それが、ただの筋肉痛なら良いのですが、ひょっとすると危険な病気の兆候かもしれません。今回は立ちっぱなしでいることのリスクと、少しでも負担が軽減できる対策について考えてみたいと思います。
- 一定の姿勢でいることで腰や肩に負荷が集中します
- その結果、「下肢静脈瘤」や「変形性膝関節症」などの病気になりやすくなります
- 場合によっては自律神経失調症やうつ病などになるリスクもあります
- ちょっとした注意点で立ち仕事のリスクが減ります
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立ちっぱなしでどこがダメージを受けるの?負担がかかるのはここ!
「立ち仕事は腰や足に悪い」という印象を持つ人がいらっしゃいますが、それは立っていることが悪いのではなく、立っていることの結果として、同じ姿勢を続けざるを得なくなり、1つの同じような場所に、疲労や負荷がかかるので、痛みやコリを引き起こしてしまいます。
- 腰痛
立ちっぱなしの状態が続くことで、筋肉、椎間板、靭帯などへのダメージが蓄積していきます。
結果として、腰痛などを引き起こしてしまいます。
特に、同じ姿勢で立ちっぱなしになることで、脊椎(背骨)にダメージが蓄積します。
脊椎は、いくつもの短い骨がつながっていて、重さを分散し、衝撃を吸収する役割を担っています。
前後にゆるやかなS字カーブを描いている脊椎は、骨と骨の間に「椎間板」があり、靭帯によってつながれています。
立ちっぱなしで負荷が脊椎にかかり続けることで、靭帯が伸びてしまい、ダメージや負荷を吸収できなくなります。
その結果無意識のうちに身体が歪み、姿勢が悪くなり、ダメージが蓄積し、疲れが取れなくなり、痛みが継続し、病気の原因となり・・と悪循環に陥ってしまいます。
- 足
ダメージを受けるのは背中だけではありません。
当然、足にも大きな負荷がかかることになります。
足の痛みやむくみは筋肉疲労を引き起こし、作業効率や集中力を大幅に低下させます。
仕事上の失敗の確率も上がりますし、思わぬ大きな事故につながる可能性があります。
- 首
さらに深刻なのが首にかかる負荷です。
人間の頭は約5㎏といわれていますが、つまり、常に(寝ている時以外)それだけの重さを首と肩で支えています。
立ち仕事で首を傾けると、傾けた角度によって、最大20㎏近い負荷が首と肩にかかると言われえています。
立ち仕事をするということは、首を傾けた状態を長時間維持しなければならないわけで、それだけの負荷が定着してしまうことになります。
立ちっぱなしで起きる病気やリスク
立ち仕事を続けることで、単に筋肉痛や肩こりになるだけではなく、重大な病気を引き超す可能性があります。
座り仕事の場合は「エコノミークラス症候群」などが有名ですが、立ち仕事の場合はどういう病気リスクがあるのでしょうか?
足の血管がこぶになる「下肢静脈瘤」
下肢静脈瘤は立ちっぱなさしの状態で仕事を続けるとなりやすい病気です。
足の血管が浮き出て、こぶができる、むくんでいる、足が火照る、そういう状態になったら下肢静脈瘤を疑ってください。
この病気が進行すると、皮膚が色素沈着(皮膚の色が黒くなる)を引き起こし、さらに皮膚が硬くなったり、炎症を起こしたり、皮膚がえぐれたようになってしまいます。炎症を放置すれば感染症などの原因にもなります。
「動脈瘤」ではなくて「静脈瘤」なので、命に直結するリスクは低いのですが、感染症の可能性もありますし、何より肌が崩れるので、美容の観点から見ると、最優先に予防しなければいけない症状です。
O脚の原因にもなる「変形性膝関節症」
立ち仕事を続けることで「変形性膝関節症」という病気になる可能性もあります。
変形性膝関節症は、ひざの軟骨がすり減り、痛みが出てくる病気です。
ひどくなるとO脚などの変形が進み、スタイルが大きく崩れるだけではなく、歩くたびに激痛に悩まされるようになります。
病気が進行すると、朝起きて歩き始めたとき、椅子から立ち上がる時だけではなく、歩いたときや立って仕事をしている時にも激痛が襲うことになります。
完治させるためには手術が不可欠で、最悪「人工関節」を膝に入れなければいけなくなります(当然大手術になります)。
かなり大事になり、日常生活にも大きな支障をきたしてしまいます。
自律神経失調症や不眠、うつの引き金にもなる「頸肩腕症候群」
立ち仕事を続けていることで、首や肩の凝りが取れなくなってしまうことにより引き起こされる病気です。
最初は手の指や手関節の痛み、肩こりやだるさから症状が出ます。
だんだん進行していくと継続的な痛みや、うずきが強くなっていきます。
手や手首が主にいたい人、肩、背中が痛い人などいろいろです。
症状が進行していくと、手指の冷えやしびれ、さらにはふるえなどが現れ、物が書きにくくなったり、手指が白くなる「レイノー現象」などが見られるようになったりします
コリや痛みは、首、頸、肩、腕、手だけでなく、腰や下半身に及ぶこともあり、足先がしびれるなど全身に症状が出てしまいます。
このような症状が続くと「自律神経失調症」になり、睡眠のリズムが大きく崩れ、最悪の場合、うつ病などの精神疾患に陥ってしまうケースもあります。
結果的に湿布や痛み止めがないと仕事ができなくなってしまうかもしれません。
リスクを軽減するための対策はこれ!
腰痛をはじめ、立ち仕事によって引き起こされる症状、病気のリスクを減らすしていくためには何ができるのでしょうか?
簡単にできる予防法について考えてみましょう。
ポイント1 負担がかからないような「疲れない立ち方」の姿勢を身につける!
回復させるのではなく最初から負荷がかからないようにしていきます。
基本の姿勢1
「後頭部、肩甲骨、仙骨(お尻)、かかとを壁につけた場合、腰の後に手が入るくらいのスポットがある」
この姿勢を取ることで、身体が「S字」になり、過剰な腰などへの負荷を他へ分散させることができます。
基本の姿勢2
「可能なら足元に台を用意し、片足ずつ乗せてみる」
受付など足元が隠れる職場のみ可能ですが、これによって腰にかかる負荷を軽減させることができます。
ポイント2 休憩時間はストレッチ運動を!
ただ、家でやるストレッチのように床に寝て、ということはおそらくできないので、工夫が必要になります。
例えば、以下のようなストレッチをしてみましょう。
- 壁から10~20cm離れて立ち、肩とお尻を壁につける。次に、腹筋に力を入れて30秒停止する。視線は前方へ向ける(足元を見ない)。
- 続いて、上半身はそのまま、片足ずつ壁の方に寄せていき、両足のかかとを壁につけて30秒ほど停止する。
①と②を1セットとし、1日数回行ってみると効果が実感できます。
ポイント3 動作を丁寧に行う
負荷が一点に集中しないように、急な動作ではなくゆっくり行うと、力が分散してダメージが集中することを防げます。
「ながら動作」ではなく、一つひとつの行動、動作を丁寧に行うことで、身体にかかる負担、負荷を軽減させることができます。
ポイント4 体が冷えていませんか?温めると疲れやだるさが軽減することもあります
身体が冷えてしまうと、血行が悪くなりますよね。
血行が悪くなると代謝が鈍り、栄養も体内に行きわたらなくなり、疲労やダメージの回復が遅れてしまいます。
特に痛い部分を集中的に温めてみると、つらさが和らぐこともあります。
ポイント5 ぬるめのお風呂でしっかり温める
熱いお湯ではなく、38度~40度くらいのぬるめのお湯にしっかり浸かって、体の芯から温めることが大切です。
血行が良くなれば老廃物や疲労物質、痛みの原因の物質の体外への排出も促進されます。
合わせて硬くなった筋肉もほぐしてみましょう。脚を伸ばして全身が温められるようなお風呂が理想的です。
ポイント6 何よりしっかりとした睡眠を!
最後は睡眠です。睡眠をとることで体の免疫機能が向上して、疲労が回復します。
脳も体も睡眠によって回復させることができ、様々な病気のリスクも減っていきます。
横になることで、首にかかる頭の負荷を減らすことができます。
深夜のスマホは目を酷使し、目の筋肉から連なる方や首の筋肉にも負担をかけてしまいます。
安眠の大敵でもあり、寝る時くらいはスマホから離れてみましょう。
立ち仕事と座り仕事 どっちがリスクがある?
立ち仕事と座り仕事、つまり、一日中立ちっぱなしの仕事と座りっぱなしの仕事では、どちらが健康へのリスクは高いのでしょうか?
座り仕事の方が怪我をする可能性が低そうに思えますが、実は座り仕事の方が健康へのリスクが高いようなのです。
海外の大学の研究では、1日の座位時間(座っている時間)が4時間未満の人と比較して、座位時間8時間以上の場合、死亡リスクが15%上がり、さらに座位時間が11時間以上になると、40%も上がるというデータがあります。
運動不足になるだけでは説明できず、やはり座っている姿勢が体に良くないようです。
一方、立ち仕事の場合は怪我のリスクを除くと、座り仕事よりも健康リスクは低いです。
立っているだけでカロリーも使いますし、血液の循環も座りっぱなしの場合よりも良いようです。
したがって負荷が一部分にかからないように気を付ければ、重大な健康リスクは座り仕事よりも低いという見方もできます。
- 座り仕事→ホワイトカラー→安全
- 立ち仕事→ブルーカラー→危険
という二分法は全く正しくなく、むしろ無理に座り仕事を選ぶ方が健康上のリスクが高いことがわかります。
ぜひ実践してみましょう。
立ち仕事の腰痛や足の痛さまとめ
- 立ち仕事をしていると腰や肩に負荷がかかり痛みなどを引き起こす
- 「下肢静脈瘤」など、立ち仕事特有の症状もある
- 症状が進行すると自律神経失調症やうつ病などの精神疾患リスクも発生する
- リスク対策としては適度なストレッチや血行を良くすることなどが挙げられる
- 実は立ちっぱなしの仕事よりも座りっぱなしの仕事の方が健康リスクが高い