派遣で働きながら失業保険の不正受給…
失業保険とは、会社を離職・退職したために、収入がなく仕事を見つけることができない方への救済です。失業保険は、一定の条件を満たした離職者に対して、保険金を受給するという制度です(雇用保険)。
失業保険を受給する際には、ハローワークで雇用保険受給説明会というものを受講しなければいけません。説明会の中で最も時間を使って行われるのが失業保険の不正受給についてです。
どうして不正受給についての説明が長いかというと、失業保険を不正受給しようとする人がとても多いからです。わざと時間をかけ、面倒くさい手続きを踏ませているのです。また実態として不正受給を把握するのが困難なため、こうしたアナログな方法によってしか制御することができないのです。
ただ不正受給が発覚してしまえば、もちろんそれなりの処罰が下ることになりますし、その後の転職活動にも影響が出てくる可能性もあります。今回は、なぜ失業保険の不正受給が発覚しづらいかという点と、発覚後のリスクについてご紹介します。
特に若年層、20代の女性については疑いの目をかけられる場合が多いため必ず確認しておきましょう。
失業保険の不正受給でよく起こるケース
まず最初に覚えてほしいことは、失業保険を受給する資格を得た人が保険を受給するには、4週間に一度、自分の現在の状況を「失業認定申告書」に記入し、受給する資格があるかどうかについてハローワークに審査をしてもらう必要があります。
この失業認定申告書において不備がある場合や、虚偽の報告をした場合に不正受給として取り扱われるのです。
自分の知らない内に不正受給として扱われる可能性もありますので、失業認定申告書は間違いがないよう丁寧に記載しましょう。不正受給に相当する主な例は、以下になります。
失業認定申請書の内容に虚偽があった場合
求職活動をしていないのに、求職活動をしたと記入したり、派遣の収入などがあったにもかかわらず記入をしない場合などは不正受給として扱われます。
この失業認定申告書をもとに失業保険が給付されるため、虚偽の報告があった場合は不正受給とみなされます。
派遣の収入については、まだ給与が発生していなくても、始めた時点で申告の義務があります。
しかし社会保険を納める必要がない程度の収入であれば、自分が働いているところをハローワークの職員に見られるか、他の受給者の密告がない限り発覚しづらいのが実態です。もちろん社会保険を納めてしまえば、後々ハローワークから連絡が来ます。
求職活動の有無についても、民間企業(転職サイトや転職エージェント、または面接を受けた企業そのものなど)に事実確認をおこなわなければいけなくなりますが、不正受給をしていると怪しまれない限りは、ハローワークの職員から連絡が来ることはありません。
離職票の内容を書き換えた場合
自分で離職票を書き換えることはもちろん、事業主に頼んで自己都合を会社都合に書き換えてもらったり、賃金をもらった量よりも多く又は少なく書いてもらったりしても、不正受給とみなされます。
失業保険の上限額は、最後に働いた日から約6か月前までの平均給与の50~80%と言われています。受給額を決めるために重要な書類であるため、虚偽の報告をしてはなりません。しかし、怪しまれた結果前職に直接聞かれるか、前職の社員から密告がない限り発覚することはありません。
転職したにもかかわらず、報告せずに受給していた場合
当たり前ですが、失業保険は仕事を探している人のための保険です。転職先や新たな派遣先が決まった場合は、次の失業認定申告書でその旨を申告しなければいけません。
こちらについては、社会保険や雇用保険の更新により発覚するケースが多いのですが、転職先自体が不正受給を促す発言をする場合があります。給与の話になった際、「給料を手渡しにすれば、余分に失業保険がもらえるから」とすすめてきた場合、その会社へ転職するのを辞退しましょう。
不正をすすめてくるような会社が、まともな会社であるはずがありません。間違えても転職しないようにしましょう。また、こちらから手渡しを要求するのも、会社側から怪しい行動と思われ採用されづらくなるため控えましょう。
自営業を始めたにもかかわらず申告しなかった
お店を開くということだけではなく、在宅でパソコンを使いながらサイト運営でお金を稼ぐ行為も、自営業に相当します。
「まだ成果が出ていない状況であれば申告をしなくてもよい」と思っている方が多いのですが、自営業を始める場合は準備を始めた時点でハローワークに申告しなければいけません。
現時点で無収入であっても、仕事を始めた事実に変わりはないため、忘れずに申告しましょう。
故意ではないが不正受給に該当しやすいケース
例えば以下の場合も不正受給として扱われます。
- 会社の役員であったことを申告しない
- 失業認定日に、本人ではなく代理人をハローワークにいかせる
- 他の保険(健康保険の傷病手当など)をもらっていることを申告しない
失業保険の不正受給が発覚した際の処分
不正受給が発覚した場合、不正に受給した分は返還しなければいけないだけではなく、それ以後の失業保険は二度と受給できなくなります。これは、今回の転職活動中という意味ではなく永久に失業保険がもらえないということです。
不正受給をしたという証拠については、ハローワークのデータベース内に残り続けるため、とぼけて申請をしたとしても認可が下りることはありません。
また、極めて悪質な受給をしていたと認定された場合は、不正して受給した分の3倍の金額を納付しなければなりません。
ハローワークが悪質であると認定する例としては、以下のような例が挙げられます。
- 偽造・もしくは虚偽の内容が記載された離職票を使用した受給(他人の離職票を使用した場合を含む)
- 安定した職業に転職できたにもかかわらず、その事実を隠して失業認定書を提出していた場合
- 再就職手当の支給に関して虚偽の就職の届け出
つまり、虚偽の報告で不正受給をしていた場合は二度と失業保険がもらえなくなると思って間違いないでしょう。
本来雇用保険や失業保険とは、リストラや解雇、倒産等の自己都合でない理由で仕事がなくなった人たちのための保険です。自己都合で転職している人が、楽をするために用意されているものでは決してありません。
中には「失業保険の不正受給はバレないから、もらえるものは貰っとけ」と考える方もいるかもしれませんが、最悪の場合ハローワークから転職先へ連絡がいきます。そうなればその会社にはいられなくなる可能性が高くなります。
1ヶ月分の給与にも満たない額を不正に受給したために、一生懸命頑張って手にした転職先を辞めさせられるのは非常にもったいないですよね。特に20代のうちにそうした事実が発覚すれば、今後の人生おいて大きな痛手となります。女性の場合、ただでさえ難しい転職活動が、更に難しくなることも考えられます。