL)が限られてしまうため、患部の治療だけではなくいかに元の生活レベルに戻せるかも大切な業務になります。
この業務に役立つのは以下の3つの資格です。
- 日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)
- 骨粗しょう症マネージャー
- 回復期リハビリテーション看護師
これらの資格を取得してスキルアップをしておけば、医師や理学療法士などと協同してより良いリハビリプランを立てることも可能です。
救急看護で役立つ資格検定
救急看護では、緊急搬送されてきた患者や容体が急変した患者の受け入れ準備や意識確認、気道確保などの初期治療、検査のサポートだけではなく緊急手術への対応力も必要になります。
救急看護における手術は患者の命を左右することが多いので、輸血や手術に関する資格を取得しておくとスキルアップに繋がります。
- 学会認定自己血輸血看護師
- 手術看護実践指導看護師
- 周術期管理チーム看護師
これらの資格を取得すれば安全かつ専門性の高い周術期医療を提供できるため、キャリアアップも目指せます。
小児科の看護に役立つ資格検定
疾患ではなく年齢で患者を区分けする小児科は診察が理解できない子供相手の仕事なので、子供の心理を理解し状況に合わせた対応力が必要です。
また、子供の疾患で多い感染症やアレルギーに関する専門知識を持っておくこともスキルアップに必須なので、以下の資格を取得しておくといいでしょう。
- 臨床心理士
- 小児アレルギーエデュケーター
- 医療環境管理士
特に臨床心理士は小児科以外の科目でも役立つ資格なので、ジェネラリストとしてのキャリアアップを目指す看護師にもおすすめの資格です。
精神科の看護に役立つ資格検定
総合失調症や老人性痴呆、うつ病、パニック障害などさまざまな精神の不調を扱う精神科では、薬物療法の補助やセルフケアの援助、生活指導などが看護師の仕事となります。
しかし、そこでもう一つ重要となるのが患者とのコミュニケーションなので、精神状態を理解したり癒やしたりできる資格を取得しておくとスキルアップできます。
- 精神科認定看護師
- メンタルケア心理士
- 日本アロマセラピー学会認定臨床看護師
これらの資格は患者の気持ちをより深く理解できるようになったり、不安定な心に癒やしを与えたりできるので、心療内科や神経内科などの科目でもスキルを活かせます。
訪問看護に役立つ資格検定
自宅療養をしている患者のもとに訪問して定期的に看護ケアを行う訪問看護では、バイタルチェックや医療機器の管理、療養指導、服薬指導・管理などが主な仕事です。
しかし自宅で療養するのは患者にとっては大変なことも多いので、住環境やメンタルに関する専門的な知識を持っておくとスキルアップに役立ちます。
- 福祉住環境コーディネーター
- メンタルケア心理士
- 経絡リンパマッサージ・セルフケアアドバイザー
自宅療養をしている患者は住環境やメンタルからの影響を受けやすいので、こういった資格を活かしてワンランク上のケアを提供できる看護師になれば、将来的にキャリアアップも期待できます。
手術室の看護に役立つ資格鑑定
手術室で働く看護師は経験年数にもよりますが基本的に周術期のスキルや知識は身につけているので、もう一つ踏み込んだ資格を取得することでスキルアップできます。
手術では呼吸や心肺の停止に対するスキルも必須なので、いざというときに活かせる資格を取得しておきましょう。
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 呼吸ケア指導士
- BLSプロバイダー
BLSプロバイダーは医療従事者でなくても講習を受ければ認定されますが、救命のプロフェッショナルのための一次救命処置なので、他の診療科目でもスキルとして役立ちます。
看護師のスキルアップについてのまとめ
看護師としてキャリアアップしていくためにはスキルアップが必須です。
看護の現場で働き続けることもスキルアップの方法の1つですが、現場で得られる知識や技術には限界があります。
ワンランク上の看護師を目指してスキルアップするには自分にとって必要なスキルを考え、さまざまな学習を通じて看護技術や能力を高めていくことが重要です。
スキルアップをすると専門的かつ新しい知識を身につけつつ給与などの待遇も向上していきますので、目指す看護師像に適したキャリアプランを計画し、ぜひチャレンジしてみてください。