「自動車整備士」と聞くと、家族が乗っている車を直してくれる優しいお兄さんのイメージがあります。
しかし、今、自動車整備士が足りず、自動車業界として非常に苦労しているようです。
逆に考えると、今の時代、しっかりした技術を持った自動車整備士の人は大いに評価され、よりよい職場へ就職・転職できるチャンスでもあります。
この記事では自動車整備士の人の現状や、転職のチャンスについて情報を共有したうえで、みなさんがより良い環境、より良い待遇で働くための方法について考えて行きたいと思います。
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かつては人気職業だった自動車整備士も高齢化・・・
「自動車整備士」という職業ですが、かつては男の子が将来なりたい職業で上位にランキングされていました。
ベネッセ教育総合研究所 第1回子ども生活実態基本調査報告書 2004年
によると「車の整備士・カーデザイナー」は
- 中学生男子のなりたい職業 7位
- 高校生男子のなりたい職業 13位
ということで、かなり上位にランキングしていました。
しかし、同様の調査で、現在は上位にランキングしていません。
自動車整備白書|一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会(JASPA)
によると平成26年のデータでこのような現状があります。
事業所数 | 約9.2万軒 | 毎年微増 |
---|---|---|
整備関連従業員数 | 約54万人 | 減少傾向 |
整備士数 | 約34万人 | 減少傾向 |
整備士1人あたりの年間整備売上 | 1,400万円 | 増加傾向 |
総整備売上 | 5兆5千億円 | 増加傾向 |
整備士平均年令 | 43.8歳 | 上昇傾向(10年で2.5歳上昇) |
つまり、自動車整備士としての仕事は増えているのに、高齢化でなり手が減っていて、負担が増えているのです。
仕事がないわけではなく、ありすぎていて、業務負荷が大きくなり労働環境が悪化しています。
そのため、頑張って国家資格を取得し、念願叶って整備士になったのに辞めたいと思ったり、より良い条件を目指して転職する方も少なくありません。
自動車整備士が足りない!
つまり、自動車整備士は「売り手市場」ということになります。
- 約5割の整備事業場で自動車整備士が不足しており、さらに約1割の事業場では既に運営に支障が出ている。
- 整備士を採用できなかったと答えた割合は、ディーラー約1割、専兼業は約4割に及ぶ
- 約8割の販社が「サービスエンジニアの採用」で困っている
- サービスエンジニアの採用計画人数の確保状況では、約5割が予定を下回っている
- 自動車整備士を目指す若者が減少している(少子化、「若者の離れ」)
- 自動車整備士の高齢化が進んでいる(平均年齢約44歳、うち約2割が55歳以上)、
- 整備業界は「従業員10人以下」の零細企業が約8割を占めある。その結果大規模な採用活動が困難になっている(定期採用ができない、採用費用が出せない、採用計画が作れない)。
自動車整備士を目指すための学校への入学者は年々減っています。
「若者の車離れ」で、整備する自動車も減るのでは?と思われがちですが、人口がいちばん多い「団塊の世代」が約70歳。
まだ5年~10年くらいは車に乗りますから、自動車を運転する人は当面減らない、つまり人手不足、自動車整備士の「売り手市場」は続くとみるべきです。
自動車整備士の年収は!?
平成29年賃金構造基本統計調査|厚生労働省によると、自動車整備士の平均年収は約420万円となっています。
薬品やオイルは体にいいわけがありませんし、ケガをする可能性もあります。
何よりすべてが肉体労働の世界です。
高齢化している中で、個々の自動車整備士の人にかかる負担は非常に大きなものになっています。
負担に見合う年収とは言えず、やはり零細企業が多く、安く仕事を請けざるを得ないのが影響しているのかもしれません。
車検自体は義務ですから、需要が景気などに大きく左右されるわけでもないはずです。
だから、しっかり探せば、より年収や給料が高い「稼げる職場」は必ずあるはずです。
自動車整備士で働くための職場とは?
自動車整備士の職場は大きく分けると「民間整備工場」(専業系)と「ディーラー」に分かれます。
それぞれの特徴とメリットをまとめてみました。
専業系自動車整備士(民間整備工場)
「専業系」と呼ばれる自動車整備士は「民間整備工場」に勤務することになります。
国産車、外車を問わず、あらゆるメーカー、車種の点検や整備、修理を行うことになります。
大規模企業から中小、零細企業まであり、零細企業になると、自動車整備以外の顧客対応、ジム、営業、納車や引き取りも整備士が行う「何でも屋」をせざるを得ないことがあります。
家業として自動車整備をしている方や、独立開業した方は、こちらの専業系になるケースが多いです。
また、後述するディーラー系では行わない、「板金塗装」を行うことがあるのも専業系の特徴です。
様々な自動車に関わるスキルが要求されます。
さらにこの二種類があることを知っておきましょう。
- 認証工場:自動車の点検整備や修理をメインに行う工場
- 指定工場:点検整備や修理以外にも、車検(完成検査)まで)も行うことができる工場。別名「民間車検場」
「指定工場」の方がより幅広く、スキルが身につきます。
会社の規模も「指定工場」の方が大きめです。様々な自動車の様々な修理工程を行いたい人は、専業系の整備士を目指すといいでしょう。
ディーラー系自動車整備士
次に「ディーラー系」と呼ばれる自動車整備士です。
トヨタのディーラーに勤務するならばトヨタの車だけ、ベンツのディーラーならベンツだけの修理を担当します。
さらに、リコール時の修理対応や販売した車に「ディーラーオプション」を取り付ける際の工事も行います。
中古車販売ではなく、新車がメインのディーラーならば、修理よりもオプションの取り付けがメインになります。
板金塗装はディーラーではあまりしません。
また、ディーラーにも「認証工場」か「指定工場」の二種類があるので、事前に確認しておいてください。
<専業系とディーラー系の違い>
専業系(民間工場) | ディーラー系 | |
---|---|---|
対象の車 | あらゆるメーカー、国産車、外車問わず | 特定のメーカーの車 |
業務内容 | 点検整備・修理に関する整備業務 板金塗装 | 点検整備・修理に関する業務 販売した車へのオプションの取り付け リコール時の修理検査対応 |
規模 | 零細、個人経営~比較的大手 | 大手メーカーの系列店など |
スキル | 広く身につく | 狭く深く専門性がつく |
工場種類 | 「認証工場」「指定工場」ともにあり | 「認証工場」「指定工場」ともにあり |
ガソリンスタンドなどそれ以外の職場
「専業系」「ディーラー系」以外にも、ガソリンスタンドの中には、国から「認証工場」または「指定工場」の指定を受けているところがあります。
そうしたガソリンスタンドでは、自動車整備士の資格を持った人が修理や整備を行うことができます。
その他、自動車整備士を目指す人向けの職場としては様々なものがあります。
「専業系」「ディーラー系」以外で働きたい場合、以下の職場も考慮してみてはいかがでしょうか?
大手メーカーの車両開発部
修理工場ではなく、自動車会社本社で開発、設計、研究に携わります。
誰でもできる仕事ではなく、「大学工学部卒」「工学系大学院修了」+「自動車整備士」の資格が必要になりますが、実際に自動車整備に携わった経験があれば、大きなアピールポイントになります。
レーシングチーム
レーシングチームに所属し、レース車の整備やピット作業を担当します。
とても華やかな世界ですが、なかなか就職できるものではなく、個人的なツテやコネも重要になります。
短時間に整備をしなければいけませんから、自動車整備士としての技術は相当高いものが求められるといっていいでしょう。
保険会社
損害保険会社で、事故が起きた際の、事故車両の損傷状態を調査する「技術アジャスター」と呼ばれる仕事があります。
この職種に就くには、「3級動車整備士以上」の所持が必要です。
また「損害保険協会」実施の「技術アジャスター」という資格を所得して、スキルを高める会社もあります(その場合資格取得を義務付けられます)
珍しい仕事で、あまり工具を握ることもありませんが、大手損保会社の専門職であるので好待遇で働くことができます。のため待遇も良い仕事といえます。
航空会社
「なぜ航空会社?」と思われるかもしれませんが、空港の中の「特殊車両」も整備を担当するのは、航空整備士ではなく自動車整備士の仕事です。
特殊車両に触れる機会はあまりなく、整備士としてスキルアップや好奇心を満たせると思います。
もちろん、航空会社なのですから、待遇は非常に良いものになるでしょう
その他の職場
まだ自動車整備士が活躍できる職場はたくさんあります。
- 中古車販売会社(ディーラー系以外)、カー用品店
:自動車用品の取り付けやオイル、タイヤの交換 - 専門学校講師
:自動車整備士を目指す人に教えます - 大手の運送会社、バス会社
:仕事用の車両の整備点検修理を担当 - 建設機械メーカー
:特殊車両の整備点検修理を担当
など自動車整備士として活躍できるフィールドはどんどん広がっていきます。
大手、中小、独立開業のメリット・デメリット
メリット | デメリット | |
---|---|---|
大手企業 | ●待遇がいい ●給料が高い ●休みが多い | ●仕事が固定される(業務分担がしっかりしている) ●狭い範囲のスキルしか身につかない ●人間関係(合わない人も多い) |
中小企業 | ●幅広いスキルが身につく ●波長の合う人たちならば精神的に楽 | ●給料が安い ●自動車整備以外のこともしなければならない ●合わない人達だと精神的にきつい ●残業が多く、過剰な顧客サービスになりがち |
独立開業 | ●自分の好きな分野に特化してできる ●人間関係に煩わされない ●能力があれば一攫千金も可能 | ●仕事がないと1円にもならず生活ができない ●技術、スキルを冷酷に評価される ●営業活動や事務、経理などもすべて自分(ないし家族)で行わなければならない |
やはり大手の方が待遇がいいのは事実ですが、やりたいことができないかもしれません。
自分の腕に自信がある人は、あえて中小・零細を選ぶのも一つの道だといえます。
国土交通省による「職業斡旋者等からみた自動車整備業の労働環境等に関する調査」
自動車整備士としてより良い条件で働くための求人サイトランキング
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お金をかけて有能な自動車整備士を採用したいと思っているところの方が絶対にいいですよね。
3つの転職エージェントをランキングにしてみました。登録して求人を見るだけでも全然構いません。
「専業系」「ディーラー系」以外の自動車整備士が活躍できる職場も、ここならば紹介してもらえるでしょう。
1位 マイナビエージェント
マイナビは求人数こそリクルートに及びませんが、特に20代の若年求人に強い転職エージェントになります。
ということは若い、20代の自動車整備士は「金の卵」であり、需要は大きく、その年代に強いマイナビならば、20代の自動車整備士の転職ならば右に出る者はいないことになります。20代で転職を考えている人がいれば、是非登録してみてください。
2位 CLUTCH(クラッチ)
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自動車整備士さんのおすすめ転職サイト4選 まとめ
- 自動車整備士のなり手が少なく高齢化している
- 自動車整備士の需要は今後10年くらいは安泰
- 売り手市場でどの職場も自動車整備士が足りていない
- 一方でキツい仕事のわりに給料が安い
- したがって待遇が良い会社に転職を考えるべきである
- 大きく分けると「専業系」と「ディーラー系」の職場あり特徴をよく理解する
- 幅広くスキルを身につけるのか、専門分野を深く極めるのかで職場が違う
- 前者が「専業系」後者が「ディーラー系」
- 大手、中小それぞれのメリット・デメリットがあるので理解する
- 本当に自分の腕に自信があるならば独立開業も一つの手
- 待遇がよくスキルが身につく転職のためには「転職エージェント」を活用したい
- 自動車修理整備工場以外の職場も転職エージェントで探せる
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