転職先として、子育てに一定の区切りがついたことで職場復帰を目指している女性などから特に人気が高い職種が医療事務です。
ところがご承知の方も多いとおり、医療事務には様々な資格があります。
医療事務へ就職や転職をはかる上で資格は必須なのかあるいは有利なのか、それともあまり評価されないのか、ネット上では様々な「噂」が飛び交っており、何を信じれば良いか悩んでおられる方も大変多いのではないでしょうか。
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医療事務の実際の仕事内容
仕事内容は医療事務の種類によって大きく異る
医療事務資格の必要性について正しく理解するには、そもそも医療事務とはどのような仕事なのか、体系的に理解しておくことが重要です。
実は医療事務はいくつかの種類に区分して考えることができます。その区分ですが、概ね次のような4つがあげられます。
医療事務の種類
・医科事務
・歯科事務
・薬剤事務
・介護事務
これらの事務職の大きな違いを一言で言えば「勤務先の違い」です。また、勤務先に応じた専門的な事務ワークも発生しますし、そのため、それぞれの勤務先ごとに必要な知識もあります。
その上で、これら医療事務全てにおいて概ね共通して必要とされる素養やスキルがあります。それが「一般事務職とも共通したスキルや素養」と「レセプト業務(診療報酬請求業務)」です。
この点をしっかりと理解しておくことが、医療事務の本質的な理解にもつながってきます。
医療事務でも一般事務でも必要なスキルとは?
では医療事務と一般企業事務で共通したスキルや素養としてどのようなものがあるか、確認することにしましょう。
ビジネスマナー
電話応対を含めたビジネスマナーは一般事務、医療事務に関係なく、社会人として仕事を行う上で必須のものですし、とりわけ「事務職」というカテゴリーにおいてシビアに求められる素養と言って良いでしょう。
コミュニケーション能力
例えば医科の事務では患者さんとコミュニケーションをはかる機会もかなりありますが、介護事務は要介護者の介助は介護職専門スタッフが行うため、それほど接客能力が必要と言う訳ではありません。
つまり、勤務先によって問われる度合いに多少の違いはあります。しかしながらコミュニケーション能力が一切不要といった職場はあり得ませんので、この点は高ければ高い方が望ましいと言う点では一般事務と大きな違いはないということです。
PCスキル
事務職を行う上で、今やPCを使用しない環境を探す方が難しいと言えます。PCスキルは医療、一般といった違いに関係なく必須のスキルと言って良いでしょう。
これらのスキルや素養は医療事務に就くのであれ、一般事務に就くのであれ必ず必要になるものとしてぜひ理解しておいてください。
レセプト業務とは?
次に各種の医療事務において共通的な業務である一方、一般事務職では必要とされない専門的業務と言えるのが「レセプト業務」です。
レセプト業務とは医療機関で保険診療を患者が受けた場合、医療機関側が自治体や各健康保険組合等に対して報酬明細書(レセプト)を作成し、支払い請求を行う業務のことです。
介護報酬請求は医科、歯科、薬局と異なる。また歯科には歯科独自のものがある。
レセプトを作成し、国や自治体などに請求するという点では共通しているものの、介護事務で行う介護報酬請求と医科や歯科などで行う診療報酬請求とは保険の種類(介護報酬請求は介護保険、診療報酬は健康保険など)や計算方法などが異なります。
また診療報酬請求だけをみた場合でも、医科と歯科では共通している部分もあれば、歯科独自の診療報酬請求項目というものもあります。
「レセプト業務」でつぶしが利く分野はないのか
では就職先を例えば歯科だとか薬局だけに限定せず、幅広く医療機関で就職先または転職先を考えたいと言う場合にはどうすれば良いか、即ち「つぶし」を利かせたい場合にはどうすれば良いのでしょうか。
そのような場合には「医科」を対象としたレセプト業務知識を身につけるのが一番です。医科が大きな意味で医療全般の診療報酬請求をカバーをしているためです。
未経験者が医療事務で採用されるには?/医療事務と資格の関係について
ここまで読まれた皆さんは医療事務には
・一般事務にも要求される素養に加えてレセプト業務に関する専門知識が必要であること
・特に医科のレセプト業務の知識が重要であること
がご理解頂けたと思います。では医療事務には専門知識が必要ということから、何かの資格が必要になってくるのでしょうか。
医療事務には業務独占資格はない。従って資格は不要
まずはっきりしていることは、医療事務に携わることにおいて医師や看護師といった特定の資格は一切問われません。何故なら医療事務分野において法律で定められた公的業務独占資格は一切ないからです。
つまり無資格者の方であっても医療事務を行うことはできます。
実際、何ら資格を持たないのに医療事務に携わっているベテラン職員の方もいます。
未経験者・無資格者が採用される見込みは大変厳しい!
しかし、医療事務に一切携わったことがないという未経験者の方が医療事務に関する資格を一切保有しない状態で医療事務の求人に応募した場合どうなるかと言えば、かなり厳しい結果となるのが偽らざる現状です。
医療事務はとりわけ女性から大変人気の高い職種であることから、経験者や有資格者が多数応募します。
そうした状況を踏まえて、ぜひ採用する側の立場で考えてみてください。
どんなに人格的に素晴らしくとも、専門性が問われるレセプト業務に関する知識が全くない、もしくは本人が「勉強した。知識はある」と自己申告しているだけでそれを客観的に証明するものがなければ採用する側は不安ですよね。そうなれば必然的に業務経験者や資格保有者の方が優位になってくるのです。
未経験者にとって資格は最低限必要なものと考えるべき!
では、未経験者が資格を取ればほぼ確実に採用されるものでしょうか。これは医療事務に限りませんが、資格だけで採用が決まるということはまずありません。
お伝えしてきたとおり、一般事務職に求められる素養が備わっていなければ、資格があっても採用は至りません。また、採用にあたっては人柄も問われることは申し上げるまでもありません。
また、前述したとおり、医療事務は人気職種であるため、経験者も多数応募してくることから経験者と未経験者では経験者の方が優位に評価される傾向もあります。
つまり未経験者にとって医療事務資格(特に「医科事務の資格」)は就職や転職する場合の十分条件ではなく、「必要条件」であるということです。
未経験者の方は医療事務に向けた就職や転職のスタートラインに立つためにも、医科の医療事務資格を取得することから始めることにしましょう。
医療事務に楽なイメージは禁物!イメージに対するズレを正しておきましょう
医療事務が未経験者からも人気を集める大きな理由は、そのイメージの良さにあります。
具体的には肉体労働ではなく事務ワークなので働きやすい、医療機関という社会的印象の良さなどがあげられますが、「残業がなくて楽」といったイメージを持っている方も少なくありません。
しかし実際の医療事務は決してそれ程甘い仕事ではないのです。医療事務の勤務の実体をポイントでお伝えすると、次のようなことが言えます。
・特に月末から月初にかけてレセプト業務の締め作業が集中するため、この間は残業も多くなる・病院は朝が早いため、一般的な事務職より早朝出勤となる
・病院は土曜日も営業している場合が多いため、土日連続の二日休みは取りにくい
等々、残業がなく、(近くの医療機関なら)通勤が楽で休みもしっかりとれるといったイメージが強い医療事務ですが、こうした多少辛い面もあることは前提として理解しておく必要があります。
医療事務の現状やメリット・デメリットまとめ
しかしながら、人間の健康を取り戻す医療機関という社会的使命の大きな職場を支える医療事務は大きなやりがいに満ちた職業であることに間違いはありません。
未経験の方はまずは資格を取得した上で、医療事務という新しい世界で活躍する自分をぜひ目指して欲しいものです。