看護師の目標管理やクリニカルラダーは面倒!でも転職に活かせる
看護師は日々の看護業務の他に申し送りや看護記録、研修、委員会などで多忙を極めています。その上に「到達目標」や「目標管理」「クリニカルラダー」なども課されるようになり、疲労困ぱいしている看護師が多いのではないでしょうか。
しかも、このクリニカルラダーは、今後全国のすべての施設で共通化されるとのこと。そうなるとどこに行っても取り組むことになります。転職を考える前にクリニカルラダーのことを知っておきましょう。
また、今働いている職場で到達目標やクリニカルラダーに取り組んでいる人は、その経験が転職に活かせますよ。詳しくご説明します。
看護師の目標管理やクリニカルラダーって何?
まずは「目標管理」や「クリニカルラダー」とは何なのかをご説明します。
看護師の目標管理とは
看護師の現場では「到達目標」という言葉があります。到達目標は各医療機関が独自に取り組むもので、特に新人看護師に対して到達目標を設定し研修や新人育成を行います。
また、それとは別に医療機関ごとに「目標」を掲げて、各看護師が取り組むこともあります。
この場合は、それぞれの医療機関の経営方針や目標に沿って看護部が毎年年間目標を作成します。それを看護師一人ひとりの目標設定にまで落とし込み、各自が自分の目標達成に向けて取り組みます。これを「目標管理」と言います。
看護師の目標管理は何のためにするの?
なぜ病院ごとに目標設定をして看護師単位で達成を目指さなければいけないのでしょうか。
その背景には、財団法人日本医療機能評価機構が実施している「病院機能評価」があります。「病院機能評価」の中に「目標管理」の項目があるため、多くの医療機関で目標管理制度を導入するようになりました。
目標管理とは組織全体の目標を達成するために、組織に所属する個人がそれぞれの役割や職務に基づいて一定期間の目標を設定し、中間、期末などに目標の達成度合いを評価するものです。
そのため、看護師が自分で「今年は〇〇を頑張ります」という目標を掲げるといった個人的なものではなく、まず医療機関全体の目標があり、それに沿って看護部の目標があり、そこに所属する職員各自が目標を立てるのが特徴です。
これは看護師一人ひとりが組織(自分が働いている病院)の経営目標を知って、主体的に関わるという意味があります。
目標管理は看護師のモチベーションUPと評価に利用
看護師にとって目標管理は「やらされている感」が強いと思われますが、看護部長や看護師長など管理職にとっては部下の看護師のモチベーション(やる気)のUPにつながる他、目標の取り組み度合いや達成度などを評価に反映させることができます。実際に目標の達成度を各看護師の評価に取り入れているところもあります。
また、目標を設けて取り組むことで、看護師一人ひとりが成長できますし、看護部長・看護師長と各看護師が個人面談をすることでコミュニケーションが取れ、相互理解が深まるというメリットもあります。
看護師のクリニカルラダーとは
次に「クリニカルラダー」についてご説明します。
「ラダー」とは「梯子(はしご)」のことで、看護師一人ひとりが梯子を上がるように段階的にステップアップを目指すシステムのことを言います。
クリニカルラダーは日本看護協会が開発したもので、看護師の現場や状況に関わらず、すべての看護師に共通する看護実践能力の指標の開発と支援を行い、適切な評価を行うことを目的にしています。
クリニカルラダーは全国・全施設共通
今までにも看護師のラダーはありましたが、内容は施設ごとに設定されていました。そのため、レベルや取り組み内容は施設によって違いがあったのです。
しかし、このクリニカルラダーは内容が一律化され、全国どこの施設でも共通化することが特徴です。
その背景には2025年の少子化と超高齢化社会に備えて、より優れた人材の確保や育成が望まれるという事情があります。
クリニカルラダーの内容
クリニカルラダーは「看護実践能力」に焦点を当てて、「ニーズをとらえる力」「ケアする力」「協働する力」「意思決定を支える力」の4つの力に対してレベル1からレベル5までの段階を設けて行動目標を掲げています。
例として「ケアする力」のレベルごとの目標を見てみましょう。
レベル1 | 助言を得ながら安全な看護を実践する |
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レベル2 | ケアの受け手や状況(場)に応じた看護を実践する |
レベル3 | ケアの受け手や状況(場)の特性をふまえた看護を実践する |
レベル4 | 様々な技術を選択・応用し看護を実践する |
レベル5 | 最新の知見を取り入れた創造的な看護を実践する |
このように同じ「ケアする」ということに対してでも、レベル1の場合は助言を受けながら安全な看護を実践することを目標にしていますが、レベル5になると最新の知見を取り入れて創造的な看護を実践することとかなり高度なことを目指しています。
他の「ニーズをとらえる力」「協働する力」「意思決定を支える力」も同様に5段階のレベルごとに実践能力を定めて、評価します。
クリニカルラダーの具体的な取り組み
クリニカルラダーは次のようなステップで取り組みを進めていきます。(実際は医療機関によって異なります)
- 各自の目標を設定する
- 目標達成のために研修に参加したり、課題に取り組んだりする
- 達成度(到達度)をレポートやテストなどで判断する
- 自分で評価する
- 管理職(看護師長など)との面談で評価のすり合わせを行う
クリニカルラダーに取り組むことで、各看護師の能力向上を図り、ひいては医療機関・介護施設全体の能力向上を図るというねらいがあります。
クリニカルラダーや目標管理を看護師の転職に活かそう
クリニカルラダーは2016年5月に日本看護協会から公表されました。まだ始まったばかりですが、2025年にはあらゆる場においてすべての看護師に共通する看護実践の指標として導入することを目指しています。
クリニカルラダーは今後すべての施設で導入!?
「2025年にはあらゆる場ですべての看護師に共通する看護実践の指標」とあるように、今後は医療だけでなく介護業界(高齢者施設や訪問看護・訪問介護など)で働く看護師も取り組むように進めようとしています。
クリニカルラダーや目標管理のメリット
毎日の看護業務だけでも多忙を極めているのに、さらに目標管理やクリニカルラダーの取り組みは負担に感じるかも知れません。
確かにレポートや研修参加などは時間を取られますが、各レベルごとの目標は毎日の看護の中で意識することで看護能力が向上します。
また、自分の能力を知ることで、今後はどんなところに気をつければいいのかが見えてきます。管理職の評価は厳しいかも知れませんが、それによって自分の弱点や長所を知るきっかけにもなるでしょう。
クリニカルラダーや目標管理の経験を転職でアピール
目標管理を実践している医療機関は多いですが、クリニカルラダーはまだ取り組みが進んでいないところがあります。
しかし、日本看護協会では今後すべての医療機関、介護系機関などでの取り組みを進めようとしています。そのため、転職の際には「前職でクリニカルラダーに取り組んでいた」という経験は大きなアピールポイントになるでしょう。
少しでも評価を上げておくと有利
せっかく転職時にアピールしようと思っても、クリニカルラダーに取り組んで2年でレベル1のまま…など進化が見られないと、あまりアピールの効果にはなりません。
精一杯取り組んで評価を上げておきましょう。
クリニカルラダーと目標管理を看護師の転職に活かす~まとめ
ただでさえ忙しい看護師業務にクリニカルラダーや目標管理などの取り組みが入ると多忙を極めてやる気を失くす…という人が多いかも知れません。
しかし、日本看護協会の発表では、今後医療現場だけでなく介護分野など看護師が働くあらゆる場でクリニカルラダーの取り組みを進めることを計画しています。
今までの職場ですでにクリニカルラダーを経験していると自分のアピールポイントとして活用できます。ただし、その場合は少しでも評価(レベル)を上げておくことが重要です。
クリニカルラダーや目標管理は面倒なことではありますが、前向きにとらえて取り組んでみましょう。