「子供の頃から憧れだった仕事をやりたくて異業種転職したけど、想像したものとちがったから元の業界に戻りたい」
「仕事のやりがいを求めて異業種転職したけど、激務の割に給料が安いので辞めたい」
異業種転職に成功して充実した毎日を送る人がいる一方で、「期待したものと全然ちがう」と失望する人もいます。
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出戻り転職がうまくいくか苦戦するかは状況次第
異業種転職して元の業界にキャリアチェンジする出戻り転職がうまくいくか苦戦するかは、そのときの状況次第です。
出戻り転職がうまくいく場合
次の2つの条件がそろった場合、数年のブランクがあっても比較的スムーズに元の業界にキャリアチェンジできます。
人手不足で転職が売り手市場のとき
元の業界や職種が人手不足で転職者に有利な売り手市場のときは、比較的スムーズに出戻り転職できます。
数年のブランクがあっても実務経験があるため、入社後に即戦力として活躍することが期待できるからです。
2019年4月時点は転職者にとってまれにみる超売り手市場。
転職サイトDODAの調べによると、2019年の上半期の中途採用は金融業界の一部の職種を除き、ほとんどの業界業種で求人が豊富にあることが判明しています。
特に電気・機械分野や医薬品業界、金融業界など専門性のある営業職やデータサイエンティストやWebマーケティングなどデータ活用の専門職は有利です。
その他にもITエンジニア、接客業、施工管理など建築・土木業の求人も豊富にあります。
一昔前までSEの35歳定年説がささやかれていました。
しかし、今はどの企業もITエンジニアが不足しています。
そのため、20~30代の若手だけでなく40代以上のベテランも積極的に採用する傾向にあります。
募集企業のニーズに合う実務経験がある
いくら求人数が豊富にあっても、募集企業のニーズに合う実務経験がなければ内定をとることができません。
異業種からの出戻り転職を成功させるには、即戦力となる実務経験とスキルがあることが必須条件といえます。
景気が悪いと出戻り転職は苦戦する
当たり前のことですが景気が悪化して求人数が激減すると、過去に実務経験があったとしても異業種から元の業界に戻る転職は苦戦します。
当時は東日本大震災の影響で景気が悪化してどの業種も求人数が少ない時期だったので、次の理由で選考のあらゆる過程で苦戦した記憶があります。
- 異業種転職して3年以上ブランクがあるので即戦力になるか心配
- 30代前半の割には管理職経験が乏しい
出戻り転職を成功させるための心得6カ条
転職者にとって有利な売り手市場であっても、誰でも異業種から元いた業界へのキャリアチェンジに成功するわけではありません。
異業種から元の業界へのキャリアチェンジを考えている人は、次の6つの心得を頭に入れておきましょう。
職務経歴書は元の業界の経験やスキルを中心に書く
職務経歴書の内容は元の業界の経験やスキルを中心に詳しく書きます。
直近の異業種の職歴をそこまで目立たせる必要はありません。
転職者の応募が殺到する人気企業の採用担当者は1日に何百枚もの書類をチェックします。
採用担当者が応募者1人分の履歴書と職務経歴書に目を通す時間はだいたい1~2分程度。
ほんのわずかな時間で面接に呼ぶ人と呼ばない人を決めています。
元の業界と直近の異業種の経験やスキルを同じ分量で書いた職務経歴書だと、短時間で書類に目を通したときに採用担当者が「なぜうちの会社に応募したの?」と疑問に思うことでしょう。
キャリアチェンジの理由をしっかり考える
念願の異業種転職を果たしたのに元の業界にキャリアチェンジする場合、必ず面接で一度辞めた業界に戻る理由を聞かれます。
私が編集ライターから元のヘルプデスクにキャリアチェンジしたときの転職活動では、どの企業の面接でも次の2つの質問をされました。
質問1.「なぜ編集ライターになりたかったの?」
この質問は、素直に異業種転職を決心したときの気持ちと志望動機をそのまま伝えて問題ありません。
質問2.「編集ライターを辞めてなぜヘルプデスクに戻ろうと思ったの?」
上記質問に対して「仕事のやりがい」に絞って、元の職種にキャリアチェンジしたい理由を説明しました。
当時、面接で話した内容を参考例として紹介します。
キャリアチェンジしたい理由をうまく説明する自信がない人は参考にしてみてください。
ヘルプデスクと編集ライターと両方の職種を実際に経験した結果、ヘルプデスクのほうに仕事のやりがいを感じたからです。もちろん、編集ライターの仕事もWeb広告やパンフレットなど目に見える形で制作物が完成したときは達成感を覚えました。しかし、自分の手がけた制作物に対するお客様から感想は営業経由でないと編集ライターの私は知ることができません。お客様と直接お話する機会は、制作物を作る前の打ち合わせのときだけ。それ以外ではお会いすることはありません。
一方、ヘルプデスクという仕事は、システムを使うお客様の悩みや困りごとをヒヤリングして解決方法を提案します。私の提案でお客様の問題解決に貢献できることにやりがいを感じていました。このことより私は編集ライターではなくヘルプデスクのほうが向いていると思い転職を決心いたしました。
面接で説明したキャリアチェンジの理由は、完全にウソではありません。
しかし、編集ライターの仕事は裁量労働制で何時間残業しても残業代が1円も支払われません。
元の業界に戻りたい一番の理由は、激務の割に給料が安いことが不満というネガティブなものでした。
当時、不景気で私の周りにいたフリーの編集ライターは廃業して、別の職業につく人が結構いました。
ある企業の面接で「編集ライターは求人の絶対数が少ないうえ、フリーランスの知り合いも廃業した人が多いので将来が不安。求人数が多くてつぶしの利くIT業界に戻りたい」と、キャリアチェンジの理由を話したことがあります。
転職エージェント経由の応募だったので、「転職理由が暗い」という理由で選考に漏れたことが判明しました。
そのため、キャリアチェンジしたい理由にネガティブな内容を話すことは避けたほうが無難です。
ただし、異業種転職に対して「覚悟が足りなかった」「見通しが甘かった」と反省していることは正直に話しても問題ないような気がしました。
そのあたりは面接官の性格にもよるので状況をみて臨機応変に対応したほうがよいでしょう。
あくまでも参考程度にとどめて自分の言葉でキャリアチェンジしたい理由をしっかり説明しましょう。
異業種で経験した持ち運びできるスキルをアピールする
仕事の内容はちがっても異業種で経験したスキルは、キャリアチェンジする元の業界で重宝されることもあります。
異業種での経験と元の業界で経験したスキルに共通点はないか、自分のキャリアの棚卸しを行いましょう。
参考までに私が編集ライターで身につけたスキルでヘルプデスクでも持ち運び可能と思って、職務経歴書や面接でアピールしたスキルをご紹介します。
編集ライターで身につけたライティングスキルは、お客様に配布する操作マニュアルを作成するに際に活かせるものと考えております。
私たちITエンジニアとちがってお客様はシステムの知識が乏しく、慣れないシステムの操作にストレスを感じることも少なくありません。
システムの操作が苦手なお客様でもすぐに理解できるわかりやすい内容のマニュアルを作る際に前職で身につけたライティングスキルが役に立ちます。
その場合は、今まで異業種で経験した仕事内容を1つ1つ洗い出し、どのような姿勢で仕事に取り組んできたかをわかりやすくアピールすることをおすすめします。
元の業界の最新動向や技術情報を勉強する
元の業界や業種へのキャリアチェンジを決心したら、転職後すぐに即戦力として活躍できるよう転職したい業界の最新動向や技術情報について勉強しましょう。
異業種で働いた数年の間、過去に在籍していた業界のトレンドや最新の技術情報が変わっている可能性があるからです。
また、いくら実務経験があっても数年のブランクがあるので忘れてしまったことがないとは言い切れません。
おすすめの勉強方法に次のものがあります。やりやすいものを試してみてください。
- 経済ニュースや業界新聞を読む
- 「○○業界協会」など業界団体のホームページをチェック
- 業界研究セミナーに参加
- 合同企業説明会に参加
- 実務に直結する資格試験の勉強
(例:ITエンジニアならMCP、CCNAなどベンダー資格、人事なら社会保険労務士)
キャリアがリセットされるので年収は下がる可能性大
元の業界で立派な実務経験があったとしても異業種に行くことでキャリアがリセットされて、年収が下がる可能性もあります。
ブランクがあるので謙虚な気持ちで面接に臨む
異業種に行く前に元の業界で豊富な実務経験があっても、数年のブランクがあることには変わりありません。
久しぶりに元の業界に戻ったときに昔に身につけた経験やスキルがすでに通用しない可能性も十分考えられます。
むしろ、新卒になったつもりでイチからやり直すぐらいの気持ちがちょうどいいかもしれません。
一度退職した会社に出戻りできるカムバック採用が増えている
異業種転職に失敗した人のなかには、転職前に在籍していた会社に出戻りすることも少なくありません。
むしろ、ここ数年でパナソニックや良品計画、三菱ケミカルなど大企業を中心に一度退職した社員の再雇用を制度化して「出戻りキャリア」や「カムバック採用」を行うケースが増えています。
企業が出戻り社員を積極的に再雇用する理由は、人手不足の解消や他社を経験したことで客観的に自社の弱点を指摘してくれることを期待しているからです。
エン・ジャパンが2018年に661社を対象に「一度退職した出戻り社員の受入実績」を調査した結果、72%の企業が「一度退職した社員の再雇用をしたことがある」と回答しています。
周りの社員の83%が出戻り社員を好意的に考えています。
出戻りできる人とむずかしい人の違い
比較的好意的に考えられる元いた会社への出戻りですが、誰でも実現できるわけではありません。
元いた会社に出戻りできる人とむずかしい人のちがいを調べてみました。
出戻りできる人の特徴
出戻り採用を制度化している会社の多くは、次の条件に該当する人のみ再雇用しています。
- 結婚、出産、介護、配偶者の転勤、通学、キャリアアップ目的で転職した場合の退職
- 雇用形態問わず在職期間が1年以上
- 転職先で得たスキルが即戦力として自社の業務で活かせる
- 在職中の人間関係が良好だった
エン・ジャパンのアンケートによると元いた会社の出戻り転職に成功した人の59%は自分で直接応募しています。
しかし、在職時の上司や同僚からの紹介、社長や経営陣からの推薦で元いた会社への出戻りを実現させた人も少なくありません。
出戻りがむずかしい人の特徴
出戻り社員を受け入れる職場のメンバーの大半が好意的に考える一方で、「一度辞めた会社に戻るのは甘えている」と否定的な意見を持つ人もいます。
元いた職場への出戻りがむずかしい人の特徴を調べてみました。
- 他にやりたいことができたという理由で退職
- 「給料が安い」「残業が多い」「人間関係に失敗した」などネガティブな理由での退職
仮に出戻りに成功しても、ネガティブな理由で退職した人に対して周りは好意的に受け取らないでしょう。
むしろ、「昔から頑張っている社員の士気を下げる」「自己都合退職なのに会社に迷惑をかけすぎ」と反発を覚える人のほうが多いかもしれません。
出戻り社員になる場合の注意点
元いた会社に出戻りすることは、社風に馴染みがあって周りも好意的なので一見いいことづくめのように思えます。
しかし、次のようなデメリットがあることも忘れないようにしましょう。
以前より悪い条件で雇用される場合もある
以前と同じ給料や待遇で雇ってもらえるとは限りません。
むしろ、出戻りを否定的に捉える人に配慮して、過去に在籍していたときよりも低い役職や給料で雇用される可能性も十分考えられます。
昔とは会社の方針やルールがちがう
自分が離職した数年の間に会社の方針やルールが180℃変わっている場合もあります。
以前よりも働きやすい環境になっていればラッキーですが、働きづらい環境になっている場合も十分考えられます。
昔の部下が上司になる可能性もある
離職した数年の間に、昔の部下が出世して直属の上司になる可能性もあります。
昔、自分が面倒を見た部下だからといって横柄な態度をとらないように注意してください。
過去は過去、今は今と割り切って上司の指示に従いましょう。
軽はずみな異業種転職はやめましょう
2019年4月時点は転職者に有利な売り手市場なので、一度異業種転職した人でも実務経験があるので比較的容易に元いた業界にキャリアチェンジしやすい状況です。
また、人手不足解消の目的で大企業を中心に一度退職した社員の出戻り雇用を積極的に行うケースが少しずつ増えてきています。
しかし、転職者に有利な状況がいつもでも続くとは限りません。
一旦、景気が悪くなれば求人数が激減して、企業も人件費削減のためリストラを積極的に行うようになります。
そのような状況下で異業種転職した人が元いた業界にキャリアチェンジしたくても、スムーズな転職活動を行うことはむずかしいでしょう。
やりがいを求めて異業種転職することは否定しませんが、転職で人生は大きく変わります。
安易な理由で転職して「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、業界研究と仕事の優先順位を明確にしたうえで異業種転職に踏み切りましょう。
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