残業代は営業手当に含まれていても年俸制でも請求できる
営業手当に含まれる残業代請求
固定残業代・固定残業手当・みなし残業は法律上正式に認められているものです。従ってこれ自体に違法性はありません。
しかし、それはあくまで会社がある程度予測した残業の過去の実績や、事務の簡便上の都合であって、実際の労働時間がそれとかけ離れた数字であれば残業代を請求することができます。
「営業手当に残業代は含まれている」というのと実際の勤務実績の比較は全く別問題であって、正当に残業代を受け取れる権利があります。
年俸制社員における残業代請求
「年俸制」というのは賃金を年単位で決定し、それを12ヶ月に分割して支払うという取り決めにすぎず、決して残業代を免れさせるために決められたものではありません。制度の上では月給で受け取っている社員と何も変わるところはありません。
残業代も、もちろんボーナスも受け取れます。しかし、管理監督者に該当する場合や、就業規則などにより裁量労働制(勤務時間を定めず出退勤も自由、研究開発や技能職に与えられることが多い)の要件を満たしている場合は残業代が発生しないこともあります。
派遣社員・契約社員・アルバイトの残業代請求
残業代は全ての労働者に対して取り決められた制度です。しかし、派遣社員・契約社員・アルバイトなど非正規社員の方については所定労働時間と法定労働時間についてしっかり把握しておかなければいけません。
「残業代」とはいわゆる割増賃金ですが、非正規社員の方だと、例え所定労働時間以上働いたとしても、それが割増賃金の残業代として支払われないことが考えられます。
非正規社員の方たちというのは、時短勤務制度が取り入れられていることが多いと思います。会社によってその勤務時間(所定労働時間)は異なりますが、労働基準法においては、割増賃金の残業代を支払う義務が生じるのは、法定労働時間である8時間を超えたときのみなのです。
つまり、上表における「残業(2時間)」は割増賃金における時給の支払ではなく、通常の時給2時間分が支払われることとなります。そこからさらに残業した分については、1.25倍の割増賃金・残業代が支払われますので、例えば給与明細を貰った時に「おもったより賃金が少ない」と感じたらこの計算方法を思い出してみてください。
管理職の残業代請求
労働基準法では「管理職」に該当する人に対して残業代を支払う必要がないとされています。しっかり自分の仕事と部下の管理をしていれば自分が残業をしなければいけない状況にはならないからです。その分の対価を受取り、能力が評価された上の肩書なので、基本的に残業代が支払われることはありません。
ただ、管理職は課長や部長、また会社によってその名称や上下における立ち位置が微妙に変わり、また会社規模によっても肩書の責任の重さが変化します。従ってその取り決めが非常に難しいのが現状です。ただ「役員」であれば有無を言わさず残業代は出ません。社長・役員などの「経営陣」と、部長・課長などの「管理職」は明確に基準が異なります。
しかし、「深夜労働」「超過勤務手当」については管理職であっても支払わなければいけないため、給与明細はよく確認するようにしてください。
残業の記録・証拠をしっかり残すことが重要
営業手当に残業代が含まれていようが、年俸制であろうが、超過分は会社に請求できます。しかし、いざ請求するとなると「個人vs会社」になるため、客観的な証拠や、今後のこと(どうしても会社に残りづらくなります)について検討する必要が出てきます。
客観的な証拠とは、書面で勤務時間を残しておいたり、肉声データや動画などで残業の実績を残しておくことです。会社や第三者機関から「で、証拠は?」と言われたとき、誰もが残業の事実を客観的に認めざるを得ないものをあなた自身が個人で押さえておくことが必要です。もちろん会社PCのログや電源ON・OFFの履歴などは追えますが、会社側に握られているようなデータはリスクが大きいでしょう。
また仮に残業代を請求できたとしても、そうした会社に残り続けるリスクについても検討しておかなければいけません。悪い会社がたくさんあることはご存知の通りですが、良い会社も実はたくさんあります。転職などの選択肢・視野を広げた上で行動し、後先考えない先走った行動だけは避けるようにしましょう。