皮膚科は乳幼児から高齢者まで幅広い年代層を対象に診療を行う生活に欠かせない診療科ですが、皮膚科医の年収は医師全体ではやや低めです。
今回はそんな皮膚科医師の平均年収を紹介しつつ、年収をUPさせるいくつかの方法や最適な転職のやり方をご紹介します。
皮膚科医師の平均年収は約1080万円+α
まず、皮膚科の医師の平均年収を見てみましょう。
ただ国内の皮膚科医だけの平均年収というデータがないので、ここでは独立行政法人 労働政策研究所・研修機構が2012年に実施した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」から「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」の平均年収をご紹介します。
上記の調査によると、皮膚科(眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科を含む)の年収は約1080万円となっています。
ちなみに医師の中で年収が一番高いのは脳神経外科で約1480万円、次いで産科・婦人科の1466万円、外科の1374万円と続きます。
参考:独立行政法人 労働政策研究所・研修機構が2012年に実施した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(2012年)
- 脳神経外科……1480.3万円
- 産科・婦人科……1466.3万円
- 外科……1374.2万円
- 麻酔科……1335.2万円
- 整形外科……1289.9万円
- 呼吸器科・消化器科・循環器科……1267.2万円
- 内科……1247.4万円
- 精神科……1230.2万円
- 小児科……1220.5万円
- 救急科……1215.3万円
- 放射線科……1103.3万円
- 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科……1078.7万円
- その他……1171.5万円
https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf)
上位の科目は皮膚科と比べると300~400万ほど高いようです。医師の中では皮膚科の給与は低いというのはこの辺りからも読み取れます。
皮膚科医師の約半数は平均年収1000万円~2000万円
上記と同様の調査で、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、皮膚科の医師の主たる勤務先の年収(アルバイト先の収入は含まれません)の分布は次の通りです。
これによると皮膚科医師の約半数が1000万円~2000万円の年収を得ているということがわかります。
- 300万円未満……2.6%
- 300~500万円未満……8.3%
- 500~700万円未満……12.5%
- 700~1000万円未満……17.3%
- 1000~1500万円未満……33.2%
- 1500~2000万円未満……22.0%
- 2000万円以上……4.2%
皮膚科医で年収2000万円以上を得る人は少ない
同じ調査で診療科目別に年収2000万円以上を得ている医師の割合を見ると、皮膚科は他の診療科目と比較すると少ないということがわかりました。
- 産科・婦人科……20.8%
- 脳神経外科……19.4%
- 救急科……15.6%
- 麻酔科……14.1%
- 外科……12.1%
- 内科……10.9%
- 精神科……10.6%
- 整形外科……8.9%
- 小児科……7.7%
- 呼吸器科・消化器科・循環器科……7.2%
- 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科・放射線科……4.2%
- その他……2.9%
皮膚科の医師が今よりも年収をUPする方法
このように皮膚科の医師は他科と比較すると年収が低い傾向にあります。皮膚科の医師が年収をUPしようと思うと次の4つの方法があります。
- アルバイトをする
- より給料の高い勤務先に転職する
- 院長や部長などの役職に就く
- 開業する
アルバイトをする
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科の半数以上の医師が2ヶ所以上で働いているという結果が出ています。
逆に1ヶ所だけで勤務している割合を見ると、高いのは外科(59.3%)、産科・婦人科(58.5%)で皮膚科・眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科は42.7%となっています。
外科や産科・婦人科は当直が多い、仕事が激務といった特徴があるため、アルバイトをするのは難しいという背景があると思われますが、皮膚科の場合は比較的アルバイトがやりやすいため、手っ取り早く収入を上げるには2ヶ所以上の医療機関を掛け持ちして働くという選択肢があります。
ただ、激務ではないとは言っても医師という職業は常に緊張感が求められるため、無理は禁物です。
より給料の高い勤務先に転職する
医師の年収は下記のように、大学病院<国公立病院<民間病院(医療法人)という順で高くなっています。
- 医療法人……約1444万円
- 個人……約1414万円
- その他の法人……約1406万円
- 公的……約1353万円
- 公立……約1347万円
- 社会保険関係団体……約1281万円
- 国立……約882万円
- 学校法人……約740万円
(参考:独立行政法人 労働政策研究所・研修機構が実施した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(2012年)
https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf)
もし今大学病院に勤務されている先生なら、そこから民間病院に転職することで年収を大きくUPすることが可能です。
とは言っても自分で給料や条件のいい求人を探すのはなかなか難しいことです。そこでおススメしたいのが、転職支援サイトの活用です。
転職支援サイトはいくつかありますが、その中から皮膚科の好条件の求人をご紹介します。
好条件の皮膚科の求人例
勤務地 | 医療機関 | 年収 | 内容や条件 |
---|---|---|---|
東京都中央区 | 皮膚科・美容皮膚科クリニック | 1700万円~ | ・脱毛や美肌治療、カウンセリング ・当直なし |
愛知県名古屋市 | 形成外科・美容外科・皮膚科クリニック | 1500万円~ | ・自由診療 ・当直なし |
大阪府大阪市 | 美容外科・美容皮膚科クリニック | 1700万円~ | ・自由診療 ・当直なし |
このように皮膚科で年収が高い求人は都市部の美容皮膚科、美容外科のクリニックが多くなっています。
自由診療のところが多いので、患者さんは自費で治療を受けるため、事前の説明や術後のカウンセリングなどに注力する必要があります。
院長や部長などの役職に就く
皮膚科医としてのキャリアを積んだ先生の場合は、院長や部長などの役職に就くことで年収を上げることができます。
国立病院機構の採用情報を見ると、下記のように役職についていない医師の平均年収は約1500万円ほどですが、院長になると年収2000万円を超えることが可能です。
- 医師……約1520万円
- 医長……約1680万円
- 部長……約1850万円
- 副院長……約1960万円
- 院長……約2050万円
(参考:国立病院機構 採用情報 (平成30年度平均額、ボーナスを含めた総支給額)
https://nho.hosp.go.jp/career/cnt1-0_000362.html#dr01)
とは言ってもそれまでに相当な年数がかかりますし、院長や部長のイスはひとつだけです。なかなか厳しい道だと言えますね。
開業する
皮膚科の医師が年収を上げるには、開業する方法もあります。
皮膚科の開業は「保険診療」と「自由診療」で戦略が違ってきます。
保険診療の皮膚科として開業する
保険診療の治療をメインにする場合、皮膚科では診療内容がそれほど高額なものにはなりません。
そのため、多くの患者さんを集める必要があります。開業する地域の特性をよく調査し、子どもが多い地域か、高齢者が多いのかどうかを見極めることが重要です。
さらに競合するクリニックの有無や人通りが多いかどうか、通院のアクセスなどもよく調べる必要があります。
患者さんが多く集まっても待ち時間が長いとたちまち評判が広がり集患に影響が出ます。そのために看護師や事務スタッフなども一定数確保しなければなりません。
皮膚科は高額な医療機器を準備することは少ないものの、長く利益を上げ続けるためには開業前の調査と準備が欠かせません。
自由診療の皮膚科として開業する
皮膚科として自由診療のクリニックを開業する場合は、都市部で駅に近い立地と若い女性(診療内容によっては男性も)が抵抗なく入れるようなおしゃれな建物を考える必要があります。
スタッフも一般病院の看護師というよりエステサロンのスタッフのような丁寧さや高級感が求められます。
さらに美容皮膚科では脱毛やシミなどの治療に使用するレーザー機器などが必要です。また、ホームページでの集患が多くなるので、サイト運営を業者に依頼する費用などもかかります。
皮膚科として開業する場合は、保険診療でも自由診療でも下調べと準備が必要となります。
こういったことを考えると、皮膚科として年収をUPするにはより良い条件の求人を見つけて転職するのが早道だと言えます。
皮膚科医師の年収~まとめ
皮膚科の医師の年収は主たる勤務先から得る報酬が約1080万円です。皮膚科医として年収をUPさせるにはキャリアを積んで院長、部長になる方法がありますが、相当な年数がかかります。
一方、開業するには保険診療か自由診療かによって戦略を練る必要がありますし、失敗した時のリスクは非常に大きいです。
アルバイトをして複数の医療機関を掛け持ちする方法も考えられますが、低リスクで稼ぐならそれよりも好条件の求人を見つけて転職する方が早道だと言えます。
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