専門看護師の種類と認定看護師の違いは?めざすならどっち?
看護師としてキャリアアップするには資格を取得する方法があります。今回は「専門看護師」の種類と「認定看護師」との違いについてご説明します。
専門看護師の種類は13分野
専門看護師とは「複雑で解決困難な看護問題を持つ個人とその家族、集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく定常するために特定の専門看護分野の知識・技術を深めた看護師」のことで、日本看護協会と日本看護系大学協議会が連携して運営しています。
専門看護師の種類
専門看護師にいくつかの種類があるというわけではないのですが、次の13の専門分野に分かれて資格認定を行っています。(2016年12月現在)
- がん看護
- 精神看護
- 地域看護
- 老人看護
- 小児看護
- 母性看護
- 慢性疾患看護
- 急性・重症患者看護
- 感染症看護
- 家族支援
- 在宅看護
- 遺伝看護
- 災害看護
専門看護師の役割
専門看護師には、次の6つの役割があります。
実践 | 個人、家族及び集団に対して卓越した看護を実践する |
---|---|
相談 | 看護者を含むケア提供者に対しコンサルテーションを行う |
調整 | 必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う |
倫理調整 | 個人、家族及び集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決を図る |
教育 | 看護者に対しケアを向上させるため教育的役割を果たす |
研究 | 専門知識及び技術の向上並びに開発を図るために実践の場における研究活動を行う |
このように専門看護師はただ専門的な分野の看護を実践するだけでなく、医療スタッフ間の調整や看護者の教育、研究なども行う役割を担っています。
専門看護師と認定看護師の違い
専門看護師とよく似た資格に「認定看護師」があります。それぞれはどう違うのでしょうか。
専門看護師と認定看護師の分野や取得条件の違い
両者の違いを分野や取得条件などから見てみましょう。
専門看護師 | 認定看護師 | |
人数 | 2,104人 (2017年12月現在) |
19,835人 (2018年7月現在) |
役割 | ・実践 ・相談 ・調整 ・倫理調整 ・教育 ・研究 |
・実践 ・指導 ・相談 |
分野 | ・がん看護 ・精神看護 ・地域看護 ・老人看護 ・小児看護 ・母性看護 ・慢性疾患看護 など13分野 |
・救急看護 ・皮膚・排せつケア ・集中ケア ・緩和ケア ・がん化学療法看護 ・がん性疼痛看護 ・訪問看護 など21分野 |
資格取得の条件 | ・実務研修が通算5年以上あり、うち3年間以上は専門看護分野の実務研修であること ・看護系大学院修士課程を修了し、所定の単位を取得していること ・専門看護師の認定審査に合格すること |
・実務研修が通算5年以上あり、うち3年以上は認定看護分野の実務研修であること ・所定の教育機関で教育課程を修了していること ・認定審査に合格すること |
なお、認定看護師の制度は今後変更になる可能性があります。
専門看護師は難易度が高い!?
認定看護師の数が約2万人近くであるのに対して専門看護師の数は約2,000人で認定看護師の1割ほどしかいません。
専門看護師になるには看護系の大学院の修士課程を修了し、所定の単位を取得しなければなりません。それがハードルの高さとなっているのでしょう。
専門看護師の将来性とメリット
取得が難しい専門看護師ですが、取得しておいた方がいいでしょうか?専門看護師の将来性や資格取得のメリットについて探ってみます。
専門看護師のニーズは高まる?
看護をはじめ医療現場では、技術が急速に進んでいます。より高度な技術が導入され、患者さんの状態に合わせてより細分化した医療を提供するようになっています。
また、今後は一医療機関だけで治療にあたるのではなく、家族(在宅)や地域との連携も進んでいくと考えられています。
そんな中で患者さんに対してより専門的な看護を「実践」したり、医療機関と地域医療など保健福祉医療などに関わる人との「調整」を行ったりする専門看護師の役割は重要になってきます。
また、超高齢化社会・多死社会を迎える中では倫理面での問題も増えてきます。その場面でも専門看護師が倫理的な問題の調整を行う機会が増えていきます。
そういった意味でも、専門看護師のニーズは高まると考えていいでしょう。
専門看護師になるメリット
専門看護師になるメリットとしては、次の点があります。
- 専門的な分野での知識や看護技術が身につく
- 責任あるポストに就いてやりがいを感じられる
- 現場で信頼される
- 昇進や昇給につながる
専門看護師を目指す過程で多くの勉強をします。それによって高度で専門的な知識や技術を身につけることができます。
また、専門看護師を取得する人の数が少ないので、医療現場ではチームリーダーなど責任あるポストに就けますし、医師や看護師長をはじめ医療スタッフや患者さんとその家族から信頼される存在になります。
もちろん、昇進の可能性が高くなります。
専門看護師になるには
専門看護師はやや狭き門ではありますが、ぜひ挑戦してみましょう。そのための道筋をご紹介します。
専門分野を決めて大学院で学ぶ
専門看護師になるには、看護師の実務研修が5年以上あり、そのうち3年以上は専門分野の実務研修があることが条件です。実務研修とは該当する専門分野で実務経験を積むということです。
その上で日本看護系大学協議会が認定している学校の大学院で2年間勉強する必要があります。もちろん、その大学院の受験に合格しなければなりませんし、修士課程を修了しなければなりません。
なお、2018年現在で全国の106大学の大学院が受け入れを行っています。
専門看護師の資格取得中は休職?
問題なのはこの2年間の大学院での勉強期間です。仕事との両立ができないことはありませんが、どちらもハードなのでかなり厳しいものになるでしょう。
そのため、いったんは仕事を休む(休職)か退職することになります。するとその間の学費と生活費が必要になります。しかし、仕事をしていないので収入は途絶えてしまいます。
専門看護師を目指す場合は、2年間の学費と生活費を貯めておかなければなりません。こういったところも専門看護師の資格取得のハードルが高い要因となっているようですね。
専門看護師の資格取得をバックアップする病院も
医療機関によっては職員のスキルアップや資格取得を応援するところがあります。専門看護師を目指す場合も、病院側が理解を示してくれるところならば退職ではなく休職扱いにしてくれたり、学費の補助や一定額の給与を支給したりしてくれるところがあります。
まずは上司に相談してみましょう。
なお、専門看護師の資格取得後はより好条件の求人に応募することができます。しかし、職場から補助を受けた場合は資格取得後も継続してそこで働くことが条件になっていることが多いので注意しましょう。
資格取得を機にさらにステップアップしたい場合は、職場の援助は受けずに一度退職して自力で資格取得した後でより良い条件の仕事に転職するといいでしょう。
事前に学費を貯金する方法や大学院に通いながらアルバイトをする方法などがあります。自分で計画を立てて考えてみるといいですね。
大学院の受験内容も要チェック
専門看護師の資格取得のために大学院に入る場合、受験科目や受験内容は大学によって異なります。
筆記試験があるところ、面接だけのところ、英語が必要なところなどさまざまです。また、地方の大学によっては専門分野の科目がない大学もあります。例えば青森県立保健大学大学院では「がん看護」と「母性看護」のみ、岩手県立大学大学院では「小児看護」と「慢性疾患看護」のみなどすべての専門分野がそろっているわけではありません。
自分が取得したい専門分野の大学院に入るには、2年間だけ大学の近くに転居する必要に迫られることもあります。
さまざまな面で下調べをしっかり行って取り組むようにしましょう。
専門看護師の種類と認定看護師の違い~まとめ
専門看護師は13分野で資格認定を行っています。また、専門看護師には「実践」「相談」「調整」「倫理調整」「教育」「研究」の6つの役割があります。
一方、認定看護師は21分野で、その役割は「実践」「指導」「相談」の3つだけです。
なお、2018年現在で全国の専門看護師の数は約2,100人、認定看護師の数は約2万人となっていて圧倒的に認定看護師の方が多くなっています。
専門看護師になるには5年以上の実務研修(うち3年間は専門分野での実務研修)があり、看護系大学院で2年間勉強し修士課程を修了することが条件になっています。その間は仕事との両立が難しいため、休職するか一度退職するケースが多いようです。
そういった面でも取得のハードルが高い資格ですが、取得すると職場でリーダー的なポストに就けるほか、やりがいを感じる、昇進に有利になるなどのメリットがあります。
取得に関しては自分が将来目指す看護師像をしっかり描きながら計画的に取り組むようにしましょう。