派遣における「専門26業務」とは?
期間の定めがない26の仕事
専門26業務は、専門性の高い仕事(仕事の完成に対し、出来不出来が個人によって大きく左右される仕事)が定められていました。
しかしこれらは一般事務や軽作業などと違って、派遣法で定める「3年」という抵触日によってその期間を定めてしまうことが、仕事の効率を極端に奪うと問題視され、専門26業務のみ最長5年という期間で派遣先が希望するまで延長可能でした。
現在は自由化業務との区別がなくなった
しかし2015年の派遣法改正により、専門26業務・その他の業務(自由化業務)との区別がなくなり、派遣の仕事「全て」に抵触日を設けるようになりました。
そのためこれから専門26業務で就労を始めることはできません。
- ソフトウェア開発
- 機械設計
- 放送機器等操作
- 放送番組等演出
- 事務用機器操作
- 通訳・翻訳・速記
- 秘書
- ファイリング
- 調査
- 財務処理
- 取引文書作成
- デモンストレーション
- 添乗
- 建築物清掃
- 建築設備運転・点検・整備
- 案内・受付、駐車場管理等
- 研究開発
- 事業の実施体制の企画・立案
- 書籍等の制作・編集
- 広告デザイン
- インテリアコーディネーター
- アナウンサー
- OAインストラクション
- テレマーケティングの営業
- セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
- 放送番組等における大道具・小道具
専門26業務廃止の背景
この改正による派遣社員からの意見は賛否両論でした。しかし労働者保護の観点から見ると、専門26業務の廃止は致し方なかったものと言えます。
現実に今専門26業務廃止に関して「元に戻すべき」「間違った選択」だと非難する声は聞かれません。廃止のきっかけになった主な理由は2つです。
- 派遣社員の雇用機会・キャリア(将来)を奪っている
- 自由化業務との区別がつかない
※派遣先や派遣社員にとって都合のいい選択がされていた
派遣法改正前の専門26業務は、期間の定めがないものの、無期雇用されているわけではありません。派遣社員であることには変わりないため、有期契約によって毎回のように契約を更新し続ける必要がありました。
また自由化業務の抵触日を免れようと、一般的な事務の仕事でも専門26業務に割り当てるため「5号(事務用機器操作)」と書類上の手続きだけすり替えるように依頼する派遣先も存在しました。
専門26業務は派遣期間を長期化させることは可能ですが、雇用そのものを安定させるわけではありません。「いつでも切れる便利な社員」を抱えることができる派遣先主導の存在になっていたのです。
抵触日に対する理解は広まっていないのに、未だに派遣社員に対し「安定しない」「派遣切り」だというイメージが拭いきれないのは、この専門26業務が与えていた印象からなのでしょう。
2018年問題:専門26業務で就労中の方に与えた影響
制度そのものは廃止となりましたが、実は現在でも多くの方が専門26業務で就労しています。
派遣法が改正される前から派遣されていた方に対して、2015年から改めて3年後に抵触日が設けられたため完全に廃止されるリミットは2018年9月30日となっていました(2018年問題)。
しかしここまで就労してくれていた派遣社員に対し「明日から来なくていいよ」と通告するのはあまりにも非人道的です。従って、現在就労中のスタッフには以下のような救済・保護の措置が取られます。
- 派遣先又は派遣会社で無期雇用(正社員又は契約社員)に切り替え
- 派遣会社による新たな雇用機会・雇用場所の提供
これから派遣社員を目指す方の将来は明るい
派遣法改正以前は自ら望んで専門26業務に派遣されようとする方もいましたが、実態としても派遣先が抵触日を免れるために使われることが多く、制度としての正しい機能を失っていました。
当然派遣法改正の対象となったわけですが、今となっては専門26業務でなくても、無期雇用派遣や雇用安定措置の厳格化により、派遣社員の雇用は昔と比べ物にならないくらい安定しています。
福利厚生面においては正社員に劣る面もありますが、企業からの需要は年々高まり時給も向上、正社員から派遣社員へ雇用を移し替える方も増えています。
特に今は業界全体で「無期雇用派遣」推進で大きく動き、スキルアップの現場として自信をもって就業できる環境と言えるでしょう。
注目したいのは、直接雇用前提の無期雇用派遣を実施するテンプスタッフの「ファンタブル」や、2年6ヶ月以上の就業実績がある派遣社員を無期雇用派遣として受け入れるアデコの「ハケン2.5」など。大手各社は、無期雇用派遣に今後もっとも注力していくと発表しており、派遣先に忖度するような昔の立場の弱かった派遣会社も少なくなっています。
自分のキャリア・目的に向かって最善の選択ができるよう、将来設計をしていきましょう。