今回は埼玉県で行われた残業代未払いの裁判でメディアの注目度も上がっている、教員(教師)のブラックすぎる実態を調査しました。
教員がブラック過ぎるのは『残業代がゼロに等しい』『業務以外の対応が多すぎる』『50%以上が過労死ライン超え』が主な原因と言われています。
この記事では、そんな教員のブラック過ぎる実態や理由、改善方法などをわかりやすくまとめています。
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教員(教師)のブラックすぎる実態や理由を解説!
何時間残業をしても給料は固定だから
教師の給料計算の仕組みはかなり特殊で、いくら働いても残業代は50年以上前の教師の平均残業時間を元に算出された、4%しかもらえません。
スマホや動画サービスなどでよく聞く「定額●●放題」という言葉がありますが、これはサービスを受ける側からするとお得感があっていい響きですよね。
しかし、これが給料をもらう側になると「何時間働いても月給●●万円固定」という意味になります。
月160時間働く人も、月200時間働く人も、給料は同じというわけです。
例えばですが、月給20万の新人教師が過労死ラインを超えている月100時間の残業をしても、残業代は4%の8,000円しか出ません。
民間企業だと普通有り得ない制度ですが、学校ではどうしてそんな事が起こるのでしょうか。
「教育職員の給与等に関する特別措置法」が関係している
これは、教職員だけに適用される【教職員給与特別措置法】(給特法)という法律のせいです。
国が「残業に対して業務の内容や量にかかわらず一定の残業代(調整額)しか支払わないですよ」と決めているので、教師はどれだけ働いてもそれに見合った給料がもらえません。
これではブラック過ぎると言われるのも当然でしょう。
「自主的」にやらされる残業が多すぎる
教師の本来の業務は生徒への授業であり、実はテストの採点や通知表の作成、生活指導、保護者への対応は業務に含まれていません。
しかし、実際は上記のような業務外の仕事も全てこなすことが、半ば強制されています。
また、給特法では教職員は「労働基準法が定める時間外労働や休日出勤の賃金を支払わない」と決められています。
そのため、私たちの感覚で「残業」と思う上記のような業務も基本的に教職員には適用されず、強制的にサービス残業になるのです。
教師に認められる残業が少なすぎる
給特法が認める「残業」は以下の4つです。
- 生徒の実習
- 学校行事(運動会など)
- 職員会議
- 非常災害、生徒の指導に関し緊急の措置を要するもの
これを「超勤4項目」といい、その他の仕事は「先生が自主的にやっているもの」として残業には当てはまりません。
授業準備や成績処理、通知表を書く時間といった作業はやらなくてはどう考えても業務に支障が出ますが、国に「残業」と認められていないのです。
誰が見ても有り得ないので、過去にも時間外勤務をめぐる裁判が何度かありましたが「テスト作成や試験実施、丸付けは先生が自主的にやっているものだから残業としては認めない」という判決が出ています。
ただ、2021年5月に63歳の男性教員が「教員の時間外労働に残業代が支払われていないのは違法」とし、訴訟をしているのですが、こちらはまだ結果が出ていません。
この裁判の結果次第では、今後の教師を取り巻く労働環境が一変する可能性もあります。
50年前から給特法が変わってないのが問題
給特法はは1971年に制定され、1972年から施行されました。
つまり約50年前の法律なのですが、現代の教職員は50年前の法律のまま働いています。
ちなみにこの法律は当時の「教職員の勤務状況調査」という調査結果をもとに作られましたが、現在の教師の業務量は50年前の比ではないので、いかに法整備が遅れているか分かります。
50%以上の教師が月残業時間80時間以上で働いている
ここまで読んだ方の中には「残業代が4%しか出ないんだったら、月8時間の残業時間に抑えて効率よく仕事をすればいいんだ」と思うはずです。
しかし、先生たちの現実はそんなに甘くありません。
連合総合生活開発研究所の調査結果では、勤務日と週休日を合わせて一週間に60時間以上働いている教員が5割超いるといいます。
8時間×5日で週40時間が本来の勤務時間だとすると、残業は週20時間=月80時間超ということになります。
これは、個人でできる効率改善ではどうしようもないレベルの残業料です。
しかも、最近は学校が強制的に閉められるので家に仕事を持ち帰っている教師も非常に多く、実態はこのデータよりも酷い結果に違いない言っている教師も多数います。
参考:日本労働組合総連合会 教員の勤務時間に関するアンケートより
教師がブラック過ぎる原因
- 給特法により4%の調整額のみ支給
- 超勤4項目により殆どの業務は残業と認められない
- 50年前から教師を取り巻く法律が変化していない
- 月の残業時間が80時間を超えている教師が多い
ブラック過ぎる?教員(教師)の一日のスケジュール
なぜ教員はこんなにも働かなくてはいけないのか。
本当に短縮できる業務はないのか、と思う方もいると思いますので、小学校・中学校の現役の教員に聞いた一日のスケジュールを以下に記載します。
なお、本来の勤務時間は8:30~17:00となっていることを念頭に置いてスケジュールを見て下さい。
《小学校教員のスケジュール例》
- 7:30 出勤
- 8:00 児童登校
- 8:30~15:00 授業、給食、清掃など
- 15:30 児童下校
- 16:00~17:00 会議、研修、学年打ち合わせ、保護者対応など
- 17:00~ 提出物チェック、丸付け、授業準備、公務分掌など
- 20:00 退勤
=残業4時間
《中学校教員のスケジュール例》
- 7:00 出勤、部活朝練
- 8:30~15:30 授業、昼食、清掃など
- 16:00~17:30 部活
- 18:00~19:00 会議、研修、学年打ち合わせ、保護者対応など
- 19:00~ 提出物チェック、丸付け、授業準備、公務分掌など
- 22:00 退勤
=残業6時間30分
上記を見てもわかりますが、どちらも勤務時間前に先生が出勤しています。
また、授業時間帯、部活時間帯は他の仕事はできないので、会議や授業準備、保護者対応などは児童や生徒が完全下校した後にならざるを得ません。
さらに中学校になると部活があるため、教師全員が揃う必要のある会議などは、既に就業時間を超えた18:00からするという学校もあるようです。
しかも土日であっても地域主催の交流会やマラソン大会などの引率、部活の遠征や引率で休日出勤もよくあります。
これでは残業が多くなるのは避けられないでしょう。
中学校教師は部活のせいで余計に残業が多い
小学校に比べ、中学校のほうが業務時間が多い理由のひとつに「部活」があります。
部活も給特法の定める「業務」に当たらないため「先生が自主的にやっているもの」という扱いです。
今は中学生になれば殆どの子が部活に入るし、中学校の先生は新人であれば特に顧問を持つのが当たり前の時代になりました。
しかし、部活顧問を受け持つという事は放課後の練習や休日練習にも立ち会う必要がでてきますので、その分業務時間が小学校よりも多くなっているのが現状です。
部活の指導は基本的に給料も出ない
おまけに部活動での指導は基本無給です。
一応、手当が出る土日に部活動指導をした場合に限り、「2~4時間未満=1800円」「4時間程度=3600円」が支給されます。
ただ、例えば野球部であれば練習試合がある日は朝8時に学校に集合して15時頃に解散することになるので、約7時間働いているのに給料はたった「3600円」です。
時給にすると約510円と、最低時給の半分ほどしか貰えません。しかも球場までの交通費や昼食費は実費です。
1日単位で考えると手当が貰えるだけマシだろうと思うかもしれませんが、平日の部活動指導(2時間×4日)や、部活動のための準備等の時間は無給なのでとても条件が良いとは思えません。
そんな状況のせいで先生にも余裕がないのか、近年は部活動中の体罰事件が頻発していたり、スポーツを経験したことのない部活顧問による指導中の事故などもニュースになっており、部活動の在り方が議論されるようになっています。
体罰は褒められた事ではありませんが、これだけの給料と日々の激務のストレスを考えると、モチベーション高く丁寧な指導をするのは困難と言わざるを得ません。
教員(教師)のブラックすぎる仕事内容!
「教師の仕事」というと思い浮かぶのは授業、学級経営、生徒指導だと思いますが、先程も軽く触れた通り教師の仕事はもっと多岐にわたり、「授業の事だけをすればいい」というわけにはいかないです。
授業以外に教師が担当することの多い仕事にはこんなものがあります。
- 学校徴収金未納金者への対応(給食費など)
- 教室や遊具の安全点検、管理
- 校内清掃、クーラーやストーブなどの保管、管理
- 児童生徒、保護者アンケートの実施と回収
- 地域との連携業務
- 学年費や親睦会費の会計管理
- 遠足や修学旅行の旅費会計
- プールや校内の掃除
- 個人購入物の集金、管理、発注(リコーダーや裁縫セットなど)
- 地域の見回り(パトロール)
- 部活での生徒の送迎、引率
他にも沢山ありますが、これらの事もこなしながら、本来業務の授業も行い、保護者対応もし、また学校運営にかかわる公務分掌なども請け負っているので実際は時間がいくらあっても足りないのが現状のようです。
しかも最近は授業の項目にプログラミングが増えたり、モンスターペアレントが増加しているせいで余計に時間がなくなっています。
ブラック過ぎるからかSNSでは教員からこんな声も…
Twitterでは現役教員の方を中心に『#先生死ぬかも』というタグで、現場のリアルな声を発信されています。
このハッシュタグは、NHKのディレクターでお笑いジャーナリストのたかまつななさんが考案したものだそうですが、呼びかけに対し多くの反応があり、投稿は今も絶えません。
このままじゃ #先生死ぬかも
学校への出張授業、取材を通して悲痛な声が届きます。中学校の教師の6割が #過労死ライン を超えて働いています。
ご遺族の方とお話する度に繰り返してはいけないと。先生方、現場の声が変えます。
匿名で構いません。#先生死ぬかも で悲惨の状況を教えて下さい— たかまつなな/お笑いジャーナリスト (@nanatakamatsu) 2018年11月22日
参考:Twitter
最近だとオンライン授業のせいで苦しんでいる教師が多いようです。
教師の生々しい現状が分かりますので、とりあえず目を通しておくことをおすすめします。
教員(教師)のブラックすぎる実態や理由まとめ
今回は教員のブラックすぎる現状を紹介しました。
フォローをすると、教員という仕事は他の業種には無いやりがいや、子供の成長を一番近くで見守ることのできる魅力のある仕事なのは間違いありません。
また、大企業でさえ守れないと宣言した終身雇用も、教員なら現状は適用されているのも魅力の一つでしょう。
しかし、それでも改善しなければいけないブラック要素が数多くあるのは事実です。
ニュースで教員の大変さや労働環境の現実が報道されるようになったからか、採用試験の倍率は年々下がっているので、教員不足が加速する可能性もあります。
教員への就職を考えている方がいましたら、採用されてから「こんなに大変だなんて聞いてなかった!」と慌てるのではなく、事前にしっかりと情報収集をしておくことをおすすめします。
大変な仕事ですが、自分の価値観と照らし合わせた上で、教員という仕事に魅力を感じる方なら挑戦してみる価値はあると思います。
doda(デューダ)
年代 | 20代~30代 | 雇用形態 | 正社員・契約社員・その他 |
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対象エリア | 全国(海外を含む) | ||
業界 | SE/Webエンジニア機械/電気広告/クリエイティブ営業職医療専門職金融専門職不動産専門職コンサルタント/士業経営企画/管理事務公務員/教員その他 | ||
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- 『国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の施行について』(文科省HP)
- 『教育公務員の勤務時間について』(文科省HP)
- 『過去の教員の残業代未払い訴訟・安全配慮義務違反訴訟の判例を分かりやすく整理した』
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