再就職手当は、再就職が決まった時にハローワークから支給されるお祝い金です。しかしその支給日や金額の計算方法、具体的な条件などは知らない方が多いです。
そこで当記事ではそれらを解説しつつ、書類の書き方や失業手当と再就職手当のどちらを貰うのがお得かも紹介していきます。
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ハローワークでもらえる再就職手当とは
再就職手当とは、下記のいずれかに該当する場合に、ハローワークから受け取る「就業促進手当」の一種で、要は一時金(お祝い金)になります。
- 就職(転職)した場合
- 自分で事業を開始した場合(創業)
だらだらと失業手当をもらい切るまでは本気を出さないのでは困りますからね。
失業手当は転職活動をしないともらえませんが、再就職手当は創業したケースでももらえます。
最初から創業を目指して会社を辞めた方は、ハローワークに手続きだけして、さっさと再就職手当を満額もらってしまいましょう。
再就職手当をハローワークから支給される条件と要件
大前提として、退職後、ハローワークに「離職票」を持っていき失業者登録をして、転職活動や失業認定を受けることが必要です。
実際にハローワークの求人に応募する必要はありません。
失業者登録をして、具体的な活動をしている前提で、以下の条件を満たすと再就職手当を受給できます。
就職(転職)した場合の条件:短期のバイトや派遣はもらえない?
- 就職日の前日までの失業認定を受けたうえで、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上であること。
毎月の失業認定を受けながら、かつ失業手当が残り3分の1以上残っている場合に、再就職手当が支給されます。残り10日などでは支給されないということです。
- 1年を超えて引き続き雇用されると認められること
短期雇用や短期バイトではダメです。
半年予定の派遣社員、「紹介予定派遣」なども該当しません。
- 採用の内定が「受給資格決定日」以降であること
もう内定は出ていて転職日も決まっているのに、再就職手当をもらうためだけにハローワークに登録するのを避ける狙いがあります。
- 「待機」が経過した後、職業に就いたこと
失業手当をもらうためには、受給資格の決定から「7日」は「待機」という失業手当が計算されない期間があります(本当に「失業」しているかハローワークが確認する期間)。
その期間後に転職をすることが必要になります。
- 離職理由により「給付制限」を受けた場合は、「待機」満了後の1か月はハローワーク等または許可・届出のある職業紹介事業者の紹介により職業に就いたこと。
会社都合(リストラ、倒産)や就職困難者(障害者など)は、待期期間終了後すぐに失業手当がもらえますが、健康で自分から辞めた人(自己都合退職)には「給付制限期間」といって、転職活動をして毎月失業認定を受ける義務はあるが、失業手当がもらえない期間(人によるが3か月が多い)があります。
その期間に転職が決まっても再就職手当は満額もらえますが、制限期間最初の1か月は、ハローワーク経由で応募したものではないと再就職手当がもらえないという規定です。
※「ハローワーク等または許可・届出のある職業紹介事業者」とは転職サイトではなく「転職エージェント」になります。
リクナビエージェントなどが該当しますので、ロ要するエージェントが該当するか確認してください。転職サイトや直接応募だと、最初の1か月は再就職手当がもらえません。
- 離職前の事業主または関連事業主に雇用されたものではないこと
偽装解雇して再就職手当を上納させる悪辣経営者を防ぐためです。
- 過去3年間の就職について、「再就職手当」、「常用就職支度手当」(後述)の支給を受けていないこと。
- 雇用保険の被保険者資格を所得していること(雇用保険に加入する労働条件で働いていること
週10時間のバイトから転職した場合などは、再就職手当はもらえません
事業を開始(開業、創業)した場合の条件:給付制限期間以降に開始しよう
- 就職日の前日までの失業認定を受けたうえで、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上であること。
転職のケースと同じです
- 事業の開始により自立することができると認められるもの
詳述すると長くなるの省略しますが、法人登記簿謄本や個人の開業届などが必要になります。
- 「待機」が経過した後、事業を開始したこと
転職の場合とほぼ同様です。待機期間には開業届や法人の設立をしないようにしましょう
- 離職理由により「給付制限」を受けた場合は、「待機」満了後の1か月が経過した後に事業を開始したこと。
給付制限期間がある場合、最初の1か月以内に開業してしまうと再就職手当はもらえません。
言い方は悪いのですが、「形ばかりの転職活動」をして、失業認定(おそらく1回だけ)を受ける必要があります。
- 過去3年間の就職について、「再就職手当」、「常用就職支度手当」(後述)の支給を受けていないこと。
これも転職の場合と同様です。
結論として、「待機期間は何もしない」「給付制限期間の最初の一か月は転職エージェントかハローワーク求人のみ応募する」ということが必要になります。
再就職手当をハローワークから受け取る手続き方法
再就職手当の受給金額の計算方法
再就職手当は以下の公式で計算されます。
給付日数が三分の一以上残っている場合
「支給残日数×60%×基本手当日額(※)」
給付日数が三分の二以上残っている場合
「支給残日数×70%×基本手当日額(※)」
以前よりも再就職手当が増額!
(※)上記「60%」「70%」は平成29年1月2日からの数字です。平成29年1月1日以前はそれぞれ「50%」「60%」でしたので待遇が改善しています!
それでは具体例を見ていきましょう。
具体的な支給例1
- 所定給付日数90日
- 33歳会社員が転職する場合
- 基本手当日額5000円
- 給付制限期間に転職が決まる
再就職手当の金額は
「90日×70%(3分の2以上残っている)×5,000円=315,000円」
失業手当 0円
再就職手当 315,000円
具体的な支給例2
- 所定給付日数360日
- 精神障害者手帳3級保持(就職困難者)
- 46歳会社員が転職する場合
- 基本手当日額5,200円
- 失業手当受給開始230日後に転職できた
再就職手当の金額は
130日×60%(3分の1以上残っている)×5,200円=405,600円
失業手当 1,196,000円
再就職手当 405,600円
このように手当の金額を計算できます。
再就職手当の支給日はいつ?
再就職手当がいつもらえるのか、みなさん興味があると思いますが、再就職手当は、失業手当よりもかなり振り込みまでに時間がかかります(失業手当は失業認定日から数日から一週間)。
具体的には
- 申請~本当に働いているかの確認:約一か月
- 確認後、支給の決定手続き:約一か月
- 支給決定の通知(郵送で通知)後実際に口座に振り込まれる:約一週間
計 申請から二か月ちょっと
大体二か月くらいかかるとみておいてください。
再就職手当を当座の生活資金にするよりも、あくまで転職が決まった「お祝い金」として楽しみにしておく、くらいの姿勢がベターです。
再就職手当と失業手当を満額もらうのはどっちが得?
上記から、再就職手当は失業手当の60%~70%であり、基本手当日額が高い人は圧縮されてさらに減ることがわかりました。
失業手当より再就職手当をもらった方がいい
理由1.失業手当そのものが安い
失業手当の「基本手当日額」は安いんです。
基本手当日額の最高が、45歳以上60歳未満で8,205円です。
つまり最高にもらっても、8,205円×31日=254,355円
手取りで25万円です(保険なので税金はかかりませんが)。
通常のサラリーマンは、基本手当日額5,000円くらいです。1か月もらっても15万円。
失業手当だけで楽に食べていくことはできないということです。
理由2.給付制限期間が長い
自己都合退職した人の多く(障害者等を除く)は、三か月の「給付制限期間」があり、その間は一円も失業手当をもらえません。
それならば、待機期間後に転職を決めて、再就職手当を満額もらった方がいいですよね。
失業手当をもらうために、三か月以上「形だけの転職活動」をするのはバカみたいです。
しかも、もらえる失業手当はとても安いんですよ。
理由3.経歴の空白が長くなる
失業手当を実際にもらうまでには四か月くらいかかるので、その間は履歴書の空白期間になってしまいます。
「決まらない人だから使えないのでは?」など、転職そのものが不利になる可能性もありますので、早めに転職を決めた方がいいんです。
総合的に考えると、失業手当狙いでダラダラと転職活動を続けるよりも、早めに決めて再就職手当をもらった方がトータルではお得だと考えますが、みなさんはいかがでしょうか?
再就職手当以外にもある!ハローワークでもらえる手当
最後に、再就職手当と似ている手当で「就業手当」と「就業促進定着手当」「常用就職支度手当」について簡単に説明します。
就業手当
再就職手当の条件かた外れていた(「2.1年を超えて引き続き雇用されると認められること」該当しない)、「一年以内の短期派遣」「日雇い派遣」「業務委託」などで働いたときに支給されます。
したがって、日雇い派遣などで、支給残日数が45日を下回った時点で支給されなくなります。手当の金額も「就業日×30%×基本手当日額」(一日当たり上限1821円)なので、雀の涙程度です。
該当する人は申請をした方がお得という程度。
これで生活していくことはできませんから、短期就労の「足し」という認識で、早く長期雇用の職に就くべきですね。
働かなかった日は失業手当を並行して受給することもできます。
就業促進定着手当
自分で開業した場合は、いくら事業の幸先が悪くてもこの制度を利用して補填はできません。
会社に転職した場合のみ利用できます。
- 再就職手当を受けていること
- 再就職先で六か月以上継続雇用されていること
- 再就職後の一日当たりの賃金<転職前の一日当たりの賃金
- 基本手当日額(上限6040円)×40%or30%が就業促進定着手当の上限
となります。
例
月給30万の人が転職して月給28万円になると
(仮定)
4月1日付で転職。失業手当支給残日数50日(90日あり40日受給)
転職前基本手当日額:5705円
転職前賃金日額:10000円
転職後賃金日額:9333円
とする。
4月1日~9月30日(半年)=183日
就業促進定着手当=(10000円-9333円)×183日=122,061円・・α
就業促進定着手当上限=5705円×50日×40%=114,100円・・β
β<αなので、上限βが限度となる
というわけで、114,100円が支給されることになります。
常用就職支度手当
転職が大変な45歳以上の方や障害者等の「就職困難者」が、ハローワーク経由や転職エージェントを使って、安定した職に就職できた場合、通常再就職手当がもらえない「給付日数が三分の一未満」の分についても、再就職手当と同額(40%のほうで「下限」45日)の手当てをもらえます。
これは絶対に申請すべきでしょうね。
というわけで、再就職手当について解説しました。
- ハローワークで転職活動をしない場合も失業手当受給資格を手続きしてとる
- 失業手当を満額受給してもお得ではない
- 早めにいい会社に転職or開業して再就職手当をもらう方がいい
ということを頭の片隅にでも入れておいていただければと思います。
15分でわかる!ハローワークの再就職手当まとめ
- 再就職手当はすぐにもらえるわけではなく申請から約二か月かかる
- もらえる金額は上限があり失業手当総額より少ない
- 手続き方法はハローワークの申請書を提出する
- 転職と創業では再就職手当をもらう条件が違う
- 給付制限期間中の転職は再就職手当がもらえないケースがあるので注意する
- 転職するまでは必ず毎月の「失業認定」をハローワークで受けること
実際に就職するかどうかはおいといて、利用できる制度があることを知り、再就職への手掛かりとしてみてください!