職人さんと聞くと皆さんはどういうイメージを持たれるでしょうか?厳しい修行を経て親方から一子相伝の技術を習得する、最初からその道で生きていこうと腹を決めている人が多そうですよね。果たしてそこまでの意志を持って職人の世界で生きていく覚悟がある人がいるのでしょうか?
実は現在職人に転職する人が増えて来ています。今回は職人への転職についてメリット、デメリットも含めて詳しく見ていきたいと思います。
目次【クリックして移動できます】
- 1 何かの職人になりたいけど未来はある?
- 2 職人になるなら代替性がなく、付加価値のある業種がおすすめ
- 3 職人になる、就職するメリット
- 4 職人になる、就職するデメリット
- 5 将来的に職人として独立するメリット、デメリット一定期間師匠の下で修業を積むと、独立する人がいます。ある意味当然なのですが、ブラックな徒弟制からは解放されますが、あとは独力でやっていくしかなく、以前の師匠のコネが使えればいいのですが(のれん分けみたいに)、そうでない場合全て自分で営業をかけていかなければなりません。職人としてだけではなく、セールスマンや経営者としての才能も必要になりますから、独立は必ずしもメリットだけではなく、ひょっとするといつまでも師匠の下にいて、師匠引退→禅譲を狙った方がトータルで得というケースもあるかもしれません。職人であることのメリット、デメリットの他に、将来の独立についてもメリット、デメリットがあることを忘れないでください。職人になるには?未経験でもなれる?
- 6 職人になりたい人が知るべきメリット・デメリットまとめ
何かの職人になりたいけど未来はある?
様々な場面で機械化、オートメーション化が進む昨今です。職人というと寿司職人など料理や、刀鍛冶、大工、陶芸家、靴職人などを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、今では当たり前に機械がしていることも、かつては「職人」が行っていました。
例えばこれは、今では当たり前の電車指定席予約の50年前の姿です。コンピューターのオンライン回線がなかったため、全ての電車の席を台帳管理して、予約センターで人の手によって予約し、台帳にメモしていました。傍から見ていると危険極まりないですよね。
これもある種の「職人」が行っていました。しかし、この種の職人はコンピューター管理ができればいらないですよね。他に応用できるわけではないし・・。だとすると、今の職人技もAI化などの進展で不要になってしまうのではないでしょうか?
機械に真似できない技術が必要な職人は需要あり
しかし、職人はなくならないと思います。ゲームの世界では(囲碁、将棋、チェスなど)コンピューターのAIがプロを負かす例も増えてきました。しかしコンピューターが100%勝つことはできませんし、より複雑なゲームであるほどコンピューターは人間の脳には勝てないと言われています。
あるものを作っていく職人の「道を究めること、追求することの崇高さ」はそのまま製品に反映され、他にはない自分だけのものになるはずです。
ファミレスなどはセントラルキッチンで予め調理されたものを温めるくらいですが、三ツ星レストランはスープから全てシェフが作ります。「安かろう悪かろう」で満足する人たちもいますが、しっかりした技術を身に付けている人が作るものを相応の対価を払ってほしい人たちはいなくなることはないでしょう。
技術やスキルを高めて相応の対価を払ってよい層をお客さんにすることです。
高級志向はなくなることはありません。だから二極化している価格帯の上の方を担うだけの技術力を職人として身に付けて行くことが大切です。
しかし、上で挙げたような特急券の予約を取る職人は職種的に不要になるでしょう。職人として生き残るためには、求人がある(=需要がある)ものを選び、しっかりと修行して身に付けて行くことが大切です。
一子相伝のものは難しいですが、求人がある、未経験者でも時間をかければ身に付けられる職人技ならば一生の仕事として選択するのもアリだといえます。
若者の職人希望者は増えている
「職になんてダサい」と思う人もいるでしょうが、最近では「自分らしい生き方をしたい」ということで伝統工芸の職人を目指す若者が増えてきているようです。
例えば伝統産業の未来を切り拓くためには「京都市伝統産業活性化検討委員会」による報告書ですが、そこにも職人になりたい若者のニーズについて触れられています。
しかし、昔ながらの職人の世界そのままを継承することはできない時代になっています。竹細工などで工芸品を作っても、販路を開拓しないと売れません。
昔ながらのお店が販売してくれるかどうかわからないわけで、ネット通販や新規の顧客を見つけないといけません。
単に職人としての技能があるだけではダメで、IT知識やマーケティングの視点なども必要になります。
職人に求められるものは増えているといえるでしょう。
筆者が新卒で就職した会社の同期の女性は、やりたいことがあると言って2年で退職。その後、テキスタイルデザインの学校に通い、職人になってしまいました。大学を出てから、あるいは就職してからやりたいことに気付き、職人の道を選ぶ人も増えています。
職人の道には未来がありそうですが、よく職種を見極める必要があります。機械化、AI化で容易に取って代わられる可能性のあるものはやめた方がいいでしょう。例えば、札束の数を数える仕事や、タイプライターを打つ人はかつて職人として重宝されましたが、現在そんな仕事をする人はいません。
職人になるなら代替性がなく、付加価値のある業種がおすすめ
身近な例考えると写真屋です。デジカメもスマホもない時代、フィルムの現像のためには写真屋へ行きましたが、今はコンビニや自分のプリンタで簡単に現像できます。
だとすると、写真屋は単なる現像屋ではダメで、証明写真やお見合い写真など自分で撮影してはきれいに撮れないものを撮る技術=付加価値が必要になります。
駅にある証明写真機の写真ではあまりよく写らないけど、フォトスタジオで撮影してもらった写真はいい感じになっていますよね。
まだ写真の世界では機械に完全な代替性はなく、写真屋の付加価値性があります。
スナップ写真でよければコンビニにUSBを差し込めば誰でも写真を作れます。だから今ある写真屋は技術力があり、ファション性やコーディネーターとしても優秀な人たちなんです。求められる技術が以前よりも多くなる、これは機械化の中で生き残るために必要な努力が増えることに他なりません。
将来を見据えて「代替性がなく」かつ「付加価値のあるもの」を選ばないと職人として生き残れません。
職人になる、就職するメリット
①一生物の技術が身につく
この道で食べていくわけですから、本当の技術を身に付けてそれで食べて行くことができます。
逆に言うと技術を習得できないと自ずと職人の道から退場を余儀なくされます。
②売れっ子になれば収入がたくさん
職人は月給というよりも成果給です。
自分で作ったものが売れ、様々なところから引き合いが来れば収入も上がっていきます。
すべては本人の技術力次第ということになります。
③自分のスタイルで働ける
自分の作ったものの成果で判断されます。もし一人で何かを作る職人になるならば、勤務時間にとらわれることなく自分らしい働き方ができます。
ただし、料亭の料理人、みたいな職人だと当然時間に縛られる働き方になります。
④定年がない
人間国宝レベルの人だと80歳代、90歳代が珍しくない世界です。
自分にやる気があり、身体が動くならばいつまでも続けることができるでしょう。
職人になる、就職するデメリット
①徒弟制、理不尽、ブラック
職人の世界は徒弟制が多く滅私奉公を強いられる世界です。
残業や残業代などの観念もなく休日もほとんどないかもしれません。
最近でも京都の伝統工芸の弟子には給料が半年出ないなど問題になったこともありました。
「半年給与なし。仕事保証なし」京都・西陣織職人の「弟子募集」はブラックと言えるのか
会社での雇用とは全く違いう世界なので、既存の労働法がなじまないという意見もありますが法は法です。
また閉ざさせた世界でパワハラやセクハラなどもあるかもしれません。
知られていない世界というのはインナーサークル化して怖いんです。
②病気になれば即アウト
職人の人がどのくらい保険などに入っているかどうかわかりませんが、福利厚生の面では大きく劣るのは事実でしょう。
収入が安定しなければ新しい保険に入れないかもしれません。
また体調や怪我が職人人生に直結します。精密作業が必要な職人さんの指が怪我したり、病気で震えが来たりしてしまえばその製品を作ることができなくなってしまい、職人として終わってしまいます。病気になったから別の部署で簡素な事務作業、みたいなことができません。
何も作れない職人は存在価値がないので、非常に厳しい結果になってしまいます。
将来的に職人として独立するメリット、デメリット一定期間師匠の下で修業を積むと、独立する人がいます。
ある意味当然なのですが、ブラックな徒弟制からは解放されますが、あとは独力でやっていくしかなく、以前の師匠のコネが使えればいいのですが(のれん分けみたいに)、そうでない場合全て自分で営業をかけていかなければなりません。
職人としてだけではなく、セールスマンや経営者としての才能も必要になりますから、独立は必ずしもメリットだけではなく、ひょっとするといつまでも師匠の下にいて、師匠引退→禅譲を狙った方がトータルで得というケースもあるかもしれません。
職人であることのメリット、デメリットの他に、将来の独立についてもメリット、デメリットがあることを忘れないでください。
職人になるには?未経験でもなれる?
未経験でも技術を身につければ職人になれる
結論からいうと、未経験の人でも職人になることはできる
大きな流れとしては以下になります。
①何の職人になりたいのか決める
②専門学校や研修所で基礎的な技術を身に付ける
③弟子入り、修行を積む
④将来的な独立
マンガなどではいきなり弟子入りという展開もありますが、何の技術も担保されない人を弟子にする人はやはり少ないでしょう。よほど心を動かすだけの熱意があれば別ですが、それを持てますでしょうか?
弟子入りする人とのコネクションは専門学校などに行って見つけた方がいいでしょう。
縁故以外で弟子入りするツテを見つけるのは容易ではありません。未経験者もいきなり弟子入りはかなり大変です。私の同期のように、前職を退職後1年~2年専門学校などで学ぶことをおススメします(100%無理ではないですが)。
こちらの記事も読まれています職人を急募している職種を探す
先細りの職種で職人になるのは大変ですが、中には急募していて人手が足りない分野もあります。ただ、人手が足りないということは相応の理由があるからで、未経験者でもOKというものもありますが、色々なリスクがあることを覚悟しておいてください。
比較的人手が足りず、急募している職種、業界は以下になります。
①建設業
大工さんやとび職の人です。収入は高いですが、当然危険な仕事でリスクが高いですよね。
「一人親方」になれればフリーランスとして自分の働き方ができますがそれになるまでが大変です。
②寿司職人、天ぷら職人(料理系)
料理系も比較的募集が多いです。しかし、ただでさえ外食産業はブラックと言われます。それに徒弟制ですからかなりきつく辞める人も多いのでしょう。
一人前になればかなり人生が開けますが、職人と言いつつ従業員で終わるかもしれません。相応のお店はかなり修業がきついでしょう。
③塗装、施工、床・タイル等職人
家の新築やリフォームの際の工事を担当する職人さんも足りていないようです。
薬品等も扱いますし、他の大工さんなどとのコミュニケーションも必要になります。
これらの職人の世界は様々なバックグラウンドを持つ人が多いため、その人たちと一緒に修行するというのがかなりつらくなる可能性もあります。オフィスで仕事した方が精神をやられないかもしれません。相応の覚悟が求められます。
職人として思い浮かぶ伝統工芸や靴職人、陶芸家、鍛冶屋などはなかなか募集も求人もないというのが正直なところです。コネがあれば別ですが、かなり厳しいことをご承知おきください。職人求人のあるサイトに登録する
未経験者でも大丈夫な職人求人のあるサイトに登録し、応募することでも職人になることが可能です。
以下にいくつかの職人求人サイトを紹介します。
職人スタジアム(工事)
職人の募集、求人求職、仕事紹介サイト|職人スタジアム「職スタ」
電気工事や施工工事の職人募集サイトです。未経験者でも応募できるものもありますが、経験者向けが多いですね。
職人さんドットコム(建設)
建設現場の職人求人サイトです。
未経験者案件もありますが、日給取っ払いであまりスキルが付きそうなものはないかもしれません。
四季の美(伝統工芸)
伝統工芸職人の後継者の募集、求人情報【随時更新】 – 四季の美
伝統工芸系の職人求人サイトはおそらくここくらいでしょう。ただ、求人数そのものが少な狭き門であることには変わりません。
ここの過去求人を見て直接アプローチするというのも場合によってはアリかもしれませんね。
てほんびと(伝統工芸)
手仕事で行う伝統工芸専門の求人サイトです。
まさに皆さんが求めているそのものなのですが、掲載求人が非常に少なく(執筆時3件)、このまま増えないまま終わってしまうかもしれません。
ネットで伝統工芸の職人募集が難しいことの表れでもあります。
クックビズ(料理)
和食・日本料理の料理人求人特集|飲食店の求人・転職サイト クックビズ
飲食店専門の求人サイトです。ただし板前さん以外にも、ホールスタッフのバイトなども扱っているので、よく検索して選び必要があります。ただ、料理人の世界はこういう方法で募集しているのでしょうかね。外食チェーンの店長に近い求人しかないかもしれません。
自治体の職人養成講座
東京都などの各自治体では、伝統文化継承維持のため、ある種M&Aに近い形の伝統工芸の事業承継を推進しています。これならば、自分で師匠や親方を探す必要はありませんし、自治体お墨付きですからブラックな環境であるリスクも低いと考えられます。
ただ、賃金が出るのか、研修だから出ないのかなどよく自治体窓口の方と事前に話し合ってみてください。東京都ならば、以下の「職人塾」ですし、他道府県や市町村にも似たようなものがあるでしょう。
誰でもできる職人求人はブラックなものが多く、本当に技能を身に付けてやっていく場合相応の覚悟が問われそうです。
また、ネット上では簡単に見つかりませんから、自治体の窓口などで相談してみるといいでしょう。
後継者不足なのは事実ですから、継いでほしいという職人さんは必ずいます。
職人になりたい人が知るべきメリット・デメリットまとめ
- 機械化が進む現代であっても本当の「匠」による職人技はニーズがある
- 自分らしい生き方として職人を目指す人が増えている
- 職人の世界は徒弟制が基本で合わない人には本当に合わない
- 未経験者歓迎の職人求人もあるが、誰でもできるということは低賃金でブラックな可能性も
- 専門学校や職人塾のようなもので基礎技能を身に付けてそこのコネで弟子入り先を探す
- 自分らしい働き方ができる反面、製品が売れなくなればまったく保証がない
- 「代替性がなく」かつ「付加価値のあるもの」の職人を目指す
- 師匠からの独立はメリット、デメリットがある
- 職人専門の求人サイトがあるが伝統工芸系は求人が非常に少ない
- 自治体の職人養成講座などを受講したり担当者に相談したりするのも1つの手
①何の職人になりたいのか決める
②専門学校や研修所で基礎的な技術を身に付ける
③弟子入り、修行を積む
④将来的な独立
縁故以外で弟子入りするツテを見つけるのは容易ではありません。
「一人親方」になれればフリーランスとして自分の働き方ができますがそれになるまでが大変です。
一人前になればかなり人生が開けますが、職人と言いつつ従業員で終わるかもしれません。相応のお店はかなり修業がきついでしょう。
薬品等も扱いますし、他の大工さんなどとのコミュニケーションも必要になります。
職人の募集、求人求職、仕事紹介サイト|職人スタジアム「職スタ」
未経験者案件もありますが、日給取っ払いであまりスキルが付きそうなものはないかもしれません。
伝統工芸職人の後継者の募集、求人情報【随時更新】 – 四季の美
ここの過去求人を見て直接アプローチするというのも場合によってはアリかもしれませんね。
まさに皆さんが求めているそのものなのですが、掲載求人が非常に少なく(執筆時3件)、このまま増えないまま終わってしまうかもしれません。
ネットで伝統工芸の職人募集が難しいことの表れでもあります。
和食・日本料理の料理人求人特集|飲食店の求人・転職サイト クックビズ
また、ネット上では簡単に見つかりませんから、自治体の窓口などで相談してみるといいでしょう。
後継者不足なのは事実ですから、継いでほしいという職人さんは必ずいます。