看護師としての判断力が活かせる「デイサービス」の仕事は、一人一人の利用者とも向き合いやすい
看護師の資格はさまざまな場所で活かすことができますが、デイサービスもその場所の一つです。病院に比べると、一人一人の利用者とゆっくり向き合える時間を持ちやすい反面、高齢者が相手ということから、急な体調変化を見つけたときは看護師としての判断力が求められます。また、「医療」ではなく「介護福祉」の現場で「看護師」として働くことになるため、病院とは違う業務を行う機会も増えます。
デイサービスとは?
高齢者が楽しく健康維持を行える通所施設
デイサービスは「通所介護」と呼ばれ、病院や老人介護施設などに入所せず、昼間だけ利用できる通所型の介護サービスのことをいいます。施設は、老人福祉施設などに併設されている場合や、マンションの1階などで企業が運営しているケースがあります。さらに、老人福祉施設としての老人デイサービスセンターと、障害者自立支援法に基づく児童デイサービスや障害者デイサービスもあります。
治療や介護を目的とした施設ではないため、来所する人は、おおむね健康に問題のない人たちです。ただし、老人デイサービスセンターの場合、車いすや杖を使用したり、認知症を発症している人が利用する機会は多いです。
デイサービスでは、徒歩や送迎によって集まった利用者たちが、レクリエーションや食事、入浴、機能訓練などを行います。利用者にとっては、デイサービスに来ることで大勢の人とコミュニケーションを取り、社会と関わりを持つことができるというメリットがあります。老人デイサービスセンターの場合は、認知症の進行を予防したり、老化防止など健康が維持できるようにすることも目的にしています。
一日のプログラムに沿って過ごす
利用者は大体10時から16時ごろまでの日中をデイサービスで過ごします。一日のスケジュールは事前にプログラムが組まれており、午前中レクリエーションをしながら順番に入浴し、昼食を取って午後からまたレクリエーションや体操などの機能訓練を行います。レクリエーションは、その時々によって歌やゲーム、絵を書く、折り紙、書道などさまざまな内容が組まれます。イメージとしては、高齢者が利用する保育所、幼稚園と考えると分かりやすいかもしれません。
デイサービスにおける看護師の役割とは
基本的な健康チェックと介助が主体
デイサービスでの看護師の役割は、利用者が安全で楽しい時間を過ごせるよう援助することです。そのために具体的には次のような業務を行うことが多いです。
- バイタル測定、血糖測定、インシュリン注射
- 服薬管理
- 爪切り、耳かき
- 胃ろう管理、吸痰、浣腸、摘便
- 創傷処置、湿布貼用、軟膏塗布、点眼
- 入浴介助
- レクリエーション参加
病院と比べ、デイサービスでの看護業務は、重症患者が急に搬送されてくる、ということはありません。そのため、注射や点滴といった医療行為を行う機会はほとんどなく、上記の通り、利用者の健康管理に比重が置かれた業務内容となります。基本的なスキルがあれば、問題なくこなせることがほとんどです。
特徴的なのは、施設によっては入浴介助やレクリエーション参加など、介護福祉寄りの業務も含まれることです。あくまで「介護福祉」が主役の現場であるため、介護士としての役割も混じったような業務になる可能性は高いです。
デイサービスで求められる看護師のスキル
不測の事態で的確に判断できる力
看護師がデイサービスで行う業務にバイタル測定がありますが、これはその日の入浴に差し支えないか、運動をしても問題ないかをチェックするためのものです。しかし、高齢者の場合、高血圧など持病を持たれていることも多く、さっきまで問題なく元気にしていた人が、急に具合が悪くなるケースも想定されます。そんなとき、帰宅させるだけでいいか、救急車を呼ぶべきか判断しなければなりません。
デイサービスは基本的に医師が不在の時間が長く、その場に医療の専門知識を持っていることはもちろん、看護師の資格を持った人間は自分一人という状況も多いです。「福祉」が主役の場ではあるといっても、そうした不測の事態が起こった場合には、医療の知識を持つ者として、的確な判断ができるかどうかが求められます。責任のある立場の人間として、何か異常がないか常に見回し、なるべく早く気付くことができる能力が必要とされます。
利用者とのコミュニケーション能力
病院勤務と比べると、デイサービスでは比較的ゆとりを持って一人一人の利用者と接する時間が取れます。訪れる利用者も決まっていることから、自然と顔なじみになりやすく、距離も縮まりやすい傾向にあります。その分、どんな利用者ともコミュニケーションを取れることは大切なスキルです。時には叱られたりするかもしれませんが、それも「人生の先輩からの意見」として受け止められる気持ちは持っている必要があります。
ヘルパーやケアマネとの協力、連携
利用者やその家族に安心して通ってもらえるためには、ヘルパーやケアマネなど福祉を専門としたスタッフと、垣根を超えていかに協力し、連携できるかが重要な要素です。同じデイサービスで働くスタッフ同士、支え合えるように協調性を持つことも、看護師として働く上で必要と考えられます。
看護師としてデイサービスで働くメリット・デメリット
精神的・肉体的な負担は軽減しやすい
そのデイサービスに看護師が何人常駐するかによって忙しさは異なりますが、日々の看護業務は基本的なスキルがあれば十分というケースが多いです。そのため、一般的にデイサービス勤務になれば、病院勤務に比べて精神的・肉体的負担は軽減しやすい傾向にあるようです。
夜勤がなく、ブランクがあっても復帰しやすい
デイサービス業は日勤なので、夜勤の心配はありません。休日は施設ごとに異なりますが、一般的には土曜日や祝日が休みということが多いです。休みが固定されやすく、夜勤の心配がないことから、仕事と家庭を両立したい、という人も働きやすい環境です。
また、求められる技術も基礎的なものが多く、救急搬送されてくるといった緊張感も少ないため、出産や育児などでブランクがある人でも復帰しやすい環境と言えます。一人一人の利用者に時間をとりやすいので、ゆったりと働きたいと考えている人には適した職場であると考えられます。
スキルアップを求めると物足りなく感じる可能性もある
デイサービスの場合病院と違い、次から次へと業務をこなさなければならない忙しさや、難しい症状の患者の看護をするなど、緊張感の求められる状況はあまり訪れません。最新の医療機器に触れる機会はもちろん、注射や点滴といった技術を発揮することもほとんどなくなるので、スキルアップを求める人にとっては物足りなく感じる人もいます。
何か不測の事態があったときは判断を求められるような責任ある立場ではあるものの、施設によっては何事も最終的な判断はケアマネが行うケースもあります。現場経験が豊富な人ほど、デイサービスでは看護師としての存在意義を見失ってしまう可能性はあります。
一般的な平均給与よりは下がることもある
デイサービスの利用料は介護福祉法に基づき、利用者の要支援度によって利用負担額が決定します。看護師に渡される給与も、そうして施設に入ってきた利用料の中から支払われます。そのため、一般的に病院勤務よりは年収が下がるケースが多いです。
デイサービスへ転職する方法
複数の転職サイトを活用するのがおすすめ
もし現在の職場からデイサービスへの転職を希望する場合は、転職サイトの活用がおすすめです。その際、複数の転職サイトを利用する方が、より多くの情報を得られやすくなり、転職成功率も高めやすくなります。また、それぞれの転職サイトではアドバイザーがつくことがありますが、相談する前に自分の希望、妥協できる点、できない点とポイントを明確にしておくことが重要です。
デイサービスでの看護師の役割は利用者の健康管理が第一
利用者とその家族が安心して通わせられる場所づくりの一端を担う
デイサービスで求められる看護師の役割は、利用者がその日一日を楽しく、安全に過ごせるよう健康管理を行うことです。日常的に行う看護業務は、バイタル測定を始めとした基本的なスキルが中心ですが、何か異常が見られたときは迅速かつ的確に対応できる判断力が求められます。特に、医師が不在で他に看護師が自分以外にいない状況下での緊急事態には、その能力が問われます。
ただし、通常は「福祉」が主役の現場であるため、ケアマネやヘルパーなどの介護福祉を専門とするスタッフと十分に連携し、協力し合う姿勢も求められます。自分の技術を磨くというよりは、利用者とその家族が安心して通える施設づくりの一端を担う存在と言えそうです。