病院薬剤師の仕事内容とは?現役の薬剤師に聞いた注意点も紹介

病院薬剤師の仕事内容

近年は薬剤の種類が増えて高い効果が得られる反面、思わぬ副作用が起こるリスクが増えているため病院薬剤師の重要性は上がっています。

今回はそんな病院薬剤師の仕事内容ややりがい、業務する上での注意点を現役病院薬剤師の声も交えてご紹介します。

病院薬剤師の仕事内容は?

病院の規模にもよりますが、病院薬剤師には次のような業務があります。

  1. 調剤業務
  2. 製剤業務
  3. 注射調剤業務(注射薬混合調製業務を含む)
  4. 外来化学療法室業務
  5. 医薬品情報業務
  6. 治験業務
  7. 病棟調剤業務
  8. チーム医療
  9. 救命救急業務
  10. 薬品の管理・発注業務

では、これらをひとつずつ詳しくご説明します。

調剤業務

医師の処方せんの内容を確認する鑑査業務、処方せんに基づいて必要な量の薬を準備する計数調剤業務などがあります。

さらに患者さんが飲みやすいように1回の服用分を一包にまとめる「一包化調剤」もケース多いです。

一包化した薬剤の内容や量に間違いがないか、別の薬剤師が確認(最終鑑査)します。

外来患者さん、入院患者さんに薬の説明をしたり、質問に答えたりするのも病院薬剤師の仕事です。

製剤業務

市販されている薬では効果がない場合に患者さんに合わせて病院内で薬を調整します。

内服薬だけでなく注射剤もあり、有効性や安全性に配慮する高い知識やスキルがが求められます。

注射調剤業務

医師の処方せんに基づいて患者さん1人ひとりに合わせた注射薬を1回分ずつ調剤する仕事です。

注射は内服薬よりも効果が強く、血管内に直接投与されるものだけに慎重に取り扱うことが重要です。

また、患者さんの症状によって処方内容が異なるため、細心の注意をもって業務にあたる必要があります。

注射薬混合調製業務

アンプルに入った薬剤を点滴の中に混ぜる業務です。

複数の薬剤を混ぜて同時に投与できるというメリットがありますが、安全管理などが必要です。

外来化学療法室業務

抗がん剤投与や分子標的薬などは外来で行うケースが増えてきました。

薬剤師は外来化学療法室で抗がん剤の調整、副作用の確認や患者さんへの説明などを行います。副作用が出たときはそれを抑える薬剤の提案を医師に行うこともあります。

医薬品情報業務

病院内の医薬品情報室で院内の患者さんへの薬剤の投与方法や投与量、副作用の有無などを調査してその情報を収集していきます。

収集したデータは医師や看護師にフィードバックし、今後の投与方針に反映させています。

副作用が新たに見つかった場合は厚生労働省に報告するのも業務のひとつで、薬剤の安全性や有効性に役立てられているのが特徴です。

治験業務

新薬が発売される前に臨床試験を行うのが治験です。

治験を行えるのは医療設備が整っており、責任をもって治験を実施する医師・看護師・薬剤師などがそろっていること。

また、緊急の場合にはただちに必要な治療や処置ができることなど、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」に定められた要件を満たす病院だけに許可されています。

それだけに治験に携わる薬剤師には医薬品に対する知識や責任感が求められるのが特徴です。

病棟調剤業務

入院患者さんが安全に薬を服用できるように管理し、複数の部署と連携して仕事を行います。

患者さんと直接面談して症状だけでなく身長や体重、年齢、身体の状態などを確認して、その上で適切な薬剤投与(量や投与時間など)を調整するのが特徴です。

また、処方された薬の説明も患者さんに行います。その上で投薬の効果や副作用の有無などを確認し医師に報告。

もし副作用があれば薬剤の変更などを提案します。退院まで患者さんを見守る重要な業務を担っていると言えるでしょう。

チーム医療

病院の中ではさまざまな立場の人が患者さんの治療にあたっています。

モルヒネなどの医療麻薬を扱う緩和ケアチーム、感染症の管理において抗生物質の処方提案や院内感染防止などを行う感染管理チームなどさまざまな場面で医師や看護師、栄養士などとチームを組んで業務を行います。

救命救急業務

重篤な症状の患者さんが運ばれる救命救急センターや救急外来などで医師や看護師と連携して薬剤の提案などを行います。

緊急性が求められる現場で、とっさの判断力が必要です。

薬品の管理・発注業務

病院内の薬品の在庫管理も薬剤師の仕事です。薬品の在庫切れがないように管理・発注します。

また、薬品によってはカギのある棚に保管したり温度調節が必要な薬品は適切に保管したり…といった業務もあるのでそれなりの知識が必要です。

現役薬剤師に聞く病院薬剤師のやりがい

病院薬剤師_仕事内容_やりがい

病院薬剤師の業務はこのように多岐にわたりますが、それだけにやりがいもあります。

そこで当サイトで現役薬剤師にインタビューした声をいくつかご紹介します。

直接患者さんに接する機会が多いのがメリット

(ゆかりさん 薬剤師歴12年 女性 )

私は現在勤めている病院で外来化学療法室、病棟業務などを経験しました。

どの業務も責任があり気が抜けませんが、直接患者さんと接する機会が多いので薬剤に対する患者さんの不安を聞いたり、薬の副作用の訴えを聞いたりして直に反応を聞けるのはドラッグストア薬剤師ではなかなか出来ない経験です。

訴えに対してどのように対処するか考えたり別の薬剤の提案を医師にすることもあり、自分の知識が患者さんの症状緩和や改善につながる様子を見られるところにやりがいを感じます。

病気の治療に関わっていると実感できる

(祐太郎さん 薬剤師歴8年 男性)

ドラッグストアや調剤薬局では患者さんが持ち込む処方せんに沿って調剤し、お薬を渡すのが中心です。

しかしそれでは患者さんの本当の症状や回復度合いなどを知ることができないので病院に転職しました。

業務内容は薬局よりも多く難しい点もありますが、患者さんが回復する様子を直に見ることができて病気の治療の一部を担っていると実感できます。

医師や看護師などチームを組むことでやりがいを実感(恵理子さん 薬剤師歴15年 女性)

病院で働く場合は医師や看護師とチームを組んで仕事をする機会があります。

患者さんの状況をチーム全体で把握し、その上で薬剤師として薬品の提案をすることもあり、自分が貢献できていると実感できるときは最高にやりがいを感じます。

病院薬剤師は大変!?現役薬剤師に聞いた声

一方、病院で働く場合は次のように大変な場面もあります。こちらも現役薬剤師さんから聞いた声をご紹介します。

医師の接し方が難しい

(まどかさん 薬剤師歴 6年 女性)

ドラッグストアや薬局と異なり、病院薬剤師は直接医師とやり取りする機会が多くあります。

医師は忙しい上に私たちのようなコメディカルを見下すような人もいて、なかなか話を聞いてもらえません。

ささいなことで怒る医師もいるので、とにかくミスをしないようにご機嫌を損ねないように…と気を使うのがしんどいです。

最新情報が必要で日々勉強!(明人さん 薬剤師歴12年 男性)

医師も看護師も「薬剤師は医薬品の知識があるのは当然」と思っています。

もちろんそうなのですが、最新の医薬品情報だけでなく医療に関する情報も知っておく必要があります。

医師から「この薬はどうなの?」と聞かれたときに答えられないと困りますから、毎日が勉強で結構大変です。

患者さんにわかりやすく説明するのが大変(由紀子さん 薬剤師歴18年 女性)

入院患者さんに処方された薬の説明をするのですが、相手によってはなかなか理解してもらえず説明に苦労しています。

ご家族の人に同席していただいてもわかりやすく、しかも誤解のないように説明するには薬だけでなく病気の知識も必要です。

病棟の薬剤師は人数が少ないので、1人でこなすのも大変ですね。

病院薬剤師として働く場合の注意点

これらの声を踏まえて、薬剤師が病院で働く場合の注意点を整理しておきましょう。

  • 当直や夜勤があり、1人で対応しなければいけない
  • 最新の医薬品情報や医療の知識を得る必要がある
  • 医師や看護師とのコミュニケーションが必要
  • 人手不足のところが多く忙しいので、ミスに注意

当直や夜勤があり、1人で対応しなければいけない

調剤薬局との大きな違いのひとつに「当直(夜勤)」があります。

夜勤になると、夜間の外来患者さんや救急車で運ばれてきた患者さんに投与する薬の準備を行います。

また、病棟から急ぎの依頼が入る場合もあります。病院の規模によって異なりますが、当直の薬剤師の数はそれほど多くないため1人で調剤や薬剤鑑査をする必要があり、かなり忙しいです。

しかもミスが許されない緊張感もありますが、当直(夜勤)手当がつくので収入が多くなります。

最新の医薬品情報や医療の知識を得る必要がある

医療や医薬品の世界は日々進化しています。医師や看護師に質問されたときにすぐに答えられるように、少しでも多く知識を得ることが大切です。

ただ、毎日の業務で疲れているところに勉強の時間を取るのはなかなかに大変です。

製薬会社の担当者に情報提供をお願いするなど、効率よく情報が得られるように工夫してみましょう。

医師や看護師とのコミュニケーションが必要

病院薬剤師として働く場合、チームワークはとても重要です。医師や看護師、栄養士などのスタッフとのコミュニケーションを円滑にするように配慮しましょう。

「これくらい言わなくてもわかってくれるだろう」「いつもと同じなので伝えなくてもいいだろう」といったことが重大な事態を招くこともあります。

ルーティンの作業でも、「〇〇さんのお薬、ここに置きましたよ」「△△さんのお薬変わったので、食前に飲ませてください」などの声かけを忘れないように注意しましょう。

人手不足のところが多く忙しいので、ミスに注意

病院薬剤師は業務が多い割に人員が少ない傾向があります。その分、薬剤師1人の業務量が多くなるので忙しくなります。

しかし薬品は人の健康や生命に影響を与えるものだけにミスは厳禁です。基本に忠実に、確認作業は怠らないように注意しましょう。

病院薬剤師の仕事内容とやりがい・注意点~まとめ

病院薬剤師の仕事は調剤や製剤、在庫管理、外来化学療法の立ち合い、救急救命業務、病棟業務など多岐にわたります。

医師や患者さんと直接関わって症状改善や回復の過程を見られるという点でやりがいはありますが、医師をはじめとするスタッフとのコミュニケーションを円滑するなどの注意が必要です。

また、病院では当直勤務があるため、薬剤師であっても1人で対応する場面もあります。その関係で判断力や正確さが求められますが、その分やりがいも大きいのが特徴です。

ただそれだけに他業種の薬剤師と比較して高収入も期待できるのですが、給与体系や福利厚生は病院によってかなり差があります。

そのため、損をしないためにも収入などの条件が確認できる転職サイトに複数登録して、比較検討してみるのがおすすめです。