「未経験歓迎」の求人を出す企業の真意は?
転職活動をしていると、求人欄に「未経験歓迎」の文字を見ることが多いと思います。言葉の通り、募集している仕事内容を経験したことない人も応募資格があるという意味ですが、これにも種類があります。
- 社会人未経験
業界・職種が未経験なだけでなく「社会人」未経験者。 - 業界未経験
職種自体の経験はあるが、不動産・金融・広告・ITのような「業界」未経験。 - 職種未経験
同じ業界に転職するが営業や事務といった「職種」未経験。
どの「未経験」にもいえることですが、何も経験したことない職場に飛び込むということは、新卒とほぼ同じ力量でありながら、会社からは転職者としての即戦力を求められる可能性があるということを忘れてはいけません。良い意味でも悪い意味でも、派遣上がりであることを理由に差別することはありません。
企業も転職者に対して新卒と同じような研修をしようと考えていないため、転職者向けの教育制度についてはほとんどの会社で整っていません。
未経験案件は自分自身のスキルを高め、新鮮な気持ちで取り組めるメリットがありますが企業にとってはデメリットの方が多く、希望する給与からは程遠いものになる可能性の方が高いのです。また自分が思い描いていた仕事ではなかったとミスマッチが起きるリスクもあり、転職者はまた転職、企業は再度求人を出さなければならないと、転職者も企業も損を被ってしまうというケースは少なくありません。
なぜ企業は未経験者の求人を出すの?
会社にとっても転職者にとってもリスクの高い「未経験歓迎」ですが、それでも求人掲載しているのには理由があります。
業界自体が人手不足である
特定の専門職の場合は経験者の離職率が低く、経験者が転職してくるのが見込めない場合、未経験歓迎の求人を掲載している場合があります。
そうした場合は、入社後職業訓練をしなければ仕事ができないことが大半であり、準備をしてくれる企業が多いです。しかし、すべての企業が準備をしているわけではないので、転職時は内容をきちんと確認しましょう。
ダイバーシティ・マネジメントの兼ね合いで掲載している
同じ業界からの転職者の場合、「以前の会社ではこれで大丈夫だった」と、仕事のやり方でトラブルを招く場合があります。そのようなことを嫌って、全く違う業界からの転職者を応募している場合があります。
また仕事内容ではなく、性別や人種の垣根を気にせず採用をおこなったり、他業種の運営ノウハウなどを取り入れ企業の多様化・活性化につなげる「ダイバーシティ・マネージメント」のために未経験者を採用している場合もあります。
社会人の経験から成長性を買っている
一度社会人を経験し、今の職に不満があるからこそ新しい業界に飛び込んで、一生懸命頑張ろうというやる気を買って応募している企業も存在します。
企業からすれば、社会人として出来て当たり前のビジネスマナーを最初から備えていて、業種や職種についての基礎さえ訓練すれば新卒者よりもコストがかからずに将来性の高い人材となるかもしれない転職者は、非常にコストパフォーマンスの高い人材ともいえるでしょう。
人材の選別ができる、大量募集のための広告的利用
「未経験」として募集を出す場合と、「経験者優遇」で募集を出す場合では、応募数にはっきりとした差が現れます。言うまでもありませんが「未経験歓迎」で募集を出したほうが、転職希望者がより多く集まるためいわば広告的な利用がなされているのです。派遣で言うところの「急募」「大量募集」と同じような使われ方です。
特に女性に多いのですが、業務に対する期待を寄せられることを嫌い、経験者であっても「未経験者」の求人に応募するケースがあります。それを企業が知っているため「未経験」のラベルを貼って求人を掲載します。
「経験者優遇」で求人を出す企業の真意は、本当の即戦力となる人材を探しているとき。「未経験歓迎」は「未経験者でもOK、経験者なら尚可」という本音の部分が隠れていることも忘れてはいけません。
「未経験歓迎」の転職先に応募してもいいの?
結論から言うと、未経験歓迎でもチャレンジする価値はあります。
「マイナビ転職」の調査によれば、選考において「経験・知識」よりも「人物重視」であると答える企業は63%と高く、能力や経験があってもすぐ退職してしまう人材より、意識や意欲があり会社になじむことができそうな人材を確保したいのです。
しかし、本来であれば「経験したことがある」ということが最大のセールスポイントである転職活動において、それがないということは転職活動自体も工夫が必要となります。経験で勝負する転職活動から、自身の人間性を売り込む「人物重視」の転職活動へと変更しなければいけません。
まずは、履歴書や職務経歴書を見直さなければなりません。自分の経験に重点を置くのではなく志望動機や自己PRに力を入れ、よりやる気や意欲を訴えかけるものへ書き直さなければいけません。
また、面接で話す内容についても見直す必要があるでしょう。「本来ならば未経験者には遠慮してもらうところだけど、この人とは一緒に働きたいから、採用しよう」と採用担当が思うような面接ができなければ、経験者に採用を奪われてしまいます。
転職エージェントのキャリアアドバイザーの意見などを取り入れながら、「未経験者なのに採用したい」と思われる人材を目指しましょう。