ブラック病院求人につかまらないためのポイント!病棟希望なら勤務時間をチェック
看護師の勤務時間は交代制がとられ、他の職業に比べると特殊です。さらに医療機関によって交代制の種類や、それに対する勤務時間が異なります。もし、病棟勤務の転職を希望される場合、この勤務時間をチェックすることは忙しさをはかる目安として大変重要です。また、「ブラック病院」に転職しないよう、応募する前にチェックしたいポイントについても知っておきましょう。
労働時間の規定や上限について
病棟勤務の場合適用される「変形労働時間制」とは
労働時間は「労働基準法」という法律によって、「1日の上限を8時間以内、1週間で40時間を超えてはならない(第2条)」と定められています。しかし、看護師の場合、病棟で勤務するとなると交代制勤務になることがほとんどです。そして勤務時間が8時間以上になることも多々あります。
これは一見、労働基準法違反なのではないかと思われるかもしれませんが、「変形労働時間制」が適用されていれば問題ないと判断されます。そのために看護師の労働時間は「変形労働時間制」が採用されていることがほとんどです。
変形労働時間制は、1日の労働時間で上限を設けるのではなく、1週間単位、1か月単位、1年単位の幅で労働時間の上限を超過しないか判断するというものです。例えば1週間単位ならば、1日8時間を超える労働時間の日があっても、1週間で40時間を超えなければセーフ、ということです。また1カ月単位で見る場合は、その週が40時間を超えたとしても、次の週で超過しなければ問題ない、と判断されます。
変形労働時間制は「36協定」を結んでいることが前提
変形労働時間制を行うためには、それを開始する前に「労使協定」を結んでおく必要があります。これは、医療機関側と、労働組合かあるいはその代表とが、書面による協定を締結することです。この場合、変形労働時間制についての協定が書面で交わされていることを意味します。
この労使協定の必要性は、労働基準法第36条に定められています。そのため通常「36(サブロク)協定」と呼ばれます。もしも転職しようと思う病院で、こうした協定が結ばれていなければ問題ですので注意しましょう。
病棟看護師の勤務体制について
2交代制か3交代制かのパターン
病棟看護師の場合、勤務時間は交代制がほとんどです。そしてその病院で、2交代制が取られているか、3交代制が取られているかによって、勤務時間やそのインターバルは異なります。
3交代制勤務が病棟勤務のおよそ7割を占める
3交代制勤務は、日勤、準夜勤、深夜勤の8時間ずつの3交代がベースの勤務体制です。準夜勤と深夜勤がいわゆる夜勤にあたり、16:30~翌朝9:00までの中で、0:00~0:30くらいの間で交代するのが一般的です。ただし、病院によっては、日勤を早出(6:00~14:00頃)、遅出(14:00~22:00)に分割し、さらに準夜勤、深夜勤に区切られるところもあります。
3交代制の特徴は、1勤務あたりの時間は比較的短めであるのに対し、その勤務から次の勤務までのインターバルも短いところにあります。例えば日勤が16:30までの病棟で、次の勤務が0:30からの深夜勤だとしたら、8時間の休みの間に食事や入浴、睡眠をとることになります。しかも勤務時間内に看護記録がつけられなければ、この休み時間はさらに短くなります。
あるいは早出がある病棟なら、準夜勤が終わったあと早出をしなければならない可能性もあります。この場合も睡眠時間は仮眠程度のものとなることが考えられます。従って、2~3時間の睡眠で次の勤務に入る、というケースも多々存在します。
ちなみに病院のおよそ7割がこの3交代制を取っています。「慣れてしまえば大丈夫」、という人もいますが、不規則な生活になることはほぼ間違いないと思われます。ただし、2交代制だと長時間勤務になるため、家庭の事情などでそれが難しい場合は、3交代制の方がいいと考えられる場合もあります。
2交代制勤務は比較的ゆとりのある病棟で多く採用されている
2交代制の場合は、1日24時間を2分割し、労働時間を12時間ずつか、8時間の日勤と、16時間の夜勤とに分ける勤務体制です。具体的には日勤は8:00あるいは8:30~17:00、夜勤は16:30~翌朝9:00ごろまでが一般的です。12時間ずつではないものの、日勤ロングと呼ばれる8:00~19:00までのシフトを取り入れている病院もあります。その場合夜勤は19:00~翌朝9:00ごろまでとなります。
2交代制は、比較的勤務にゆとりがある病棟で多く採用される傾向があります。ただし急性期や救急を受け持つ病院の場合は、ナースコールや入院対応に追われることもあります。2交代制の夜勤の場合は、労働時間が長くなるものの、シフトは1カ月単位で組みやすくなるため、スケジュールはわかりやすくなります。さらに、まとまった休みを取りやすいのも、2交代制のメリットと言われています。夜勤明けの休息時間は比較的長くなるので、十分な休息を確保しやすくもなります。
2交代制の場合、夜勤の間に休憩時間が入ります。これは労働基準法で「8時間を超過する勤務の場合、1時間の休憩を入れる」と定められているためです。単純に考えると16時間勤務の場合、2時間の休憩時間が必要のように感じられますし、実際それが推奨されています。しかし、法律的には「1時間以上」と決められているため、2時間はもらえない病院も多いです。
病棟看護師として勤務する場合の休日について
4週8休制を採用する病院が多い
病棟看護師の場合、変形労働時間制により決まった休みが得られることは難しいです。ただし法律では、「休日を月平均8日以上取得すること」といった定めがあります。そのため、多くの病院では4週8休制を採用する場合が多いです。この場合年間休日は105~125日程度になります。
休日やシフトには病院独自の暗黙のルールが存在する
法律には休日についての定め以外に、「夜勤明けの当日に続けて夜勤にさせないこと」、「夜勤スタッフには5年以上の看護師経験を持つ者を1名以上入れる」といった条項もあります。しかし実際は、「夜勤は3日以上続かないようにする」、「夜勤明けの日は日勤を入れない」など、病院やその病棟独自の暗黙のルールが存在するのが実情です。
夜勤中の仮眠時間は労働時間として扱われる
病院によっては夜勤中に仮眠時間を設けている場合もあります。この場合の仮眠時間は、法律的には労働時間として判断されます。なぜなら、仮眠をしている最中であっても、看護師は患者の急変や緊急搬送などがあれば対応しなければならないためです。そのため、原則として仮眠時間は給与計算や労働計算に含まれることになっています。
ただし病棟看護師の場合、夜勤中に仮眠時間以外、休憩時間を取れないこともあります。その場合は仮眠時間の1時間が、休憩時間として扱われるケースが多いです。勤務や休日に関しては、法的基準は定められているものの、病院の人員が不足している場合などは基準があっても必ずしも遵守されていないというのが現状のようです。
病棟看護師の残業時間について
労働基準法で定められた残業の限度と実際とは
労働基準法では残業について次のような限度が決められています。
1週間 | 15時間以内 |
---|---|
2週間 | 27時間以内 |
4週間 | 43時間以内 |
1ヶ月 | 45時間以内 |
2ヶ月 | 81時間以内 |
3ヶ月 | 120時間以内 |
1年間 | 360時間以内 |
しかし、病棟看護師として働くとなると、残業がないというケースはほとんどなく、1日あたり1~2時間の残業は当たり前、というケースが多いようです。この残業は、勤務時間に記入できなかった看護記録をつけるために残る場合や、情報収集、現場の把握、1日の看護計画作成の為などにより、定時より1時間ほど早く出勤するなどのケースが多いようです。20代看護師の平均残業時間は25.9時間で、そのうち1/4は35時間以上を超えるというデータも出ています。
特に残業が多くなる診療科目とは
大学病院、総合病院など、病院である限り急性期の患者や緊急搬送の受け入れなどにより、基本的に忙しく、その分残業も増加する傾向にあります。その中でも特に残業が多いと言われているのが、循環器科、産婦人科、整形外科などです。
循環器科や産婦人科は、患者がいつ急変することや、搬送されてくるか分からないため、予定が立てられない部分があることがその理由です。また、整形外科の場合は、オペ数が1日に10件以上入るケースも多々あり、それによって残業も増えやすい傾向にあります。
また、診療科目に関わらず管理職を含め役職についている人の場合は、自分の仕事プラス他のスタッフに助言やフォローをする機会が増える為、自然と仕事量も増えます。
残業代の有無については病院ごとに異なる
労働時間を超えての勤務は、残業にあたりますので通常は対価が発生します。基本的には残業代及び超過勤務手当については、時給の25%増で計算され、給与にプラスされます。しかし実際はサービス残業となるケースも少なくありません。前述した早出出勤や、勤務後に看護記録をつけるといった行為が慣習化している病院が多いからです。
また、「申し送りの時間」や「勤務時間以外での勉強会や研修」も、勤務として残業代に算入されるかどうかは、病院によって判断が異なります。他にも、3交代制の場合は30分早く出勤して申し送りをする職場が多く、そういったケースは労働時間として算入し、残業代を支払うよう推奨されていますが、実際のところは病院によってまちまちです。
中には、残業代は基本給やボーナスに含まれるという病院も存在します。この場合は違法になりますので、もし現在の病院でそういった体制が取られているようであれば転職を検討された方がいいかもしれません。転職を考える場合は、どのケースまでが残業として認められているのか、確認しておくようにしましょう。
転職する際のブラック病院を見分けるポイントとは
何よりもまず情報収集が大切
「ブラック企業」という言葉を耳にされたことがある方も多いでしょうが、病院も例外ではありません。若い看護師職員を大量採用し、離職に追い込むまで過重労働や違法労働を強制する、「ブラック病院」と呼ばれる存在もあるようです。そんなブラック病院に勤務することを避けること、そのためには応募するまでに情報収集を十分に行うことが必須です。
病院の病床数に対しての看護師の数に異常性がないか確認
病棟勤務は基本的に忙しいですが、それでも病院の規模や診療内容、スタッフ数などに多少左右される面があります。ただし、中には病床数に対して看護師の数が異常に少ないケースもあります。例えば、100床の病床数の病院で、看護師の人員配置数を7:1としているとします。この場合、最低でも70人の看護師が必要です。つまり70人より働いている看護師の人数が少ないとすれば、それだけ忙しい職場だと判断できます。この差異が著しいほど、ブラック度もアップすると考えられます。
求人の数が多すぎないか、若い看護師が多すぎないか確認
全職員の数に比べて、求人の数が著しく多い場合も注意が必要です。例えば300人の職員がいる病院で100人の大量採用という求人があった場合などは、多忙すぎて離職者が多いのではないか、と少し疑ってみたほうがいいかもしれません。さらに若い看護師が全体に占める割合が高い病院も、それだけ離職率が高いのではないか、と考えることができます。
特殊な業務や専門性があるわけでもないのに「ブランクNG」は注意
病棟看護師は業務内容も多岐に渡るため、即戦力として求められることは多いです。しかし特殊な業務や危険を伴う業務内容、あるいは専門性の高い職務でもないのに「ブランクのある場合はNG」、「経験者のみ採用」という募集を出されている場合は要注意です。深読みすれば、そこまで即戦力を求めている職場環境であると推測することができるからです。
それ以外にも、正職員ではなくパートや臨時職員だけを募集している場合も注意しましょう。もしかしたら人手があまりに足りないため、一人でも多く採用したいということの現れかもしれません。
提示されている給与が高すぎるところにも注意
看護師の平均年収は400万と言われています。これは月額換算にすると30万と少しほどです。もちろん夜勤の回数やボーナスの具合によって、金額は前後すると考えられますが、求人を見てあまりにも破格の給与が提示されている場合は注意した方がよさそうです。これも人手不足や離職率の高さから給与水準を上げている可能性があるからです。
上手な転職のポイントとは
口コミや転職サイトを利用する
病棟看護師の転職では、とにかく実際その病院で働いている人の意見を聞くことが一番確実です。求人票に書かれていることだけでは、判断できない部分が多々あるからです。それ以外にも、転職サイトの利用をおすすめします。
看護師専門の転職サイトであれば、専門のアドバイザーやコンサルタントが担当としてついてもらうことができます。病院事情に精通したアドバイザーやコンサルタントがついてくれることで、求人票からは分からない情報も収集することが可能です。
面接で質問をはぐらかされる場合は注意を
もし可能であれば面接で休日がきちんととれるかどうかや、残業の申請方法、実際の残業時間などを聞いてみるのも、その病院を判断するのに役立ちます。そこではっきりと回答がもらえるかもらえないかで、見分ける判断にもできるからです。ただ、面接で聞くのが難しいことも多いです。その場合は、事情に精通したアドバイザーやコンサルタントに相談してみましょう。
病棟看護師に転職する際は求人票+情報収集が大切
どこまで残業が認められるかが働きがいにもつながる
転職で病棟看護師を希望する場合は、求人票にある勤務時間をまず確認しましょう。そこで2交代制か、3交代制か、その勤務時間である程度忙しさを量ることが可能です。さらに看護師の配置人数や、全体の看護師職員数などが確認できると、より判断材料にできます。看護師が少ない病院や、求人の数や若い看護師の数が多い病院は、通常勤務以外の残業も多い可能性があります。同様に、休日についても確認しておきましょう。
また、求人票だけでは、その病院が自分にとって満足できる転職先か、残業代がきちんと支払われるかなどについて見極めるのが難しいこともあります。そのため、できれば希望する病院に勤めている人に話を聞いてみることや、ネットの口コミを確認してみてください。加えて、看護師専門の転職サイトでアドバイザーやコンサルタントに相談されることをおすすめします。求人票だけでは得られない、実際の勤務状態などを聞ける可能性があります。
病棟看護師は基本的に忙しく、超過勤務が多い職場です。しかしその中には、ブラック病院と呼ばれるほどの仕事量をこなさなければならない病院も存在します。長く看護師としてキャリアを積んでいくためにも、残業代などを含めた、もらえるべき報酬がきちんともらえる病院を探しましょう。それが自分にとっての働きがいにつながり、ひいてはやりがいへと感じられるようになるのではないでしょうか。