履歴書の書き方については、いろいろなマニュアルがあります。
正直に、ていねいに、心を込めて書くのが重要と言われていますが、正直に書いてマイナスになるのでは?と思われる箇所があります。
「特になし」と書けるくらい健康な人ならば問題ないのですが、年とともに悪い部分が出てきますし、何か持病をお持ちの方もいるでしょう。今回は、履歴書の健康状態欄について、どのように書いたらよいのか考えてみたいと思います。
・健康状態にウソを書くのは絶対にNG
・健康診断書提出や事前の健康診断を行う会社もある
・健康状態欄がない履歴書もある
・献血できるレベルなら健康状態は良好と記載できる
・乗務に支障が出なければ良好と記載できる
・精神疾患を患った方は、障害者雇用ならば履歴書に書いたほうがいい
・持病や既往症があっても「業務に支障をきたしません」と添えると◎
・色盲(色弱)は履歴書に書かなくてもいい
・本当に健康な人は健康状態欄で自己アピールできる
健康状態を履歴書に書かせる理由
そもそも、なぜ履歴書(あるいはエントリーシートなど)には「健康状態」欄があるのでしょうか?
これは、病気や障害を持っている人を積極的に排除しようというものではありません(そのはずです)。
その会社の業務を配置した部署、役職で行う上で支障があっては困るので、事前に伺い、
- 業務に支障がある健康状態なのかどうか
- その場合配慮が必要なのかどうか
を確認するためのものです。
業務と全く関係がない病気の場合、まったく選考に際して判断も考慮も評価もマイナスもされないでしょう。
ひどい花粉症でも業務に支障はないですよね。
あるとしたら、杉林の中で木の伐採をする仕事くらいでしょうか。
健康状態に問題がある人の書き方
病気や障害があっても働けるわけですからここは強調します。
- ○○病(ただし完解していて業務に支障はありません)
- かつて療養していましたが現在は月1回の通院のみです
- 現在はカウンセリングのみで服薬していません
通院や配慮が必要な場合
- 日常業務は問題ないですが、月2回通院が必要です
など配慮が必要なことに触れます。
転職して「そんな話聞いていない」という齟齬を防ぐためです。
そこがマイナス点になる会社は、そもそも転職しても働けないわけですから、最初から縁がないと思うしかないです。
ウソはNG、「ウソ」と「書かない」は違う
履歴書にウソの項目を書くのは健康状態に限らず(特に学歴などは)NGなのは言うまでもありません。
しかし、健康状態は極めてプライベートなことですので、すべて書いて会社に報告する義務もありません。
ウソを書くのと、事実を書かないのはイコールではありません。
ご自身の不利益になるプライベートな健康情報まですべて伝える義務はありません。
- 虚偽事項を書く→×
- 真実をすべて書かない→○
そてを踏まえて「健康」とは何かを定義していくことになります。
後の文章で出てくるのは「健康である」と見なせるくらい軽微な病気や服薬になります。
「健康状態欄」がない履歴書を使う方法も
何か持病を持っていても、あまり伝えたくないという人は、あらかじめ「健康状態欄がない履歴書」を使うという方法があります。
転職、就職をする場合「会社指定の履歴書」(会社オリジナル様式、あるいはメーカーの型番指定)のケースと、「市販の履歴書ならどれでも」というケースがあります。
前者であって、その中に「健康状態」欄があれば書かざるを得ませんが、後者ならば「健康状態」欄がない履歴書に書いてしれっと出すことも可能です。
「健康診断書」提出や事前に健康診断を行う企業もある
「健康状態」欄がない履歴書だからセーフ!と安心してはいけません。
企業によっては、履歴書とは別に、ある段階で「健康診断書」の提出を求めるところがあります。
病院で発行してもらうもので、2000円~4000円するのである程度選考が進んだ段階になるはずです。
健康診断書は
- 受験者がいつも行く病院(主治医)で会社指定様式に医師が記入
- 受験者がいつも行く病院(主治医)で病院指定様式に医師が記入
- 会社指定の病院で健康診断そのものを実施
- (新卒の場合は大学の保健センターが書いてくれる)
の三(+1)パターンになるはずです。
「会社指定の病院での会社指定様式に記入」は実質会社主催の健康診断と変わりませんので「3」に含めます。
自分で病院を選べる場合、(本当はダメですが)主治医に相談してある程度大目に見てもらえる項目もあるかもしれません。
しかし、「3」の場合はもうすべて会社のまな板の上の鯉にならざるを得ません
「知らなかった」で済めばいいのですが、重大な慢性疾患などだと、虚偽を書いたと判断されて落とされる要因になりかねません。
だから基本的に履歴書の「健康状態」欄にウソはNGということがわかりますね。
病院によっては封筒に糊シールがあり「ご自身で確認したうえで厳封してください」というところもありますが、まったく本人が確認できず、医師が書いてすぐ厳封してしまうところもあります。
自分で封筒を開けてまた封をするのは、封筒の状態でバレてしまうのであきらめてそのまま(厳封がされたまま)提出してください。
新卒の場合は特に病院で、という指定がない場合、大学の保健センターのような機関が健康診断書を発行してくれるので安心してください(費用もせいぜい500円以下です)。
「健康状態良好」「問題なし」でいいケースは?
「健康状態」欄がある履歴書に記入しなければならない場合、本当に健康で風邪の時くらいしか通院しない人(定期的に通院がない人)は「良好」「問題なし」と書けますが、そうでない人はどこまで正直に書けばいいのでしょうか?
一つの目安として、献血ができる基準を考慮してみてください。
日本で献血できる基準は世界で一番厳しいと言われていて、前日に風邪薬を飲んだ、レベルでも献血できません。
逆に献血できると判断される人は、会社で働く際もまったく問題がないでしょう。
身体障害などはこの基準ではわからず、おそらく外見ではわからない障害でも、おそらく書いたほうがいいのですが(能力がある障害者の方を障害者雇用できればwin-winです)、病気の場合は以下を基準にしてはいかがでしょうか?
以下の人も「良好」「問題なし」でいいでしょう。
日本赤十字|献血へのよくある質問より引用(一部加筆)
①健康増進のためのサプリメント(ビタミン剤、ミネラル剤など)
※貧血治療中を除きます。→(註)貧血も大丈夫な気がします②胃腸薬
※感染性下痢症状がある場合を除きます。③降圧薬(高血圧)
※血圧がほぼ正常域にコントロールされている場合。④漢方薬
※肝疾患、感冒、ぜんそくなどのために服用されている場合を除きます。⑤高脂血症治療薬
※一部の治療薬を除きます。→(註)ただし入社後の定期健康診断でバレます(それで退職になることはないのですが)⑥アレルギー治療薬
※一部の治療薬を除きます。ぜんそくのために服用されている場合は症状により判断させていただきます。(註)花粉症は問題ないです⑦少量の女性ホルモン・避妊薬(ピル)
※更年期障害や月経困難症などの補充療法に服用されている場合は献血いただけますが、緊急ピルの場合は除きます。⑧局所投与の薬物(点鼻薬、点眼薬、塗り薬、貼り薬)
※広範囲に使用されたり、感染症による場合を除きます。⑨抗潰瘍薬
※潰瘍予防薬として服用された場合。⑩緩下剤(便秘薬)
もちろん、先週風邪で病院へ行ったとか、一か月前にインフルエンザになったとかであれば、まったく健康状態に問題なしで結構です。
アレルギーなどの持病や既往症の健康状態欄の書き方
既往症・既往歴の履歴書の書き方
既往症(きおうしょう)・既往歴(きおうれき)とは、今はなおっているが以前かかったことのある病気のことをさします。履歴書には、健康状態が業務に支障をきたさないのであれば「良好」と書いてOKです。
ただし通院中や業務に制限が出る場合に前もって伝えておく必要があります。
- 業務に支障はありませんが○(疾患名)の治療のため、月に○回通院しています。
- 友情の業務に支障はありませんが持病の腰痛のため、重い荷物を運ぶことができません。
- 月に一度○○(疾患名)の検査のために通院していますが、業務にまったく支障はありません。」
このような書き方があります。通常の業務に支障がない場合は、そのことを記載しましょう。
喘息やアトピーの履歴書の書き方
喘息やアトピーなど慢性疾患を持っている人はどう記入すべきなのでしょうか?
上の献血の基準で言えば
- 花粉症→書かなくてOK
- 喘息→吸入器常備レベルならば書くべき
- アトピー→塗り薬だけなら書かなくてOK
となります。
アトピーがひどくて外からでもわかってしまうような人は書いたほうが「この人思い皮膚病なのか?」という会社の疑念を払しょくできます。また、喘息の人も薬で抑えられるなら問題ないのですが、発作で休むことがしばしばある人は「よく休む人だ」とマイナス評価にしないためにも、事前に伝えておいた方がいいです。
アレルギーについては、よほど重篤な化学物質過敏症などでない限りは書く必要はありません。
食べ物アレルギーも会食などで食べなければいいですし、そこまで書くとなると、お酒が飲めないとかタバコが吸えないとか、キリがありません。
日常生活に支障がない慢性疾患であれば、定期的な通院や服薬をしているケースでも「問題なし」で大丈夫です。
うつ病などの精神疾患を持っている人、てんかん持ちの人
精神疾患(うつ病など)やてんかんの発作がある人は書くべきでしょうか?
これは場合によります。
完治、完解していれば書かなくても大丈夫だと思いますがかなり判断が難しいケースもあります。
1.障害者雇用で応募している場合
→当然、その障害で応募するのだから書きます。
もちろんこれでマイナスにはなりません。
2.障害クローズで応募している場合
→精神疾患系はまだ偏見もありますし、障害者枠の給料が安いので、あえてクローズで転職活動している人もいます。
転職後はバレずにがんばるしかありません。
定期健康診断では精神の項目がないので定年まで隠し通すことも、途中でカミングアウトすることもご自身の判断になります。
ただし、再発して休職などになった場合、傷病手当金をすでに受け取っている場合は、隠していたとわかってしまいます。
3.履歴書に空白期間がある場合
うつ病で退職して年単位で療養し、何とか働けるようになったので転職活動をする場合、履歴書の「空白期間」が問題になります。
「健康状態」欄「問題なし」と書くと「じゃあその期間何をやっていたの?」と聞かれてしまいます。
空白期間が長い場合、逆に病気療養だったと書いたほうがましということもあります。
ただ、年単位の療養が必要な精神疾患、となると企業側も避けるかもしれません。
精神疾患の方は、障害者雇用で腹をくくれるならば、むしろオープンにして履歴書に書いたほうがいい、というのが筆者の見解です。
うつ病の筆者の事例
筆者はうつ病で会社を辞めた精神障害者(3級)です。
退職したのが2013年なのでもう5年になります。
今は個人事業主になりましたが、もし転職活動、就職活動をするなら、うつ病であること、障害者であることをオープンにして、障害者雇用枠を狙うしかないと思います。
年齢的にももう管理職の年齢ですが、それができるキャリアはありません。
だから健康な一般社員のプレイヤーとしての転職はもう無理なんです。
「精神障害者手帳3級(うつ病)、ただし症状は比較的回復し固定、診断書提出可能」と書きます。あとは
「現在漢方薬のみ服用で抗うつ薬は飲んでいません」
と、さらに安心できる材料を加えます。
実は、中性脂肪も高いのですが、病的な値ではないのでそれは書きません。
人によって、特に精神疾患をされた方は書き方に悩むと思いますが、筆者は精神疾患の部分は正直に書いてそれでも受け入れてくれるところを探します。
※うつ病と転職についての記事はコチラ!
「うつ病」の検索結果一覧
色弱は履歴書に書かなくても大丈夫
もう一つ、特に男性の20人に1人がそうであると言われる「色弱」(赤緑色盲等遺伝性のもの)ですが、これは履歴書に書く必要はありません
かつては小学校で検査をして、大学入試でも色弱かどうかが考慮されていた時代がありました(現在は行われていません)。
化学薬品などの研究職で「色を見分けることが必須」の職業であれば、色弱かどうかが関係しますが、そうでない職業に転職する際に履歴書に書く必要はまったくありません!
今でも、色弱を検査して、色弱だとなれなかったり不利になったり、警察消防自衛隊や航空、鉄道関係職でも不利に扱わない流れが出てきています。
健康な人の健康欄の書き方&例文
最後に、本当に健康でめったに病院へ行かない人は、「健康状態」でアピールすることもできます。
- 健康。ここ5年病院へ行ったことはありません。
- 問題なし。医師からは10代の体では?と言われます
- 良好。就職以来病気で休んだことはありません
このように添えれば、健康状態をアピールできます。
本当に健康な人ならもちろん加点評価になります!
このように書き方次第で、持病があっても不利になりませんし、配慮が必要な場合もさりげなくアピールできます。
「病気の方お断り」という会社に入っても、そもそも配慮がなく働けないのですから、早々に縁が切れてラッキー、くらいに思いましょう。
「ウソを書く」のと「事実をすべて書かない」のは違うということも意識してみてください。
健康状態に自信がなくても他のことで自己アピールすれば大丈夫です。
特技がないと思っている人にこそ読んでほしい記事は以下です。
履歴書の健康状態欄の書き方まとめ
- 履歴書の健康状態欄にすべて真実を書く義務はない
- ただし虚偽、ウソは書かないこと。内定取り消しや解雇の可能性もあり
- ウソを書くのとの真実をすべて書かないのは違う。後者はOK
- 履歴書の指定がない場合、健康状態欄がない履歴書を使うのもあり
- 病気や病歴があっても「業務は大丈夫です!」と添えること
- 健康状態欄の代わりに医師の健康診断書提出を求められるケースもある
- 入社時に会社側で健康診断を行う場合は逃れられない
- 花粉症な軽度の高血圧程度ならば「問題なし」「健康状態良好」と書いて構わない
- うつ病など精神疾患を患った方は、障害者雇用ならば履歴書に書いたほうがいい
- 色弱(赤緑色盲等)は書く必要はまったくない
- 本当に健康な人は健康状態欄で思いっきりアピールしてもいい