うつ病は誰がどのタイミングでなるのかわかりません。働き盛りの時、子育て中、定年間際・・、自分が思い描いていたキャリアがそこで大きく揺らいでしまうことになります。今回は年代別で、うつ病になってしまった時の転職について考えたいと思います。
かなり大変ですが、生きていくためには働かないといけません。一体何ができるのでしょうか?
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転職の前提
うつ病で転職をしたい場合、ある程度覚悟といいますか通常の転職とは違う問題があります。
療養をしっかり行う
すぐに転職したい人もいますが、ある程度は療養して少なくとも問題なく出勤できるレベルまで回復させないと、転職先でうつ病を繰り返してしまいます。
できれば「完解」(症状が出なくなる)になり本当に「大丈夫!」といえるところまで回復させたいところですが、人によっては数年かかることもあり転職活動のタイミングをどうするのか、主治医とよく相談してください。
障害者手帳の取得も選択肢
うつ病でも精神障害者手帳の取得ができます。取得できるかどうかは主治医に相談してみてください。国から障害者だと認定されることについては「無理!」という人もいるでしょうし、結婚や世間体を考えたら到底承服できない人もいます。
ただし、うつ病の転職では通常ルートのほかに障害者雇用の枠の対象になると、選択の幅が広がります。障害者の法定雇用率を埋めるために企業は働ける障害者を欲しています。
転職するためだけであれば、障害者手帳を持っていた方が有利なのは確かです。後はご自身やご家族と相談してみてください。これは皆さんの判断になります。
30代うつ病の転職ガイド
30代のうつ病はまだ転職については間に合います。慌てず対処することが重要です。
通常求人への応募
通常の30代の転職求人に応募することも可能です(つまり、うつ病などの人向けではなく、本当にキャリアアップ等のために転職するための求人です)。30代ならばまだまだ転職者向けの求人があり、転職サイト、転職エージェントを利用していくらでも応募することが可能です。
しかし、通常求人に応募するということは、おそらく病歴についてはクローズで転職活動を行うことになります。
転職先でも業務については通常のケースと同じですから、配慮は一切なくて、即戦力としての活躍が求められます。これはうつ病で脳が疲れている人にとっては結構大変なことだと思います。
この転職活動をするためには、少なくともうつ病については「完解」(症状が出なくなっていて以前と同じように働ける)状態になっていることが最低条件です。
「ちょっと改善した」くらいで、通常の転職をしてしまうと、業務量もさることながら、新しい人間関係のストレスでうつ病が再発してしまわないとも限りません。もし休職や退職して療養していたのであれば、その期間を上手に説明する必要もあります。
意外と大変なのがこの方法です。30代うつ病で転職をするなら、あらかじめそこに対する理解のある企業や職種を選択する必要があるでしょう。
障害者、病気の人向け求人に応募する
もし、医師の勧めで障害者手帳を持っている場合は、いわゆる「障害者求人」や「ハンディキャップ向け求人」に応募することも可能です。
ご存知のように、企業にはその規模に応じて障害者を一定割合で雇用する義務があります。
※障害の法定雇用の義務(厚生労働省)
精神障害を持っている人もこの枠に入るため、日常生活や仕事でそれなりの配慮で済む人はありがたいというのが企業の本音です(車いすの人など身体障害者の場合「バリアフリー化」が不可欠だがお金がかかる)。
実は転職求人の波は30代半ばまでというのが一般的ですが、障害者求人はそのあとに40歳前後でもう1つ山があると言われています。
これは30代の時期にうつ病等の精神疾患になってしまった人向けのものであり、本音では障害者の法定雇用率を上げるためのものと言われています。
おそらく通常の求人よりも給料は安いのですが、特段の配慮をしてくれる場合がほとんどです。だから、完全にうつ病が治らないけど、薬を飲みながらなら何とか・・・という人がいたらこちらの求人も考えてみるのがいいでしょう。
ただし、なかなか通常の転職サイトにはありませんから、障害者、あるいはそれに準じた人向けの転職サイト、転職エージェントを利用するといいです。
とはいえ、その枠で働きたくない人もいるでしょう。その場合、とにかく体調、症状を回復させてなるべく早く一般の求人に応募するしかないです。
- 一般求人
- 障害者求人
どちらでも選べるのが30代うつ病の転職活動になります。
40代うつ病の転職ガイド
40代になると転職求人が減っていきます。
マネジメント求人とうつ病の相性が悪い
管理職、課長級、部長級の求人はありますが、一般社員としての求人は減りますし、うつ病だった人がそうした管理職(しかも他社)に応募しても、相当苦戦することは必至です。
うつ病であったことをクローズにしてそうした求人に応募することはできますが、オープンにしたらかなり苦戦するでしょう。採用する企業側としても、「治った」と言っていてもいつ再発するかわからない「地雷」は避けたいのが本音です。
40代転職で企業が求める「マネジメント能力」とうつ病の病歴の相性が悪い、といえば分かっていただけると思います。ある日突然会社に来なくなってしまうリスクが明らかに他の人より高い人を、管理職としてマネジメントに当たらせることはリスクが高いです。
かといって、スタッフ管理職(プレイヤー)として採用されるためには、他の人よりも抜きんでたものがないと厳しいですよね。果たしてそれができるのか、もし、うつ病になってしまった理由が人間関係ではなく、働き過ぎや燃え尽き症候群のようなものであれば、プレイヤー職で働いても同じことを繰り返してしまうかもしれません。
40代前半ならば障害者求人はある
上でも書きましたが、35歳を過ぎて転職求人が減っていくなかでも、法令雇用率アップを目的にした障害者雇用だけはその減り方がなだらかで、アラフォーでも何とかなるケースがあります。ただし、以下のようなことは現実としてありますので注意してください。
- 年齢は40代前半まで
- 障害者求人なので手帳が不可欠
- 年収等金銭面ではかなり下がる
家庭があり働く必要がある人が、現状を維持しながら働けるのはこの方法かもしれません。現実として、病気を前提としない求人は40代になるとかなり少なくなります。特にホワイトカラーですと、管理職ではない求人は相当厳しくなります。
とはいえ、管理職のストレスは大変なものがあり、うつ病でであったことをオープンにして転職活動するというのはかなり厳しいです。
だから、40代前半までであれば、障害者求人にチャレンジしてみるのがよく、可能ならば手帳を申請できないか主治医に聞いてみましょう。
「障害者になって」ということではなく、色々な面で持っていることのメリットが大きくなるのが現実です。
この年齢であれば結婚して家族がいる方も多く、同意は得られやすいのかなと思います。結婚前だと「障害者手帳を持っている」というのは不利になりますからね。
40代後半の場合は50代と同様に考える
40代も後半になるとそもそも転職する人が減っていきます。他社からの「引き抜き」のようなケースで優秀なマネジメントができる人の転職はありますが、そうではない通常のホワイトカラーの転職は数もないですし、かなり厳しいです。
かといって業種、職種を変えるのはもっと大変です。色々な意味で「詰みかけて」しまっています。転職方法については50代で述べます。
50代うつ病の転職ガイド
この年齢で転職する人はかなり少なくなっています。20代~30代の時のように「会社が合わないから」という理由はまずないですよね。会社が合っているから50代まで働けたわけで、その中でうつ病になってしまうと・・・、どうすべきなのでしょうか?
通常求人は厳しい
もうこの年齢になると、部長や理事クラス以外の転職は通常ルートでは難しくなります。部長などであっても日本企業ではなく外資系がほとんどでしょうから、うつ病を経験した人には「生き馬の目を抜く」世界はストレスが大きすぎるでしょう。
ですので、よほどの人以外はこのルートでの転職は厳しいと言わざるを得ません。
よく、外食チェーンなどで、明らかにベテラン社員とは違う50代くらいのおじさんがバイトにこき使われているシーンを目にすると思います。
50代で何らかの事情で会社を辞めざるを得ないと、未経験者でもできる仕事(というかバイト)だとそういう仕事しかないのかもしれません。
20代ならば機転が利いた頭や体も50代になるとなかなか言うことを聞きません。何らかの事情がありそういう業種・職種で働いているのでしょうが、非常に大変そうです。
うつ病ではさらに頭が回転しない状況ですからこういう仕事への転職はより状況を悪化させかねません。
障害者雇用が基本になります
転職求人がかなり少ない中で、まだありそうなものというと、障害者雇用のための求人になります。これは手帳を持っている必要があり、持っていない人は医師に相談の上、手帳の取得ができるならばその申請書を合わせて転職に応募する形になります。
残酷なようですが、今の日本の会社文化だと50代になってしまうとこれ以外の転職先の見つけ方がありません。ただし、障害者雇用ですから、働き方や残業などでは配慮されると思います。正直、このルートを狙っていくしかないです。
その場合も、給与については最低賃金ラインなど、本当に障害者雇用の枠を埋めるだけのものになる可能性があります。ただし、死んだ目で外食でこき使われるよりははるかにいいでしょう。
早期退職制度でリタイア、セミリタイアも選択肢の1つでは・・・
家のローンや子供の教育費などの問題もありますが、会社の中には50歳になっていれば「早期退職制度」で退職金が上乗せさせて辞められるところもあります。退職の理由は問われないと思いますので、この年になってしまえばいっそのことリタイアしてしまうのも1つの道だと思います。
退職金で一息付けますから、例えばフリーランスや自営業を始めるのも悪くないと思います。会社というストレスから解放されれば、もう転職ではなくて「第二の人生」を考えてもいいと思います。
筆者の元の上司もうつ病になり50代で早期退職制度を利用して辞めて、第二の人生を模索している人がいます。
まとめるとこんな感じになります
30代の人の転職
- うつ病が回復しているなら通常の転職サイト、エージェントを使った転職
- 不安がある人や働き方の質を求める人は障害者雇用(手帳必須)
40代の人の転職
- 通常の転職は管理職採用が前提なのでハード
- 40代前半までなら障害者雇用で比較的有利に行ける
- 40代後半も障害者雇用で応募するしかない(有利にはならない)
50代の人の転職
- 通常の転職は絶望的になる
- 障害者雇用が基本になるが給与などは期待できない
- 早期退職制度の利用など「リタイア」「セミリタイア」を視野に入れてもいいかも
年齢で転職活動がどんどん難しくなるのは日本の転職文化共通ですが、うつ病の場合「障害者雇用」も候補に入れると助かるケースも出てくるかも、と考えてください。過去を
振り返っても戻れませんから、前向きに行くしかないです。
年代別で考えるうつ病対策の転職ガイド まとめ
- 年齢が高くなるにつれて転職が難しくなるのはうつ病でも同じ
- 障害者雇用を視野に入れると転職の難易度が下がる
- 医師に相談して手帳の取得ができるか聞く
- 手帳はメリット、デメリットがあるので最終的には皆さんご自身の判断になる
- 45歳を過ぎると障害者雇用以外の転職は相当厳しくなる
- 50歳を過ぎて定年が見えているなら「早期退職制度」の活用も候補に入れてみては?
- 障害者向け転職サイト、転職エージェントの活用も考えてみる