自分はピアノが弾けない、保育士資格を取る時もピアノで大きく苦労した、第一そこからピアノを弾いていないのだから転職先で任せられても困る、そういう人意外と多いのではないでしょうか?
ピアノが苦手な保育士の人は転職で苦労するのでしょうか?また、ピアノを避けて転職することはできるのでしょうか?
ここでは保育士とピアノについて考えてみたいと思います。
保育士にピアノは必須なのか?
まず、本当にピアノが弾けないと保育士になれないのか、見ていきたいと思います。
大学や短大、専門学校の「保育学科」「保育科」など保育に関する学科で所定の単位を取得し、卒業すると「保育士」の資格が授与されます(教員免許と同じような感じです)。
ただし、大学や短大のほとんどすべてで「ピアノ」の科目があり、その単位を取れないと卒業できません。
学校側が指定している必修科目なのですから、有無を言わさずピアノを練習して単位を取るしかありません。学校側も一定のスキルを身につけさせて世に出さないと「何をやっているんだ!」と言われますからね。
でも、実は保育士になるにはもう一つルートがあります。
保育系の学校を卒業していなくても、一般の大学・短大卒業や高校卒業で保育園で保育サポート業務をしていた人は、「保育士試験」に合格すれば「保育士」の資格を授与されます。
「一般社団法人全国保育士養成協議会」が保育士試験を実施しています。
保育士試験を受ける方へ|一般社団法人全国保育士養成協議会<
それによると筆記試験に合格した人が「実技試験」を受けることになります
筆記試験
- 保育原理
- 教育原理及び社会的養護
- 児童家庭福祉
- 社会福祉
- 保育の心理学
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
当然、実技試験にはピアノがあるのですが、避けることができるんです。
ピアノを弾かなくても保育士になれる!
「一般社団法人全国保育士養成協議会」が定める保育士試験の「実技」は以下の三つの領域から二領域を選択します。
実技試験:保育士実習実技
□ 音楽表現:ピアノ・ギター・アコーディオンのいずれかを選択し、課題曲の弾き語り
□ 造形表現:課題をもとに絵を描く
□ 言語表現:課題をもとに子ども向けに3分間お話をする
ここから二つ選択するので「造形表現」と「言語表現」を選択し、双方合格すれば、ピアノを弾かなくても、弾けなくても保育士になることができるんです!
とはいっても、ピアノが弾けない人でギターやアコーディオンができる人は少数派だとは思いますが・・・。
でも、音楽を選択した際でさえ、避けようと思えばピアノはやらなくていいんです。
参考までに平成29年実技試験(前期)概要より引用します。
1) 音楽表現に関する技術
幼児に歌って聴かせることを想定して、課題曲の両方を弾き歌いする。
求められる力:保育士として必要な歌、伴奏の技術、リズムなど、総合的に豊かな表現ができること。課題曲
1. 『こいのぼり』 (作詞 :近藤 宮子 作曲者不詳)
2. 『一年生になったら (作詞:まど・みちお 作曲:山本 直純)ピアノ、ギター、アコーディオンのいずれかで演奏すること。(楽譜の持ち込み可)
ピアノの伴奏には市販の楽譜を用いるか、添付楽譜のコードネームを参照して編曲したものを用いる。
ギター、アコーディオンで伴奏する場合には、添付楽譜のコードネームを尊重して演奏すること。
いずれの楽器とも、前奏・後奏を付けてもよい。歌詞は1番のみとする。移調してもよい。2) 造形表現に関する技術
保育の一場面を絵画で表現する。
求められる力:保育士として必要な造形表現(情景及び人物等を豊かにイメージした描写や色使いなど)ができること。表現に関する問題文と条件を試験の当日に提示します。
当日示される問題文で設定された一場面を、条件を満たして表現しなさい。3) 言語表現に関する技術
3 歳児クラスの子どもに「3分間のお話」をすることを想定し、下記の1~4のお話のうち一つを選択し、
子どもが集中して聴けるようなお話を行う。
求められる力:保育士として必要な基本的な声の出し方、表現上の技術、幼児に対する話し方ができること。課題
1.「うさぎとかめ」
2.「おむすびころりん」
3.「3びきのこぶた」
4.「にんじん、ごぼう、だいこん」子どもは20人程度が自分の前にいることを想定する。
お話の編集、展開に関して特にきまりはありませんが、3分になるようにまとめてください。
音楽表現といっても、そこまで高いスキルは求めていないように思えます(「こいのぼり」などはある程度練習すればできそうですが・・)。
レベル、難易度で言うと、演奏の難度はそれほど高くなく、「バイエルの100番台」のレベルと考えるとよいでしょう。
自宅にピアノやギターがなくて音楽を練習できない環境の人もいますから、楽器を弾かないでも「造形表現」「言語表現」を選択して保育士になれるのは魅力的です。
ピアノを弾かずに保育士になるには
以上をまとめると、ピアノを避けて保育士になるにはこういう選択になります。
- 大学や短大、専門学校の保育学科、保育科はピアノ実技が必須であるので避けられない
- 「保育士試験」を受験し、二次の実技試験で「造形表現」「言語表現」を選択する
- 「音楽表現」を選択してピアノ以外のギター、アコーディオンで演奏する
「保育士試験」⇒「ピアノを実技でやらない」選択をすれば、ピアノが弾けなくても保育士になることができます。
実際の求人では「ピアノが弾ける」と加点要素
現在の保育士の求人は、売り手市場で保育士不足が続いているので、求人段階で「ピアノが弾ける人」と条件に出しているところは多くありません。
むしろ「ブランク歓迎」「ピアノが苦手でも大丈夫!」と、ピアノを避けてもいいから来てください、というニュアンスを出している保育園もあります。
どちらかというと「ピアノが弾けます」ということが採用に当たって「加点要素」として評価されるのが現状です。
誰も保育園で保育士の人がピアノが弾けないと困りますから、実際に弾くことがあるかはともかく「ピアノ要員」は大切にされます。
あとは保育園の規模にもよると思います。当然、大規模保育園ならば、ピアノ要員も何人もいますし、それぞれ得意分野を生かした仕事ができます(絵が上手な人、工作が上手な人、お話が上手な人)。
- ピアノ必須とわかる文章を載せているところは不可欠
- それ以外は、ピアノが弾けることが加点要素
これならば、ピアノを弾かなくてもやって行けそうですが、転職した先の保育園でピアノが弾ける保育士が辞めてしまった場合、ピアノの練習を業務命令で課される可能性もあります。そうなるとやらざるを得ないでしょうね。
男性保育士だからピアノを弾かなくていい、ということもなく個々の保育園の事情によります。
ただ、男性保育士は体育(運動、外での遊戯)や保育園外での活動の責任者になりやすいかもしれません。「男性だからセーフ」とは断言できません。
「ピアノ手当」みたいなものはまずないでしょうし、ピアノが好きではない人ならば一方的な負担になってしまいます(小学校の時にピアノが弾ける子に音楽の時間の負担が集中するのと同じ構図です)。
保育でどうしてもピアノをやらなければならなくなった場合どうする?
ピアノを練習しなければならなくなった時どうすればいいのでしょうか?
ピアノアプリを使う
家にピアノがない、置くスペースがない人はキーボードでも買って練習するしかないのでしょうか?
実はスマホやタブレットをピアノの鍵盤代わりにして練習できるソフトがあります。
これらのアプリは二タイプがあります。
- スマホやタブレット画面そのものを鍵盤代わりにたたく
- キーボードとデータを共有、連携させて、スマホやタブレットを楽譜代わりにしてキーボードで弾く(スマホ画面には♪#♭が流れる)
前者の場合、さすがにスマホを叩くのは難しく(音ゲーじゃないので)、タブレット並みの大きさが必要になります。
ただ、場所を取らず、音も出ず(ヘッドホンをする)、画面の指示で鍵盤をたたけばいいので、昔に比べるとかなり練習しやすくなっていると言っていいでしょう。
ピアノ教室へ行く
小学生の習い事のようにピアノの先生に習います。
とはいっても近所のピアノの先生がどこにいるのかわかりませんし、働きながら習うのは大変です。
最近は大きな駅前に音楽楽器会社系の(ヤマハとか島村楽器とか)ピアノ教室があり、月一回~二回、毎回30分程度の練習ができるところもあります。一回につき2000円~3000円でそこまで高くもありません。
ピアノをまったくやったことがない人は、独学が大変なので、この方法で習うしかありません。
業務に関する研修ですから、ひょっとすると保育園がピアノ教室代を負担してくれるかもしれません。
家で独学
ピアノやキーボードを持っている人が独習します。
でも全くやったことがない人や、ブランクが長い人は難しいでしょう。
やはりピアノは大きな負担でありできれば避けたいもの。
以下のようなサイトで3つのコードで逃げ切るという方法も探せばたくさんあります。
参考 https://usagiclassic.com/3cord/
ピアノを確実に避ける保育士の転職先
ただし、それによって失うものもありメリット、デメリットがあります。
超小規模保育園、小規模保育事業所
マンションの一室でやっているような無認可保育園であれば、スペース的にピアノを置く余裕もないですし、近隣住民からの苦情もあり、ピアノがないところもあります。
しかし、こういう保育園は待遇がとても悪く、激務薄給、ブラックな職場が相場です。
確かにピアノはないかもしれませんが、あまりに労働環境が悪い、給料が安い職場が多く、ピアノの有無で選ぶと碌なことにならないかもしれません。
独特な教育理念を持つ保育園
集団生活を是とせず、個性を伸ばすことのみを追求している保育園や、「○○式保育」というように独特な理念で運営している保育園ではあえてピアノをしないところもあります。
保育園は幼稚園のように学習指導要領に縛られるわけではないので、ある程度裁量があり、ピアノなしの園運営もできます。
しかし、過剰な理念先行型保育園は一種の宗教のようなものでもあり、合わない人にとってはピアノどうこう以前にメンタルがやられてしまうかもしれません。
こういう保育園への転職を考える場合は事前によく職場研究と情報収集をしてください。
夜勤専門保育士
夜勤専門で働くならばピアノを弾く必要はありません。
子どもが寝る時間にピアノは全く必要ないですよね。
この仕事は子どもを寝かしつけてお守りをすることです。
しかし、同じ夜勤職の看護師と比較して時給が低い、正規雇用があまりないというデメリットもあります。
保育園以外の職場で「保育士」として働く
保育園でなければ歌を歌うこともないかもしれません。
一般企業ということではなく、保育士資格が条件となっている保育園以外の職場に転職します。
- 児童自立支援施設
- 児童養護施設
- 乳児院
- 知的障害児施設
- 重度心身障害者施設
- 児童館
これらの施設は保育士資格(とか教員免許)が必要です。
しかし、ピアノがない以上に夜勤や介護など(児童養護施設であれば親代わりです)心身へのストレスは相当なものです。
保育園でピアノを習って弾けるようにする方がはるかに楽かもしれません。
しかし、負担やデメリットもあり、ピアノをがんばった方がマシというケースもあります。
どうしてもピアノを避けたいならば保育士専門の転職エージェントの活用などはいかが?
「普通の保育園」で「絶対にピアノがない」職場を探すのはかなり大変そうです。転職サイトで「ピアノが弾けなくても」と記載されていても、実際には「ピアノが弾ける人が辞めたからやって」「一応弾けた方がいいよね」とピアノをやらされる可能性もあります。
本当に保育園の内部情報で、確かにピアノ不要という求人を探すためには、保育士専門の転職エージェントに登録して相談してみるといいでしょう。
利用は無料なので気軽に登録できます。
ただし、「ピアノを弾きたくないだけのその辺の保育士」では「紹介できる求人はない」と言われてしまうかもしれません。
「ピアノ以上に余人をもって代えがたい長所がある」(例えば絵がすごく上手、リトミックの指導者など)ことが評価されれば「絵画要員」などとしての転職を探し、斡旋してくれるかもしれません。
ピアノを避けたい場合、ほかにPRできる長所がないかよく整理して、そのうえで転職エージェントに登録してみましょう。
ピアノをなるべく避けて転職する方法 まとめ
- ピアノが弾けなくても、ピアノを弾かなくても保育士になることができる
- ピアノが弾けることは保育士不足の現在は加点要素
- ピアノが弾けなくても転職できるが、転職先でピアノを弾いてと求められる可能性はゼロではない
- ピアノアプリなどもあるが独学で練習するのはかなり大変
- ピアノがない保育園、ピアノを否定する保育園、保育園ではない保育士の職場ならば、ピアノを弾くことは避けられる
- しかしこれらの職場は別の面で負担が大きく、ピアノを練習した方がマシレベルのブラックな職場の可能性もある
- 「ピアノを弾くことが本当にない」「普通の保育園」の求人を探すためには、保育士専門の転職エージェントに登録して相談してみる
- ピアノを弾かなくても許されるような他の分野で抜きんでた長所が必要になるかも