薬局は、体系によって「面分業」や「点分業」に分類することができます。
ここでは、薬局の面分業と点分業の違いや、薬剤師視点のメリットとデメリットについて解説していきます。
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調剤薬局の面分業と点分業の違いとは
近年では、薬局の種類も調剤薬局だけではなくドラックストアなど様々ありますが、みなさんは薬局の営業形態、面分業と点分業の違いをよく理解していますか。
転職を検討している薬剤師の方がキャリアやワークスタイルを考える際には、面分業と点分業それぞれのメリット・デメリットを知っておく必要があります。
面分業とは
面分業とは、医療機関を限定せずに処方せんを受け付ける営業体系のことです。
面分業の営業体系をとっている調剤薬局の場合、特定の医療機関からの処方せんではなく幅広い地域・医療機関からの処方せんに対応しています。
街中でみかけることの多いドラッグストアやショッピングモールに入っている調剤薬局は面分業であることが多いです。
点分業とは
点分業とは、基本的に特定の医療機関からの処方せんしか受け付けない営業体系のことです。
多くの医療機関から処方箋を受け付けている面分業とは対象的です。
現在は点分業は減少している
昔は主流であった点分業の営業体系の薬局が現在では減少しています。
以前は、医療機関が自ら外部に調剤薬局を開設して処方せんを授受する「第二薬局」という仕組みが主流でした。
しかし、1982年に厚生労働省が調剤薬局のあり方を抜本的に改革しました。
具体的には、薬局が医療機関から構造的・機能的・経済的に独立していることが求められました。
その他にも、医療機関の同一の建物又は敷地にあって総合的に判断して医療機関の調剤所とみなされる調剤薬局は、保険薬局の指定を行わないなどの規制が強化されました。
薬剤師視点で見る面分業の特徴
面分業は地域の「かかりつけ薬局」
前述の通り、面分業の薬局は幅広い医療機関から処方せんを受け付けています。そのため、面分業の薬局は地域の「かかりつけ薬局」となることが多いです。
「かかりつけ薬局」は、患者さんの服薬情報の一元的に把握して薬学管理や相談などを行う薬局のことです。
特に、高齢者の場合は複数の診療科を受診していることが多いです。そのため、多剤・重複投与に防止や内服忘れによる残薬問題が生じます。
かかりつけ薬局では、包括的に薬の管理を行えるため前述の様な問題を未然に防止することができます。
将来的なニーズも期待できる
2016年度調剤報酬改定において厚生労働省は、患者の服薬状況を一元的・継続的に把握して調剤業務を行うことを評価する、「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」を新設しています。
このことから、面分業の薬局は将来的にもニーズが高いといえるでしょう。
薬剤師視点の面分業のメリット・デメリット
面分業のメリット
医療機関の経営に左右されずらく、独自性を活かした経営ができる
面分業の薬局のメリットは、特定の医療機関に左右されずらく、独自性を生かした経営が可能な点です。
ほとんどの処方せんを特定の医療機関から受けている場合は、医療機関の経営が傾くと薬局の経営も傾いてしまいます。
面分業の薬局の場合は、地域に密着したサービスを提供し、固定客を掴んでおけば安定した経営が見込めます。
そして、調剤薬局独自の強みをアピールして売り上げをより伸ばせる可能性もあります。
店舗混雑の集中が少ない
では、面分業の薬局では患者側のメリットは何があるのでしょうか。
面分業の薬局において患者側のメリットは、特定の時間帯に混雑することが少なく、待ち時間を短縮できるということです。
店舗の立地も多彩
ドラッグストアやショッピングモールに併設されている薬局も多く、待ち時間に買い物をすることも可能です。
服用薬を一元管理できる
そして、複数の医療機関にかかっている場合は、服用薬を一元管理してもらえるといったメリットがあります。
面分業のデメリット
処方のパターンが多く、在庫管理も安定しづらい
面分業は、特定の医療機関に依存しない経営が臨めるメリットがあります。しかし、少なからずデメリットもあります。
面分業の薬局のデメリットとしては、不特定多数の医院からの処方せんを受け付けているため、普段は見慣れない処方せんが突然依頼される可能性があることです。
そのため、薬局の在庫管理が安定せず、不良在庫も発生しやすくなってしまいます。また、色々な医療機関から処方せんを受け付けるため、処方せんの量も安定しません。
顧客争いのため薬局としての独自性が求められる
競合の薬局との顧客争いもあるため、独自の強みを強化していく必要があります。
薬剤師視点の点分業のメリット・デメリット
点分業のメリット
特定の医療機関から処方箋を受け付けている点分業の薬局のメリットには何があるのでしょうか。
処方の傾向が一定で、在庫管理も行いやすい
点分業の薬局の場合は、特定の医院の処方しか取り扱わないため、見慣れない処方が発生する可能性が低くなります。
そのため、薬局の在庫管理を安定して行えます。
処方の傾向がつかみやすい
点分業の薬局で働く薬剤師は特定の病院からしか処方を受け付けないため、処方傾向がつかみやすいというメリットがあります。
在庫の問題発生も少なく安定した経営が可能
在庫管理のしやすさ、処方傾向を把握した状態で対応できることから、不良在庫や在庫不足の発生も防ぎやすく、安定した経営を行うことができます。
薬を安定して提供できる
点分業の薬局を利用する患者側のメリットとしては、薬の在庫が安定して確保されているため、即日中に薬を受け取れることです。
知見を蓄積しやすい
また、特定の医療機関からの処方であるため、安全性情報や副作用などの知見が蓄積され、より安全に内服指導が行われる可能性が高いでしょう。
点分業のデメリット
次に、点分業の薬局のデメリットについて解説していきます。
薬局経営が医療機関の経営状態に左右される
調剤薬局側のデメリットとしては、薬局の経営が特定の医療機関に左右されてしまうことです。
営業時間や定休日も医療機関合わせ
また、営業時間や定休日も処方せんを受け付ける特定の医療機関に合わせる必要があります。
薬剤師の転職における面分業と点分業のポイント
調剤薬局への転職を考えている薬剤師にとって、面分業と点分業のどちらを選ぶべきなのでしょうか。
次に、選び方のポイントについて解説していきます。
面分業の調剤薬局の転職で注意すべきポイント
経営体制・営業は安定しているか
面分業の調剤薬局の場合は、薬局自体が経営的に安定してそうかを確認しておきましょう。
具体的には、営業形態や強みの訴求などです。
面分業の調剤薬局の場合は、色々な病院から処方箋を受けついているため、他の薬局よりも秀でているポイントが必要となります。
また、薬局のチェーン展開などを確認しておくと、その調剤薬局の経営体制がわかります。
点分業の調剤薬局の転職で注意すべきポイント
医療機関の経営は安定しているか
点分業の調剤薬局を選ぶ際には、処方せんを受け付けている医療機関自体の経営が安定しているかがポイントです。
なぜならば、前述の通り点分業の調剤薬局の場合は、1つの病院からしか処方箋を受け付けません。
そのため、その病院の患者数が少ないと必然的に調剤薬局への処方数も少なくなり、経営が傾いてしまいます。
近くに競合となる薬局はないか
その他にも、近くに競合となる薬局はないかも確認しておきましょう。
いくら処方せんを受け付けている医療機関が流行っていても、競合の薬局がすぐ近くにある場合は患者さんがそちらに流れてしまう可能性もあります。
薬局が混雑しすぎていないか
薬局が混雑しすぎていないかも確認しておきましょう。
薬局が混雑しすぎている場合は、業務が忙しすぎたり、休みが十分にもらえなかったりする可能性があります。
希望するワークスタイルを実現できるかどうかを考慮する
その他の転職する際のポイントは、自分の希望するワークスタイルが実現できるかです。人によって希望するワークスタイルは異なります。
例えば、産休後に復帰する女性の場合は給与や昇給よりも、休みがフレキシブルにとれる職場を希望されるかもしれません。
一方で、独身男性の場合は能力によって昇給が大幅に見込める職場を希望される場合もあります。
そのため、それぞれの調剤薬局が自身の希望するワークスタイルを実現できるかどうかを事前に確認しておきましょう。
薬剤師目線での面分業と点分業の違い
今回は、面分業と点分業の違いやメリット・デメリットについて解説しました。
点分業と面分業はどちらもメリット・デメリットがありますが、将来的に高齢者の増加や地域医療の発展のため、面分業の薬局のニーズが高まるといわれています。
薬剤師の転職の際には、転職先の薬局が面分業・点分業どちらの営業体系をとっているのかを確認しておきましょう。
その上で、自身のワークスタイルを実現できる転職先をしっかりと選んでいくことが大切です。