介護施設の看護師の仕事内容とメリットは?平均給料も紹介!
病院以外で看護師の資格を活かせる職場の一つである介護施設は夜勤がなく、土日休みの所もあり病院と比較して働きやすい環境が整っています。
当記事ではそんな介護施設での看護師の仕事内容(役割)やメリット、給料、1日のタイムスケジュール、おすすめの職場の種類などを紹介します。
介護施設での看護師の仕事内容(役割)
医療機関での業務は治療が目的ですが、介護施設の場合、そこはあくまでも高齢者の生活をする場所なので、病院とは仕事内容が大きく異なります。
そのため介護施設への転職を検討していても病院での勤務経験しかない場合、どのような仕事をするのか、果たして自分に勤まるのかなど不安に思うかもしれません。
転職に失敗しないためにも、まずは介護施設での看護師の仕事内容を理解しておきましょう。
利用者の健康管理
介護施設での看護師の仕事のメインは、利用者の健康管理です。
病院では治療に関する医療行為が看護師の仕事ですが、介護施設では非医療行為が業務の大半を占めます。
体温や血圧測定などのバイタルチェック、健康診断の手配やスケジュール調整から歯磨きの介助、爪を切るなど日常生活で必要なサポートを行います。
具体的な業務内容は施設によって違ってきますが、ほとんどの介護施設に共通しているのは以下の非医療行為がです。
- 感染症予防の衛生指導
- 健康診断の結果チェック
- 予防接種の管理・調整
- 必要に応じて軟膏を塗布する
- ガーゼ交換
- 利用者の体調確認
基本的な仕事は利用者の体調に異常がないかをチェックです。もし利用者が持病を持っている場合は症状の確認も行います。
利用者の投薬管理
介護施設の仕事内容の中でも、看護師の経験を活かせるのが利用者に対する投薬管理です。
利用者は高齢の方が多いため、持病を持っている方も少なくありません。
そこで看護師は一人ひとりの薬を管理して、決まった時間にきちんと薬を服用できるように指導を行います。
また、持病を持っている利用者の場合、医師の指示に従って点滴や痰の吸引、採血など状況に応じて必要な医療行為をすることもあります。
投薬管理以外の医療行為は毎日行うわけではありませんが、介護施設の規模によっては看護師が一人しか常駐しないところもあるため、多くの求人で最低でも3年の看護師経験が求められます。
介護職員のサポート
病院では医療行為だけではなく施設内の移動の送迎や食事の配膳、後片付け、食事の補助など介護的な業務も行います。
しかし介護施設で働く場合は原則として介護業務は看護師の仕事ではありません。介護業務は施設にいる介護士が行います。
これが体力的な負担の軽減というメリットに繋がるのですが、一部施設では手が空いていたり、介護士が足りない場合は看護師も介護のサポートを行うこともあります。
そのことは雇用条件の業務内容に記載をしていない施設が多いので、転職する際は求人票によく注意する必要があるでしょう。
介護施設で働く看護師の平均給料、年収
月給は約23万円が平均
一口に介護施設と言ってもいろいろな形態があるので給料は施設によって異なりますが、日勤のみの施設であれば月収は平均23万円となっています。
宿泊サービスを行っている介護施設や、看護師の夜勤配置がある介護老人保健施設の場合は、月収平均25万円から30万円となります。
年収は400~450万円が平均
年収は400万円が相場です。
夜勤がある施設であれば年収は450万円から500万円と、病院勤務と同等の給料を得ることが可能です。
夜勤があるなら介護施設を選ぶメリットがないのでは…と思うかもしれません。それは半分は正しいです。
しかし、病院では肉体、精神的な負担の大きい救急搬送されてくる患者への処置や容体急変への対応などがありますが、介護施設ではこのような緊迫した状況になることはほぼありません。
筆者を含め、実際に介護施設で働いている看護師の口コミを見ても年に数回、あるかないかです。そのため、夜勤があるとしても精神的な負担は少ないでしょう。
介護施設で働く看護師のタイムスケジュール
介護施設での業務は緊急対応による医療業務以外はほぼ決まっています。
以下では介護施設で働く看護師の一般的なタイムスケジュールを紹介します。
時間 | 業務 | 業務内容 |
---|---|---|
8:00 | 出勤 | 業務開始の準備 |
8:30 | 業務開始 | 夜間からの申し送り 看護職員のミーティング 業務内容の確認 |
9:00 | バイタル測定 | 入浴者のバイタル測定 |
9:30 | 利用者の体調確認 | 入浴者以外のバイタル測定や点眼 |
10:00 | 往診対応 | 利用者の症状の報告 診察介助 医師の指示による医療業務 |
11:00 | 服薬の準備 | 服薬が必要な利用者の薬を準備する 昼食に合わせて配薬 |
12:00 | 服薬サポート 口腔ケア |
食前食後の服薬をサポートする 食事後の歯磨きなど口腔ケアをする |
13:00 | 休憩 | 複数の看護師がいる場合は交代で入る |
14:00 | 利用者の体調確認 医療処置 |
利用者の体調に異常がないか確認する 軟膏の塗布や点眼、浣腸など必要な処置を行う |
15:00 | カンファレンス | 利用者がおやつを食べたりレクリエーションをしたりしている間に、介護士や栄養士などケアチームで情報の共有や問題解決のためのカンファレンスを行う |
16:00 | 夕食の服薬準備 カルテの記録 翌日の業務準備 |
夕食に服薬する利用者の分の服薬を準備 配薬 利用者のカルテの記録、整理 衛生材料の補充や医療処置用の用具の点検など翌日の業務準備 |
17:00 | 申し送り | 遅番への申し送りをして業務終了 |
17:00~ | 残業 | 一部施設では残業が発生。ただ30分程度の場合が多い |
看護師が介護施設で働くメリット
夜勤や残業がない
介護施設で働く看護師の多くがメリットと感じているのは、病院と違い夜勤や残業がない、もしくは少ないことです。
デイサービスや訪問看護サービス、老人ホームなどの介護施設であれば完全に夜勤がないので規則正しい生活が送れますし、お休みの日も丸1日しっかり休めます。
病棟勤務では夜勤は当然ありますし、カルテの作成や申し送りに時間がかかることも多く、残業になることも少なくありません。
しかし、介護施設での看護業務は終わりが決まっているので残業はほとんどなく、プライベートの時間が確保しやすいです。
介護業務がないので体への負担が少ない
病院では患者のベッド移動や食事の介助、検査室までの移動の送迎、トイレの補助など体力を使う仕事がたくさんあるので常に体への負担がかかっています。
そのため、看護師は年齢に関わらず腰痛や肩こりが慢性化していたり、不規則な生活で睡眠不足になって体調を崩してしまいます。
一方、施設では介護業務を介護士やスタッフがメインとなって行ってくれるので、体への負担はほとんどありません。
最近は介護利用者の増加によって施設看護師の需要も増えているので、病棟勤務が難しくなった年配の看護師や、ブランクのある看護師の中で人気が高まっています。
施設によっては病院勤務より収入が多くなる
実は介護施設の形態によっては、夜勤がなくても病院勤務より収入が多くなるというメリットもあります。
たとえば民間が運営する有料老人ホームや訪問看護ステーションであれば病院で働く看護師の平均月収よりも多い、27万円から34万円がお給料の相場となっています。
また、認定看護師の資格を持っていれば訪問看護、専門看護師の資格を持っていれば在宅看護の事業を行っている介護施設ではより高待遇で働くことが可能です。
看護師が介護施設で働くデメリット
病院勤務よりも体やメンタルへの負担が少ない介護施設は、日々過酷な環境で働いている看護師にとって大きな魅力かもしれません。
ただ病院とは異なる施設なだけに、介護施設ならではのデメリットもあります。
転職を検討する場合は、メリットだけではなくデメリットもきちんと理解しておくことが大切です。
医療ケアの判断を任される
基本的に介護施設には医師が常駐していないので、怪我や病気に関する医療ケアの判断は全て看護師が行います。
もちろん重症であればすぐに救急車を手配するなど対応は決まっていますが、症状によってはどういった処置をすればいいか判断が難しいこともあります。
病院であれば医療判断は医師が行いますが、介護施設では看護師に一任されるので責任が重いです。
ただ、その代わり病院では養うことが出来ない適切な判断力を養えるので、看護師としてのスキルアップには繋がります。
看護師経験や一部のスキルを活かしにくい
医療を行う病院と違い、介護施設は高齢者が生活をする場所なので持病はあるとしても基本的には健康に問題のない人相手の仕事となります。
そのため、看護師として働いていてもその経験やスキルを活かせる機会は少ないです。
利用者も患者ではなくあくまでもお客さんのため、健康管理のためにしなくてはいけないことが利用者側に伝わりづらいですし。本当はこうした方が健康には良くても無理強いはできません。
その違いに働きづらさを感じることもあるでしょう。
ただ服薬管理や体調悪化の対応などで医療行為が必要になった場合は自分の経験が活かせますし、実際に働いている内にやりがいを感じられることも少なくありません。
最新医療の知識や技術が習得できない
介護施設での医療行為は点滴や採血、痰の吸引など非常に限られています。
また、介護施設には十分な医療機器がないので出来る医療行為も限定されているため、本格的な治療が必要になった場合は医療機関に搬送することになります。
そのため、病院と違い看護師として働いても最新の医療を学んだり、医療スキルを伸ばしていくことは難しいです。
仮にまた医療関係で働きたいと思っても看護師としての経験は病院を退職した時点でストップしているので、ブランク看護師と同じ状況になるというデメリットがあります。
ただ看護師として高齢者ケアの経験値は増えるので、高齢者看護に力を入れている医療機関などであれば有利な条件での転職も可能です。
給与が病院看護師と比較すると少ない
もちろん施設によって給与は大きく異るので、病院看護師よりも稼げている人も多いです。
ただ平均すると年収は400万前後と数十万ほど下がってしまいます。これは介護施設に夜勤がないためです。
看護師の夜勤配置の義務がない介護老人福祉施設や基本給の低い有料老人ホームでは、残念ながら病棟看護師と比較して収入はダウンしてしまうでしょう。
地方だと月収20万前後という介護施設すらあります。これを回避するためには首都圏や都市部の介護施設で働くか、基本給などが優れた施設で働いたり、転職時の条件交渉で給料を引き上げて貰うしかないでしょう。
看護師が働ける介護施設の種類
介護施設と一口に言っても公的機関と民間機関があり、入居期間や介護の業務内容は異なります。
また、施設によって看護師の配置基準や具体的な業務内容も変わるので、求人募集を探す前に看護師が働ける介護施設の種類を把握しておきましょう。
デイサービス
デイサービスでは、看護師を1名配置することが義務づけられています。
1つの施設に対し利用者は10名から30名ほどで、基本的に自分のことは自分でできる高齢者を対象にしたサービスなので、看護師の仕事も健康管理や健康観察がメインとなります。
ただ施設によってはリハビリをメインにサービスを行っているところもあり、こおの場合は理学療法士のサポートやリハビリの補助が業務になるケースも多いです。
給与面は月収だと病院より少し劣りますが、一般事務などの異業種と比較すると給与水準は高いと言えるでしょう。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームはそれほど医療ニーズがないものの、介護の必要がある高齢者が入居する施設です。
基本的な業務は健康管理や投薬管理、介護士の補助になりますが、他の老人ホームと違うのは夜勤がない代わりにオンコールがあることです。
利用者に急変があった場合に現場から電話の連絡が入るので、提携医の指示で対処したり、場合によっては現場に駆けつける必要があります。
そのため給与も一般の老人ホームより高い設定になっていて、平均月収は30万円、年収は480万円以上が相場となります。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、介護が必要になるものの健康に問題がない高齢者が入居する施設です。入居者30名までは1名、31名から80名までは2名、81名から130名までの施設には3名の看護師配置が義務づけられています。
入居施設ではありますがほとんどの有料老人ホームでは看護師は日勤のみとなるので、夜勤はありません。
業務も入居者の健康チェックや持病を持っている方への医療行為がメインなので、残業もほぼありません。
多くの利用者と接するのでコミュニケーション能力が必要ですが、病院では接する機会が少ない介護士や機能訓練指導員とも連携するので、老人介護のスキルが身につきます。
有料老人ホームの月収は他の介護施設よりも高く28万円から34万円が相場なので、年収も看護師と同じぐらいになることが多いです。
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は、2018年から介護医療院として法定化された施設です。医療と介護の双方が必要となる高齢者を対象にしているため、病棟勤務に近い業務内容になります。
ただターミナルケアや看取りが多いので、病院のような激務ではありません。
看護師配置は入居者6人に対して1名以上と義務づけられているので、介護施設の中でも比較的求人募集数が多い職場です。
給与に関しても病院同様にシフト制で夜勤があるので、月収は平均30~32万円、年収も450万円ほどを見込めます。
訪問看護サービス
訪問看護サービスは、自宅療養をしている利用者の自宅に訪問し、主治医の指示書に従って医療処置を行う仕事です。
そのため医療行為を行いますが、血糖値測定や点滴、カテーテルの交換、健康観察などが主になるので、5年以上の看護師経験があれば特別難しい業務ではありません。
ただ利用者によっては介護も必要になるので、食事や排泄のサポートや家族のメンタルサポートなどの業務を行うこともあります。
一般の介護施設と比べると仕事はハードですが、すべてを一人で行うため給与もその分高額になり、平均年収は450万円、訪問看護の需要が高い地域では500万円以上になるところもあります。
看護師の介護施設での仕事についてのまとめ
高齢者の健康管理をして健やかな老後をサポートできる介護施設の仕事は、医療機関とはまた違ったやりがいが感じることができます。
介護施設サービスの受給者はこの12年で約300万人も増加していることから、今後はさらに需要が高まることも予想されます。
また、政府も加速する高齢化社会に備えて介護施設の処遇改善も進めていますから、将来的な収入や安定性も期待できるのが特徴です。
病院と違う業務になるため不安もあるかもしれませんが、キャリアチェンジや病院以外での仕事を希望しているのであれば、働きやすさや待遇面の伸びしろがある介護業界への転職を検討してみるのがおすすめです。