派遣社員がよく耳にする社会保険はこのほかに「リクルート健康保険」があります。リクルートスタッフィングが加入している社会保険で、保険料率などがはけんけんぽより若干安いなどメリットがあります。
はけんけんぽって何?
「はけんけんぽ」とは、日本初の派遣会社マンパワーグループと人材派遣協会が2002年に設立した組合健保。特に派遣社員という性質上、毎月1000〜1500人ほどの出入りがあるため、事務上の手続きが非常に難しい問題を抱えていました。
この問題をクリアにするために、日本で初めて健康保険の申請を電子化したり、翌日に健康保険証の発行ができるようにしました(ただ実態は、翌日発行など全くできていません)。
はけんけんぽと他の健康保険との違い
基本的な内容になりますが、社会保険には3つの種類があり、要件を満たす場合は必ず加入しなければなりません。
- 協会けんぽ
全国健康保険協会が運営する社会保険で中小企業の社員が主に加入しています。 - 組合健保
会社独自、あるいは同業者の県又は全国単位で組織する社会保険です。大企業やグループ企業の社員の多くが加入し、はけんけんぽもこれに該当します。 - 共済組合
公務員の方が加入する社会保険です。
「はけんけんぽ」と「社会保険」はしばしば全く違うものだと誤解されますが同義です。それを組織する大枠・呼び名の違いであって、要件を満たしているならそれに「入らない」という選択肢はありません。税金と同じで国民の義務。たまに「任意だから入らなくても大丈夫」と指導する怪しい派遣会社もありますが、そんなことはありません。
そのため、はけんけんぽに加入となった月から派遣会社から支給される給料から自動的に天引きされます。今国民保険に加入している方は、派遣社員として就業する前までに脱退手続きを行いましょう。
また脱退・切替手続きは誰かがやってくれると勘違いしている方がとても多いのですが、国民保険については自分で手続きしないと永遠に引き落とされます。社会保険事務局等で自分の加入歴などは残っているため、データを提出すれば過去に遡って還付処理はしてくれますが、非常に手間かつ役所によって対応が異なるため前もって行うようにして下さい。
テンプスタッフ、アデコ、ヒューマンリソシア、パソナ、マンパワー、スタッフサービスなど大手派遣会社の多くが加盟しています。大手派遣会社の中ではリクルートスタッフィングが加盟していません。
パートタイムで働く派遣社員がはけんけんぽに加入する方法
フルタイムではない派遣社員がはけんけんぽに加入するのは非常に困難でしたが、2017年4月1日から双方合意であれば、以下の条件を満たしているパートタイムの方でも加入できるようになりました。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が継続して1年以上見込まれている
- 月収が88,000円以上
- 学生ではない方
はけんけんぽの特徴
契約終了しても被保険者になることができる
派遣社員は契約期間があり雇用が不安定なことから、なかなか健康保険に加入できず、契約期間が終了するたびに国民健康保険に切り替える必要がありました。
しかし、はけんけんぽであれば一定の条件を満たしていると、契約期間が終了しても継続することができます(使用関係の継続)。被保険者の手続きは不要であり、その間は保険料が派遣会社と折半されます。
使用関係の継続条件
- 同じ派遣会社で派遣社員として働く
- 契約終了しても次の仕事が決まっている
- 次の派遣先における就業が1ヶ月以上
はけんけんぽの任意継続
上記の内容に該当せず被保険者である資格がなくなっても、はけんけんぽに2ヶ月以上加入していると任意継続が可能です。この場合は派遣会社との折半とはならず、保険料は全額自己負担となります。契約期間が終了してから20日以内に、任意継続被保険者になることをはけんけんぽに申請してください。また任意継続できる期間は最長2年です。
はけんけんぽで受けられる健康診断の内容
- 特定健診
- 基本健診A・B
- 生活習慣病健診
- 生活習慣病総合健診
- 人間ドック
- 乳がん検査
- 子宮頸がん検査
- 乳がん・子宮頸がん検査
基本的な健康診断の検査項目となる「特定健診」については無料です。他の検査もはけんけんぽで負担してくれるため割安となっています。しかし、比較的身近で利用率が高かった「インフルエンザウイルスの予防接種」について以前は項目に入っていたのですが2009年に除外されました。
家族をはけんけんぽに加入させる場合
はけんけんぽは三親等内の親族まで加入させることができます。しかし同居・別居によって条件が異なるので確認しておきましょう。
同居している方の場合は対象者の年収が130万円未満で、被保険者の年収の原則1/2未満。
別居している方の場合は対象者の年収が130万円未満かつ、被保険者からの仕送り額より少ない。
同居・別居に関わらず加入させたい方を「健康保険被扶養者(異動)届」に記入し提出します。被扶養者にもカード型保険証が発行されます。
派遣社員がはけんけんぽに加入するメリット・デメリット
メリット
- 保険料の自己負担額を抑えることができる
- 同じ派遣会社であれば継続して加入できる
- 契約期間が終了しても任意継続できる
- 扶養してる家族も加入させられる
- 健康診断を割安で受診できる
繰り返しになりますが、はけんけんぽと「社会保険」です。労働者である以上、また国民の義務として加入しなければならないものなので、はっきり言ってこれらを「メリット」と紹介すべきではないかもしれません。ただ、「派遣社員は社会保険が用意されていないのではないか」と誤解している方も多いので、そうした方に理解を整備するために分かりやすいものとなっているとも言えます。
デメリット
- 全ての派遣会社が加盟しているわけではない
- 同じ派遣会社でないと使用関係の継続ができない
- 保険料率が他社と比較し高い場合がある
当たり前ですが、はけんけんぽに加盟している派遣会社に登録しないと加入することはできません。しかし何かしら社会保険に加盟していますので、「社会保険に加入できない」ということはありません。
例えばリクルートスタッフィングは独自の組合健保を用意していますが、その保険料率ははけんけんぽよりも格安です。長期的に派遣社員として働く場合、それが積み重なって手取り額が圧迫されることも考えられます。
しかしあまりに安い派遣会社に登録して肝心の保険の内容が整っていなければ意味がありません。事実リクルート健康保険は、受けられる診断がどこも平日のみでなかなか利用できないな問題も多いようです。保険料率が安くても、実際に保険を使うことができないのであれば意味がありません。
その点では、はけんけんぽは多くの派遣会社と派遣社員で支えられている保険制度なので基盤は整っていると評価できます。