在宅勤務制の実施内容
在宅勤務はテレワークの一種で、「事業主(会社)と雇用関係のある労働者が就業時間の全部または一部を自宅で勤務する就業形態」のことを言います。自宅で働くことにはなりますが、労働基準法や最低賃金、36協定などの規定は今まで通り適用されます。
就業スタイル | 事業主との雇用関係 | 就業場所 |
在宅勤務 | 有 | 自宅 |
サテライトオフィス勤務 | 会社とは別のオフィススペース | |
モバイル勤務 | 場所を限定せず、カフェやレストランなど | |
在宅ワーク | 無 | 自宅 |
SOHO | 会社とは別のオフィススペース |
最近ではシェアオフィス(コワーキングスタイル)や、疎開勤務など様々な働き方が提唱され、どんどん自由になってきています。
相内優香です。三井不動産が、法人契約限定の「シェアオフィス」を2017年度中に全国におよそ30拠点オープンする予定です。働き方改革で働き方の生産性向上が求められる中、働き方に合わせて働く”場所”も多様化してくるかもしれません。
今夜の #WBS でお伝えします。 pic.twitter.com/Lm3o5XgBHI— WBS(ワールドビジネスサテライト) (@wbs_tvtokyo) 2017年4月6日
在宅勤務制の種類
在宅勤務制を導入している企業でも働き方や勤務体制が異なります。
常時型在宅勤務
基本的に自宅で勤務する時間が多い働き方で、労働日から労働時間の大半が在宅勤務になります。出勤しないといけない状況でない限りは会社に行くことはありません。
随時型在宅勤務
週1~2回、月何回と部分的に在宅勤務になる働き方です。そのため労働日の多くは会社で勤務することになります。
在宅勤務制のメリット
政府でも前向きに検討されている在宅勤務制、導入すること起こる企業と労働者のメリットについて解説していきます。
導入する企業側のメリット
業務の効率化が図れる
労働者が仕事に集中できる環境を与えることで、業務効率が向上されます。自宅ということもあり、社内への来客対応やお茶出しなどの必要もなくなり就業時間の全てを仕事に打ち込むことができます。
出勤できない方にも仕事を与えられる
自宅勤務にすることで、育児で大変な主婦だけでなく、怪我で出勤するのが不自由になった方でも仕事が可能になります。人材不足解消、雇用創出面でも社会に貢献できます。
人件費の削減に繋がる
仕事場が自宅になることで、交通費やオフィススペースの確保などが不要になります。オフィスが小さい会社でも、在宅勤務にすることで多くの労働者を雇うことができます。
会社のPRになる
マンダムや三井不動産、高島屋など、在宅勤務を導入するだけで今回のようにニュースになります。広告費ゼロで企業宣伝効果があります。「女性に優しい」「育休・産休が取れる」「復職環境がある」と、就職活動中の女性には魅力的に映ります。
労働者側のメリット
プライベート時間が増える
通勤時間がなくなるため、それに費やしていた時間(平均往復2時間)をプライベートの時間に移すことができます。就業規則で就業時間が決まっているものの、それ以外の時間は自由となっているため、早く起きることもなくなります。
家賃を抑えることができる
就寝時間や移動時間を考えて、就業先に近いところを賃貸として住まう方が多かったと思いますが、在宅勤務であればオフィスが遠くても気にせず仕事できます。
肉体的・精神的負担が解消される
朝早く起床したり満員電車の疲れなどから開放されます。また上司の目や周りの方に気を使うこともなくなるので、精神的疲労も軽減されます。職場環境や人間関係に縛られることもなくなり、離職率を下げることにも繋がります。
在宅勤務制の問題点
メリットだけを見るとどこの企業でも導入することを検討してもらいたい制度ですが、まだ問題点があるため難しいと思っている会社が多いのが現状です。
企業側の問題点
正しい勤務時間が把握しにくい
就業規則で「9:00~18:00」と規定していればいいのですが、隙間時間で働かせるためにあえて設けていないところが多いです。そのため勤怠管理で出勤から退勤まで管理しても、その時間内で小休憩を含みどれくらい就業しているのか実労働が把握しづらくなります。
仕事環境を整えないといけない
在宅勤務させる方の中にはPC環境が整っていない方も当然います。自宅で勤務できる環境を整えるために、PCやネット環境の確保などが必要です。
業務に対する評価が難しい
在宅勤務するために1日の仕事量を決めて就業させます。そのため常に「結果」による評価となるため、生産性の低い社員は時給割れしてしまう可能性もあります。会社内で働いているのであれば、結果が出なくても仕事ぶりを見て評価できますが、在宅勤務の場合はサボっていたのではないかと疑惑の目を向けざるを得ません。
労働者側の問題点
仕事とプライベートを分けにくくなる
家に仕事場があることで、就業時間外でも仕事ができてしまいます。そのため休日でも気になって仕事をしてしまうことがあります。会社勤務であればオフィス外だと仕事環境がなくなるため、プライベートとの区別ができます。
コミュニケーションの場がなくなる
在宅勤務だとずっと1人で仕事をすることになるため、周りとのコミュニケーションを取る機会がなくなります。家から出なければ誰にも会わない日も出てきてしまいます。
怠け癖が付く
縛られている環境ではなくなるため、仕事のペースやスケジュールを自己管理するようになります。上司の目を気にすることもなくなり、サボったり小休憩が多くなったりと怠け癖が付いてしまいます。精神的負担が軽減されていても、それによって生産性が低くなるようでは意味がありません。
在宅勤務制の課題
在宅勤務制には勤怠管理、評価制度、情報漏洩の危険性など、様々な点において課題が残ります。しかしそれは在宅でもなくても起こりうるリスクなので、全てを徹底しようとすると走り始めることができません。実際にイギリスやアメリカでは在宅勤務が定着しています。日本では「無意味に」同じ空間で同じ時間を共有する働き方が古くから根付いているため在宅勤務の導入を敬遠している企業が多いのです(特に大企業)。
厚生労働省の在宅勤務ガイドラインでは今後さらに在宅勤務が増加すると発表されました。PCを使っている仕事のほとんどは在宅勤務やアウトソーシングに移行できると考えられています。また在宅勤務制を導入することで働き方に幅を持たせることができます。中小企業の中には在宅勤務だけの社員で成り立っているところも多く、その理由はデメリットや課題を大きく上回る利益・メリットが見込めるからです。
これから導入を検討している企業も全ての社員を対象にするのではなく、希望制や勤務態度に応じて行っていくことでメリットを得やすくなるでしょう。