保育士としての求人は非常に多く、保育園が足りていないだけではなく、保育士も足りていない、慢性的な人不足の状態にあります。その意味では「売り手市場」なのですが、激務薄給という印象があります。今回は正社員(正規雇用)として働く保育士について、実際のところを考えてみたいと思います。
正社員保育士の給料はどのくらい?
保育士の求人倍率は5倍を超えていて、空前の売り手市場になっています。
十分、求人を見比べて吟味できるのですが、どの求人も、保育士の給料はとても低く、正社員(正規職員)であっても「年収320万円前後」「月給で額面20万円ちょっと」ということが統計上わかっています。選べてもどれも安月給ということです。
公立の保育園で正規職員として働く場合は、公務員待遇になるので全く違うのですが、多くの保育士が働く私立保育園の場合、非常に低い収入となっています。
保育士の給料が低い理由については詳述しませんが、子ども一人当たりの保育士の数が多く、本来ならば保護者から高額の保育料を請求すべきなのですが、(保育園にあずけるということは)共働きするくらいですから、そんな経済的余裕は保護者にありません。
したがって、許認可を受けて補助金の受給をしますが、それは税金なので「必要最小限」にとどまり、保育士がぎりぎり生活していけるかどうかレベルしか補助できないんです。
ただし、最近は松戸市の「松戸手当」のように、保育に力を入れている自治体が直に数万円給料を上乗せするところも出てきました。これでようやく額面30万円に近付く(つまり手取りが25万円くらい)ところが出てきました。
しかし、会社員のように月給40万円もらう保育士はまずいません。
このレベルに達するのは園長や副園長など経営層にならないといけないわけです。
保育園における正社員保育士の割合
正社員保育士の割合
保育園の保育士は
・正社員保育士(クラス担任)
・正社員保育士(フリー保育士)
・非正規保育士(フリー保育士)
・非正規保育士(時間外保育士:早朝と夕方担当)
からなります。
知人の保育園では
・正社員保育士(クラス担任):11人
・正社員保育士(フリー保育士):1人
・非正規保育士(フリー保育士):4人
・非正規保育士(時間外保育士:早朝と夕方担当):7人
の配置です。
大体「正社員:非正規=1:1」か正社員(正規職員)がやや多い感じです。
それでも足りていない傾向にあるので、正規雇用でフルタイム働きたい保育士の人は大いに歓迎されます。
保育士の勤続年数は?辞めていく人が多い?
厚生労働省の「保育士等確保対策検討会」で示された保育士の平均勤続年数等は、【保育士等における現状|保育士等確保対策検討会|厚生労働省】によると下記のようになっています。
- 勤続年数:7.6年(他業種12.1年)
- 平均年齢:34.8歳(他業種42.1歳)
- 経験年数1年~6年:40.1%
つまり、激務薄給で30歳前に辞めてしまう人が多いということです。
結婚退職や、出産退職もありますし、別の仕事に転職する人もいます。なかなか正社員として働くのは大変です。
ただし、同じ資料にある「短時間労働者の賃金(1時間当たり)」の項目で
<年齢>
全職種 45.0歳
保育士 45.6歳
とあるので、40代半ばで子育てに手がかからなくなって時点で、パートやアルバイトとして復帰する人は結構いるということです。
保育士に年齢制限はある?
保育園内の年齢構成を調整したいケースもありますが(あまり若手、ベテランに偏らせない)、基本的に年齢制限はないと思ってください。
60歳、定年を過ぎた人は、正社員ではなく嘱託や非常勤になるケースが多いですが、元園長経験者なども現場の保育士として普通に働いています。
もちろん、20代、30代であればどこでも大歓迎です。
これまで別の仕事をしていた人が、保育士として働きたくなった場合も、採用については問題ありません。
ただし、職能給の部分は、保育士経験がないので低くなる可能性があります。同じ年齢でずっと保育士をしてきた人と、他の職種から転職した人では前者の方が給料が高くなります。
保育士の掛け持ちやパートは可能か?
就業規則で禁止していても、実際に副業した時にはそれを罰することはできないとされています(憲法22条)。
公立保育園は正社員として働く場合は、公務員ですから公務員の副業禁止規定に引っかかるため副業はできません(公立保育園の「パート」ならば公務員ではないので副業可能です)。
「制度上、掛け持ち、副業ができること」と
「実際に、掛け持ち、副業ができること」は違います。
ただでさえ激務の保育士を正社員として行っているのに、加えて空いた時間を副業というのは体がもたないでしょう。
休日は休養に充てた方が望ましいのが事実ですが、薄給を補うために単発や週一のバイトをしないと・・、という切実な人もいます。
その場合は以下のようなお仕事が考えられます。
1.ベビーシッター
保育士の仕事を活かして、休日に単発でベビーシッターをします。派遣会社に登録しておくと、単発案件の紹介があります。
時給、日給も高く、比較的割りがいい副業になります。
もちろん、あずかっている赤ちゃんに何かあったら大変なので、責任はとても重くなります。
2.コンビニ等のバイト
比較的時間の融通が利いて、入りたいときに入れるのがコンビニ等のバイトです。
ただし、時給はご存知の通りですので、そこまで稼げるわけではありません。
生活が苦しくて仕方なく、という場合以外は体力も消費するのでそこまでおススメできません。
3.内職、クラウドソーシング
家にいる時間を有効活用できるのが内職です。内職と聞くと、花の飾りつけや、「こより」を作るなど、神経を使ってしかも1本1円とかの激安単価のイメージがあります。最近はそういう内職も減っています。
代わりに出てきたのが、在宅でPCを使って行う「クラウドソーシング」です。ネット、メールでデータのやり取りをして、成果物を納品して報酬を得ます。
イラストが得意な人は一枚数千円で売ることができますし、ライティングの案件も多数あります。専門性を活かして、そう、この保育士の転職記事のようなことであれば、すぐにサクサク書けるのではないでしょうか。
4.ナイトワーク
歓迎することではありませんが、夜のお仕事や大人のお仕事をやむにやまれずやっている人もいます。
確かに時給も高く割りがいいのですが、失うものも多くおススメはもちろんできません。ただ、やっている人は結構いるということです。
以上まとめると
・ベビーシッター→保育士の経験を活かせる、高単価
・コンビニ等→副業として割り切る、スキル不要
・クラウドソーシング→在宅でできる、案件によっては保育士の経験を活かせる
・ナイトワーク→高単価、ただし失うものも大きい
となります。
別の保育園での掛け持ちは、少なくともある保育園で正規職員として働いているならばありえません(非常勤(パート、バイトとして)の掛け持ちはあり)。そんな時間もありませんし、ある会社の正社員が同業他社の別会社でバイトするとかありえませんよね。
副業、掛け持ちについては
- 公立保育士(正社員)→不可
- それ以外(私立&パート、バイト)→不可ではないが職場の理解が必要
となります。
特に正社員の場合「就業規則の副業禁止規定」が該当することもあります。ただ、裁判では勝てますし(憲法22条と一職場の規則では当然憲法が優先)、黙っていてもバレなければいいのですが、保育園近くで働くと保護者等にバレる可能性もあります。
ある家に行くベビーシッターかクラウドソーシングがばれにくいと思います。副業は住民税の話(住民税で職場に副業がばれるかも)もありますがそれは今回は省略します。
保育園保育士の掛け持ちは?
ならば、保育園を掛け持ちすれば?と思うかもしれませんが、あまり意味がありません。
複数の保育園で比較しながら経験したいという場合以外は一カ所に勤務した方がいいです。
二つ、三つの保育園の掛け持ちですが、パートにで働いたとしても、急に「○曜日に入って」とか「時間延長して」と言われるので事前に条件を確認してください(○曜日限定で働くなどして重ならないようにする)。
ただ、掛け持ちをする意味は薄いと思います(保育士は人手不足なので、希望すれば毎日パートで働ける保育園は見つかります)。
もちろん、正社員としての掛け持ちはしない方がいいです。両方の正社員にはなれませんし、正社員の方を月~金、ないし土に行き、休日別の保育園で働くのは制度上は可能ですが体力が持ちませんし、プライベートが崩壊してしまいます。
保育士+在宅ワークなどをおススメします。
子育て中、子持ちの保育士としての働き方
出産し、子育て中の人も保育園で働くことは問題ありません。正規職員でも歓迎されます。
ただ、家で面倒を見てくれる祖父母などがいない場合「自分の子どもを保育園にあずけて保育園で働く」ことになります。
松戸市などでは「市内の保育園で働く保育士の子どもは優先的に保育園に入れる」という特典があります。
フルタイム、正社員でまた働きたい場合は自治体の制度を確認してみてください。
保育士確保に向けた松戸手当の支給と支援メニューのPRについて→支援メニューの「2」が該当
繰り返しますが、保育士は人手不足なので、猫の手も借りたい状況の中で、パートで働く場合は比較的こちらの希望時間の要望が通りやすくなっています。正社員、フルタイムだと大変になります。
時間固定の働き方
夜勤はありませんが、7時始業の日もあれば、10時過ぎ始業の日もあるので、結構大変です。
実はごく少数ですが、あらかじめ勤務時間が決まっている「年間固定シフト制」(例えば8:00~18:00の間で実働8時間)の正社員求人があります。これならば、いろいろな予定も立てやすく、生活リズムも安定しますね。
求人数が少ないので探し方が大切になります。
なお、こういう求人でも「別のシフト時間の人が急病になったので、明日は別シフトに変わってもらいたい」「○○さんがいないから今日は残業して」ということはあり得ますので注意してください。時間給のパート、アルバイトではないので、その辺は正社員の責任もあるということですね。
時間固定の正社員や子育て中のパートなどを探すには転職サイトや転職エージェント
このように
- 保育士の求人は多い
- ただし激務薄給のものばかり
- 長く続かない
- パートやバイトならば悪くない
ということがわかりました。
そういったものがあればとても人気になるため、あまり表には出てきません。
そういう隠れた優良求人を探して応募するためには「保育士専門の転職サイト」や「保育士専門の転職エージェント」の利用をおススメします。
これらには、とっておきの「非公開求人」「優良求人」が揃うため、それほど激務ではない正社員求人や、時間固定の求人、割りがいいパート求人、子育てと並立できる求人などを見つけやすくなっています。
苦労して取った保育士の資格、有効に使って自分の経験を買ってくれるところを探してみるといいですね。
保育士の正社員ナビ※転職サイト求人、給料や掛け持ちパート、子持ちの人の働き方 まとめ
- 保育士は求人倍率五倍を超えるかなりの「売り手市場」
- しかし、給料は安く激務である
- 両親が働いている子どもを預かるという性質上、あまり高額の保育料が取れず助成金頼りになり給料を上げられない
- 副業をしている保育士は多いが、本業が激務のためあまりキツイ仕事はできない
- 正規職員(正社員)の掛け持ちはかなり難しい
- 時間固定正社員の求人はかなり少ないので、よく探す必要がある
- 正社員求人や子育てと並行できる優良求人を探すためには、保育士専門の転職サイトや転職エージェントがおススメ
- 保育士専門の転職サイトや転職エージェントには条件のいい「非公開優良求人」が集まりやすい