平均データからわかる離職率が高い企業と低い企業の特徴と調べ方

離職率が高い企業と低い企業その特徴と調べ方

みなさんが就職、あるいは転職の際に重視する項目は何でしょうか?年収、ボーナスが
何か月なのか、有給休暇の取得率、社員の平均年齢、それらを重視する人が多いですよね。加えて「離職率」もおそらく多くの人がチェックするはずです。

離職率が高い→人がどんどん辞めていく

こういう会社はブラック企業で、長くいられないということですから、事前に避けた方がいいですよね。しかし、中には恣意的に「離職率」を高くないように見せることも可能なんです。それに騙されると・・、大変なことになってしまいます。

今回は「離職率」についてあれこれ考えてみたいと思います。

離職率が高い企業と低い企業の特徴を知るメリットはこれ!

  • 現在の離職率が意外と高いデータがあります
  • 業種によって離職率は3倍の開きがあります
  • 代表的な高離職ブラック企業のケーススタディをします
  • 離職率が高い企業の特徴とチェックポイントを知ります
  • 離職率が高い=ブラックではない理由を理解します

そもそも離職率って何?定義はその企業によって様々、恣意的な「離職率」を掲載するブラック企業も!?

離職率とは

まず「離職率」の定義について紹介します。

離職率とは、ある時点の職場(企業、役所等)の社員(パートも含むこともある)の在籍人数に対し、一定期間(1年や3年)のうちに、どれくらいの人が退職したのかを表すパーセンテージです。

この値が高ければ、辞める社員が多いということになりますので、何らかの問題がその職場にはあるのでは?ということになります。

もっと端的に言ってしまえば、耐えられず辞めてしまう職場、ブラック企業ほど離職率が高い、ということになります。

従業員(正社員)が100人いる職場で、ある年(○○年)の4月1日から翌年3月31日までに7名の社員が退職すれば、1年以内の離職率は

7÷100×100=7% となります。

したがって、離職率が高いか低いかは、就職や転職を考える人の重要な指標になります。離職率20%の会社なんて5人に1人が辞めるわけで、問題がないわけがないと言えますよね。

どれだけの人が退職したかを示す割合のことです。
つまり、離職率の高低から、その企業に社員がどれだけ定着しているかがわかります。
そのことから、離職率は新入社員が企業を選ぶ指針のひとつになります。

しかし、「離職率」の定義は1つだけではなく、会社によって巧妙にカモフラージュされていることがあります。転職サイトや求人票に載っている離職率は、どのくらいの期間に誰が辞めたのか書いてありますか?

離職率は「全社員のうち1年間で退職した人の割合」と決まっていないんです。

例えば

A)「ここ新卒社員の3年以内の離職率」
B)「勤続10年以上の社員の1年以内の離職率」

という定義をする会社もあります。

Aであれば、ここ3年の新卒採用者が 1人、2人、1人 だった場合、分母は「4人」になります。たまたま、この4人が3年以内に辞めなかった場合は、離職率は「0%」、超ホワイト企業に見えます。

しかし、4年目に1人、5年目に2人辞めてしまえば、「新卒5年以内の離職率」は凄く高くなります。つまり、恣意的に辞めた人が少ない母集団を取り出せば「ここ3年の新卒の2年以内の離職率」、「入社5年目社員の1年以内の離職率」、「中途採用職員の1年以内の離職率」のように、いくらでも離職率が低いターゲットを選べるんです。

Bの場合は、10年耐えた人たちですので、すでに家族がいて辞められない人も多く、すっかり「社畜」として染まっていますから、「物言わぬ奴隷」として離職率は低いですよね。本来は新しく入った人がやっていけるかどうかの指標なのに、これでは「辞められない人が辞める割合」という意味がないものになっています。

本来ならば「全社員の1年以内の離職率」とか「新卒社員の1年以内の離職率」が妥当なのですが、そうしていない会社が結構あり「離職率偽装」をしています。

母集団の確認、離職率の定義まで見ないとダメなんです。

厚生労働省が発表している最新の離職率はなんと平均15%!

厚生労働省が発表している離職率
企業が転職サイトや求人票に掲載する「離職率」は、けっこう「粉飾」がありそうですが、統計の大元である厚生労働省が発表している離職率はどうなのでしょうか?

まず、一般的な厚生労働省資料の離職率の定義を述べます。

厚生労働省による、「離職率」は「一定期間内の退職者数」÷「1月1日現在の常用労働者数(年齢階級別は6月末日現在の常用労働者数)」×100という計算式になります。

1月1日に50人いた会社がその年の12月31日までに5人辞めていた場合は
5÷50×100=10%の離職率ということになります。

最新の平均離職率は15%

最新の統計でみてみましょう。

平成 29 年雇用動向調査結果の概況|厚生労働省
によると、平成 29 年上半期の常用労働者(フルタイム雇用の労働者)の離職率(平成29年1月1日のいた人が、12月31日までに辞める割合)は下記のようになっています。

平成 29年上半期の常用労働者(フルタイム雇用の労働者)の離職率

  • 全体:14.9%
  • 男性:13.0%
  • 女性:17.2%
  • 正社員:11.6%
  • パート、バイト:25.5%

正社員よりもパート、バイトの方が辞めやすいく(これはわかりますが)、男性よりも女性の離職率が有意に高いこともわかります。

1年間の平均離職率は15%、思っていたよりもかなり高いことがわかりますね。

業種別離職率!高い業種は外食やサービス業、低い業種は・・?

続いて、業種別の離職率を見ていきましょう。

これは、同資料より離職率が高い業種3つ、低い業種3つを抜き出して表にしてみました。

離職率が高い業種・業界・低い業種業界TOP3
離職率が高い業種・業界離職率

1位

宿泊業・飲食サービス業30.0%

2位

生活関連サービス業・娯楽業22.1%

3位

サービス業(上記に含まれないもの)18.1%
離職率が低い業種・業界離職率

1位

電気・ガス・熱供給・水道業6.5%

2位

複合サービス事業(郵便局、協同組合)7.7%

3位

建設業8.4%

インフラや半官半民的な業種などが低離職率、外食、サービス業が非常に高い離職率という予想通りの結果になりました。

誰でもできる、誰でも参入できる業種ほど過当競争になり、待遇が悪く、残業が増えて人が辞めていきます。
電気やガスなどの事業は誰でも始められるわけではないですよね。

新卒離職率はやはり3年で3割が辞める!

新卒離職率

最後に新卒の離職率を公的資料で見ていきましょう。

平成27年4月1日に新卒で就職した人が、3年以内(つまり平成30年3月31日まで)にどのくらい辞めたのか、学歴別にまとめた厚生労働省資料より見ていきます。

学歴別就職後3年以内離職率の推移

3年以内離職率

1年目

2年目

3年目

中学校

64.1

42.6

13.0

8.5

高校

39.3

18.2

11.6

9.6

短大・専門

41.5

18.1

12.2

11.2

大学

31.8

11.9

10.4

9.5

※平成27年4月に就職した人

大卒が3年で3割辞めるというのは相変わらずです。
高卒は3年で4割辞めるというのも傾向として定着しています。

1年目がいちばん辞めやすく、2年目以降離職率が低下していきます。
1年耐えられれば、ある程度職場に適応できるともいえそうです。
本当に合わない職場は1年経たずに辞めてしまう人が多いということでもあります。

バブル絶頂期の3年離職率も、大卒の場合、

  • 昭和63年入社:29.3%
  • 平成元年入社:27.6%
  • 平成2年入社:26.5% ←あのバブル採用伝説の年(海外旅行に連れていかれたとか)

そこまで変わりません。

「最近は愛社精神がなく、簡単に辞めてしまう」「最近の若者は根性がない、これだからゆとりは」と批判されますが、それを言うバブル世代も似たような離職率だったので、全く説得力がありませんね(笑)。

統計からわかる離職率が高いパターンは?

以上、厚生労働省の資料より「離職率」について平均的なデータをお示しして分析してみました。

結局のところ

  • 1年以内の平均離職率は約15%と結構高い
  • 入社1年目がいちばん辞めやすい、以降慣れるため離職率は下がる
  • 男性よりも女性、正社員よりも非正規雇用(パート、バイト)の離職率が高い
  • サービス業関係の離職率は突出して高い

ということがわかります。

新卒で飲食(外食)チェーンやサービス業(小売等)に入社するのは、まさに自殺行為、目に見える地雷源に突撃するようなものなんです。

そして、そういう業種ほど、「離職率の偽装」で「10年目社員の1年以内の離職率」など、離職率を低くカモフラージュしているところがあります。

ケーススタディ!離職率激高の有名ブラック企業の求人を見てみよう

ここでケーススタディをしてみましょう。

この画像は、新卒向け「リクナビ」にある、あの伝説的ブラック飲食「モン○ローザ」の求人票です。正直、ワ○ミなんて目じゃないくらいの、超ウルトラスーパーハイパーミラクルブラック外食企業です(知っていますよね?)。

2018年には見事(ようやく)『ブラック企業大賞』を受賞!て言っても、20年前からブラック企業の頂点として有名だったんですが・・。

ブラック企業大賞

「過去3年間の新卒離職者数  - 」

何と離職率(離職者数)が書いていません。社名が変わり、違う法人としての採用になるので過去のものは載せないということなのでしょう。

離職率が書いていないので、なんとなく騙されてしまう学生もいるかもしれません(正直「情弱」だとは思います。なぜ目の前のスマホでググらないの?)。

ちなみに、離職率を正直に書いている外食チェーンは以下です。「わが社はブラックです。目に見える地雷です」とわざわざ言ってくれています。

10人採用して3年後3人しか残っていない年もあります。これが外食の本当の離職率です。これを見ても、普通に受けたいと思いますか?

ついでなのでモンテ○ーザの他の項目も見ていきましょう。

「平均年齢 34.1歳」

日本の東証上場企業の従業員の平均年齢は「40.44歳」なので(※)、5歳以上若く、みんな早々に辞めていく会社だとここからわかります。新興ベンチャー企業ではなく、平均年齢が35歳未満の場合、ブラックをまず疑ってください。

3月期決算上場企業の従業員平均年齢は40.44歳|東京商工リサーチ

「自己啓発セミナー(※外部業者に委託)」

これは、山奥に送られ、監禁され、管理者養成学校のようなところで、絶叫洗脳研修をさせるぞ、と堂々と宣言しています。喉が枯れ、最後にはみんなで涙を流して創業者様を讃える精神状態にするわけです。

「固定残業 30時間分 55,743円を含んでおります」

つまり、残業時間が30時間未満の月はないということです。それを超えても、残業代を申請できるかどうか・・、まぁ可能性はあまりないでしょうね。定時になったら、仕事があってもタイムカードを押させる会社もあります。

一見月給が高いように見えますが、基本給は205000円です。これで朝から晩までこき使われるわけです。モンテロー○は居酒屋です。夜勤がない日なんてないでしょうに・・。

これだけ見ても、離職率の記載を放棄し、それ以外にも「目に見える地雷」が多々あります。ブラック企業を見抜くためには「高い離職率」とともに、社員の年齢や頭のおかしい研修制度などを多角的に確認し、判断していく必要があります。

ここを調べてみよう!離職率が高い企業の特徴

離職率が高い企業の特徴

上のケースステディを踏まえて、離職率が高いブラック企業の特徴を書きます。求人票や転職サイトの募集要項でもある程度は見抜けるはずです。

給与が著しく低い

上のモンテロ○ザの場合、「固定残業代込」にして、一見するとそこそこの給料のように見えます。
しかし、実際の基本給は205000円であり、それが「魚○」の店長の給料としてそれが適切だと思いますか?絶対おかしいですよね。

休みが取れない

シフト制の休日であっても、バイトが休めばその分社員が出てきて埋め合わせをしなければなりません。
休日が少ない場合(特に年間100日未満)、これは働く職場に値しないかもしれず、みんな辞めていきます。

昇給の見込みがほぼ全くない

昇給ができない、給料が上がっていかなければ働くモチベーションが上がるはずがないです。

結婚や子どもを持つこともためらってしまいます。当然、退職という選択をせざるを得ません。

サービス残業の常態化/長時間の残業の常態化

言うまでもなく、離職率が高い会社は、長時間サービス残業が横行しています。

働いても働いてもタダ働き、三途の川の河原で石を積むような日々です。

人間関係がよくない

クラッシャー上司、無能上司、モンスター社員がいる職場や、えこひいき人事の横行、社長の愛人の経営への介入などによって社員のやる気がそがれて、ギスギスした雰囲気になってしまいます。退職理由で「人間関係」が多いのは納得です。

社員の平均年齢が低い

少なくとも30代前半の会社は、創業間もないベンチャー以外は、若手がどんどん辞めていくことを意味します。職場はサークル感覚ではできません。

若い社員しかいないということは、大企業では下積みの期間(20代~30代前半)に、高離職率企業では「課長」や「部長」にさせられてしまいます。

課長や部長は管理職で残業代が出ません。「残業」という概念がない世界に放り込まれ、朝から晩まで休日も働かされてしまいます。

ワンマン経営者(悪い意味で「カリスマ」)の独裁

ワ○ミの創業者もそうですが、ワンマン経営が行き過ぎると人は去っていきます。研修で、創業者の本を暗記させる、(意味不明の)社訓を絶唱させる、もちろん、ワンマン人事も横行しています。

まるで新興宗教の教祖様のように崇め奉り、その人のおかしい方針に異を唱えられず、ついていけない人は退職し、イエスマンだけで固められ・・・という負の連鎖が起きてしまいます。

高い離職率を見越した大量採用

100人の会社なのに、20人も30人も採用するのは明らかにおかしいですよね。多くが、数年以内に退職することを予想しての採用であり、こういう会社は人を育てるということをしません。

研修があっても、管理者養成学校のようなところに送って洗脳研修をするだけです。

これらはケーススタディでお示しした、○ンテローザにもほぼ当てはまります。だから、離職率が高い会社には行ってはいけないんです。

離職率が低い会社の特徴、調べ方は?

離職率が低い会社の特徴、調べ方

離職率が低い会社、つまりホワイト企業である可能性が高い会社の調べ方は、高離職率企業とは逆であればいいわけです。

  • 残業代完全支給(当然ですができない企業が多くて)
  • 固定残業代ではない
  • 平均年齢が高い(40歳以上)
  • 完全週休二日制
  • 有給休暇消化日数が多い(年間10日以上、できれば15日を超えたい)
  • 社員数に対して採用数が少ない(辞めないから)
  • 明確な人事考課制度
  • 適切なジョブローテーション(権力の固定化を防ぐ)
  • 階層別研修、カフェテリア式研修制度(研修内容を自分で決められる)
  • 在宅勤務、時短勤務、テレワークなど多様な働き方の整備

ブラック企業のように、実態を偽装する必要がないわけで、堂々と求人票や募集要項に掲載しているはずです。こういう項目が多いことが離職率の低下につながっています。

こちらは、ハイパーホワイト高給企業「福音館書店」のマイナビに掲載していた採用情報です。

  • 平均年収1200万円
  • 残業ほぼなし

求人は退職者の埋め合わせ程度で、離職率が低いです(だってここよりもいい条件の会社がないので)。

フレックスタイム制で、しかも、1日の労働時間が「6時間35分」!!
9時5時どころか4時30分に帰れるんです。

ちなみに、モンテロー○は、1日の労働時間(定時が)「9時間20分」です(笑)。しかも夜勤徹夜上等。

どちらの離職率が高くなるのか、誰でもわかりますよね。そういうことです。

最後にチェック 離職率が高い=100%ブラック企業ではありません

離職率が高い=ブラック企業とは限らない

最後に補足として、離職率が高い企業の多くがブラック企業なのは事実ですが、そうではない企業もあります。

例えばおなじみ「リクルート」です。

リクルートは積極的に社員の独立開業を奨励しています。開業以来、定年までいた社員がほとんどいないという伝説があります(創業以来定年退職は2名らしい)。

「38歳定年制」という話もあり(※)、最初からリクルートでノウハウを得て独立したい人がほとんどです。

リクルート 「3年ごとに1500万円のチャンス」新退職金制度で“キープヤング”

確かにリクルート社員の働き方は、すごいものがあり(筆者が会社員時代、午前2時とかにメールが来ました)、外から見るとブラッキーなのですが、

  • 平均年齢 約35歳
  • 平均年収 約900万円
  • 平均勤続年数 約6.8年

というデータがあります(リクルート・ホールディングスの有価証券報告書(2016年3月期)

激務高給で目的をもって早く辞めていく。リクルート社員のイメージは社畜や奴隷とはちょっと違いますよね。

だから、本当にある目的があり、辞める前提で経験を積むのであれば、高い離職率の会社も場合によってはアリです。

それこそ、外食で技術を磨いて独立開業してもいいわけです(モン○ローザは何の技術も身につかないと思いますが)。

天ぷらや中華、和食で、本当に明確な目的があり、意志が強い人ならば、徒弟制個人店の弟子になるよりもアリだと思います。

平均データからわかる離職率が高い企業と低い企業の特徴と調べ方 まとめ

まとめ

  • 現在の離職率は約15%と意外と高い
  • サービス業や外食チェーンの離職率が抜きんでている
  • インフラや公共サービスの離職率は低い
  • 参入障壁が低い業種ほど離職率が高い
  • 離職率の計算方法は相対的で恣意的に計算されることがある
  • 厚生労働省の離職率は(その年の離職者/1月1日現在の従業員数)×100
  • 新卒離職率は中卒>高卒、短大専門卒>大卒
  • 3年目までに3割辞めるのは事実
  • 残業や休日、ワンマン体制かどうかなど複数の要因が離職率に影響する
  • 離職率が高い→100%ブラック企業「ではない」
  • 求人票や募集要項である程度地雷を見つけることが可能