薬剤師は仕事を辞めてもすぐに次の就職先が見つかり、失業状態に陥ることがないため失業手当(失業保険)を受給する方が少ないです。
そのため、ノウハウもあまり知られていません。
そこで今回は失業手当、失業保険を受給したい薬剤師のために、給付条件や金額、失業手当を受け取りつつ転職する方法を解説します。
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薬剤師が失業保険・失業手当を受ける3つの条件
失業保険、失業手当、失業給付金など呼び名はさまざまですが、転職まで期間が空きそうな薬剤師にとっては受給できるかどうかは死活問題とも言えます。
まずは3つの給付条件を満たしているかどうか確認してください。
失業状態である
失業保険は失業状態の人に給付されるものです。
失業状態とは労働しようという意思と能力があり積極的に転職活動をしながら就職できない状態を意味しています。
したがって、次のような例は対象外となるので注意してください。
- 家業や家事手伝いをしている。
- 学生である。
- 自営業を始めた。もしくは開業準備中。
- 会社や団体の役員に就任。もしくは就任予定。
- 次の就職先が決まっている。
雇用保険加入期間が12ヶ月以上ある
失業保険を受給するには、雇用保険に加入していることが大前提です。
退職日から遡って2年の間に通算12ヶ月以上の雇用保険加入期間がなければいけません。
ここで注意したいのが、賃金支払対象となった日が11日未満の場合は1ヶ月とカウントされないという点です。
ただし、次の場合は本来ならば通算12ヶ月必要なところが6ヶ月に軽減されます。
- 倒産、リストラ、解雇などの会社都合で失業した人
- 契約更新を希望していたにもかかわらず期間満了となった人
- 病気、出産、配偶者の転勤などで失業した人
ハローワークに求職の申込をしている
失業保険の受給はハローワークに求職の申込をすることがスタートです。
まずはハローワークに離職票を届け、求職票に氏名、住所、経歴、希望条件などを記入して提出し、簡単な窓口面接を受けましょう。
その後、雇用保険説明会に出席し、失業認定日に失業状態であることが確認されれば、失業保険が振り込まれる流れですが申込から約1ヶ月かかります。
失業認定日のたびにまだ失業していると認められれば、再度給付を受けられるという仕組みです。
薬剤師の失業保険の金額やいつまでもらえるか紹介
失業保険の支給金額
失業保険の支給金額は次のように決められています。
- 基本手当日額=離職前6ヶ月間の給料合計÷180×給付率(80%~50%)
さらに、1日の支給額は年齢ごとに上限があり30歳未満6,405円、30歳以上45歳未満7,115円、45歳以上60歳未満7,830円、60歳以上65歳未満6,723円となっています。
失業保険だけで各種ローン、教育費まで賄うのは大変なので、ある程度の貯金も必要でしょう。
しかし、当座の食費、光熱費にするのには失業保険だけでも十分と言えるのではないでしょうか。
失業保険の給付日数
失業保険の給付日数は離職時の年齢、雇用保険の加入期間などによって異なります。
退職理由が自己都合の場合、会社都合よりも給付日数は短くなるので注意してください。
雇用保険の加入期間 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | |
年齢 | 30歳~34歳 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 |
35歳~44歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | |
45歳~60歳 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 |
雇用保険の加入期間 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | |
年齢 | 全年齢 | なし | 90日 | 90日 | 120日 |
失業保険の支給例
たとえば、新卒採用で働き始めた調剤薬局を40歳で会社都合により退職したとしましょう。
月給30万円ならば賃金日額は10,000円、基本手当日額は10,000×80%~50%=8,000円~5,000円となります。
雇用保険の加入期間は10年以上20年未満なので給付日数は210日。失業手当支給総額は168万円~105万円となります。
失業保険・失業手当を活用しない薬剤師が多い理由
転職先を決めてから退職することが多い
失業保険は退職して次の職場が決まるまでの失業期間に給付されるものです。
しかし、薬剤師は転職先が決まってから退職する例が多く、失業状態になることがほとんどないとも言えます。
特に大学病院などは転職先が決まっていないと退職できないこともあり、失業保険を受給するタイミングがないのです。
そうとはいっても、退職前に転職先が決まらない場合もありますし「どうしても退職する前に決めなければ!」と、焦ってしまい不本意な職場に転職してしまうことも……。
そうなると、結局は長続きするのは難しく、転職先を決めてからの退職が正しいのかどうかは疑問です。
ハローワークを利用しない
退職後に求職活動をするにしても、ハローワークに登録しない薬剤師は少なくありません。
ハローワークのかわりに求人サイトなどを利用しているのです。
確かにハローワークの求人には限りがありますし、求人サイトを活用するのも悪いことではないでしょう。
しかし、じつはハローワークは登録さえしておけば失業保険の給付対象となるというのはご存知でしたか?
実際に利用しないとしても、ぜひ一度登録しておくことをおすすめしたいハローワークなのです。
自己都合で退職する薬剤師が多い
仕事内容や待遇に不満を感じて退職する薬剤師も少なくありません。
この場合、自己都合による退職として処理され、失業保険を3ヶ月受け取れないことになります。
しかし、3ヶ月も失業状態でいる薬剤師は稀といっても過言ではありません。
薬剤師業界は慢性的な人手不足のため、失業保険の給付期間がスタートする前に転職先が決まってしまうのです。
もし、失業保険を受給したいならば、1ヶ月ほどで支給開始となる会社都合での退職を目指しましょう。
薬剤師が失業保険・失業手当を会社都合で受け取る方法
薬剤師は売り手市場のため、自己都合退職だと失業手当を受け取れないまま次の職場で働くことになるケースも少なくありません。
そのため、失業保険を受け取るには会社都合で退職する必要があるため、以下ではその方法について紹介していきます。
退職理由を突き詰める
ぼんやりと「仕事を辞めたい」と思っているだけではなく、どうして今の職場が嫌になってしまったのかとことん追求しましょう。
その結果、「パワハラがあった」「モラハラにあっていた」といった理由があれば、退職を会社都合にできる可能性があります。
45時間以上の残業が3ヶ月連続であった
「月の残業時間の45時間超過が直近3ヶ月連続」ならば会社都合と認められます。
ただし、給与明細書、タイムカード、勤務出勤簿など、その事実を証明できる書類が必要です。
給与の減額があった
85%以下にまで落ち込む給与減額も会社都合になります。
やはり、給与証明書等の賃金を確認できる書類が必要になります。
各種ハラスメントがあった
業務に支障をきたすほどのパワハラ、セクハラがあった場合も会社都合となります。
ただし、ハラスメントは証明が難しいのが難点です。LINEやメールは必ず保存し、会話を録音・録画するなどして備えましょう。
不都合な場所に勤務地が変更された
「通勤に2時間以上かかる場所への移転、転勤命令」なども会社都合になりますが「転勤なし」の雇用契約を結んでいることが条件です。
給料未払いがあった
月給の3分の1以上が2ヶ月間支払われなかった場合、会社都合での退職が可能です。
給与明細書または経営者とのやりとりを録音するなどして証拠にしましょう。
後から会社都合の退職に変更することも可能
「会社都合にできたのに自己都合で退職させられてしまった」という薬剤師もいるかもしれません。
そんな時はハローワークに相談に行きましょう。ハローワークでは退職理由の変更も担当しているのです。
正当な理由さえあれば、後からでも会社都合として認められ失業保険を受給できます。
それとは逆に、正当な理由がないにもかかわらず会社都合にしておこうと会社側に持ちかけられた時は注意してください。
善意かもしれませんが、後々嘘が発覚すると会社も退職者も行政処分を受けるリスクがあるので要注意です。
薬剤師は失業保険と併用して転職活動がおすすめ!
長続きする転職先を見つけやすい
薬剤師の中には転職を何度も繰り返す人もいます。独立開業を目指していて「できるだけたくさんの職場を経験したい」というならば問題ないかもしれません。
しかし「本当はひとつの職場に落ち着きたいのになかなか長続きしない」という人が大半なのではないでしょうか。
「今度こそ長く続けたい!」と、思うならば、まず仕事を辞めたくなった理由を正しく把握して、同じ目にあいそうな職場を避けることです。
それには冷静に分析する時間も必要でしょう。仕事をしながらの転職活動ではどうしても十分な時間もとれないものです。
一度、失業状態をあえて作り、自分と向き合うようにしてみてはいかがでしょうか。
転職エージェントも併用できる
「ハローワークも転職エージェントも両方登録することはできなのではないか?」と、考えている薬剤師も少なくありませんが、それは間違いです。
ハローワークは登録だけをしておいて、実際に活用するのは転職エージェントだったとしても失業保険は問題なく受給できます。
転職エージェントならばハローワークでは見つけられないようなレアな求人情報と出会えるチャンスもあります。
面接日の設定、給与アップの交渉などもすべて無料で代行してもらえるのもうれしいポイントです。
失業保険をもらえるうちは生活の心配もありませんし、複数の転職エージェントに登録して、腰を据えて転職活動してみてはいかがでしょうか。
薬剤師の失業保険・失業手当の基礎知識まとめ
- 失業保険を受給するには条件がある。
- 退職前に次の転職先を見つけてしまい、失業保険を利用しない薬剤師も多い。
- あえて失業期間を作り失業保険をもらいながらじっくりと転職活動する意義はある。
- 転職エージェントを利用すればハローワーク以上にさまざまな求人と出会える可能性が高まる。
薬剤師はコツコツと国家試験を目指して勉強を続けられる真面目な人が少なくありません。
そのため「失業などもってのほか!」と、身構えてしまいがちなものです。
しかし、これまで一途に頑張ってきた人ほど、ひと休みして自分を見つめ直す時間も必要です。
失業保険を受給すれば、しばらく生活に困ることもありませんので、受給しつつゆっくり次の仕事を探すのも一つの手でしょう。