薬剤師の中には、職場や知り合いから名義貸しを求められて戸惑っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
名義貸しは、薬剤師の資格を持つ人の名前を借り、あたかも在籍いるかのように見せる行為で明確に違法扱いされています。
ここではそんな薬剤師の名義貸しの違法性や罰則、名前貸しを求められた場合の対処法について解説していきます。
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薬剤師の名義貸し・名前貸しは薬機法で違法!
結論から言うと、タイトルにもある通り薬剤師資格の名義貸しは違法です。
薬剤師の名義貸しについては、薬機法に「薬局に関する事項法第八条の管理に関する規定は、 開局中は常時直接管理の状態にあることを原則とし、いわゆる名義貸し等の事態を強く禁止する趣旨であること。」と定められています。
そのため、いかなる事情があろうと名義貸しをすると罰せられる可能性があります。
薬剤師の名義貸し・名前貸しが行われる理由
薬剤師を常駐させたくないけど名前が必要だから
では、違法である薬剤師の名義貸しはどのように行われているのでしょうか。
薬剤師の名義貸しが行われるのは、薬剤師の常駐が必要がない、あるいは高額な月給を払いたくないけど業務上薬剤師の名前が必要となる場合に多いです。
薬剤師を雇うと給料が高いから
薬剤師の名義貸しが行われる理由の1つに、薬剤師の時給が関係しています。
薬剤師の平均時給は2,000~2,500円前後です。
そのため、常勤の薬剤師を1ヶ月フルタイムで雇うと人件費が約30万円かかることになるので、薬剤師の配置基準などの関係で、薬剤師は必要だけれども実質的な勤務はそこまで必要ないという状況では、企業が名義貸しによって薬剤師の名前だけ借りてしまおうとするケースがあるのです。
薬剤師の名義貸し・名前貸しが行われやすい職場
総括製造販売責任者の配置基準がある化粧品会社
薬剤師の名義貸しがよく行われる会社として、化粧品会社があります。
化粧品会社では総括製造販売責任者の配置基準があるため、薬剤師の名義貸しが多く行われる傾向があります。
総括製造販売責任者の条件は以下のように定められています。
医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令化粧品の品質管理及び製造販売後安全管理を行う者に係る法第十七条第一項の厚生労働省令で定める基準は、次の各号のいずれかに該当する者であることとする。
- 一 薬剤師
- 二 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
- 三 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する科目を修得した後、化粧品の品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務に三年以上従事した者
- 四 厚生労働大臣が前三号に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
総括製造販売責任者は薬剤師以外の方でもなることができますが、複数の条件をクリアする必要があり面倒なので、薬剤師を総括製造販売責任者としておくことが多いです。
医薬品卸の職場
薬剤師の名義貸しが行われやすい職場としては、医薬品卸の管理薬剤師があげられます。
医薬品卸では、薬剤師が直接患者さんと関わることはほとんどありません。
しかし、医薬品卸の業務を行う上で、薬剤師の配置が義務付けられています。
そのため、薬剤師の名義貸しによってあたかも常駐しているかのように申告し、必要時に年に数回だけ出社してもらうというシステムをとっていることもあります。
薬剤師の名義貸し・名前貸しの金額相場
薬剤師が名義貸しをする際の相場は、1ヶ月で5万円前後と言われています。
名義貸しは、薬剤師に限ったことではなく、違法と知りつつも多くの企業、有資格者が行っています。
そして名義を貸すだけで勤務することなく毎月お金を貰えるので、名前貸しをやってみたいと思う薬剤師も多いです。
しかし、冒頭でも説明した通り薬剤師の名義貸しを行うと法律に反することになり、下記のような罰則リスクがあります。
薬剤師の名義貸し・名前貸しをするリスクや罰則
薬機法違反になる
薬剤師の中でも管理薬剤師として会社や病院で勤務している方は、名義貸しをした時点で薬機法違反に該当します。
薬機法にも書かれている通り、管理薬剤師は兼業が認められていません。
薬機法 第七条薬局の管理者(第1項の規定により薬局を実地に管理する薬局開設者を含む。次条第1項において同じ。)は、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であつてはならない。
ただし、その薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。
管理薬剤師でなくても、病院や調剤薬局では就業規則で兼業を禁止しているところがほとんどです。
就業規則違反で解雇
そのため、薬剤師が名義貸しをすることで自分が勤務している病院や調剤薬局の就業規則に反することになります。
場合によっては、就業規則違反で解雇になってしまうこともあるので注意が必要です。
職場が業務停止処分を受けて失職
勤務している会社の就業規則だけではなく、注意しなくてはならないことがあります。それは、薬剤師法です。
現在、勤務している職場で無資格調剤が行われており、それが発覚すると薬局が業務停止処分を受けてしまうことがあります。
そして、その違反に加担した薬剤師に対しても罰則が科せられることもあります。
もし、自分自身は名義貸しなどの違法行為を行っているという自覚がなくても知らないうちに違反に加担してしまうこともあるのです。
勤務している会社が業務停止処分になってしまっては元も子もありません。
薬剤師の名義貸し・名前貸しを求められた場合の対処法
では、勤務している会社や友人などから薬剤師の名義貸しを求められた場合はどのような対応を取るべきなのでしょうか。
名義貸しは、国家資格などの免許を保有している方に有効活用しようと声をかけられる場合が多いと言われています。
理由や状況問わずハッキリ断る!
名義貸しの勧誘を受けた場合は、どのような理由・状況であってもはっきりと断りましょう。
そして前述のように、自分が望まなくても名義貸しに加担していたというケースも稀にあります。
なぜならば、免許証にある免許証番号を、名義貸ししたい方が知っていた場合使われてしまう可能性があるからです。
自分の意に反して名義貸しに加担してしまわないためにもむやみやたらに薬剤師の免許証を人に見せないようにしましょう。
転職する
名義貸しは法律違反に該当するため、問題が起きる前に転職して職場から離れた方がよいでしょう。
法律違反であることを知って名義貸しをお願いする会社は、例外なくヤバいです。いつ業務停止処分になるかわかりません。
仮に法律違反であることを知らずやっていたとしても、それはそれでコンプラ的にヤバい会社です。
巻き込まれる前に1日でも早く転職をするべきでしょう。
転職は薬剤師転職エージェントに相談
転職をする際は、転職エージェントに相談することで、速やかに別の仕事を紹介してくれます。
また、今の状態は違法なのか自分で判断がつかない場合も、転職エージェントに相談することで判断してもらうことができます。
違法の罰則で薬剤師免許を失ってしまっては元も子もありませんので、名義貸しを求められた場合はまず転職エージェントに相談しましょう。
薬剤師の名義貸し・名前貸しの違法性まとめ
名前貸しは一見すると何もせず毎月お金が入ってくるので、美味しさに釣られて名義貸しをしてしまう薬剤師は少なからず存在します。
しかし前述の通り、薬剤師の名義貸しは法律違反ですので発覚した際には本業にも悪影響が出ます。
勉強して国家試験合格後に苦労して取得した薬剤師の資格を無駄にしてしまわないよう、名義貸しを提案されても断るようにしましょう。