新しいがん治療の一つ「免疫療法を行うクリニック」における看護師の業務と役割とは
免疫療法とは、主にがん患者に対して、クリニックを中心に行われている新しい治療法です。先端医療として広く研究が進められている分野でもあり、勤務する施設によってやり方や方針が異なるのが特徴的です。ただしどこで働くにしても、看護師には単に医療行為を行うだけでなく、精神的なケアまで行えるようなスキルが求められます。
免疫療法とは
新しいがん治療の先駆けとして注目されている分野
がんの治療方法には、「三大療法」と呼ばれる代表的な3つの治療方法があります。一つ目は手術で腫瘍を切除する「外科療法」、二つ目は抗がん剤を投与する「化学療法」、三つめが放射線を使った「放射線療法」です。そして現在、第四のガン療法として研究が進み、注目されているのが「免疫療法」です。これは1980年代にアメリカで始まり、がん治療の中では最先端の治療方法です。現在のところ大きな副作用がほとんど生じていないということで、今最も注目されている治療方法でもあります。
免疫療法の方法とは
免疫療法は「免疫細胞療法」とも呼ばれ、元々人間が持つ免疫細胞の機能（自然治癒力）を高めて、がん細胞を攻撃させようとする方法です。実は、人間の身体には常にがん細胞が誕生しています。しかし、通常は人間の持つ免疫力により、体内から排除するため、健康な状態であればがんの発症には至りません。ところが何らかの要因でがん細胞が増殖し、それが免疫機能を上回ったとき、ガンになります。そこで、免疫機能を人工的に強めてがん細胞を攻撃しようというのが、免疫療法の狙いです。その方法には次のようなやり方があります。
- 自然の免疫や獲得免疫を利用する方法
- 免疫機能を担う白血球や抗体を利用する方法
- 白血球を体内で増やし、がん細胞を攻撃する方法
このように、身体の免疫を担う細胞などを利用するのが一般的です。そして、それぞれの方法では、利用される細胞を体外で加工し増殖させた後、それに処理を加え、さらに新たに機能を付加して治療に用います。
どの治療法を用いるかは、それを行う施設ごとに異なりますが、具体的な治療法には「高速温熱リンパ球療法」や「樹状細胞療法」、「活性化リンパ球療法」、「NK細胞療法」などがあります。
免疫療法が採用されるケースと行われる施設とは
免疫療法はがん患者の中でも、化学療法や放射線治療で効果が出なかった人に対して行われることが一般的です。
また、免疫療法を日本国内で実施している病院やクリニックは少なく、治療を受ける場合も、臨床試験でない限り、ほとんどが自由診療の対象となります。免疫療法が行われる施設にはクリニックがほとんどですが、一部のがんについては、厚生労働省の認可を受けた大学病院、がんセンターでも実施されています。
免疫療法を行うクリニックにおける看護師の業務内容とは
外来でありつつ病棟のような働きが求められる
免疫療法を行うクリニックは、基本的に外来で、1日のうちで診察を行う患者は15人程度と非常に限られた人数です。ただし、一人に対して診療を行う時間は、1回あたり1～3時間程度と長時間設けられるのが特徴です。
その際看護師は、採血や点滴、通常の看護業務一般の他、成分採血など特殊な業務も行うことになります。そのため、採用の条件として注射や穿刺に抵抗がない人や、3年ないし5年以上の経験を持つ看護師が求められることも多いです。
また合間には、電話応対や受付といった事務的業務も含まれます。このように、診療スタイルとしては外来でありつつ、一人ひとりの患者と長時間接することで病棟のような働きも求められる業務です。
積極的できめ細かい接遇能力とタフさが求められる
免疫療法を行うクリニックに勤務する場合、看護師には患者やその家族と積極的に関わり、きめ細かい対応ができる能力が求められます。受診する患者の多くは、がん治療に伴う身体的精神的苦痛を抱えています。看護師は患者がその家族が抱える悩みを聞き、痛みや苦痛の緩和につながるケアを行う必要があります。
また、免疫療法を利用する患者のがんの進行程度は、初期から重度までさまざまで、中には末期と診断された患者と接する可能性もあります。そのため、一般的な外来や病棟に比べ、より死が身近になる可能性が高く、それに向き合える精神的な強さも求められます。
免疫療法を行うクリニックに勤めるメリット・デメリット
最先端医療を経験できるが、場合によっては出張を伴うこともある
免疫療法は現在行われているがん治療の中でも最先端と言われる治療方法です。それを経験できるということは何よりのメリットになると考えられます。まだ研究途上にある治療法ではありますが、がん看護に関心があるという、熱意やバイタリティを持っている人にとっては適した業務と考えられます。
また、看護師を募集するのは新規開業か開業して数年という比較的新しいクリニックが多い傾向にあります。だから採用された時、スタッフ全員が同じスタートラインに立ち、一からクリニックを作り上げていくケースも多く、それがメリットとなることもあります。勤務はほとんどが日勤で残業は少ない傾向にあります。
診察自体も予約制としているケースが多いため、1日に対応する患者の数も限られることが多いです。ただし、クリニックによっては出張で提携のクリニックに出向くケースもあり、応募の際は勤務地の確認をしておくことが大切です。
求人検索は看護師専門の転職サイトを活用するのがおすすめ
免疫療法を取り扱うクリニックは、全国的に見ても都市部に多い傾向があります。また、がん看護を経験したことのある看護師は優遇されるケースもあります。ただし、がん看護は未経験という人や、免疫療法の知識がないという場合も、看護師としての経験をある程度積んでいれば応募できる可能性が高いです。
免疫療法に携わりたいという場合は、求人を探す際、看護師専門の転職サイトを活用することをおすすめします。非公開求人を多く取り扱っているため、採用につながりやすいというメリットもありますし、担当のアドバイザーやキャリアコンサルタントに相談することで自分の希望に見合う待遇の勤務先を見つけやすくなります。
最先端の医療に携わることで大きな経験を積める
一人一人の患者と深く向き合いたい人やがん看護に興味がある人には適した環境
免疫療法は最先端のがん治療であり、まだ研究が進められている状態の治療法で、今後ますます発展していくと予想されます。それゆえ注目度も高い分野と考えられます。また、免疫療法は施設によって、取り入れられているやり方も違います。
そのため、同じ免疫療法を行うクリニックでも、勤務する場所によって違うケアも経験できる可能性が高いです。だから最先端医療の現場で働きたいと意欲のある人にとっては、多くのことを経験できるチャンスがあります。がんという、難しい病気を相手に闘っている患者の看護をすることは、精神的な強さも求められますが、前向きに学びたいと考える人には大きな経験値となりうる環境と考えられます。
