適度なストレスは仕事へのやる気、動機づけにもつながりますが、過剰なストレスが蓄積していくと、暴飲、暴食などによって健康が悪化したり、うつ病などの重大な精神疾患の原因になったりしてしまいます。
この段階で「明らかにおかしい」と気付くことができれば、自分でいろいろ対処し、ストレス解消法を実績できるはずです。
仕事のストレスチェック診断と解消法を知るメリットはこれ
- ストレスは仕事だけではありません
- ストレスは人間の体の様々な反応を引き起こします
- ストレスへの対処法「コーピング」を理解できます
- ストレスチェック票は万能ではありません
- 自分のストレス解消法の「癖」を知ります
- リスクヘッジのためにできることを知ります
目次【クリックして移動できます】
仕事や職場のストレスチェック診断
いきなりうつ病やストレスに起因する病気になるわけではなく、徐々にストレスが体をむしばんでいくことによってそれ引きこされます。
何か明らかに調子が悪いと気付いた時には手遅れかもしれません。
「何か違うな」と思えることは体がストレスによってSOSを出していることの現れかもしれません。
これまで快便だったのに便秘気味だ、寝つきが悪い、酒の量が増えた、3㎏太りベルトがきつくなった・・・、これは「たまたま」ではなく、必然的な体のSOSサインかもしれません。
この「いつもと何か違う」状態が2週間続いた場合、これはストレスによって引き起こされる「体のアレルギー反応」の可能性があります(2,3日でおさまるなら「たまたま」かもしれません)。
いきなり医者に行くのは・・という人も多いでしょうから、自分でできるストレスチェックをしてみましょう。
厚生労働省のストレスチェック診断もおすすめ
例えば>5分でできる職場のストレスチェック|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(自殺対策を含む)|厚生労働省
このサイトは、厚生労働省が作った、WEB上からできるストレスの簡易診断です。
日本ストレス調査協会の診断もおすすめ
これ以外にも、紙に印刷して回答するものとして『職業性ストレス簡易調査票の解説 – 日本ストレス調査協会』などを自分でDLしてやってみるという方法もあります。
心理学の専門的になりますが、『GHQ精神健康調査票』こういったものを入手して自分でやってみてもいいでしょう(産業医ならば持っているはずです。
ストレスチェックは万能ではありません!
ストレスチェックを行い、問題あり、ストレス過多と出た場合、確実に強いストレスにさらされていて、今すぐ何かしないといけないとは限りません。
あくまで自己診断であり、医師の診察ではないからです。
ストレスチェック票は
- 回答した時点でのストレスがわかる
- 業務に関わることのストレスのみわかる
- 回答者の回答傾向は考慮されない(ポジティブな性格とネガティブな性格では回答が異なります)
- いつも正しい結果が出るとは限らない
ということは押さえておきましょう。
例えば、前日に深夜まで残業をした人は「疲れている」「だるい」という回答をしやすくなるでしょう。
また仕事は順調でも、家庭内に大きなトラブルがありストレスを抱えている人はこの診断ではわかりません。
しかし、家庭問題によって体調を崩してしまうかもしれません。
ストレスチェック票の結果が良くても、実際には大きなストレスでつぶされることもありうると認識してください。
仕事でストレスを受けるとどうなるの?
人間はストレスの原因(ストレッサー)に直面すると、脳がその(ストレス原因の)困難性や苦痛を評価し、ストレスを軽減させるため、脳から「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」「セロトニン」などの神経伝達物質を生成していきます。
その神経伝達物質は「自律神経系」「内分泌系」「免疫系」の各人間の機能に影響を及ぼします。
要は、ストレスを受けると、それに対処するための人間のメカニズムとして、心身に不調をきたすのだと考えてください。
ストレスを脳だけで受け止めてしまうと、人間として壊れてしまうので、体の各機能にダメージを分散してもらうというイメージです。
各機能がストレスから受けるダメージによって、以下のような症状が出ます。
1.自律神経系
自律神経は交感神経と副交感神経のバランスで成り立っていますが、強いストレスに直面すると、交感神経を優位にするアドレナリンが分泌されます。アドレナリンは体を興奮させ、覚醒作用があります。交感神経が有意になると、心が落ち着かず眠れなくなります。強いストレス下にある人が不眠になるのはそのためです。
睡眠のバランスが崩れ、睡眠時間が減ったり、眠りが浅くなったりして、疲労が取れず、最終的に自律神経失調症になり、うつ病などのリスクが増大していきます。
2.内分泌系
強いストレスを受けると、やはりアドレナリンの分泌によって中枢神経に大きな影響を及ぼします。血圧や心拍数が増加していき、脳卒中や心筋梗塞、不整脈などの「突然死」のリスクが大きく増加していきます。
また体内のホルモンバランスが大きく乱れるため、特に女性の場合は月経周期の乱れや、肌荒れなど女性特有の悩みがより深くなっていきます。
3.免疫系
ストレスによって免疫機能も低下していきます。
風邪などにかかりやすくなるほか、感染症から体を守るリンパ球やNK細胞などの働きが抑制され、普通ならば罹らない、発症しない病気にもなりやすくなります。
帯状疱疹(ヘルペス)は元気な人なら免疫機能で発症までには至りませんが、ストレスにさらされている人はヘルペスができやすいのです。ヘルペスだけでなく、慢性扁桃炎や口内炎など「疲れている人がかかる病気」「健康な人ならならない病気」にもなりやすくなります。
以上の各体の機能の反応は、人間が本来持っているストレスから身を守る「本能」なのですが、ストレスが過剰になればなるほど、これらの反応も過剰になり、結果としてストレスに対処する体の機能で体が大きなダメージを受けることになります。
仕事や職場におけるストレスの種類は様々
人間が感じるストレスは職場に限ったものではありません。
職場のストレス+そのほかのストレスの総量が「閾値」を超えてしまうと、心身に不調が起きてしまいます。
1.仕事の変化や責任によるストレス
これが大元の職場のストレスです。
- 仕事の質、量の変化(異動、長時間労働等)
- 役割の変化(昇格、降格、配置転換、出向等)
- 大きな責任、失敗
- 事故や災害(自分の労災だけでなく他人の怪我なども)
- 対人関係(部署内の人間関係の悩み、パワハラ、セクハラ、いじめ等)
- その他(シフト制勤務による心身の不調、給料が安い、殺伐とした職場等)
2.年齢や性別によるストレス
- 年齢、性別(結婚がやばい等)
- 人生のイベント(自身の結婚、出産、離婚等)
- ストレスに起因しない病気やケガ
- 生まれ持った性格(ストレスを感じやすい性格)
3.家族要因のストレス
- 家族の病気や死
- 家族の進学、就職、結婚
- 家庭内不和
これら1~3のストレス要因が除去できずある中で、不調になる「刺激」「一押し」があることで、一気にバランスが崩れ、うつ病や心身症になってしまいます。
また、ストレス要因は、全員に共通するものではなく、年齢や役職、性別などによっても異なります。
男性が出産のストレスを直接受けることはありませんし、新入社員が上司と部下の板挟みストレスを感じることもありません。
各自のステージに応じてストレスの内容や大きさも変わってきて、それは個人によって異なることを認識してください。
退職のストレスは家族の病気よりも重い
アメリカの精神医学者ホームズらは、人生のライフステージにおける様々なイベントのストレスについて数値化を試みた研究をしました(※1)。
それによると、「自分の死」以外のストレス値を1位を100として客観的に表すと以下のようになりました。
これを「社会的再適応評価尺度」と言います。
社会的再適応評価尺度
(ストレスの相対値)
1位 | 配偶者の死 | 100 |
---|---|---|
2位 | 離婚 | 73 |
3位 | 夫婦の別居 | 65 |
4位 | 留置場などへの拘束 | 63 |
4位 | 家族の死 | 63 |
6位 | 怪我や病気 | 53 |
7位 | 結婚 | 50 |
8位 | 失業 | 47 |
9位 | 夫婦の和解 | 45 |
9位 | 退職 | 45 |
11位 | 家族の病気 | 43 |
12位 | 妊娠 | 40 |
15位 | 転職 | 39 |
17位 | 親友の死 | 37 |
退職は家族の病気よりも強いストレスで、失業(首になる)のと同じくらい強い精神的負荷がかかることがわかります。
そのための退職手続きは、確かに相当なプレッシャー、ストレス、憂鬱さがともなうということですね。
ホームズらによると、このストレス値が300を超えるとうつ病などの精神疾患になるリスクが大幅に上がるそうです。
つまり、いろいろなストレスポイントが蓄積された中で、がんばって退職をしようとすると、うつ病などの閾値(しきいち:これ以上はコップから水があふれる限界値)を一気に超えてしまう可能性があります。
これは大きなリスクです。
しかし、そのまま退職せずに我慢しても、日常的なストレスはどんどん溜まっていきますし、心身への負荷は不可逆的に増えていき、やはりうつ病などになってしまいます。
自分でできる仕事のストレス解消法はコーピング
ストレスをなくすにはストレス源(ストレッサー)を除去するのがいちばんですが、仕事上の場合そううまくストレッサーを除去するのは難しく、かといって仕事を放り出して逃げるわけにもいきません。
また、精神科を受診し、精神薬を飲むのは最後の手段です。こうなる前に何か対処することが大切です。
そこで、自分でストレスへ対処する方法を考えましょう。
それを「コーピング」(Coping)と言います。
コーピングによってストレスを低減させたり、ストレス反応を抑えたりできます。
ストレスがある仕事をしている時に深酒や暴飲暴食してしまうのも、無意識に体がコーピングをしているからなんです。
コーピングには大きく分けて2つの種類があります。
ストレス要因に対するコーピング
ストレスそのものを感じなければいちばんいいですよね。
人によって、ジョギングはリフレッシュにも苦行(ストレス)にもなります。苦行ではなくリフレッシュと感じることができればストレスではなくなります。
要は思考の転換で、うつ病などの「認知行動療法」にもつながります。
「絶対にミスをしてはならない。完璧なものを作らなければならない」
「大統領だって答弁を間違える。100%できることなんてないのだから90%を目指そう」。
「自分の立場は後輩と上司をつなぐ潤滑油。だから双方に気を配らなければならない」
「責任は全部上司に行くんだから自分は気楽な立場。できることだけ後輩に教えればいい」
「しなければならない」「すべき」「してはならない」、つまり「Must」「Should」と考えるのを減らしていきましょう。
もちろん、物理的に避けられないものもあります。残業をしなければならない日も、始発で出勤しないといけない日もあり、そこから逃げることはできます。
そうした思考の転換では対応できないケースについては次のコーピングになります。
ストレス反応に対するコーピング
冒頭に挙げた深酒などがこれに該当します。
身体の機能として、ストレスから守るために自律神経系、内分泌系、免疫系の機能が活発になりすぎてしまったのを、抑制するためのコーピングです。
いわゆる「ストレス解消法」になります。
具体的なコーピングについては次項で取り上げますが、心身をリラックスさせて自律神経を副交感神経優位にすることや、運動をすることで「コルチゾール」という興奮ホルモンを消費し、興奮や緊張をほぐしていくことが効果的です。
ただ、「すごくおいしいステーキを食べに行く」など、それほど心身に負担がかからず、お金で解決できるものであればそれもOKです。
自分のコーピングの癖を知る
ストレスがゼロの世界で生きることはまずないので、多くの方は無意識のうちにコーピングをしているはずです。
人によってコーピングの内容は異なり、運動でストレス解消をする人もいれば、家でゲームをする人、お酒を浴びるように飲む人など様々です。
しかし、そのコーピングが該当するストレスに対して適切かどうかは、健康面のリスク(酒や暴食)を別にしても考える必要があります。
「明日までにこれを仕上げなさい!」というストレスに対して、お酒を飲んで酔っ払っては何の解決にもならず、現実逃避になるだけです。
こういう場合は、短時間のストレッチなどが適切なコーピングになります。
自分はどういうコーピングをしているのか、その癖を知ることが大切で、コーピングの癖によっては、対応できないストレスもあり、逆効果になってしまうかもしれません。
健康で文化的で体に優しいコーピング
というわけで、副作用が出にくいコーピングについて考えたいと思います。
いきなりコーピングを変えろ、というわけではありません。それがストレスになってしまいます。
できることから始めていきましょう。
睡眠をとにかく摂る
眠ることはあらゆることへの良薬です。脳の機能を回復させ、免疫力の向上にも効果があります。
眠れるということは副交感神経が優位になっていることですから、まず何もせずに横になり睡眠に陥ることを目標にしてみましょう。
上手に眠れるようになれば、自律神経も正常化し、ストレスへの耐性も回復してくるはずです。眠れなくても、スマホを消して暗い部屋に横になっているだけでもかなり安らぎ、ストレスが解消されていきます。
適度な運動をする
上でも書きましたが、「コルチゾール」という興奮ホルモンを運動によって減らすことができます。
短時間のストレッチでも効果がありますが、30分以上ジョギングや散歩をすることで「有酸素運動」が活発化し、その結果、脳から「やる気ホルモン」という抗ストレス効果がある物質が分泌されます。
まず、30分を目安にやってみてはいかがでしょうか?
ビタミンB、ビタミンCの多い食事を摂る
暴食をしなさいということではなく、抗ストレス作用の多い食事を意識的に食べてみましょう。
具体的にはビタミンBとビタミンCが多い食事がいいです。
- ビタミンB:レバー、豚肉、乳製品
- ビタミンC:野菜、果物
要は炭水化物中心の食事ではなく、バランスよく食べるようにすれば大丈夫です。ス
トレスが多いと、「ラーメン+チャーハン」みたいな組み合わせを食べたくなりますが、栄養面ではNGということです。
ずっとこういう食事が続くのはダメということです。
深呼吸をする、呼吸法を身につける
上手な深呼吸を身につけると、リラックスするホルモンが脳から出て、ストレスを減らすことができます。
「丹田呼吸法」など独特なものですが、酸素をしっかり取り込むことで、脳を活性化させていきます。
マッサージ、アロマテラピーなどのリラクゼーション
お金に余裕があれば、マッサージサロンに行くのもいいでしょう。
全身のマッサージだけではなく、脚だけを行う「リフレクソロジー」もおすすめです。
これは副交感神経が優位になり、ストレスに対して強い状態になります。
認知行動療法、自律訓練法
かなり専門的なリラックス方法です。
どちらかというとうつ病などの治療に用いられますが、薬を飲むわけではないのでストレス解消にもうってつけです。
詳述はしませんが、力の抜き方、ものの考え方など「凝り固まったもの」を解きほぐして、ストレスに対して、それを感じにくくする重要なコーピングになります。
要は健康的にストレスを解消できていればなんでもいいんです。
筆者の曾祖母の事例
古い話で申し訳ないのですが、私の曾祖母(ひいおばあちゃん)の例を挙げたいと思います。
明治生まれの曾祖母は10代後半で結婚し、私の家の家業である割烹料理店を曾祖父と一緒に手伝うことになりました。
昭和になったくらいの時代です。嫁いだばかりの女性に人権などありません。
親から、従業員から大きなストレスを受けていたそうです。
逃げ場所のない曾祖母は、独自にコーピングを考えだしました。
割烹(料理店)なので落としたり、ぶつけたりして欠ける陶器が出てきます。
それを曾祖母は捨てずにとっておき、ムカついたとき(ストレスがたまった時に)、一気に叩き割っていたそうです。
もともと高い器を粉々にできるので、かなり憂さが晴れたようで、こういう誰にも迷惑が掛からない合法的なコーピングならば大丈夫です。
コーピングも万能ではないので多方面からストレスチェックを!
コーピングを工夫することで、ストレスが心身に及ぼすダメージをある程度減らすことができるのは事実ですが、万能薬ではありません。
筆者もコーピングしているつもりでしたが、あっという間に重いうつ病になってしまいました。
「いつもと違う」ということが2週間続いたら早めに医師に相談に行くのをおススメします。
定期的にストレスチェック診断を行うのもいいですし、産業医と面談できる機会があれば率直なことを相談するのもありです。
一度うつ病などになってしまうと、数年単位で何もできなくなります。だから、そうなる前に「気付く」ことが大切なんです。
仕事や職場のストレスチェック診断まとめ
何をどうやってもストレスから逃げられない場合、つまり今の会社にいること自体が大きなストレスになっている場合、会社から去るしかありません。
しかし、うつ病などになってしまうと、転職活動をするエネルギーもなくなります。
だから、リスクヘッジの意味でも、例えば
- 転職サイトに登録し職務経歴書をアップしておく
- 転職エージェントをリストアップしておく
「おかしい」と思ったときにすぐに行動に移せるように準備だけはしておきましょう。
そうすると、これ自体もストレスを減らすコーピングになるかもしれませんね。
仕事のストレスチェック診断と解消法 まとめ
- ストレスによって、自律神経系、内分泌系、免疫系が防御反応として活発化する
- 防御反応が行き過ぎると心身の疾患になってしまう
- 厚生労働省のストレスチェック票を使い、今の自分の仕事のストレスを知る
- 仕事以外のストレスも心身に影響を及ぼす
- ストレスそのものを回避するのか、ストレスを受けたときのダメージを軽減させるのか、対処法は2つある
- ストレス対処法=「コーピング」を理解する
- コーピングは万能薬ではない
- 自分のコーピングの「癖」を知り改善していくといい
- 心身に負担がかからないコーピングを身につける
- コーピングでも対処できないケースのリスクヘッジが大切
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