タイに赴任し、13年の長きに渡って仕事を致しました。
微笑みの国と言われるタイですが、生活するには最適だが、仕事は如何様なものかというのが多くの日本人の評価です。
治安という意味では、恐いと思うような経験をしたことはありません、何となく緩やかな雰囲気は心地良いものです。
反日感情もありません。
たまに、クーデターは起きるものの現場に近づかなければ良いだけのことです。
仕事上で成果を上げるには、一旦、日本文化を棚上げにして、タイの良さと日本の良さを融合した社風を作るといった心構えが必要だと理解して下さい。
以下に、特に心するべき要素を記述します。
目次【クリックして移動できます】
タイ人の性格・特徴を理解して仕事を円滑にすすめよう
タイの国民性:時間と約束の概念
多分、時間の概念と約束の概念の緩さは世界でも有数だと思われます。
赴任当初のことですが自分が休日出勤ということで、女子社員が私にYシャツを買ってお昼頃に出社するとのことでしたが実際にやってきたのは3時過ぎです。
心配し、昼飯も食べずにひたすら気を揉んで待っていた自分を今でも思い出します。タイ人は人を待たせるのに無頓着です。
一方で、待たされることについても極めて寛容です。
タイの結婚式のは式次第がありません。
いつ始まったのか、いつ終わったのかさえ良く分かりません。何となく集まり、何となく帰っていきます。
人を束縛するのも束縛されるのも嫌いなのだと私は理解しています。
それと同時に、タイでは約束の多くは守られないのが普通であり謂わば呑み屋の約束のようなものです。
タイ人に聞くと何度も何度も念押しすることだと言います。そのことによって、相手が本気だと認識するというのです。
タイ人のおおらかな性格を理解しておくことかもしれませんね。
タイの国民性:人間関係が全て
日本人はどうしても仕事から遍くことを発想します。
タイ人は、この人は信用出来るかないかが出発点であり、人間関係が良ければ仕事も上手く行くというのが、その考え方です。
ここへの配慮はタイでは必須です。さもなくば呉越同舟の実態の見えない世界になってしまうこと請け合いです。
私が働いていたのはIT企業だったのですが、某企業よりあるフォーマットのデータを別のフォーマットに書き換えるだけの仕事を請け負いました。
赴任当初でしたので、客先の日本人が何度も何度もタイ人に説明されるのを目にして不可思議に思ったものです。
これ以上簡単なプログラミングはありません。何の心配もしていませんでしたが、1か月経過してもモノが出来て来ません。
原因は、元データはCAD、コピー先は生産管理のフォーマットです。
生産管理のデータには販売単価の項目があるのですが、元データは図面ですから販売単価がないのは推して知るべしなのですが、その項目がどこにあるかを1か月も探していたというのです。
問題は「これ、どうしますか?」と、人間関係が出来ていないと質問出来ないということです。
一方で、細かく指示し過ぎると思考が完全に止まりやる気を失う、あるいは全て質問してくる状態になります。
この頃合いを図るのが、非常に難しいのです。
彼等の判断基準は上司に馬鹿だと思われるのが怖いということ、あるいは上司の手を煩わせるのは罪悪だという意識です。
その逆は、面白い仕事を任されたという感覚です。その感覚を得るためには、日頃から仕事以外の話を可能な限りすることです。
立派な日本人が、タイ人のおことを気に掛けてくれているという態度を見せることが非常に重要です。
タイ人と緊密な作業の連携をはかるには、まず人間関係をきちんと構築させることが重要です。
タイの国民性:面子を潰されることを嫌う
タイ人は、難しい顔するのを好みません。
日本人は勤勉で尊敬に値するが、厳しすぎるというのがタイ人の日本人への一般的な評価です。
しかるに「奥さんは元気か」とか、そういった他愛もない会話が必要不可欠なのです。
同時に面子を潰されるのを極端に嫌います。
これも当初の話ですが、業務の現状調査をし提案書を書かねばなりません。
とにかく書いてみろと言ってやらせてみました。出来上がりは、極めて不出来なものでした。
よって致し方なく、且つ、親切のつもりで改訂版を夜な夜な作成し、早朝に説明したところ烈火の如く、「見下している」と言ってキレてしまいました。
今思えば、反省点は2つです。
ひとつは、会議室の中で二人きりで説明をするという方法をとらなかったことです。
「タイ人を人前で怒ってはいけない」という最たる事例です。まさに面子を潰してしまったのです。(その逆に人前で褒められるのは大歓迎です。)
もうひとつは、テンプレートを用意しなかったことです。
大きなことを頼む時には、丸投げしてはいけません。少なくともガイドラインと目次位は、自ら作って骨の部分は準備しないと全く意図しないものが出て来ることが少なくありません。
当たり前のことのようですが、小さな範囲から徐々に任せる範囲を大きくしていかないと失敗した時に、関係の修復は非常に困難なことになります。
と同時に忘れてならないのは、日本人の思う謙虚という概念はないということです。
人間関係が出来ていれば、さしたる問題にならないのですが、「この分野は苦手」、「教えてくれ」といった言葉、あるいはゴミを拾う行為は厳禁です。
身分の低い人なのではないかという疑問を招きます。
寧ろ大きな夢を語ることが必要です。そして夢を語れば、彼等は意見を述べるようになり、彼等はついてきます。
「褒めて伸ばす」というやり方が最も相応しい国民性といえます。
タイの国民性:挨拶は礼儀ではなく存在確認
彼等との挨拶の作法を理解することは、人間関係を円滑する上での鍵です。
日本人は仕事場では、はじめに挨拶、そして終わりに挨拶します。
彼等の挨拶はお互いの存在の確認です。
例えば「元気か」「疲れていないか」といった言葉を掛け合っています。
「疲れていないか」という言葉は、彼等を発奮させるのに極めて有効なものです。
この感覚は日本人には俄かに理解出来ません。しかしながら、前出の2つの言葉はタイ語で即刻覚えて下さい。成功への必須条件です。
しかし、タイの方は互いを気にかけているという意味合いにおいて欠かせないものなんです。
タイの国民性:空気を読むことはしない
日本の組織では空気を読むという行為があります。
そして同調圧力というものもあります。以心伝心を知らず知らずにやっています。これは通用しません。
自ら自分の意思を繰り返し表明すること、目的・目標を合意することです。
最近の日本人は意思決定をしない、何でも日本式にしようとするというのが日本人の評価となりつつあります。
これは、避けなければいけません。
自分の考えを明確に示し、リーダーシップを発揮することが望まれます。
「空気を読む」ことばかりが全てではありません。意思疎通を明確にすることが大切なんです。
タイ人の性格・特徴まとめ
タイには日本に比べれば不揃いな要素が沢山あります。
封建時代から一気に現代にワープしているからです。しかし、豊かな国土には大いなる可能性があります。
人間の多くは素直ですし、働き者です。
けっして怠け者ではありません。(もちろん例外はありませすが。)
タイで働く際にはコミュニケーションを最重視して下さい。上手く行くこと間違いなしです。