派遣と退職金の実態~派遣社員が退職金を貰うにはどうしたらいいの?
そもそも「退職金」という制度について明確に法律で定められておらず、「◯年働いたらいくら以上払わなければいけない」という義務や規定はありません。
また、厚生労働省のデータによると4人に1人の割合で退職金を貰えていない正社員がいる現状のようです。しかし、そんなデータを尻目に大手企業になれば貰える確率が上がっているようで、1000人超の大企業では退職金を貰っている人が90%以上になります。こういった背景からも正社員と派遣社員には社会的な格差が感じられます。
正社員でも退職金がない会社がなぜ存在するの?
繰り返しになりますが、法律上では退職金を社員に支給することが義務付けられているわけではありません。
元々の退職金という制度の考えは、離職率を下げるための足留め策として用いられていました。
しかし、最近ではキャリアップなどを目的として給与を上げるべく転職などを積極的に行うような時代になりました(派遣という働き方もその一部として検討される方が増えました)。そんな足止め策の効果が薄れてきているため、結果として退職金を設ける会社が少なくなったという背景があります。
また、いったん会社として退職金制度を設けてしまうと退職金を支払うことを途中で辞められなくなります。一度退職金制度を導入してしまうと、会社として退職金をなくすことができなくなるのです(会社内で貰える人・貰えない人が出てきてしまうため)。会社にとってリスクが大きく、そのリスクを取る割に、会社に恩恵をもたらす社員が少なくなっている(すぐ辞めてしまう)ため退職金を設ける会社が少なくなっています。
派遣会社も同様に、派遣社員に退職金支払うというのは、いくらテンプスタッフやアデコのような大手でも行っていないようです。
いくら雇用期間が長くても派遣社員は退職金の適用外。退職金制度を設けている会社のほとんどが勤務年数3年以上から支給するところが多く、そもそも最大勤務期間が3年である派遣社員には難しい現状です(抵触日)。もちろん以前には期間の定めのない政令26業務と呼ばれている派遣の方々も存在しました。
しかし私の経験では、政令26業務の方で4年近く働いたのに派遣先・派遣会社から退職金が出ませんでした。派遣先に退職金の支給をお願いするのは非常に難しかったのですが、派遣会社には私からお願いしてボーナスなどを支給できないか訴えたこともありましたが現実はシビア。それから派遣法改正に伴い全ての派遣業務に「期間の定め」が設定され、派遣社員が退職金を貰う時代はかなり遠のいたように感じています。
残念ながら現実はそういうことになります。しかし派遣という働き方をよく考えてみて下さい。明らかに正社員より高い時給で、かつ自由にシフトを組んで責任も負わず働くことができます。もちろんその分デメリットもありますが、これは賞与や退職金といったものの「先払い」と捉えることもできますよね。
逆に言うと、正社員の方は、みなし残業やサービス残業、低い固定給の「後払い」として賞与や退職金を受け取っているのです。また派遣社員がどうしても賞与や退職金、安定給がほしいというのであれば、紹介予定派遣で派遣から正社員、又は無期雇用派遣などを目指す雇用契約を結べば可能性はあります。
退職金が貰える会社の特徴は?
一番簡単な方法は、募集要項から「退職金あり」と書かれていれば退職金をもらうことができます。賞与も同様に「賞与あり」と書かれています。しかし、退職金というのは本当に会社によってバラつきがあり、10年~20年と勤めてきても、たった数万円しか貰えないという事例も頻繁に聞きます。退職金を貰えても、たくさん貰えなければ全く意味がありませんし、正社員になるメリットがありません。それなら毎時給高い賃金で都度受け取っている方が明らかに得です。
ここでは会社内の福利厚生として退職金制度が設けられている場合について、どれくらいの退職金が支払われているか計算する方法をまとめていきます。と言っても、適正な金額については実際の会社内部に入り込まないと全くわかりません。開示義務なども存在しないので。より実態を知りたい、具体的な数字を知りたい場合は、「転職会議」などの企業口コミサイトで調べたり、派遣の営業担当者に調べさせましょう。
仮に退職金制度を会社が規定する場合、以下のことを定める必要があります。
- 退職金が貰える労働者の範囲(基本は正社員)
- 退職金の計算方法・支払い方法
- 退職金の支払い時期
退職金の相場・計算方法
会社によって異なりますが、退職金を語る上で就業年数と退職時の給与が重要になります。
【退職金】=【月の基本給】×【勤務年数】×【給付率】
この計算式で退職金が割り出されます。厳密に言うと退職給付会計はもっと複雑なので、これは参考程度にとどめておいてください。
給付率に関しては、自己都合退職の場合60%、会社都合の退職では少し上がります。給付率に関しても会社によって決められているのであくまで一般的な例になります。
会社によっては計算方法を無視して、勤務年数に対して一定額で決めているところもあります。役職持ちの方には基本給で計算した方が多く貰える可能性が高いです。派遣社員から役職付きにまで成り上がるのは相当大変ですが…。
派遣社員が退職金を貰えたとしても…
正社員・契約社員といった雇用形態に関わらず転職する人が多くなった理由は、この退職金の給付金額の少なさが問題となっています。
今いる会社の事情を考えると、会社を変えて退職金が多いところに移った方が、生涯賃金が高くなると計算して転職する方が増えています。特に新卒時は退職金のことまで考えて入社する人は少なく、しっかり自分の価値観や求める年収を理解できるようになると、退職金まで考慮に入れて会社を変える人が多くなっているように感じます。
たとえ、足留め策として退職金を設けても、その支給額の計算で明らかに少なく感じれば転職する方が効率的です。私の知り合いの会社では10年働いても寸志程度しか退職金が出ないところもあるくらいです。「福利厚生」として会社概要に載せられていれば確かに見栄えは良いですが、実際の現状を知るとガッカリする会社の方が多いです。つまり、募集要項上の「退職金」という項目が、人材募集のための広告として使用されている実態もあるのです。
正社員として色々な方面で社会的に守られていても、給与に関してはいつになっても物足りないと思う人が多いのが現状かもしれません。そんな時代だからこそ「今貰える時給・給料が高い」派遣という働き方に注目が集まっているのでしょう。
私が派遣会社の営業マンだから推奨しているのではなく、どんな働き方にもメリット・デメリットがあり、その働き方にマッチした方法を正しく選ぶことができなければいつだって満たされることはないと思います。派遣というのは特徴がハッキリしていますから正直風当たりも強いです。しかし周りから見ている以上に中で働いている人間は穏やかですし、なにより「時給が高い」というお金の面で満たされている人が多い印象ですね。
しかしこれだけは間違いないのが、退職金や賞与は「賃金の後払い」であることです。派遣は退職金や賞与が出ないかわりに、それが今の時給や給料に上乗せされて支払われます。そして正社員なのに退職金が出ない会社というのは、そもそも賃金の「搾取」が行われているということです。どちらに魅力を感じるかは人次第ですが、退職金というものにあまり固執しすぎるのもどうかと考えてしまいます。