働き方改革が叫ばれるようになりましたが、独特な働き方として「期間工」というものがあります。
聞きなれない人もいるでしょうし、「『期間』工だから正社員じゃないんだ」と思う人や「何か大変そうだ」「荒くれものが多そう」などネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれません。
- 期間工は繁忙期のみ働く契約社員のようなもの
- 期間工は派遣社員ではなく企業が直接雇用する
- 期間工の仕事内容は単純作業が多い
- 期間工を採用しているのは日本を代表する自動車や重機メーカー
- 期間工になれるのは18歳以上の健康な男女ならOK!学歴は不問
- 期間工は社員寮付きが多い
- 期間工は基本的に年収が高くて稼げる
- 期間工はお祝い金をもらえることも
それぞれの方向から見て、自分に向いているか検討してみてください。
期間工とは?
期間工とはその名の通り、自動車工場や電子部品工場で働く、期間の定めのある(有期雇用契約)雇用関係を結んだ労働者のことを言います。派遣社員ではなく、直接メーカーに雇用されるので「契約社員」に近いイメージでしょうか?
工場の生産ラインが忙しくなるときに、助っ人として入り、生産を助けます。だから、正社員だけでは対応できない繁忙期の「調整弁」「バッファ」として働くことになり、繁忙期が終われば期間工の契約期間も終了になります。
非常に単調な作業、単純作業が続き、立ちっぱなし、集中力が必要になります。シフト制で、日中と夜勤の2交代、ないし午前~、午後~、深夜~の3交代制のところが多いです。繁忙期に生産ラインを止めないために期間工を採用するのですから、24時間体制で工業製品の生産に関わり、肉体的にかなりハードな仕事になります。
期間工のポイントとして
- 工場が忙しい時期のみ働く
- 派遣社員ではなく企業が直接雇用する
- ベルトコンベア式の組み立てなど単純作業がメイン
- 肉体的にはかなりハード
ということを憶えておいてください。
期間工を採用している主な会社
期間工として働ける会社、つまり期間工を採用している会社はどこになるのでしょうか?
有名どころでいうと以下になります。
- トヨタ(トヨタ自動車)
- 豊田自動織機
- ホンダ
- 日産自動車
- MAZDA
- スバル(富士重工)
- スズキ
- ダイハツ
- いすゞ
- ヤマハ発動機
- ブリヂストン
- 村田製作所
など
日本を代表する自動車や重機メーカーばかりです。
ここで働けるのですからやる気も出てきますよね。
もちろん履歴書にも「○○に有期契約社員として勤務」と書けるわけです。
派遣ではなく直接雇用ですからこれは間違っていませんよね。
期間工の待遇、労働条件
期間工は一体どのような待遇なのか見ていきましょう。
期間工になるためには
多くの会社では期間工として採用するにあたって特段の条件は付けていません。
18歳以上である健康な人くらいです。
なぜ18歳以上なのか、深夜残業や深夜シフトもあるため、深夜に働くことができない18歳未満の人は雇えません。
また、作業に危険も伴うので、ある程度自分の意思で判断できる年齢であることが求められます。
工業系の資格を持っていれば採用にあたって有利に働くことはありますが、持っていないからと言って不利にはなりません。
そもそも期間工は単純作業、ライン作業がメインなので、頭が切れることよりも、集中力、気合、根性などが重要になります。
勤務時間
工場をフル稼働させて生産を伸ばすために期間工を雇うわけですから、2交代制、3交代制などシフト制勤務が原則になります。
例えば
- トヨタ自動車
- 1直(5日) 6:25~15:05
- 2直(5日) 16:00~0:40
午前勤務と午後勤務を5日交替で繰り返します
- スバル
- 早番 6:30~15:15
- 遅番 15:15~0:00
- 夜勤 21:45~6:30
この3シフトを交代で行っていきます。
期間工で働く以上、9時~17時の世界ではなく、夜勤や不規則勤務は避けられないと思ってください。
従業員寮や福利厚生
期間工で働く工場は、人里離れたところにあることが多く、住居については企業が社員寮を基本的に用意します。
個室のところが多く、プライベートも確保され快適に働くことができます。
学校の寮ではないですから、教育的なもの、つまり規則などが厳しいこともありません。
光熱費も寮のものを利用する限りは無料です。
自分のスマホ代は自分で支払いますが、寮の電話や水道などはお金がかからないと思ってください。
食費は社員食堂や寮の食堂を利用できます。
有料のところが多いですが、社食は外食するよりはるかに安いですよね。
食費についてもかなり抑えられると思ってください。
また、派遣社員ではなく直接横用の契約社員ですから、会社の福利厚生施設なども正社員と同じように利用できるものが多いです。
世界を代表する一流メーカーの福利厚生が生社員と同じように利用できる、いいですね!
年収は高い
実は期間工はかなり稼げます。
平均すると年収300万円~多い人で500万円くらいになります。
- 残業代や夜勤手当100%支給
- 居住費や光熱費タダ
- 安い社食や食事補助
- 折にふれて支給されるお祝い金
などもあり、お金はかなり貯まります。
一人暮らしして正社員として働くよりも稼げる場合も多いんです。
有給などもあり
契約社員として働くわけですから、社員に与えられる権利、有給休暇などももちろん取得できます。
ただし、法的に有給を与える義務は6か月以上の勤務が条件ですから、期間工で採用されて3か月契約の場合は有給がないかもしれません。
6か月働かないと与えてはいけないという規定ではないので、会社によっては与えるところもあります。
⇒厚生労働省 労働基準行政全般に関するQ&A 年次有給休暇
保険や年金は採用された企業のものに加入します。
つまり正社員と同じように社会保険に加入し、年金も働いている期間は厚生年金に加入します。
社会保険料は会社と個人が折半ですから、アルバイトするよりも段違いにお得だとお得だと言えます。
雇用保険や労災保険にも加入します。勤務中に事故で怪我をしても労災認定が下りますし、雇用保険をかけているので、1年以上期間工で勤務した場合は、転職活動の際失業手当も出ます。
契約期間
「期間工」はいったいいつまで働けるのか、法律では同じ工場で「最大35か月」という決まりがあります。
最大で3年弱、半年のインターバルを挟めば同じ職場で再雇用できますが、あまり歓迎されず、派遣社員ではないので派遣法の適用は受けませんが、無限に期間工として働き続けることはできないようです。
トヨタ自動車の例でいうと
- 初回契約 3ヵ月
- 1回目契約更新 3ヵ月(通算6ヵ月)
- 2回目契約更新 6ヵ月(通算12ヵ月/1年)
- 3回目契約更新 6ヵ月(通算18ヵ月)
- 4回目契約更新 6ヵ月(通算24ヵ月/2年)
- 5回目契約更新 6ヵ月(通算30ヵ月)
- 6回目契約更新 5ヵ月(通算年35ヵ月/2年11ヵ月)
最大で3年弱ということになります。
もちろん、期間工の側は更新が義務ではないので、「ここはもういいや」と思えば次の企業で働くもいいですし、正社員としての転職先を探してみるものアリです。
期間工のメリット、デメリット
期間工のメリット、デメリットをまとめてみました。
メリット
高収入
スキルや経験不問なのにこの高収入です。
お金がどんどん貯まっていきます。
下手なバイトをしたりフリーターを続けたりするよりも全然いいです。
残業代や夜勤手当も100%もらえる
製造業の現場で働く人は「サービス残業」はあり得ません。
特に期間工を採用している企業は世界でも名が通っているところばかりです。
働けば働いただけ確実に稼げます。
生活費がかからない
快適な寮で暮らせて費用は会社持ち。電気、水道、ガスなどの光熱費もかかりません。
社食で食べるため格安でおいしいものを毎日食べることができます。お金がどんどん貯まっていきます。
学歴、職歴不問
健康で工場で働ける人ならば学歴や職歴は一切不問です。
過去に何があっても、あまりいい大学に行けなくても、有名企業の契約社員として働けます。
企業の方でスキルについてはしっかりと教えてくれるため全く心配いりません。
コミュニケーションコミュニケーションが苦手な人には働きやすい
仕事はラインでの組み立て作業がメインです。一般企業の事務職のように、上司と部下との人間関係や社内政治、派閥、「飲みにケーション」など煩わしい要素はありません。
対人関係が苦手ならば寮の部屋に引きこもっていればOKです。
人間関係でメンタルを病むケースが増えていますが、期間工ならばそういう心配もありません。
同僚ともずっと一緒に仕事をするわけではないですしね。
正社員になれるかも
後述しますが、企業の中には期間工を正社員に登用する制度を設けているところもあります。
学歴不問で入って、最終的には世界的企業の正社員になれる。これはモチベーションが上がりますよね。
デメリット
肉体労働がキツイ
工場でのブルーカラー業務ですから、単純作業とはいえ肉体労働には変わりません。
やはり体力的に向かない人もいますから、そういう人はキツイと思います。
シフト制で体調を乱す
夜勤や遅番から逃れることはできません。
夜勤が多い看護師の世界では離職率や転職率が高いのも、人が寝ている時間に仕事をして身体のリズムや体内時計がおかしくなり、体調不良になる人が多いからだと言われています。
期間工もそういう働き方をしますから、本来の生活リズムに反して生きるわけで、やはり体調を崩してしまう人はいるようです。
有期雇用で限界がある
正社員登用制度がある会社もありますが、実際にはどこまで正社員になれるのか、というのが実態のようです。
ずっと働き続けたい人にとってはこの働き方ではなく、素直に正社員に転職した方がいいですね。
社会的イメージ、信用度
「期間工」という名称にネガティブな印象を持つ人はやはり少なくないです。
「頭がよくない」「正社員として働けない」「DQNっぽい」・・、カードを作る際も正社員ならば問題ないですが期間工だと難しいかもしれません(これは契約社員や派遣社員全般に言えることですが)。
単純作業に向かない人がる
工場で単純作業を延々続けるのが期間工です。
正直、筆者ならば発狂してしまうかもしれません。
集中力がない人、根を詰められない人にとっては絶望的に向かない仕事だと言えるでしょう。
>内田クレぺリン検査 | 検査について | 検査方法を通過できない人(例えば筆者)は期間工をするとメンタルを病んでしまうかもしれません。
期間工は短期でも大丈夫?
短期バイト感覚で期間工をしていいのか?
そらもちろんOKです。繁忙期を乗り切るために採用している期間工ですから、短期バイト感覚で来てもらっても(仕事をしっかりする限り)全く問題ありません。
繁忙期が異なる会社の期間工を転々として行くのもアリで、繁忙期に人手不足ならば報酬も上がるはずです。高い報酬の時期だけ働くなど効果的に短期で回せば相当稼げるかもしれません。
期間工では「お祝い金」をもらえる
期間工では折にふれて「お祝い金」がもらえます。
具体的には
①入社祝い金
②満了慰労金、満了報奨金
です。
入社前と期間が終わったときに数万~数十万円(40万~50万)単位でお祝い金がもらえます。
①については企業のサイトから直接応募して採用された場合と、求人サイト経緯で採用された場合で若干金額が異なるケースもあるようです。
もらえるものはもらった方がいいのですが、こういう制度は普通の転職やバイトにはありませんよね。ハローワーク経由でもらえる「再就職手当」よりもいいかもしれません。
なぜこういう制度があるのか
- 人手不足
- 今後生産が増える予定
- 正社員登用を進めたいから優秀な人を確保したい
など理由が考えられます。
ただ、意外と大変ですぐ辞めてしまう人が多いのかもしれません。
向かない人は向かない仕事ですから、大丈夫だと思って期間工になってもすぐに辞めてしまう人が後を絶たない現状もあるでしょうね。
期間工はメリットばかりではないことの一端なのかもしれません。
なお、入社祝い金をもらってすぐ辞めるのを防ぐために、分割で支給する会社や、一定期間勤務したらと条件を付ける会社もあります。
トヨタなどは①はなくて②を手厚くしています。
しっかり働いてくれた人に報いる会社のほうが、労働環境的にいいのかもしれません。
①が出る会社:とにかく来てもらいたい、ブラック寄り?
②が出る会社:長く働いてもらいたい、ホワイト寄り?
という見方もできるかもしれません(100%ではないです)。
正社員登用制度もあり、自分に合った働き方ができる
期間工で長く働くと「正社員登用制度」によって正社員になれる企業も多くあります。正社員になれば正真正銘その会社の社員であり、履歴書にもお見合いの釣書にも自信満々に書くことができます。
また、正社員になると賃金体系が期間工のものではなくその会社の正社員のものになります。おそらく高卒社員の下の階級の賃金からスタートすることが多いので、手取りは大きく下がるかもしれません。
短期で効果的に稼ぐために期間工をしている人は必ずしも正社員になる必要はないですよね。
ここで、自分はどんな働き方、生き方をしたいのかよく考えることになります。
新卒の就職に失敗したけどリベンジしたい人は、期間工で働き正社員に登用されることを狙ってもいいですし、責任なく効果的に稼ぎたい人は契約期間が終われば別の会社の期間工として働く、という選択でもいいと思います。
期間工はある種特別な働き方なので、全ての人におススメできるものではありません。よくご自身のキャリアプランを練ってください。
期間工に向いている人、向いていない人
というわけで期間工には向き、不向きがあることがわかりました。まとめるとこんな感じでしょうか?
期間工に向いている人
- 単純作業が好きな人
- 集中力がある人
- 工業、工場が好きな人
- 割り切ってお金を稼ぎたい人
工場で働きますから、あの工場の雰囲気がOKな人でないとダメですよね。でも工業や工場が好きな人なら楽しく働けると思います。
あとは、短期に集中してお金を稼ぎたい人です。男性の場合、ナイトワークで短期集中で稼ぐのは難しいので、期間工が一番それに適していると思います。
期間工に向いていない人
- 単純作業が苦手な人
- 集中力がない人
- キャリアアップを考えている人
- チームで仕事をしたい人
単純作業に耐えられない人は絶対無理です。あと、期間工は自分が与えられたことをひたすらするので、チームで行うものではなく、コミュニケーション能力があり過ぎても浮いてしまうかもしれません。
あと、正社員として転職したい場合、期間工の期間はあまり評価されない傾向になります。役立つスキルが身につかないからです、本当に単純作業なので・・・。
働き方として尖っていますし、向き、不向きもありますが、こういう仕事もあるのだと知ってください。もし、こういう働き方が必要な人がいれば当サイトは全力応援します!
期間工で働く!求人の見抜き方から短期、乗り換えまで完全ガイド まとめ
・期間工は自動車メーカーや電機メーカーの任期付き契約社員
・派遣社員ではなく企業が直接雇用するケースがほとんど
・女性も大歓迎で女性が多い職場もある
・最大で35か月まで同じ職場で働くことができる
・衣食住が無料、ないし補助がありお金が貯まる
・入社お祝い金や満了報奨金などお祝い金が折に触れて支給される
・正社員登用制度もあるが、正社員になるメリット、デメリットをよく判断する
・入社お祝い金が高すぎるとブラック求人の可能性もあるかも
・期間が終わったときにお祝い金が出る会社は、長く働いてもらいたい=職場環境がいい可能性がある
・単純作業を繰り返すので向かない人にはとことん向かない
・向き、不向きが大きく人を選ぶ働き方である
・短期集中でお金を稼ぎたいならば期間工を検討してもいいのでは?