退職金の相場と大企業・中小企業別の平均|皆はどれくらい貰ってる?

 

退職金について図解ヘッダー

少子高齢化により公的年金制度の破綻が懸念されているだけに、老後の資金として退職金の重要性はますます高まっています。

しかしその重要な退職金をどれくらい受け取ることができるか、詳しくご存知だという方は決して多くありません。

そこで今回は退職金の計算方法や、会社の規模等の違いによる退職金の相場などを詳しくお伝えして参ります。

退職金の計算方法

退職金の計算方法を図解

退職金の計算方法は法的なルールが存在している訳ではなく、支給するそれぞれの会社によって異なりますが、基本となる退職金の計算式は多くの会社で概ね共通しています。

多くの会社で用いられている退職金の計算式は次のとおりです。

退職金 = 基本給(退職時の月額) × 勤続年数 × 給付率

ポイントは「退職時の月額基本給」と給付率

この式からわかるとおり、退職金は退職時の月額給与から通勤手当や家族手当等を除いた「退職時の基本給」がいくらかで大きく異なってきます。

そのため現時点で受け取っている基本給で計算しても正しい金額とはなりません。

そこで皆様が勤務している会社の定年が65歳なら、65歳時の平均基本給を会社側に尋ねれば目安となる退職金を導き出すことができます。

次にポイントとなるのが「給付率」です。

給付率とは主に

・勤続年数

・退職理由(「自己都合」か「会社都合」か)

・人事査定

以上の3点を基準に定められた、退職金に掛ける料率のことです。

給付率に対する細かなルールや具体的な割合は会社によって異なりますが、平均的な値としてはだいたい40%~70%程度です。

一例として、ある会社の給付率をご紹介しましょう。
(給付率の事例)

勤務年数自己都合退職の給付率会社都合退職の給付率
5年35%55%
10年45%60%
20年55%65%
30年60%65%
定年70%

 

この給付率はあくまで一例であり、代表的な事例ではないこと、皆様の勤務先とは異なっていることは予め御留意ください。
その上で、この会社の給付率を使って退職金のシミュレーションを行なってみることにしましょう。(尚、税金等は考慮しないものとします)

勤続10年で退職時の基本給が40万円、自己都合で会社を退職する場合

40万円 × 10年 × 45% = 180万円

勤続40年で定年退職時の基本給が65万円、定年退職する場合

65万円 × 40年 × 70% = 1,820万円
計算結果のとおり、この会社を勤続10年で退職した場合には基本給が40万円なら180万円、仮に基本給が倍あったとして360万円で400万円にも届きません。

その一方、定年まで勤務した場合、基本給が退職月で65万円なら1,820万円、仮に40万円のままだったとしても1,120万円となり1千万を超えることになります。

このように給付率は、勤続年数が長くなればなるほど一般的に有利になります。

尚、より実態に近い退職金を求めたい場合には勤務先の総務部もしくは人事部に定年時の平均基本給だけでなく、給付率についても尋ねておくことです。

退職金の相場(企業規模や学歴などで違いがあるか)

退職金のおよその求め方がわかったところで、では退職金の相場はどのくらいの金額になるのでしょうか。

退職金の相場は企業規模や学歴によって一定の格差が生じていることが、自治体や経団連等による各調査によって明らかになっています。

中小企業の退職金平均相場

中小企業の退職金の相場から確認することにしましょう。

東京都産業労働局が中小企業を対象に行なった調査結果(2015年)によると、中小企業のモデル退職金は次のようになっています。

尚、紹介する事例は学校卒業後すぐに勤務開始し60歳定年まで働き、定年退職した場合のモデル金額です。
(中小企業・人員規模別モデル退職金)

規模100~299人50~99人10~49人
大卒1718万6千円1497万円1281万7千円
高卒1365万円1338万2千円1176万8千円

大卒での比較では100人から299人の場合は約1720万円が相場となりますが、10人から49人の規模では約1280万円でその差は450万近くになります。

また、大卒と高卒の比較では人員規模が大きくなるにつれ、その差が大きくなることがわかります。

100人から299人の場合では大卒と高卒の差は約353万円に対し、10人から49人の場合は約105万円です。

退職金の計算式説明でお伝えしたとおり、退職金は勤続年数の長短が大きな違いを生むようになっています。

高卒と大卒では4年以上の勤続年数の差がありますので、仮に退職金が同水準であっても大卒優位ということになります。

このことから特に100人から299人といった規模の中小企業では、大卒と高卒では基本給の格差が退職金にも大きく影響を与えていると見ることができます。

大企業(従業員数500人以上)の退職金平均相場

次に大企業の退職金相場についてです。

大企業(従業員数500人以上の企業)を主要対象として日本経団連と東京経営者協会が合同で行なった「退職金・年金に関する実態調査」(2014年実施)では次のような結果となっています。

尚、抽出モデルは中小企業の事例と同じく学校卒業後すぐに勤務を開始し、定年(60歳)で退職した場合とします。

総合職生産・現業労働者
大卒2357万7千円
高卒2154万9千円1831万円

大企業の場合だと大卒と高卒の総合職での開きは約200万円で、中小企業の100人から299人のケースより小さくなっていますが、あくまで総合職での違いです。

生産・現業労働者、即ちブルーカラーの高卒では退職金平均が1831万円となり、大卒総合職との開きは500万円以上もあります。

一覧で比較

では中小企業(50人から99人)と大企業(総合職)のデータを並べて比較してみます。

中小企業

(50人から99人)

大企業

(総合職)

大卒 1497万円 2357万7千円
高卒1338万2千円 2154万9千円

調査が行なわれた年度や調査対象となった企業所在地などが異なるため、単純比較は

できませんが、従業員規模で約10倍異なると退職金では1,000万円近くもの格差が生じていることがわかります。

転職・退職・リストラなど辞め方で変わる退職金と受取で損をしない為の知識


退職金は勤続年数や自己都合か会社都合か等によって受給額が変わってきます。

この点を踏まえ、退職金受取で損をしないようにするにはどうすれば良いか、転職、退職、リストラの3点に分けてそれぞれのポイントをお伝えします。

転職:転職はできるだけ繰り返さないこと

給付率の説明でお伝えしたとおり、あくまで一般的ケースながら勤続年数が短ければ給付率は低くなり、勤続年数が長ければ給付率は増えます。

そのため、短期間で転職を繰り返すほど退職金の受取では不利になってしまいます。

退職金に限れば、転職はできるだけ繰り返さないことに尽きます。

転職で退職金を増やすなら基本給アップを目指す

転職をなるべく繰り返さないことは前提とした上で、転職により退職金を増やす方法もあります。

それは年収、正確には「基本給」を一定割合以上アップさせることです。

具体的な率は現職と転職先の給付率や、いつ転職するかによっても異なりますので一概には言えません。

が、基本給ベースで20%以上アップさせることができれば転職によって給付率がダウンしたとしても、基本給の上積みで退職金をアップできる可能性は十分考えられます。

退職:定年退職が最も有利

退職金は「転職せずに定年退職まで勤め上げること」が最も有利になると理解しておいて良いでしょう。

従って、定年まで残り数年というタイミングなら、辞めざるを得ない重大な事情でもない限り、少々嫌なことがあったとしても我慢して定年まで頑張って働くことを目指すべきと言えます。

リストラ:「会社都合」の退職であることを必ず確認すること

会社の経営事情によりリストラを宣告された場合や、希望退職に応じることを強く迫られた場合に大切なことは「会社都合」として退職することです。

リストラを迫られる状況というのは会社の経営がおもわしくない状況であり、会社側としてもできるだけ有利な条件で従業員を解雇しようと目論む場合があります。

自己都合と会社都合なら自己都合の方が給付率を抑えることができますので、会社側は「自己都合」での退職を迫る可能性があります。

そうした圧力に屈することなく、自己都合の退職には絶対に応じないようにすること、「会社都合による退職」であることを会社側に認めさせることが大切です。

また、仮に会社都合で退職できたとしても、会社の経営状況が悪化している場合には退職金が減額される場合もあるかも知れません。

それでも会社都合の方が望ましいのは、退職金だけでなく失業保険の受給額や受給期間、受給開始日などにも大きく影響するからです。自己都合では失業保険でかなり不利な扱いを受けます。

間違っても自己都合退職扱いとならないよう、しっかりと確認を行なうことが大切です。

貰える退職金が相場より低い場合の対処法


少子高齢化により、公的年金制度だけに老後を頼ることができなくなりつつあるだけに、老後資金として退職金の重要度は益々高まることになります。

それだけに貰える退職金が平均的な相場より低い場合には、何らかの対処が必要と考えるべきです。

ではどのような対処法があるかですが、大きく二つの方法がありますのでそれぞれ紹介します。

財形年金貯蓄や個人年金保険を利用して自助努力をする

一つは自助努力を行なうことです。

つまり今の内から給与の一部を退職金代わりとなるよう個人的に積み立てることです。

積立預金も自助努力の一つですがご存知のとおり金利はゼロに近く、しかも税制上の優遇措置がありませんし、容易に解約しやすいために長期的に積み立てるにはかなりの忍耐力も求められます。

退職金を受け取る頃まで積み立てることを前提とするなら、「財形年金貯蓄」の利用がオススメです。

財形年金貯蓄なら給与から自動的に天引きされるため確実に貯蓄できる上、元本と利子合わせて550万円まで非課税ですし、利用する金融機関にもよりますが一般的な定期預金より金利も有利になっている場合が多いからです。

しかし、財形年金貯蓄は会社側が金融機関と提携していることが前提となりますので、会社が従業員向けに財形貯蓄制度を導入していなければ利用で来ません。

そのような場合には、保険会社が提供している年金保険に加入する方法があります。

こちらも掛金については一定額の限度があるものの申告することで保険料控除を受けることできるので税制上有利であることと、定期預金より断然利率も有利です。

転職

転職も一種の自助努力と言えるかも知れませんが、年収アップおよび退職金アップを目指して転職するというのも方法の一つです。

ただし転職では即戦力が求められる上、特に高額年収を狙うならマネジメント能力も問われることになります。

年収アップの転職を実現させるには現職を通じて仕事のスキルを磨く共に、管理職になっていない方はできるだけ早く管理職に昇進し管理職としての経験を重ねつつ、管実績を築いてゆくことが重要です。