試用期間の実態~いつから“本当の”正社員?
「試用期間〇ヶ月」という言葉を見て、試用期間中はお試し期間やアルバイト扱いだと思って敬遠されている方がいますが、これは間違いです。
試用期間とは、企業が採用者の実力や勤務態度などを見て、長期雇用(本採用)するに値するかを判断する期間のことです。
法的な規則によって試用期間を設けることが義務付けられているわけではないため、期間も企業によってばらばらですが、平均的に転職後1ヶ月~6ヶ月間の中で試用期間を設けています。
新卒採用において試用期間を設けることはほとんどありませんが、転職採用においては大半の企業が、転職者に対して試用期間を設けます。これを過誤して敬遠してしまったり、あるいは全く試用期間について理解せずに応募してしまうと、思わぬトラブルや損を被ってしまう可能性もあります。
試用期間中に多いトラブル
不当な賃金で労働させられる
なぜ企業が試用期間を設けてのかというと、少しでも人件費を節約したいからです。「試用期間中は勉強期間」という位置付けで本採用後の給与よりも、少なく設定されていることが多いです。
中には、国(都道府県)で定められている最低賃金以下で働かされたり、そもそも試用期間中に給与が支払われないといったトラブルも起きる場合があります。試用期間中とはいえ、転職者と企業は労働契約を結んでいるため、最低賃金以下で働かせることは違法となります。
不当な解雇を宣告される
「仕事が遅い、期待通りではない」や「職場に馴染めていない気がする」といった理由で企業から解雇を宣告される場合がありますが、これは違法です。
繰り返しますが、試用期間は「お試し期間」ではなく、労働契約に基づくまぎれもない「労務提供」です。そのため、試用期間だからといって簡単に転職者を解雇することはできません。企業側が試用期間中の転職者を解雇するためには「正当な理由」が必要です。正当な理由として裁判で認められたものは以下になります。
- 出勤率が90%に満たない
- 3回以上の無断欠勤
- 勤務態度が悪く、何度指摘しても改善されない
- 協調性を欠く言動・行動があり、社員として不適格
- 履歴書・職務経歴書に経歴詐称があった
この条件は、本採用を拒否するための理由としても取り扱われているため、上記に当てはまらない理由で本採用を拒否された場合にも訴えを起こすことができます。
不当に試用期間を延長される
企業が転職者に対して試用期間の延長を申し出ることは可能ですが、以下の段取りを踏まなければいけません。
- 就業規則や労働契約書内で、試用期間を延長する場合があることについて明記されている
- 延長する理由に合理性があること
- 延長する期間は当初の期間を含めおおむね1年以内であること
つまり、試用期間を延長するには、明確な理由があり、就業規則などに試用期間を延長する旨を明記し転職者に自覚させ、延長したとしても試用期間開始から1年以内に収めないといけないということになります。
試用期間を延長されても、転職者にメリットは一切なく、ただ給与が減るだけなので注意しましょう。
社会保険などに加入させてもらえない
試用期間を理由に企業が社会保険に加入してくれない場合がありますが、これも違法です。
試用期間でも、「無期雇用」で労働契約を結んでいる以上、企業は私たちに対して社会保険に加入させる義務を負います。社会保険の加入を拒否されると、厚生年金や失業保険などの金額が下がってしまうため、試用期間中に社会保険未加入であることを確認した際はすぐに会社へ申告しましょう。
試用期間中に不当な扱いを受けても会社に居続けるべき?
試用期間の元々の使われ方は、長期雇用に値するか判断するためだけのものであり、社会人の常識通りに働いていればトラブルになることなく本採用を迎えることができます。試用期間が悪い制度というわけではなく、「試用期間」という言葉の響きを利用して、転職者を不当に働かせる企業に問題があると言えます。
そういった企業は試用期間の扱い方以外にも問題が多く、俗にいうブラック企業に相当することも多いです。せっかく派遣社員から転職して正社員になったとしても、そのような企業で働き続けるのはよい判断とはいえません。
試用期間の扱い方については、入社してみないと分からないため、転職活動中に判断することはできないでしょう。
しかし、せっかく転職活動をするのであれば、不当に扱われるよりも正当に扱ってくれる企業に転職したいですよね。そこでおすすめしたいのが、企業の内部情報も理解している転職エージェントを利用した転職活動です。
転職エージェントは面接対策や履歴書・職務経歴書の添削だけではなく、自分に合った転職先を紹介してくれるサービスも提供しています。
企業の内部情報を把握した上で紹介してくれているため、自分で転職先を探して転職するよりも、ミスマッチや不当な扱いを受けるリスクは減少するため、転職活動や転職後に不安を感じている場合は、転職エージェントに相談してみましょう。