【働き方改革】同一労働同一賃金で派遣社員は今後どうなる?!

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みなみ
今の派遣先は正社員の方と一緒の職場内で「全く同じ業務」をしています。でも貰っている給料は私のほうが少ないみたいなんです。雇用形態が違うだけでここまで賃金に差があるとモチベーションも下がりますよね…。
れいか
同一労働同一賃金」って知ってる?簡単に言うと、正規・非正規に関わらず、同じ労働を提供しているなら同じ賃金を支払いましょうって考えなの。欧州では広く普及しているみたいで、正規・非正規の賃金格差がとても少ないのよ。日本でも今積極的に議論されているみたい。
酒井先生
日本における同一労働同一賃金にはいくつかの壁があり実現にはまだ時間がかかる見込みです。ここでは同一労働同一賃金の基本的な考え方と、派遣社員に適用する際の問題点を解説していきます。

同一労働同一賃金は派遣社員に適用できるのか

平成29年2月から2回にわたり、同一労働同一賃金の実現に向けた検討会が開かれました(厚生労働省)。これは同じ業務を行っているのであれば、正規社員(正社員)・非正規社員(派遣社員・パート社員・契約社員)に関係なく同額の賃金を支給しようとする制度案です。

同一労働同一賃金は欧州の取組を参考に、それを日本の雇用慣行にカスタマイズし実現させることを検討しています。

  日本(案) 欧州型
対象 企業格差 企業格差
利点 職場内における賃金格差が是正される 職種ごとに賃金とスキルの関係性が可視化される

しかし、派遣社員に対して同一労働同一賃金を適応させるためには、いくつかの難関が用意されています。特に派遣の場合は、様々な企業で経験・キャリアを形成していく労働形態なので、欧州型の同一労働同一賃金を取り入れた方が良いとされています。

また派遣先と派遣元という実質的な雇用主が2社関わるため(法律上の雇用主は派遣元)、どちらにその規制を設けていくのかも議論されています。

派遣会社に適応させる場合

同一労働同一賃金を派遣元・派遣会社で行う場合、非正規社員である派遣社員全体に関わります。その派遣会社で一般事務や営業事務の正社員・内勤社員がいると、その方達がベースとなって事務系で働く派遣社員の給与に影響します。またその派遣会社で正社員のいない職種に関しては、同じ業務で派遣されている方の給与がベースになります。

例えば、「軽作業は時給〇〇円、秘書は時給〇〇円」と同一賃金での支給になります。この場合、派遣先企業の規模に関わらず時給が設定されることになります。同一労働同一賃金をどこの派遣会社も適応されることになると、派遣先ではなく派遣会社毎に設定されている職種の時給が異なってしまいます。もし時給アップを狙うのであれば職種か派遣会社を変更する必要があります。

この場合は派遣社員の時給が派遣会社に委ねられてしまうことが懸念点になります。

派遣先に適応させる場合

派遣先で同じ業務を行っている正社員の給与をベースにする考え方です。そのためどこの派遣会社から派遣されても派遣社員の時給が同一になります。

これによると、派遣先を変えることで高時給を狙えるものの、キャリアアップしても職種が変わってしまえば、派遣先によっては以前より時給が下がってしまうケースも考えられます。中にはキャリアップせずに同じ職種で働き続けようとする方も出てきてしまい、事務キャリア形成の機会を奪ってしまうことにもなります。

その職種が秘書やエンジニア系の専門的かつ超高時給な職種であれば良い場合もありますが、一般事務や営業事務の場合は、高時給を狙おうにも限界があります。経験やスキルに関係なく、派遣先の時給が全て派遣先に委ねられてしまう点が問題となります。

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欧州の考え方を派遣市場全てに適応させる

欧州の考え方のように職種に分けて企業横断的に賃金を同一にすることで、派遣先や派遣会社の企業規模による差別がなくなります。現在の状況だと同じ業務でも高時給の案件ばかりに求職者が集中しがちですが、欧州の考え方を導入することで同じ職種であればバランス良く人材が行き渡るようになり、雇用の偏りが改善されます。

またキャリアップで職種を変えるときも、「この職種に挑戦すれば時給〇〇円になる」と可視化されます。

具体的にどう法整備がなされていくのか

同一労働同一賃金の実現に向けて、具体的な法整備がどう進むか・どこが論点なのかというと、現行の労働契約法における正規社員と非正規社員の賃金格差に関する規定です。実は現行法でも、正規社員と非正規社員の格差について裁判で訴えを起こし是正することは可能です。

労働契約法20条において「労働条件の相違がある場合、その相違は不合理と認められるものであってはならない」とされ、雇用形態の違いによって差別してはならないことになっているのです。しかし現行法においては、この「不合理」の立証が労働者側に求められ、現実的な運用として機能していないのです(裁判例もなし)。

実現会議のメンバーでもある水町教授も「待遇の相違は不合理なものであってはならない」と法律で規定すると「労働者が待遇の相違が不合理であること立証」することになり、「待遇の相違は合理的なものでなければならない」と規定することの必要性を実現会議の場でこう説明している。

ビジネスジャーナル(2017.4.24)

従って具体的な法整備においては、この立証を企業側に求める仕組みに改正し、訴えを従業員が起こしやすいものにしなければなりません。

派遣には欧州の同一労働同一賃金を導入すべき

同一労働同一賃金を企業内のみで行うと、派遣社員の賃金が底上げされると思われがちですが、派遣先または派遣会社で導入するかで大きく変わってきます。そのことを考慮すると、「派遣」という雇用形態を限定してでも、欧州型を適応させ職種で分けて給与テーブルを設定するほうが、派遣社員の賃金が底上げされる可能性が高まるでしょう。

たとえ企業内における正社員と派遣社員の格差がなくなっても、派遣先や派遣会社、また「派遣社員」という社会的なイメージや実態の格差が変わらなければ何の意味もありません。

また制度の問題と同じく、法律の整備においても問題が山積しています。ただ、実現はそう遠くはないと言われており、派遣社員にとっては間違いなく今後働きやすい未来に向かって整備が進んでいます。

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